太平洋戦争中、米軍による空爆によって壊滅的なダメージを受けた日本。木の家の町並みがすっかり焼け野原になったことは、戦後まもないころの人たちにとってぬぐい去れない記憶となり、都市防災の観点から「家屋は燃えない、燃えにくい材料で造るべき」という「木造不要論」なる考えまで出てきました。
といっても、ずっと木で家をつくってきた日本人が、急に煉瓦や石で住宅をつくるようにはなるわけはなく、家は木でつくりながら、延焼を受けやすい外壁や軒裏は防火被覆し、屋根は燃えにくい材料で葺くという方法で家づくりを考えるようになりました。そこで登場したのが、いまもっとも一般的になった「モルタル住宅」と、より時代が新しくなって登場した「サイディング住宅」です。
モルタルとは、セメント・水・砂を混ぜて練り合わせたものです。木でつくった家のまわりに防水紙、ラス網を張り、その上から左官屋さんがモルタルを塗っていきます。その上から吹き付け塗装をする、あるいはモルタルそのものに色をいれて、あとから表面を掻き落とすなど塗り方は多様で、仕上がりはさまざまです。
サイディングとは、金属板や石綿セメント板を成型した外装材のことで、これを外壁に張ります。その表面は、素材そのままではなく、石調、タイル調、木調など、別の材料「のように見える」表面加工が施されています。
あなたの家の近くを歩いてみてください。そして、住宅の外壁がなにでできているか、数え上げてみてください。木や土といった素材そのものの力が表にあらわれている家がどれほどありますか?隣近所の家並は調和しあっていますか? ・・・モルタルや○○調のサイディング貼りの家がごちゃごちゃと並んではいませんか? あなたの好きな町並み、美しいと思える町並みを思い浮かべてみてください。それはどんな町並みですか?
「燃えにくい町にするためには、モルタルかサイディングしかない」ということではないはずです。日本にも、構造は木でつくりながら、外壁を土や漆喰で塗り上げた防火に対する技術を生かした建築がありました。その代表格が、城郭であり、一般の住宅にも「土蔵造り」「塗り家造り」といった左官の技術として伝わって、日本の各地に美しい家並、町並として今なお残って、その地域の大切な資産として受け継がれています。木や土といった自然素材そのものの美しさや、周囲の環境との調和にも気を配るこれからの家づくりのために、伝統の技術の中に生きるすばらしい知恵を、見てみましょう! |