topページへ つくり手インタビュー
   
勝又左官工業所 勝又久治さんに聞く
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土壁がよみがえるために今、必要なこと
土壁を支えてきたもの〜「材料」と「人」
木の家に、竹で木舞をかいて土壁を塗る、その材料そのものが身近になくなってしまい、わざわざ取り寄せる、タイヘンなものになってしまったんですね。うちでは、土は埼玉の上尾からとって練っていますが、最近では、現場が狭くて土を練る場所もないことが多い。そういう時には、割高にはなるけれど、愛知の刈谷から、練ってある土をとっています。
それから、人。左官とひとくちに言っても、木舞をかいて、下地を塗って、中塗りして、仕上げをして、といくつもの工程がありますが、昔は木舞屋さん、粗壁屋さん、という職業もあったんですよ。それが成り立つだけ左官の仕事があったからですよ。今では、木舞以降全ての工程を左官屋でやるしかない。それこそ、竹を割るところからね。そこからうちでやっていたんじゃ、日数がかかってタイヘンだから割った青竹を岡崎から取り寄せています。
そういうわけで、左官仕事を支えてきたひとつひとつの身近な(だった)材料や各工程の職人がいなくなってしまったんですね。そうなると、あたりまえだった「土壁」が、とても特殊な、茶室や数寄屋でしか見られないものになってきてしまうんです。 こういう構造全体をもとに戻すというのはなかなかできないから、どうしてもお金がかかってしまう、それをお施主さんに分かってもらわないと、土壁の家は建ちません。
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土壁を支えてきたもの〜・・・そして「時間」
昔はそんなにあたふたして仕事してなかったですよ。「急がなきゃ」という意識で働いてはいないから、手抜きなんて考えることもなく、みんな自然と、きちんとした仕事をしていました。
でも、今はみんな見積もりで金額が決まっていて、工期が何日って、ぎりぎりのところで区切られてしまうでしょう? だから、丁寧にいい仕事やろうと思ってもなかなかできないんです。
昔だったら、ある工務店に家を建てる工事が入れば、必ずそこの出入りの左官屋に仕事が来ていたものでした。ところが今は、競争時代ですからね。工務店は何カ所かから見積もりをとって、一番安いところ、に決めるでしょう? それで、余裕のない工期の仕事が決まっていってしまうんです。
でもね、安ければやっぱり安いなりの仕事、なんですよ。施主や工務店は、「得しよう」と値切ったり、安いところに決めたりするんだけれど、結局は安いものを追いかけて損をしているんですよ。職人なんていうものはね、本来、いい仕事して、施主によろこばれようという気持ちがあるんですよ。それをもっと安く、もっと早く、ってばっかり言われてたら、ろくな仕事にならないですよ。「これだけのお金で、これだけの仕事を頼むよ」そこの信頼関係が大事なんだよな。木の家ネットもそのあたりをふうに戻していくきっかけになるといいと思いますよ。

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もっと知ってほしい、土壁のこと!
設計に携わる人にはね、もっと左官のことを勉強してほしい、と思いますよ。でも、家を建てる人が直接左官屋に頼んでくるわけではないから、大工や設計屋が分かっていて、お施主さんに勧めてくれないとダメなんです。今の人は知らないですからね。土壁以前に、壁がなんでできているのか、なんて意識していないんじゃないですか。ここは珪藻土、とか書き入れしてくるんだけれど、知らないで書いてくることが多いんです。
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  滋賀県に伝わる大津磨きの壁。 美しい艶を出すために、磨き込む。 半間×一間磨くのに、一日がかりという。 
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勉強するには、現場に見学にくるのが一番です。自分で見たり、話を聞いたり、あるいは左官ワークショップなどに行って自分で塗ったり、こねたりしてみるといいんです。実際にやってみないとね。やってみると、おもしろいですよ。小さい頃にはみんな泥遊びってしたでしょ?土をこねるっていうのは、原点ですからね。
木の家ネットで、そんな土壁の講習会をひらくといいですよね。設計屋だけでなく、家を建てたい人にも開放して。最近「木の家」って大分注目されているでしょう?テレビの「お宅拝見」みたいな番組や雑誌の「こんな家に住みたい」というような記事にも、「木の家」がよく取り上げられるようになってきているけれど、それでも「壁がどう」というところまでは触れないんだよなあ。
もっと壁のこと、考えてもらえるようになるといいと思います。「いいものを使いたい」と思っている人は実はたくさんいるのに、知らないから、どう考えていいか分からないんですよ。そのあたり、どう知らせていけるか、というのはとても大事なことですよね。せっかくの「職人がつくる」木の家ネットなんだから、そこをがんばってほしいと思いますよ。

 
参考図書
日本の壁   INAX BOOKLET「日本の壁」

山田幸一 監修
山田幸一、佐藤嘉一郎、藤森照信、平井聖 共著

1985 INAX出版


地方色豊かな風景を構成し、茶室などを彩ってきた土壁の伝統と現在を考えるなかで、そこに塗りこめられた左官の鏝(こて)さばきを改めて見直す本です。
     

       
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