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木の家ネット第七期総会・徳島大会レポート


家づくりの原点である「山」にせまった徳島総会

今回の記事のレポート役、徳島の佐藤さん。

2007年11月9日~11日に徳島で行われた職人がつくる木の家ネット総会で、徳島スギを伝統構法の家づくりに供給し、山側から山と家づくりとをつなげることに長年尽力されてきたTSウッドハウス協同組合の和田善行さんとともに受け入れを担当した佐藤建築企画設計の佐藤恵子です。

徳島での総会は、9日には徳島県林業研究所での木材破壊試験、10日午前にはTSウッドハウス協同組合の亀井さんの山での伐採・搬出の見学(ここまでが総会のオプション)、午後にはTSウッドハウス協同組合のモデルハウスと製材所・ストックヤードの見学、夕方から徳島市内のホテル偕楽園に場所を移しての勉強会、交流会、分科会、11日午前に総会と基準法改正をめぐる国交省との第二次打合せのためのとりまとめ、午後に私が設計したあい愛診療所の見学と、もりだくさんのスケジュールで行われました。

木の家ネットの会員にとってはほとんどの人にとって「遠い場所」である徳島での開催にかかわらず、会員120名あまりの木の家ネットで70名以上の参加があるという、熱い総会となりました。簡単に3日間の行程をレポートします。

インターネットと木の家づくり

インターネット電話の標準的なソフトSkype(スカイプ)。最大10カ所をつないで電話会議を可能にする機能もあり、木の家づくりにかかわる個人がつながった全国組織である木の家ネットにとって、交通費をかけずに運営会議ができて、大助かりです。

10月30日、ここから私が本格的に総会運営に関わる日が始まりました。20:00からSkype(スカイプ会議)が始まるので、パソコンの前で待機せよとの指示があり、自宅兼事務所がある徳島市から車で30分離れた私のモデルハウス「のんびり家」に出かけました。木の家ネットは全国に散らばる10名あまりの運営委員による運営委員会で意思決定がなされるのですが、ここ数ヶ月以来、運営会議はSkypeというインターネット電話を使って行われているというのです。一般会員である私にとっては、はじめての体験で、びっくりしました。木の家づくりとインターネット電話…縁遠いように思えますが、地域地域でがんばっている人がゆるやかにつながって全国規模で動いている木の家ネットにとっては、ありがたい時代になりました。

黒心材に軍配があがったイエシロアリ実験

9日12:50に徳島駅に行くともうすでに殆どの人が集まっており、試験所へ直行。その前日の8日20:30からは総会直前のSkype会議があり、夜中近くまで話し合ったメンバーと翌朝には徳島で落ち合っている…というのは、なんとも不思議な体験でした。

試験所ではまず、イエシロアリの実験を見せていただきました。スギの黒心、赤心、辺材の3つを並べた上に透明な筒を立て、その上に筒の真上にあたるところに穴のあいた入れ物をおき、イエシロアリがどちらの筒に移動するかを見ます。黒心と赤心、赤心と辺材とで、どちらのほうにイエシロアリが移動するかを見せてもらいました。黒心のスギには、殆どイエシロアリは居なくなりました。また、天然乾燥、中温乾燥、高温乾燥の杉、藍染液を塗った杉、それにホワイトウッドの集成材を2007年6月から2007年9月までイエシロアリの巣のうえに置いたものも見せてもらいました。まだ、まとめは出てないともことでしたが、いまのところもっとも成績がよいのはうれしいことに天然乾燥材のようです。今後の報告が楽しみです。

実大強度試験機でのスギ梁破壊試験

次は今回の試験所でのハイライトとして、スギの破壊試験をしました。長く放置していた胴割れの大きい梁材と新しい梁材(いずれもT.Sウッドハウス協同組合の材)のヤング係数を非破壊試験で調べました。FFTアナライザーという測定器で比重と木材を叩いたときに発生する固有振動周波数から、ヤング係数を求めることができるそうです。さすが、TSウッドハウスの材は、胴割れがあってもヤング係数E90。最大曲げ強度は9t台有りましたが、胴割れが大きい材は曲げでなくせん断破壊が先行し、6tという結果。「林業試験場での破壊実験の杉の悲鳴に心揺さぶられました(中村建築・中村武司)」との感想を後日いただきました。私たちが立ち会った実験は、TSウッドハウス協同組合がこの試験所でひんぱんに行っていることです。研究者としてでなく、山から木を出す立場の責任として、自分たちが供給する材の強さや性質を自分たちで科学的に検証し続ける努力を続けてきたTSウッドハウス協同組合の姿勢には、頭が下がります。

その後、住宅資材性能試験棟も見学しました。ちなみにこの試験棟はTSウッドハウスの杉厚板を使って私の事務所で設計したのですが、実大強度試験棟に比べて温度日変動の変動幅も小さく、気温も2.2?2.9℃低いそうです。スギ材の調温調湿機能はすごいですね。

徳島の山奥、四季美谷温泉へ

林業試験所での破壊試験見学が済んだ後は車に分乗し、まずはTSウッドハウス協同組合の理事長である羽ノ浦町の三枝林業に立ち寄りました。三枝林業さんは那賀川河口近くの左岸に有ります。かつては山から伐り出した杉の木を、上流から一気に流すことで、この下流の製材所まで丸太を運んだのだそうです。今でも何件かの製材所が、この川沿いに残っています。

かつての丸太のルートを川沿いにさかのぼって走ること60km。限界集落である旧・木沢村に到着。TSウッドハウス協同組合メンバーの一人、亀井さんの杉の山が有る村です。かつては林業で潤った村も、聞けば今は公共工事が村を支える唯一の産業だとか。見渡す限りの山々には立派に育った杉の木で埋め尽くされているのもかかわらず、これが資源として有効に活かされない現実に、もったいないという思いが無性にこみ上げます。

道中に『崖崩れ注意!』の看板脇を恐る恐るすり抜けながらたどり着いたのは、一泊目の宿としてお世話になる『四季美谷温泉』。山深い過疎地に建つ宿とは思えないほどの瀟酒なたたたずまいに、少しホッとしつつ、この後の山の幸の食事と夜の集いに期待感を抱きながらチェックインしました。

夜を徹して行われた大工サミット

到着時間が予定より遅れたため、少しずれ込んで始まった夕食の宴では、久しぶりの再会を喜び話に花が咲きつつも、その後の『大工サミット』にむけ、お酒もそこそこに、隣の大部屋に集まります。

このサミットは大工の宮内寿和さんや高橋義智さん、中村武司さんらの呼びかけで実現しました。今年6月の基準法改正に対して木の家ネットでも国交省との交渉をもちはじめたことを機に、伝統構法を続けて行くために大工としてなにを国に要望するのか、といった熱い議論が、21時頃から夜中過ぎまで続きました。(別部屋では朝までしていたメンバーもいたそうです)


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全国から集まった30余名の大工を中心にした木の家のつくり手による、大工サミット