今回の検証事業業務の実施項目の中に、伝統構法についての詳細設計法、簡易設計法を3年以内に作成したいとある。限界耐力計算法にもとづいて構築するということだが、どのような枠組みで行うのか?特に、足元の自由度についておうかがいしたい。足元を固めた形でのみするのか?あるいは足元の自由度を持たせるのか?
足元をとめつけるかどうかについてだが、とめつけるタイプの設計法は三年以内につくることが決まっている。とめつけないものについてはそれと並行して、あわせて研究していく予定。そのための関連の実験を行っている。それをこの3年内に設計法にまでまとめあげられるかは、研究のすすみかた次第。視野には入れているが、3年以内にできるかまでは、現時点では約束できない。
これまでは、性能規定で限界耐力計算を使った場合は、足元を緊結してもしなくてもできていた。現場の棟梁に訊くと、緊結しないケースも多いようだ。国が足元を緊結した設計法をつくると、その縛りが大きくなるのではと懸念する。簡易な設計法をつくるのはよいが、できあがったものが水平方向の動きをゆるさないということで全国の棟梁たちを縛るものとなり、混乱を招くのではないか。よって、設計法はきちんと、足元緊結と足元フリーと、二つつくってほしい。国としてそこまで担保してほしい。
現状で足元をとめつけないことが行われているという方がおかしい。基準法では建たないはずだから、そんなにないのでは?
足元をとめない構法については、3年前の京町家実験も見ている。ほかの実験もやっているというのはきいている。足元をとめない方が上部構造に入力が少ないということは常識的に考えてわかるし、実験結果もそう。私自身も多くの文化財修理に関わって来たが「もとから足元が止まっていないものを強いて止める」ということは私だってやっていない。
一般の戸建ての場合、耐震性は要求性能のひとつに過ぎない。日本の木造家屋に台風被害が少なくなったのは、明らかに基準法で足元を止めるようになってから。神戸の震災で3F建て木造の被害が少なかったのも、風に対して壁をかなり入れなければならないことが基準法で決まり、それで震災でも助かっている。壁の強さは耐震だけでなく、風圧も考えなくてはいけない。
竜巻被害まで考えると、風速70Mにまで耐えなければならない。私は竜巻被害の現場を見たが、現代住宅は屋根が飛んでも、建物は立っていた。移動、転倒によって人命は失われていない。風のことも考えて足元のとめつけのことは考えなくてはいけない。
免震構造というのは、上部構造と地面との間に差ができることが免震になる。最大で50〜60センチのフレキシビリティが必要になる。風呂も2Fからつらなくてはならなくなる。そういった設備面まできちんと設計できてはじめて、足元を止め付けないというつくりかたができる。
というわけで、私は足元をとめつけないものを認めることについては、保守的
今回は水平方向には動かず、垂直はフリーな試験体。足元をとめつけない実験は京町家でやってるので、すべればどうなるかは、大体わかってる。ということで、今回は、垂直方向だけをフリーにした。上下方向に拘束がない場合にはどれだけ浮き上がるか?長ホゾはどれくらいの長さであるべきか?を検証したかったのでそうした。
私からも一言せっかくだから言わせていただきます。
これまで、伝統構法の建物というと、確認図面はスジカイ入りだけれど現場に行くと形だけはついていて、完成時にはとっている、という情況が普通だった。いわば「逃げ道」で生き延びて来たのが伝統構法だった。しかし今や、環境重視、ストック型社会への移行、社会の成熟など、さまざまな面から、ようやく伝統構法を検証する時代になった。だったら、やはり真正面からとりあげて検証する必要があるのではないか、と私は考えた。まずは、伝統構法の建物でも、4号建物同様に扱えるのだということを再確認したかった。それはきのうの実験でクリアした。今日、基準法での想定以上のレベルの神戸波を入力してみた結果としては、まだ200年住宅レベルでの「財産価値を損なわない」までには達していなかった。今後、設計上の工夫でそこまでがんばっていただきたい。4号建物の枠の外にある、限界耐力計算で耐力を証明するタイプについては、国側で取得したデータを公開して個別の設計にもっていってもらうとか、個別にデータを取得するための補助金を利用するなど、自助努力でしてもらう以外ない。
