topページへ つくり手インタビュー
   
長谷川敬さんに聞く
photo 「自分でできること」が増えると、人も生き生きしてくる
 

健康な生き方は、家がさせてくれる
ヨ:長谷川さんに設計を依頼される方は、やはり「働く家」的な意識の方が多いのでしょうか?

長谷川:いちばん多いのは「健康に住みたいから木の家がいい」という方です。「健康な生き方は、家がさせてくれるんですよ。それが働く家です」と言って、ゆとりの空間や大地的な感覚を組み込める仕組みについてお話します。ただ、これは最終的にはその人のそもそもの生き方に関わることなので、あくまでもお話するだけで、それを選ぶのは住まい手です。ちょっと「いいな」と思っても、お金が足りなくなると、結局、いちばん最初にはずす項目になりがちです。生活を変えるためのしくみを用意するのは大変なことなのですね。ですから、住みながら変えていく、余地を残した形での提案をします。

ヨ:木の家ネットの読者の方には、きっと「都会での働く家」に興味をもたれる方も多いと思います。「家から出て行くもの」を自分たちの手で大地に返せる、それが都会でもできる、と知ったら、うれしくなってくるのでは? そういう人と確信犯でつながることができるとよいですね。

長谷川:ドイツの環境重視型の都市で力をいれているのは、ゴミ処理、水処理、そしてエネルギーを小さな単位でつくりだすことです。循環型社会へ移行するためのインフラ整備からはじめよう。社会がいきなり変わるのがむずかしければ、それに文句を言っているよりも、各家庭ではじめよう、ということです。

ヨ:自立して生きていくことにもつながりますよね。

長谷川:現代は保険と訴訟がやたらとはやってる社会ですが、その背後には「人のせいにする」発想があるような気がするんです。それをひっくりかえして、「自分たちの面倒は自分たちで見よう」という、自己責任、あるいは、ひとりでできないことは小さなコミュニティーで解決していく。そのあたりに、人が元気を取り戻す秘訣があるように思いますよ。





近くの山の木で家をつくる、その山にふたたび木を植えるという循環
ヨ:小さなコミュニティーで大地とのつながりを取り戻す、ということでいえば、長谷川さんがずっと携わっている「東京の木で家を造る会」の活動もそのひとつですね。

長谷川:自分たちが住む東京の木で家をつくるという運動です。家を建てる家族は、こどもから親まで、その家族が住む家となる木が生えているところを見に行く。昨年試みた「旬伐きの家づくり」では、伐採にも立ち会う。それから葉枯らし乾燥、製材と、木を見に行ってから一年がかりでやっと上棟です。時間はかかるけれど、そうすることで、「材木を買った」というだけじゃない関係ができますから、家が建ってからもまたその山に遊びに行くようになります。家が建ったお礼に植林をする、というところまで行くと、かつて人が故郷の裏山を育てていたのと同じ木をめぐる物質循環がよみがえります。

ヨ:長谷川さんが設計されているような木組みの家であれば、家も長くもつわけですから、植林した木が住宅の材に使えるまでに成長する60年ぐらいの間はちゃんと立っている。木を使って家を建てることで木という資源が減る分を、補えるということですから、そこにうまい循環が成立するのですね。山に立っている木が、家の材となってもC02を固定しつづけることを考えれば、地球温暖化をくいとめることにも大きく貢献しますよね。

長谷川:実際に木を植える、それを60年後に使う、ということをもっと社会に定着させたいですね。それぞれの学校で昔のように「学校林」をもつ、というのもいいですよね。60年後に、校舎がその木を使って直される。こどもの時に植林した木が校舎になるのを同窓会で見る。すごくいいと思いますよ。
おおらかな、普段着のような家がいい
 
   

ヨ:最後に、長谷川さんの設計で大事にしていることをお聞かせください!

長谷川:家の構造となる木組みがつくる空間。その空間力がいちばん大事です。生活が変化していく可能性をゆるすという意味でも木組みはすぐれています。木組みさえきちっとできていれば、あとから素人の人でも家をいじっていける、わかりやすさとおおらかさをもっていますね。それから、デザインはシンプルであること。家が空気みたいに自然で、どこがいいとか悪いとかあまり意識させないような家がいいですね。木組みでも、あまりに木組みの技術ばかりがびんびんと感じられるのではうるさくなりますから。普段着のように住めるのがいいですね。「長谷川さんはあまりデザインしてないじゃない」と言われることがあるんですが、ぼくとしては、基本的なことをきちんと押さえておいて「なにもしてない空気のような」というところに至るまでが設計の仕事だと思っているんです。あとは住まいてっが自分の生活を表現していけばよいのです。

対談を終えて/ 持留さん一家は、ぼくが口先で吹聴している「働く家」をとうとう実践し始めてしまった。それを可能にする民家のおおらかさに改めて感服。今度は、育っていく子どもさんたちと共に体験する「働く家」の話を、こちらが聞かせてもらう番である。それをとても楽しみにしている。 ところで、近頃、本のタイトルや企業の家づくりのコンセプトに「働く家」というのを見かけたりする。「働く家」というのは住む人との共働で成り立つものであるから、多くの人にチャレンジしてもらって、大地を循環し、人を元気にする家づくりの競争が起きればいいと思う。(長谷川敬)



編集後記/
私が住んでいる高根町に、長谷川さんが建てられた家があるのでおじゃましてきました。自家用の畑、合併浄化槽による水処理、太陽エネルギー利用と、「働く家」の要素がそろっていました。でも、何よりも感じたのは、そこに住まわれているSさんが、この家にぴったりの方で、手仕事や畑仕事を存分に楽しみながら、生き生きと暮らしている、ということ。この日も、自宅でとれた青ばた大豆を粉に挽いて、もたせてくださいました。(持留ヨハナエリザベート)






   

     
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