01 全体的な考え方

担当:持留ヨハナ(モチドメデザイン事務所)(文責)、 小林秀行(ストゥディオ・プラナ)

日本のすばらしい伝統文化の木造建築物を後世に残せるような法律であって欲しい

1. 伝統構法が建築基準法に位置づけられていないことが問題

「職人がつくる木の家(伝統構法)と最近主流のプレカットの家(在来工法)が同じ土俵にのっていること自体に無理がある。ゆっくりとでもいいから、少しずつ改善していって、職人にとって家をつくりやすい環境にしていってほしい」という意見に代表されるように、8割以上の人が「伝統構法」「日本の木造建築」など、伝統の家づくりについて言及しています。

現在の建築基準法でカバーしている木造住宅は「プレカット」「在来工法」「プレハブ」などをベースとしており、「伝統構法」が位置づけられていないことが、建築基準法の大きな問題点であったと、多くの人が指摘しています。

その理由としては、まず、建築基準法が戦後復興の時期に「最低基準」としてつくられたものであり、その時点で伝統構法は入っていなかったこと。その後、「住宅産業優先の国家政策」「経済効率重視」の原則の上に、「ハウスメーカー」型、量産住宅の基準が付け加わる方向で増大してきたことがあげられます。その背景として法律をつくる立場となる、大学教育を経過してきた人たちが「西洋建築、非木造」しか習っておらず、日本の木の建築文化に対する理解が浅いなど、教育の問題もあげられていました。

その結果、建築基準法ではつくり手では「ハウスメーカ寄りで、職人軽視」、家づくりでは「木組みより金物接合」「石場建てよりコンクリート基礎」「手刻みよりプレカット」というあり方で現在に至っています。これは、戦後半世紀の日本の方向性が、歴史、文化、風土、伝統よりも、「目先の経済効率」「大量生産&大量消費」に終始してきた結果だということができるでしょう。
 

2. 伝統構法を守り育てることは
 日本人のアイデンティティーを守ること

「伝統構法」は、日本の風土、町並み、景観、原風景、美意識、長年培ってきた日本人の知恵とつながり、ひいては「日本の文化」「日本人のアイデンティティー」だからこそ、「失ってはならない」「大切なものだ」という思いを、多くの回答から読むことができます。建築基準法が伝統構法を扱っていないということが、日本の文化、アイデンティティーを損なうことにつながりかねないという危機感があります。

これまで、過去の木造建築の一部が「文化財」として保護されることはあっても、建築の範疇で正統に扱われることはなかった(法隆寺でさえ、違反建築)。伝統構法は今も継続しているものであり、未来へもつなげてくものとして、きちんと建築の範疇に位置づけをされるべきものである、というのです。や技術を、今に活かそうと言う気持ちがって良い。

しかし、未来につなげていくべき理由は、「歴史的な価値」というだけにとどまりません。自然との調和」「環境に負荷をかけない」「山・木・人のすばらしい循環」「古くて新しい技術としての可能性」など、多くの要素が連ねられています。

今の法律を改正して伝統構法の家づくりができるようにすることが、日本独特の「木の建築文化」「職人の技」「美意識」について誇りや自信をもつことにつながる、というのです。

また、海外から見た「日本の魅力」は日本の建築と自然との調和が醸し出すものであり、町並みや景観を守ることが、日本の観光資源を生み出すという指摘もありました。
 

3. 伝統構法と在来工法とは設計思想が違う

「伝統構法」と「在来工法」との違いに言及した意見もたくさんありました。それは技術的以上の「設計思想の違い」としてとらえられているようです。伝統構法は「自然に根ざした叡智」「風土に合った」「息の長い」「地域性豊かな」ものであり、在来工法は「経済原理優先」「短命」「画一的」なものである。

技術的には「伝統:木組み、手刻み、自然素材、石場建て、開放型」「在来:金物結合、プレカット、新建材、コンクリート基礎、高気密」という要素がイメージされていることが分かります。

4. 今後の方向性〜理念をもった大枠と
 工法・地域・規模にあった個別法を

現在の基準法は「最低基準」であるため、建築という行為が環境や地域、人間、ものづくりにとってどういう意味をもち、影響を及ぼすかという「理念」をもってはいませんでした。そのことについて「国が何を守っていくか、はっきりした展望をもって作り直すべき。その中で、伝統構法も再定義されていけばよい」という指摘もありました。

「環境との共生」「よい循環を生み出す」「文化の継承」「美しいまちなみ」「よいものづくり」「つくり手と建て主との信頼関係」「手仕事」といった理念をもち、最大公約数としての約束事を国でつくり、個別法は工法、建物の規模、地域性などによって、バリエーションをもたせるとか、地域行政、つくり手の最良、建て主の自由意思にある程度委ねるべき、という意見が多かったです。

個別法についてのキーワードは「工法の多様性」「地域性」「大都市、地方都市、郊外
農村部といった地理条件」「自由度」「応用力」「創造性」など。翻っていえば、基準法が「すべてをひとくくりの基準でとりまとめようとすることに無理がある」「細かすぎる」「規制に走り過ぎ」「自由度がない」という認識のあらわれでしょう。
 

5. 基準法の手直しだけでは済まない。基本理念をもって再構築を

2006年に施行された「改正基準法」は、耐震偽装問題にその端を発し、それまでよりも厳格な運用を徹底することで、建築基準法の硬直ぶりをよりあらわにしました。こうした国の一連の対応について「厳格化しても意味がない。むしろ、法を犯す者だけ厳罰化すれよい」「結果的には、良質な木の家づくりをしている人が苦しむ結果になった」「性悪説では、自由度、創造性が閉ざされる」と受け止める人は多かったようです。

「最低基準」にはじまり、経済優先の住宅政策に添いながら、「規制」を強めて来た建築基準法ですが、改正基準法のさらなる改正では限界があり、「根本的な見直し」「杭としての基本理念」にのっとった、まったく別の法体系が望まれているように読み取れました。昨今議論がさかんな「建築基本法」の考え方にも通ずるものがあるようです。

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