緑のカーテンは、直射日光を遮るだけでなく、葉からの蒸散作用によって温度を下げる働きもある。
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原発のいらない家づくり&暮らし方

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熱仕事は、電気以外にしてもらおう

提案 その1?調理は火で

「調理はやっぱり火で!」というのが、AA STUDIOの橋詰飛香さんからの提案です。

  • 思い切って家電を減らしてみました。炊飯器・電気オーブン・電気ポット、電子レンジ・・案外なくてもいい物ばかりでした。

鍋で焚くご飯は、意外と短時間で炊けておいしいものです。お湯も朝、ガスで沸かして保温性の高い魔法瓶にとっておけば一日中使えますし、薪ストーブにやかんを載せておくのも加湿も兼ねられて合理的です。電子レンジは便利な反面、電磁波の影響も心配。温めなおしは、蒸し器やホイルを敷いたフライパンで十分できます。

電気を調理に用いる電磁調理器は、ガスの消し忘れによる火事が怖いからということで普及していますが、老人世帯など、そのようなニーズが強くある人達だけのために、大事にとっておきましょう。

たまには直火料理も楽しみましょう。七輪でさんまを焼いたり、火鉢で油揚げを炙ったり。火を囲む楽しさもご馳走のうちです。

提案 その2?給湯に太陽熱を

宇野勇治さんからの提案です。

  • 家庭で必要とするあたたかさは、太陽熱利用で十分ではないでしょうか?

給湯に必要なのはたかだか40℃の温水。太陽熱で給湯の約半分は賄えるはず。残りを、ガス、薪・もみ殻ボイラーなどで。というのがその根拠です。じつは温暖地の家庭で消費するエネルギー総量の中でも、給湯は38%と、もっとも大きなシェアを占めているのだそうです。電気よりも、ガスのシェアが高い分野ですが、給湯を太陽熱利用の温水パネルで自給できれば、その分、原発を停めるために需要の増えた火力発電の原料となる石油や天然ガスを使わずに済みます。

昔は、田舎の家にはよく平板式の太陽温水器が載っていましたが、宇野さんのオススメは、夜間でも冷めにくく、構造がシンプルな真空管式のもの。効率もよく、200℃近い温水もつくれるものが、14万程度から購入できるそうです。

寺田鉄工所のソーラーシステムシリーズより「サナース」。真空二重ガラス管を用いた集熱器とタンクが一体式の温水器。タンクに直接ガラス管が差し込まれており、ガラス管内に直接水が流れ込む非常にシンプルな構造です。タンク容量155リットルの水平面設置型のものだと定価14万円弱と、とても安価です。

綾部工務店の綾部孝司さんは、次のような近況を書いてくれました。

  • 30年弱使ってきた薪給湯器の交換をする予定です。まだまだ後継のものが販売されている事にホッとしています。
薪給湯器に薪をくべる綾部さん。

工務店なだけに、燃す木はたくさんあり、給湯はそれでまかなっています。身近にあるものでできることがあれば、採用したいですね。

提案3?暖房はバイオマス燃料で

綾部さんは「日本は森林国なんだから、もっと薪ストーブが普及してよいのでは?」と提案しています。埼玉県ですが、お施主さんにも大分勧めているようです。

  • EUの森林国では、バイオマスエネルギーの割合がとても高く、地域暖房にも用いられているそうです。原発とも化石燃料とも無縁の暖房ですよね。
日本では、人口百万人あたりの年間の薪使用量は、わずかに0.9立米。年間800万トン発生するという林地残材のうち、8万トンしか使われていない。あとは、放置。

EUにおける再生エネルギーの中心を担うのは森林のバイオマス。2010年にスエーデンではバイオマスが石油を上る32%を占め、最大のエネルギー源となったそうです。それに次ぐのがフィンランドやオーストリア。いずれも共通してるのが、森林国であると言うことです。

森林国であることについては日本も一緒です。昔は薪や炭が燃料の主流でした。しかし、石炭や石油に取って代わられて、木を利用できることを忘れているだけなのです。

戦後、薪炭が石炭石油に取って替わられるようになり、バイオマス燃料としては使われなくなった。
  • 先日、西川材の飯能の山を見に行った際「切り捨て間伐」を目の当たりにしました。燃やせば使えるのに・・。周辺を見直すとエネルギーの無駄遣いが山ほどあるのかもしれません。
切り捨て間伐の現場 撮影:綾部孝司

