08 建築確認

担当:宮越喜彦(木住研)

「町づくり、国づくり、幸せづくり」の大きな理念の下に建築基準法の大改革

建物を建てる場合には、確認申請の手続きや現場審査など建築基準法に直接関わる対応が求められます。耐震偽装事件に対する行政の対応として、2007年に確認申請の厳格化という方針が打ち出され、それが運用されています。建築の実務者には従来以上の手続き上の負担が求められれることになりました。それが、建築の質の向上に結びつくものではなかったばかりか、国内全体の経済活動の低迷を招いてしまったことも記憶に新しいところです。回答からもそういった状況を読み取ることができます。

実務者の声からは、そもそも建築基準法が抱えている諸問題も浮かび上がってきました。また、伝統構法に関してはいまだ検証が不十分な状況であるものの、性能規定化の流れの中で限界耐力計算により確認申請は通し易くなっていました。しかし、厳格化により手続き上に問題が顕在化してしまい、実質的に不合理な状況を生み出しています。

建築確認の当事者は建築主(建築士や施工者の実務者)と審査や検査をする行政や検査機関です。その審査側にも実務者から見た場合に問題が指摘されています。法の規制が厳しくなったということばかりでなく、審査側の能力やその対応へ疑問や注文も寄せられています。

昭和25年に制定された建築基準法は、災害や事故等によって、逐次変更や追加がなされてきました。しかし、以下にも上げているように「町づくり、国づくり、幸せづくり」の大きな理念の下に大改革の時期にきているのではないでしょうか。実務者の率直な回答への対応が求められています。

1. 建築基準法の諸問題

① 建築基準法は建築の質向上に関係しているのか

建基法のない時代に建てられた建物が100年以上の寿命を持ち、建基法のある現代の建築の寿命が30年余りという疑問。
現場で質を高めようとする工夫が認められないという疑問。
建基法の通り建てて本当に良い家が建っているのか?という疑問。
Eディフェンスの実大実験で倒壊した3階建て長期優良住宅への疑義。

② 建築に対する責任は?

建築確認等に対する責任が不明確である。審査側は責任を背負えない。
建築士の責任範囲を明確にし、責任を負わせればよい。
検査側には喉元すぎればの体質が見える。

③建築主の自由が奪われているのではないか

4号建築にあって、確認申請やその検査は個人の自由を損ねる領域ににまで達している。
それは、階段の手摺の義務化、24時間換気扇の設置、使用材料の規制などなど。これらは建築主の判断できる領域ではないか。
細部にまでがんじがらめのチェックはいかがなものか。
古い民家に住んでいて耐震診断を受け、数値で不可と評価されたが、信頼できる棟梁がいて顔の見える関係があれば何の不安も感じていない。(住まい手)

④「町づくり、国づくり、幸せづくり」の理念を持って建築基準法を大改革する時

法律は条文が多ければよいと言うものではない。
この数年、頻繁に建基法、告示の追加変更が行なわれていて、対応も大変。法のが劣化している。
今の建基法に準ずることばかり考えていては、よりよい建築の実現できない。大胆な改革が必要な時。
地域、風土を無視した一律の基準は改正すべき。
逆の視点から言えば、くだらない規制ではなく、本当に必要な規制であるならもっと厳しくすべき。
4号特例の廃止等の議論もあるが、結局のところ建築主への負担が増えることになる。

2. 建築基準法と伝統構法
 →1)-④建基法の改革へつながる意見

① 現状で建基法は伝統構法の足かせ

法第6条の3のような除外規定がないと伝統構法は立ち行かず、建基法を厳密に適用すると多くは触法の可能性がある。
伝統構法に対する検証ができていない状況で法規制のみが先行している

② 建築確認の現場では伝統構法を知らない

確認行政、検査機関の側に伝統構法に無知な検査官が多く、知ろうとする意志も感じられない。
石場建ての家について役所に事前説明したにも関わらず申請を拒否された。
確認申請を「受け付けられない」ところが検査機関として存在していることはおかしい。制度として成り立っていない。

