ずっと福井に住んでいますが、こんな大規模な氾濫は初めてです。7月18日に、1時間に80ミリ、10時間にわたって降り続けたのです。7月一ヶ月分の雨の総量に相当します。足羽川があちこちで決壊し、運悪くその近くに住んでいた方が家や家財道具を流されたり、泥水が家の床下床上問わず流れ込む被害に遭われました。家は助かっても、川の流れがすっかり変わってしまったことで、川底になってしまった田畑もあります。流されたゴミの量もすごい。木の根、家からはがれていった建材、家財道具・・・土に還らないものが、膨大な量流されています。 被害がひどかったのは、美山・池田地区、と福井市中心部を南北に二分して流れる足羽川の左岸。美山・池田はすぐそこが山ですから、山そのものが削られて、土砂がどっと押し寄せてきた。海抜が低い福井市内は、同じ泥でも水が運んできたものだった。美山・池田の方が、水が引いても床下などに泥がうんと残っていますね。 水の勢いときたらすごいもので、JR越美北線の美山町内の鉄橋7基のうち、5基が流されてしまいました。線路もめくれている。もともと採算の合っていない路線ですから、廃線になってしまうのではないかと懸念されています。高校生には通学の足になっているんだけどね。自分のところで施工した家はたまたま水害地区にはなかったですけれど、知り合いの建具屋さんのところが水に浸かって、木工機械がみんなダメになった。家が流されなくたって、仕事道具がやられては、ほんとに困りますよね。 この上の国道のトンネルを抜けていけば、すぐそこが美山町ですよ。ここはそのすぐ下流なんだけれど、なんともなかった。自宅は福井市内ですが、川の決壊場所の反対側なのでなんともなかった。ほんとに、紙一重ですよ。すぐそこだからかえって、被災した方に申し訳なくて、なんか見に行けないでいるね。ことしは2月に隣家の火災にも遭って土壁で命拾いしたり、大変な年ですよ。
新建材の家は、水には弱いですね。合板、石膏ボード、グラスウール、どれも、水に浸かるとぼわぼわになって、使い物にならない。部屋の高さの3分の1ぐらいまで川水に浸かった家が多いから、取り替えるしかない状況になっています。今、大壁で間柱の間にグラスウールが入っている模型をつくって、川の水に浸けてみて、その後の変化をしらべています。ベニヤにはさまれているグラスウールは、全然乾いていかない。いつまでも川の水に入っている菌が残っている状態だから、じきに腐っていきますよね。 とにかく、新建材の家だったらグラスウールや石膏ボードははずして。大壁の中の柱は細いから、腐っていけばシロアリなんかにやられて大変です。土壁の家だったら、土を乾燥させるために風や日光にあてることです。家の中で扇風機をまわしてでもね。床下も、土をかきだして、まず基礎と緊結していない石置きの家だったら、ずれている可能性もあるから、よく調べる必要があります。そして、心して、風通しを確保することです。この夏の時期だから、まだよかったね。
200年に一度の災害と言われます。100年、150年建っていた家も流されていますからね。でも、次も200年後かというと、もっと早く来るかもしれないと思ってます。今は道も舗装されてアスファルトになっているから、昔なら地面にしみこんでいた水まで、川へ流れ込むでしょう? 山も、杉ばっかり植えている上に、枝きりも間伐もしていない、手入れの悪い状態だから、光もささない、草も生えない・・・結果的に、保水能力がなくなっています。大量の雨が降れば、すぐに土砂崩れが起きてしまいます。九頭竜川上流のダムには、ダムがいっぱいになるほどの木が流れてきたといいます。雨が降ったこと自体はたしかに天災だけれど、それにかかわっておきる災害は人災かもしれない、と思いますよ。社会が変化してしまったことで、今までより災害のサイクルが短かくなるかもしれない。
そういえば45年ほど前に、今回ほどひどいことではないけれど、大水が来た時が何度かありました。私はまだ小学生低学年の頃でしたが、「これはもうダメだ」と思った時点で、家じゅうの畳をあげていましたね。敷居も取り外しちゃって、片側をまどにかけ、もう片側はなにかでつっかえ棒をして、その上に床板をわたして、畳をのっけて、家財道具もありったけその上に集めたものです。親父の時代にはそんな知恵があったんですね。今は、畳をあげて干す習慣もなくなっているし、畳をあげようにも、タンスやらなにやらびっちり乗っていて、あげるのもままならないものね。ものが増えている分、とっさの時にどうする、ということに弱くなっているのかもしれないね。
今までの家づくりでは、地震力や積雪に対する備えは考えてきたけれど、水害までは想定していなかった。地震力だけを考えれば、家と基礎は緊結せず、フラットベットの基礎の上を家がすべってくれれば免震になるからいい、と思っていましたが、それでは横から濁流が押し寄せてくる水害にはもろいよね。昔の家は瓦が上にたくさん乗っていて上が重たかったから、激流が家を襲っても、土壁が抜けてしまえば家そのものは流されなかった。それと比べると今つくっている家は、屋根は昔の家とくらべれば軽いし、土壁じゃないから柱だけ残して壁が抜けるということがない。同じようには考えられないよね。今までは床下換気孔は基礎の真中にあけてたけど、やっぱり土台パッキンの方がいいかな、なんて思いはじめています。 今回ほどの大洪水に対しては、家そのものが流されないために基礎のつくり方で対応できても、家の中が水浸しになることは避けられません。そうなると、乾かしようのないつくり方はしない、グラスウールや合板のような、土に還らない、粗大ゴミにしかならない素材は用いないことがむしろ大事かもしれません。軸組そのものがしっかりしていれば、壁や床はやり直して住み続けられる、そんなこともメンテナンスのし易さのひとつではないでしょうか?。