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建具職・西島広幸さん(西島建具店):最後に現場に入って和をとる仕事


西島建具店 西島広幸さん

・昭和57年(1982) 都立職業訓練校卒業後、横浜の注文家具店に弟子入り。 ・昭和60年(1985) 父のもとで建具の修業をはじめる。 ・現在に至る。

親兄弟二代で経営する「西島建具店」

障子や引き戸を 建った家の寸法に合わせてつくります。

東京の豊島区で「西島建具店」を、親父と兄と私とでやっています。私は建具の世界に入って20年ぐらいになるんですが、兄はバブルの後、脱サラしていっしょになるようになったので、キャリアとしては私の方が長いんです。小さな頃からいつも身近に木があったし、それをつかって手先でものづくりすることが好きでしたね。ですから、家業の建具屋を継ぐことにも、迷いはなかったです。建具はうちで修業すればいいので、高校を出てまずは家具の勉強をしました。都立の職業訓練校に一年間通ったあと、横浜の注文家具屋さんで3年間修業しました。ある程度覚えたところで実家に戻り、こんどは親父について建具をはじめたんです。

空間を仕切るために取り付け 開閉するものが建具です

建具とは、障子や引き戸など、部屋や空間を仕切るためのものをいいます。建物はできてしまえば、基本的には動きませんが、建具は、開けたり閉めたり、ふだんの生活の中でつねに動かすものなので、立て付けよくつくることが肝心です。うちでは、木製建具なら、なんでもつくります。襖は枠は木だけれど紙でくるむんだから、これは経師(きょうじ)屋さんの仕事。障子を貼るのもそう。紙を貼る前までの障子、襖でも木でてきているものは、うちの仕事。吊り戸棚の表面の扉などは、家具屋さんだと、扉付きで納めてきますが、大工さんがつくりつける棚だと、扉の取り付けだけはうちでします。

できあがった家に 採寸に行くところから 私たちの仕事がはじまります

仕事の順序としては、家が出来上がってから建具がおさまるべきところの採寸をしに現場に行き、はかってきた寸法に合わせてものを作って現場に納めに行くという昔からのやり方をしています。注文建具ですね。一点一点、その家に合わせてつくるわけですから、今の建て売り住宅に入るような既製品とくらべると、一点の値段は、倍ぐらいかかります。工場で大量生産できる既製品が従来の半値で出てくるようになったから、注文建具が高価で贅沢なものと思われるようになっているのですが、昔から建具は注文生産、というのがあたりまえだったのです。その家に合わせてぴったりつくるのですから、現場も見ないで一律に同寸法でつくる既製品とはできがまったく違いますよ。ちゃんとつくられた建具は、雨にでもあたらなければ、20年経ったって、狂わないものです。


仕事の道具。いろいろな目の鋸(のこ)、さまざまな歯の鉋(かんな)が並ぶ。

建具には一番いい材料を使います

建具は、長いこと毎日動かして使うもの。それだけに、狂いがゆるされないものだから、特にいい材料を使います。なるべく、柾(まさ)の通ったのを使うし、年輪の詰み具合、山のどんな場所で育った木なのか、いろいろ見方はあります。いい魚屋なら、まぐろのしっぽの先をちょっと切っただけその善し悪しが分かるっていうでしょう? あれと同じです。木の種類でいくと、紀州ヒノキや、もう滅多に手に入らないけれど天然ものの秋田杉などはいいですね。今の主流は、スプルースというアラスカのマツ科の木です。寒いところの木だから目が詰んでいるし、柾が通っているし、しかも加工しやすい。日本の木は、いいのがあっても、高いです。木の家ネットの設計士さんの松井先生の仕事や、防腐剤がかかっていない木でないと、という場合は地の材(国産材)を使いますが、外国のよりどうしても高くなりますね。日本は今、山を手入れしないから、建具材が取れるような大きな木になかなかならないんですね。

親方の一言

山の傾斜地に生えたような木は、根元が曲がっているでしょう? そこから6尺ぐらいのところは「アテ」っていって、我々の方ではもっとも嫌いますよ。堅くてね、削りにくいんです。もってみれば重たいからすぐ分かります。昔はヒノキの「アテ」を木製冷蔵庫に使ったものですよ。


広幸さんの父、哲夫さんは67才。現場には出ないが、家で木取り(どの部材をどこに使うかを決めること)をはじめ、仕事の段取りをする。


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