12 長期優良住宅

担当:勝見紀子(アトリエヌック)

伝統構法こそ長期優良住宅!

ここでの回答は、国交省の鳴り物入りで打ち上げられた長期優良住宅に対してのものである。
まずこの法の存在自体を問う意見が少なくなかった。
そして、存在意義は認めるものの、その理念としてあげるべき事柄に対する疑問符や提案が数多く挙がった。特に「伝統構法こそが長期優良住宅である」との指摘が大勢を占めた。
次には、求められる具体的基準に対する問題指摘も多く、伝統構法の住まいが「長期優良」から疎外されている実態が垣間見えた。
また実際に申請を試みた会員から、運用上の問題指摘もあった。

1. 長期優良住宅その前に

この法律が、誰のために何を目指してのものなのか、根本的な部分に対する意見も少なくなかった

① 誰のための法律?

・「長期優良」という新たな新築建物の価値を看板に、商業主義の後押しをするだけのことになっていないか
・「国民のため、国のため」ではなく「ハウスメーカーのための、大企業のための」利権主導
・法律をつくって国民全体を強制して救うという発想には限界が。自由に、自己の責任で自分の住処を守る意識が必要

② 何をもって長期優良とすべきか

・本当に長く住める家はどういうものかが考えられていない制度
優良と付けるからにはもっと違う観点から考えるべきでは?(地域材利用や土に帰る素材など)
・固い建物はできるかもしれませんが果たして長く使える家なのだろうか疑問

③こんな法律を!

・なぜ国のつくるものは全て自然ではなくなってしまうのか。自然住宅促進法をつくってほしい
・そもそも必要かどうかの議論からはじめ、再検討すべき
・木の文化の国として、現在のさまざまな法律は改正すべき

2. 大切な視点が盛り込まれていない

・「長期優良」を目指すこと自体に異論はないが、それだけに今の内容には、大切な視点が欠けていることを指摘する声が多い。

①エコのこと CO2排出、ゴミ問

・『埋め立て』せずに少ないエネルギーで処分できるかは評価に入っているのか?
・石油系の断熱材製造時に多くのCO2を排出する矛盾がある
次世代にできるだけ負担のない形を残すなら、ごみ、エネルギー問題を共に考える必要がある

② 住み継ぐこと

・長く住み継がれていく家とは何か、根本的に考えなおさなければならない
・愛着をもって、代を超えて大切に住み繋ぐという心がなければダメ
・100年を超えて住み繋がれる家は、現代の家ではないのではないでしょうか
・「日本の風土に密着した、伝統的な家づくりの引き継ぐべき価値」がぬけおちている

③ 維持&管理

・日本の優れた伝統的工法による建物を長く使う為に、工法だけでなく、維持管理が重要
・改修しやすい建築計画や設備計画に重点を置くべき
・その地域で対応できる部分はどのぐらいか、設備は何年経っても取り替え可能か、再利用しやすいかの評価を

④古い家はどうするの?

・古い家の改修については「壊す」か「届け出をしない」かしか、選択肢がない
・既存不適格建物をどうするかについて、対応がない

⑤伝統構法こそ長期優良住宅!

・伝統構法の長所を生かした長期優良住宅の実現は困難になっている
・今も問題なく建っている伝統工法で建てられた家が「長期優良住宅ではない」と言われ、なぜ、新建材やボンドや金物などでくっつけられた家がとてもえらそうに「長期優良住宅だ!」なのか?
・全国各地に多く残り住み継がれている現状を考えると、伝統工法での長期優良住宅も認めるべき
・伝統構法は、長期優良住宅の理念に答えられるポテンシャルを元々備えている、最もふさわしい構造形式
既に100年建ち続けている民家の方が長期優良住宅。なぜならそれは現実に確認が出来るから

3. 各基準に疑問

・求められる諸々の基準は、本来の「長期優良」のあるべき姿に反するものが多いのではないか? そしてそのことが、伝統構法の家が「長期優良」から外される要因となっていることを、具体的に訴えている

