topページへ つくり手インタビュー
   
勝又左官工業所 勝又久治さんに聞く
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個人住宅で土の仕事が復活してきたのは、結構最近なんですよ。
左官屋になった頃にはもう、土壁の仕事はめったになかった
新潟六日町の生まれです。昭和39年に中学を卒業し、東京のある会社に就職が決まっていたのですが、先に上京して左官屋に弟子入りしていた従兄から「左官屋にならないか?」と誘われたんです。で、親方も六日町出身だし、手に職をつけるのもいいかな、ということで、親方のところで世話になりました。
3年間の修業期間が過ぎて、年季明け。一人前とまでいかないが、「職人の卵」ぐらいには見てくれるようになり、こづかい程度ですが「一日いくら」で手間賃をもらう身になりました。
昭和40年代当時でさえ、普通の住宅で土壁や漆喰、という仕事はもうほとんどなかったですね。弟子入りしてすぐの頃に、仕事先の工務店の親方の家を木舞・土壁でやったのが最後でした。
私が入った頃、金井左官店には10人ほどの職人がいました。「半野丁場」といって、5〜7階ぐらいのビルの仕事が多かったんですが、家一軒、というのでなければ、料理屋やよっぽどいい家の和室や茶室を土壁で、という仕事がたまにありました。新宿、代々木の旅館の仕事がよく入ったんですが、これは昔の旅館をまねた数寄屋風の内装で、下地ラスボード、YNプラスター中塗りで、上塗りは聚楽土で仕上げましたよ。まだクロスがでまわっていなかった頃でしたからね。
左官の壁土だけで描いた絵
  勝又さん宅のお茶の間にある、左官の壁土だけで描いた絵。土の配合でこれだけさまざまな色が出る。 



 
久住さんとの出会いと仕事の広がり
昭和60年、梵寿綱(ぼん・じゅこう)さんの設計で、久住章さんの左官仕事をふんだんに使った「向台老人ホーム」が東大和にできました。その見学会で、久住さんの「アート左官」仕事を見たことが、ひとつの転機になりましたね。
久住さんは淡路島の人で、和菓子屋から左官の道に入り、いろいろとかわった左官の仕上げを工夫したばかりでなく、左官の可能性ということを、あっちこっちの設計事務所や工務店に説いてまわったんですよ。設計の人たちに左官仕事が見直されたのは、この久住さんの努力のおかげなんです。木の家ネットのメンバーの長谷川敬さんや松井郁夫さんはじめ、いくつもの設計事務所を見本をもってまわり、左官の塗り壁の良さを説いているはずですよ。
「向台老人ホーム」ですぐに久住さんと接点ができたわけではないのですが、左官でいろいろできるんだな、という感触はつかみました。その後、親方のところに小金井公園のたてもの園(今では江戸東京博物館付属江戸東京たてもの園)で古民家再生の仕事が入ったため、自分でも木舞・土壁の仕事に携わるようになり、そこからこんどは久住さんとの縁が実際にできてきたんです。
そして平成2年、久住さんが全国から優秀な左官屋を集めて「花咲か団」という左官屋の会社を淡路島につくった時には、自分も単身赴任で行きましたよ。これは「普通の壁を塗っていたんじゃ、おもしろくない。材料も自分たちで考えて、特殊な左官をやろう」という会社でね、正社員だけでも10人はいました。アート、彫刻、なんでもやれる人がいたし、バブルの頃だから、仕事もあり、面白い現場にずい分行かせてもらいましたよ。その頂点が和歌山白浜の「川久ホテル」。大理石風の継ぎ目のない、どこにもないきれいな藍色の柱とか、イタリア風の茜色の壁など、外装にも内装にも左官仕事の粋を集めた建物です。現場をやっている途中、みんなでヨーロッパに研修旅行にも行ってね。ドイツの教会なんかも見てまわりましたよ。
こどもたちが中高生という、両親がいてやらなきゃいない時に外に出てたから、女房は大変でしたが、自分にとっては、いろんな人や仕事との出会いが生まれた、貴重な体験でした。

「花咲か団」
全国から優秀な左官屋が集結した「花咲か団」の集合写真。
それからずっと土の仕事が続いている
淡路島から帰ってきてからも、縁が広がったおかげで、土壁の仕事が入るようになり、今に至るまでずっと続いていますよ。和室だけ、というのでなく、住宅そのものが木の家で、外壁も内壁も左官で仕上げるということが多いです。 つい最近では、長谷川敬さんの設計で横浜の現場で土壁の下塗りをし、ワークショップもしました。 こういう話は、工務店からでなく、設計屋から来ます。普通の工務店の仕事は予算重視だから、クロスばっかりでダメ。左官屋の出る幕はないんです。
こういう話は、工務店からでなく、設計屋から来ます。そういうつながりが、5社ぐらいとはありますよ。普通の工務店の仕事は予算重視だから、クロスばっかりでダメ。左官屋の出る幕はないんです。

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長谷川アトリエ設計、勝又左官工業所施工による家
       
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