つくり手のみなさんには、偽装でスジカイをとったりつけたり、という態度でなく、正面から取組み、お施主さんにもちゃんと安全性を説明してつくっていっていただきたい。耐震性だけでなく、いろいろな性能を満たし、財産価値のある建物をつくっていきたい。そういう態度の方には万全のフォローをしたい。
前回とくらべて、土壁のつくり方がお粗末だったかな、と思う。表と裏の目が小さくて土が入り込んでない。今回(A棟で)は足固めもなかった。もう少し伝統構法のよさを取り入れた設計をしていっていただきたい。現代工法の中に伝統構法を入れ込んでいくのでなく、伝統構法そのもののよさを真っ正面から設計に入れていってほしい。
土壁の件。今回の試験体については、よくなかったとはいえるが、町場ではこういうものがたくさんつくられているのが現実。こういう施工はたくさんある。「このくらいの施工だと、こういう性能になる」ということが明らかになったのは、ひとつの成果。これから実験をしていきたい。
伝統構法を現代工法の中に含めないでほしいということについては、そうするつもりはもともとない。ただ、伝統構法も現代の科学でとらえようという意味。どういう型にはめようということはない。昔、剛柔論争というのがあった。柳に風というつくり方もあるのだとか、免震構造は超高層でもやっている、とか、そういう論議をくりかえすのではなく、あくまでも科学的に検証したい。
足元をとめつけない、ということについても、それを禁止したいということではなく、20〜30年後からみれば「なんだ、簡単にできたじゃないか」という話になるだろう、ということは予測している。足元を止めないと、そこの敷地でどういう地震がおきて、どの程度ずれるかまで設計しなければならない。そこまでのことが分かるところまではなかなかいっていない。なにしろ、スエーデン式サウンディング法を実施しなければならなくなったのはたかだか2000年。地盤情報、地震動予測など、周辺情報が整備されてこないと、そこまでの設計法はむずかしいのではないか。中越地震、水平変位は数十センチもあった。もうちょっと周辺情報が揃ってこないと、まだできない。だからできない、とは思っていない。いずれできるとは思っているが。
個人的な感想ですが、先週今週の実験や過去の被害を見て、伝統構法もそれなりに耐震的につくれると思っている。が、現代のガチガチな耐震性の建物ほどの耐震性はやっぱりもてないと思う。私自身は伝統構法でつくられた建物は好きだが。耐震的に弱みがあるのは知っているけれど、好きです。
せっかくだから反論を。私としては野呂さんのおっしゃったのと逆に、伝統構法の中に現代工法が入って行くと展望しています。200年住宅の時代に入り、本物の住宅をつくって提供していく時代になっていくと、つくり手は施主にオープンにかなりの情報を開示していかなければならないことになる。伝統構法のように、施工の段階から施主に対してオープンになっていながら、惜しいところでネックになっている耐震性をきちんと現代科学で立証することができれば、かなりの優位に立てるはずだと思っている。むしろ、今は在来工法をやっている者も、より伝統構法寄りに流れてくると思う。伝統構法は地域、工務店、個人でもっている技術なので、分散型で型式をつくっていくことになるのだろう。今回の実験はそのほんの入り口。個別分散は非常に手間がかかるし、小さな事業主にとっても負担になるのは分かるので、それは個別に応援します。非常に手間がかかることだけれど、それをしていかないと、いい町並みが消えて行く。
西洋医学、東洋医学の問題と似てる。今の知見では分からないけれど、20〜30年後には分かるということは、ある。「分からないからダメ」という扱いはしないでほしい。
足元はどの程度浮き上がったのか?
壁が大分傷んでいます。足元はもっと浮き上がるかなと思いましたが予想ほどではなかったのは、土壁が先にこわれたからではないかと思います。
きょうは伝統構法についてのさまざまな立場の考え方を聞くことができてよかったと思います。
(終わり)