①耐震基準に疑問

〜とにかく構造体を固めることを一律的に求める基準。合板を推奨しているような指導も問題では〜

・長期優良住宅に合格した建物は、必要以上に堅くなりすぎている
・長期優良住宅の基準は概ね必要なものであるが、耐震等級2は伝統構法に則さない。構造特性に合わない堅い建物になってしまう
・耐震等級2をクリアするには合板で固めないと実現出来ないことになり、辞退した
・こちらとしてはなるべく入れたくないのに、構造用合板を使えと、説明会で指導される

〜固める建物しか想定していないため変形基準が厳しく、限界耐力計算を行ったところで、伝統構法の特性を生かした建物にできない。安全基準の幅を広げるべき〜

・安全限界の変形角を少なくても1/20として欲しい、それで十分安全性を確保できる。
・限界耐力計算によった場合でも安全限界の変形角が1/40では構造特性が生かせない
・安全限界の変形角が1/25になるため耐震等級2がとれない。実験で安全性が確かめられているデータを使っているのにかかわらずである

②おかしな防水基準

〜化学的に耐水措置を施した耐久性の知れない材料を、ムク板の下地にしろという矛盾〜

・洗面所の床にムク材を使用する際に、下地に耐水合板や耐水石膏ボードを貼る様に言われた
・浴室で天井に桧板を張る場合、下地に防水性のもの(耐水石膏ボートや耐水合板など)を貼ってから、仕上げにムク材を使用するように言われた。逆に湿気が溜まってしまう

③高断熱・高気密???

〜省エネについて、高断熱ばかりを追い求めているため、それによる弊害に目を向けていない。また別の視点で省エネといえる土壁造などを排除することになっていないか〜

・高温多湿の風土に、透湿抵抗高く内部結露の恐れのある構造用合板を多用する長期優良住宅
・省エネに偏りすぎている。過剰な設備を強いているため、普及の妨げになる
・高気密・高断熱住宅などで、断熱材の多量使用や基礎断熱工法で、シロアリが侵入しやすい現状
・断熱材の要求厚さ等で無意味な厚化粧
・土壁だけでは温熱等級が取れない

④耐久性に疑問

〜採用年数が浅く、未だ耐久性評価の定まっているとは言えない材料を構造体に用いた建物を、「長期優良」と呼べるのか〜

・経年変化などにたいする性能評価がなされていない集成材が、幅を利かせている「100年 200年住宅」がどのような経過をたどるのか
・コンクリート基礎重視に疑問。コンクリートの土間や犬走りはたった50年で目に見えて風化、湿気を呼びカビが生えている。 “長期優良住宅”を掲げ100年単位で住むのは無理。
・接着剤の効能はいつまで続くのか?接着剤が劣化する過程で化学成分を放出していることは明らか
・国会答弁でもあきらかなように建物の寿命は耐久性とは関係ない。長期優良住宅仕様が長寿命となる科学的根拠がない

4. 運用に問題

・実際に申請を行った方からは、手続きや建築コストに関しても疑問の声が上がっている

①手続きに、手間・時間

〜中小事業者の工務店や設計者にとって、煩雑で面倒な手続きや事務作業は、負担が大きく問題〜

・申込、許可に時間がかかりすぎ。あまり時間がかかると、工務店が待てない
・専門の検査機関に出せ、構造と意匠で部門が別、そして又役所に戻し等、全く審査の体をなさない。一つの窓口で処理すべし
手続きが煩雑で事務的な手間がかかる。補助金は工事費のみの充填なので事務処理をする設計者にはメリットが無い

②コストが掛かりすぎ

〜ここまでやる必要があるかと思うことも、補助金が出るからと取り入れることが果たして正しいのか〜

・一棟ごとの家づくりには、補助金以上に費用がかかることも問題。中小工務店にメリットは無い
・がちがちに固めた家を断熱材でくるんだ仕様となっていることを最近知り、優良ではなくて有料となる家づくりとの思い

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