「暖房は薪ストーブで」という意見はほかにも、多くのつくり手から出ていました。

  • 建築現場から出る廃材、植木屋さんの剪定ゴミ、雑木林の枯れ枝や整理した木など、工夫すれば薪供給の仕組みも作れるのでは?
  • 薪の調達が難しいところでは、ファンやペレット供給に少しばかり電気が必要ですが、木屑からつくったペレットを燃料にしたストーブも使いやすいですよ
  • 冬場は、薪ストーブを調理や温めなおし、お湯を沸かすことなどに使えば一石二鳥です。

しかし、一方では、こんな指摘も。

  • 原発事故の影響で岩手県、宮城県、福島県及び茨城県の一部の薪の灰において8000Bq/kgを超える高い放射能濃度が検出されてもいるそうです。

原発に頼らず薪ストーブにしたいのにできないとは、これもなんともやりきれない、原発事故の影響のひとつです。

その4?太陽熱利用での暖房も

これも宇野さんからで、「太陽熱暖房器こはるび」の紹介がありました。太陽から受ける熱をそのまま暖房に使うものです。1平方メートル程度のパネルユニットを室外にとりつけるだけで、晴れた日なら、8?10畳の部屋を十分暖房。工事費をいれても1台20万円以下、ファンにかかるコストは1日1円以下ということです。マンションにでも簡単に取り付けができるようです。

  • 断熱をした土壁の家であれば、しっかり蓄熱してくれるので、かなり有利になるのではないでしょうか? 曇りと雨の日だけ、バイオマスなり、化石燃料でなんとかすればよさそうです。

家電消費量シェアの1位は夏のエアコン
家のつくりようで最小限にできる

家電の中で、一番電力消費量のシェアが大きいのは、普及率9割ともいわれるエアコンです。一年のうちでエアコンをつけなければならないほど暑い時期は長くないとしても、その時期が全国的に集中するので、どうしても突出した「真夏のピーク」をつくってしまいます。

日本の家庭の電力消費の内訳(出典:資源エネルギー庁エネルギー白書2006 )

会社や商業施設など、家庭以外でのエアコンの消費量もかなりあり、家庭での節電だけでは対応しきれない部分もあるのですが、木の家ネットのつくり手たちが胸を張っていえるのは「エアコンなしで過ごせる家なら、つくれますよ」ということです。

そのポイントは「夏の暑い日射しをさえぎり」「熱をこもらせず」「空気を動かす」家のつくりようにあります。これは日本の家が、昔から得意とする分野です。

詳しくは「夏涼しく、冬暖かい木と土の家」に出ています!
  • 日射を遮る:深い庇や軒で
  • 風通し:外気と遮断してエアコンに依存するよりは、風が通る家を。足固め+地窓、高い位置の窓など、縦にも風が通るように
  • 屋根からの熱を防ぐ:熱を室内に取り込まない様に、十分な断熱をして、小屋裏空間をとる、通気層をもうけて棟換気などします。
  • 縁側:軒下の外空間。風が四方にとおりぬける涼しい場所。
  • 土壁や無垢材:湿度がたかくなると湿気を取り込むので、湿度の高い不快な夏でも、べたべたしない。冬には土が蓄熱性も発揮。
  • 断熱と夜間換気:昔の木の家は断熱材など入っていませんでしたが、冬の暖房効率を見据えれば、ある程度の断熱が必要となる地域もあります。その場合には、夏の夜間に家にこもった熱を逃がせるような高所排気窓や夜間換気口との組み合わせでの断熱を考えるとよいでしょう。
  • 建具類:夏の夜、風を通して戸締まりできる格子戸、ヨシ建具など。よしずも

木の家でエアコンなしで過ごすのは、エアコンがぎんぎんに効いている部屋ほど涼しくはないでしょう。きらくなたてものやの日高保さんは、内と外との関係に着目しながら、その違いについて実感を書いてくれました。