③ 限界耐力計算による4号規模の適判送りはやめてほしい

石場建てが建基法の使用規定から外れるため、その特性を活かそうとすると限界耐力計算にて安全性の確認を行なうことにあるが、そのルートであると4号規模であっても適判送りとなることは現実的な対応ではない。
限界耐力計算ではいわゆる関西版マニュアルを使えるようにしてほしい。
伝統的な家屋の改修や修復、新築に際しては限界耐力計算で診断、設計を行なうが、それを判定できる人材が圧倒的に不足している。専任の検査機関の立ち上げが必要。

④ 現行法で伝統木造へ対応する提案

伝統構法については施行令第80条の2の1項(構造方法に関する補足)で告示扱いし、使い易いルールとできないものか。

3. 確認申請で現場で困っていること

① 確認申請の手間が増えすぎ

厳格化以降、各種申請書類、添付書類が増え業務が煩雑化した。しかも、無駄なものと思われるもの多くなりすぎ。
手続きの煩雑さは、事務手続きのコスト高(本体工事に掛ける費用が相対的に減少)につながり、一方で役所の対応はこなすために事務的に陥っている。
構造設計の申請手間が増えすぎ、自由な創意工夫を妨げている。

② 確認申請の審査、検査をスムーズに

申請手続きの実用面での対応を要望。重箱の隅を突っつくようなことは書類の完成度はあげるのかもしれないが、建築の質を上げることにはつながらない。時間の無駄。
フラット35に瑕疵担保、長期優良住宅云々と別々の検査ばかり、一緒にすべき。すべてに不要なコストが生じていることを忘れている。

③ 確認申請の変更に対する対応が悪い

申請時に、たいした変更でもないのに、出し直しとなるのは建築主に無用の負担を強いることになる。誰のためにこういった対応になっているのか疑問。
建築の現場は、申請通りに進まない要因が多々ある。変更の程度にもよるが申請の出し直しという対応には問題がある。現状は瑣末な変更事項でもそれを指導することで、問題あり。

4. 確認申請で現場が混乱する原因(実務側から見た実状・実感)

① 厳格化以降の状況として

建築主事に権限がなく、交渉の余地がない。判断することを放棄している。
あまりにも瑣末と思われる事項が多くなってしまった。しかし、現場では対応するしかない。
結果として、建築工事本体以外に費用と時間がかかりすぎ、建物の質を悪くしている。

② 審査の判断がまちまち

検査機関によって手続きがバラバラ。判断が異なるのもおかしい。
それは、数年前に比べて顕著になっているように感じる。
検査機関(市町村も含む)によって提出書類が違う。消防への提出の有無も違う。小数点の以下の表記まで違う。
道路に関することで、以前主事判断で認められたものが、認められなくなった。行政により建築主の権利が奪われることになった。

③ 審査側が現場を知らなすぎる (②の要因にもなっている)

良い建築、良い環境をつくるためにどうすれば良いのかではなく、法文の解読をするだけが仕事になっている。
条文至上主義に陥っている。
確認事項に対して、あまりにもマニュアル化が過ぎる。法令遵守は基本であるが、法令が建築技術の全てではない。
逆に、くだらない言いがかりでなければ、もっと厳しくしてほしい。検査員は最近甘い。
役所の窓口ではサービスの心で対応してくれるのに、建築指導課の人は感じが悪いのか。性悪説にもとづき取り締まることしか考えていないのか。
4号物件の確認申請を提出すると「うちに出すんですか?」という役所。
検査側の質を高める必要がある
書類主義から脱し、現場の状態を法の精神に照らし合わせて考え、判断で
きる教育が必要。
設計監理者は建築士の免許のコピー添付義務があるのに、検査員の資格証
明証はあるの?
目先の仕事が増えているのでたいした検査もできない。審査料は高くなっ
ているのに。

5. その他

中間検査を義務づけることで欠陥住宅を防げる。
尺貫法と坪単位での確認申請は無理なのか。それこそ地域差があるのではないか。
社会の人々が「伝統文化不要論」に対して勝ってからしか、厳罰化はしてはいけないと思う。

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