04 耐力壁

担当:宮越喜彦(木住研)

伝統木造を活かせる多様な耐震要素がほしい!

一般に耐力壁と言いますが、ここでは施行令第46条「構造耐力上必要な軸組等」についての回答のまとめをしています。回答者の多くが伝統木造の実践者であることが全体の傾向として読み取れます。

特に、伝統木造の「空間」「架構」「特性」「要素」については実践している感性からの表現として表れていて、その捉え方を知ることができます。逆に、現代木造への評価は、伝統木造の視点であるだけに、耐力壁重視の問題点や木造の持つ粘りなどが活かせない基準の指摘などが上げられています。

しかし、建築基準法という枠組みの中で、木造を実践していくためには、今は圧倒的に少ない伝統木造の特徴を活かした耐震要素の研究、検証を進めることへの期待は寄せています。設計のためのデータベースの整備などが方策として上げられています。そのためにも研究、検証の中心で動く研究者には実務者と協働する意識を持ってもらうことを求めています。

現在、伝統的構法の見直しが国主導で行なわれていることは喜ばしいことです。その動きに実務者の声が反映できるのか否かが、伝統木造の将来に影響を及ぼすことになりそうです。

1. 伝統木造に対する実務者の考え方

① 空間:開放的な間取り

開放的な間取りでフレキシブルに使用できる特徴を持ち、日本的な美の象徴である。
耐力壁ありきでなく、柔軟な建物の工法として捉える必要がある。
壁を多く造ることは、開放的な特徴の日本の家にはそぐわない。

② 架構:軸組みで持つ

軸組みあっての耐力壁。
木造は壁に頼るのではなく、縦材と横材を組み合わせて造るもの。
軸組みの耐力を評価すべきである。
躯体そのもので構造強度を出る建物の場合には、壁の少ないあるいは無い建物も可能である。

③ 特性:柔らかくしなやかに(傾き・粘り・総持ち)

傾いても直せるようになっていればそれで良いのではないか。変形を押さえすぎることは接合部に問題を生じる。
土壁や接合部のめり込みなどにより水平力を吸収する。そのため、水平力への抵抗要素を分けて変形時の変形量とセットで仕上げを考える必要がある。
総持ちと呼ばれ、一部の崩壊で壊れることはない。
損傷限界、安全限界の傾きに対する評価見直しが必要。それぞれ、1/60rad、1/15radへ。

④ 要素:土塗り壁と貫  (他に 差鴨居・大黒柱)

徐々に段階的に崩壊する壁の開発が必要である。土塗り壁は理想的。壁が落ちることは危険ではない。家が潰れることが危険。
貫による抵抗要素の考え方を発展させることが重要である。土塗り壁はそれを補剛していると考えられる。
しかし、「貫+土塗り壁」の評価が低いのではないか。実用面での矛盾した対応をせざるを得ない。
・1/120radの壁倍率の評価は低いが、大変形時には安定感がある。
・倍率が低いため、しかたなく筋違いや合板などで計算上のつじつま合わせを行な
 う状態だ。

2. 現代木造の捉え方(伝統木造から見た評価)
←×→1)と「対立・矛盾」する考え方

① 伝統木造は壁倍率の考え方にはそぐわない

強くて変形しない壁は木造には適さない。強すぎない壁で変形しても耐力が落ちない壁が重要。
木造の耐力を壁量計算でくくろうとすることに無理がある。
粘りある貫の壁に筋交いや合板という剛を入れることの矛盾。 (斜めに入れる筋交いは伝統木造にそもそも有効なのか。合板の耐久性に問題はないのか)
耐力壁の倍率の高いものが、長い年月にわたってその強さを維持できるのか。
壁量頼みのバランスの悪い建物や奇抜な構造の法が危険。法はクリアするけど危険。法はクリアしないけど安全ということはある。

②現代木造のひとつの特徴である大壁の問題点

内部結露や経年変化の欠陥に気づかず保守の上で問題がある。
逆に、伝統構法の特徴の一つともいえる真壁であれば維持点検がしやすい。

③研究者は木造の原点を知らないのではないか →実務者との協働が必要であろう

3. 伝統木造をつくりやすくする方策が必要

① 多様な耐震要素がほしい! →設計のためのデータベースの整備

耐力壁の種類を考え直す必要がある。そもそも告示等で認められているものが少ない。
自然素材を活かした仕様が少ない。
真壁の仕様が少ない。
木摺りにプラスター漆喰塗りなど土壁以外の壁仕様も使いたい。
小壁や腰壁、柱の差し口なども耐震要素として壁量に活用したい。
民間にある壁量のデータが使えない。
誰でも使える耐力壁(耐震要素)を増やすべき。

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