  • 確かに家の中は、エアコンのある家に比べれば暑いのですが、なしでも、何とか暮らせています。決して負け惜しみではなく、それだからこそ気持ちいいと思う時すらあります。日が暮れた時間、私の右手にある窓からそよそよと入ってくる風がとても気持ちいい!
  • エアコンがよく効いたコンビニなどに入った瞬間は「ああ天国(笑)」と感じるけれど、外に出ると、こんどは外が地獄のような場所に感じられる。エアコンがあることで建物の内と外が完全に遮断され、禁断の「快適」シェルタができる。しかもそれは屋外に熱風を放つことで成り立っています。シェルタ「内」のみの快適ばかり追いかければ、必ず「外」に、そしていずれは「内」にいる私たち自身の身体にもツケが回るのではないでしょうか。

木の家の特徴のひとつとして、内と外とを遮断しないということがあるのですね。内と外とは、敵同士ではなく、ゆるやかにつながり、補完しあうものなのです。

「エアコンなしでも何とか暮らせている」と日高さんが言う時、けっして「暑くない」のではないのです。「暑い、けれど、風が吹くと気持ちいい」というように、暑さを感じ、いい風を感じ、そこに涼を感じているのです。そうした感覚について、理解しやすい比較を、宇野さんが教えてくれました。

  • 暑い最中、一陣の風が吹くと、涼しくて気持ちいいなぁと思います。寒いところで、露天風呂に入ったり、薪ストーブにあたったりすると、あったかくてとろけそうになったりします。そんな気持ちよさが「積極的快適性(pleasantness)」。
  • 一方、快適だとか、不快だとか、特に意識はしないけれど、「暑さ寒さはどうですか?」と問われたときには、「快適ですよ」と答えるような、けして不快ではない、そんな快適感を「消極的快適性(comfort)」といいます。

木の家での暑さ、寒さの程度は「積極的快適性」ということになりますね。夏はある程度は、暑い。冬はある程度は、寒い。それを身体で受け止め、季節感として楽しむ暮らし。その「程度」があたりまえのこととして広がっていけば、原発を必要としない社会にも近づいていけるし、人間らしい生活だともいえるのではないでしょうか?

「涼しく過ごす」ことを
緑の力が助けてくれる

家のつくりようでエアコンいらずの夏を実現するということですが、家だけでなく、家をとりまく環境づくりも大事だと、樋口暮らし環境設計の樋口佳樹さんは指摘します。

  • 大事なのは「暑い空気を極力いれない」こと。どんなに風通しの良い家を設計しても、38℃の空気が入ってきたら、気流感はあっても熱風に近いものになってしまうでしょう。植物を上手に使って、家のすぐ外に涼しい微気候をつくる工夫が大事です。夏には陰をつくり、冬には葉を落とす落葉広葉樹がオススメです。

庭に樹木をすること。芝生をはったり、テラスにぶどう棚をつくったり、庭がないとしても、ゴーヤや朝顔で「緑のカーテン」をつくることもできます。コンクリートやアスファルトの上を通ってくるのとはまったく違う空気が家の中に風として入ってきます。

林美樹さんは吉祥寺に草屋根の家をつくりました。

  • 草屋根は、植物の蒸散作用があるので、金属や瓦の屋根ほど表面温度が高くなりません。また、水分を含んだ土は熱が伝わりにくく、断熱材のような役割をはたします。

家のつくりようだけでなく
その中での暮らしようの工夫も大事

暑い夏、寒い冬を、それなりの季節感として、大らかに許し、むしろ、その季節にしか味わえないことを楽しみながらしのぐ知恵がたくさんあります。

木の家でも「暑くてうだるようだ!」とか「今日は冷えこむな」という日もあります。家のつくりだけではしのぎがたい時でも、ちょっとした人間の知恵やはたらきで随分とやり過ごせることもあります。それは四季のある日本の生活文化であるともいえるでしょう。たくさんのつくり手のみなさんから、そうした楽しい知恵の提案をたくさん寄せてもらいました。

(1)「暑い夏に」篇


  • 締め付けない、綿や麻、動くたびに風が通る涼しい衣をまとうだけでも大分違います!

  • 夏は冷やす食べ物を! ナス、きゅうり、トマト。 そのほか、涼を楽しむ食文化があります。すいか、くず餅、そうめんなど、涼やかな時間を楽しみましょう
  • 昔ながらの涼しい小道具
    小さなそよ風を送る団扇や扇子、音から涼感を得る風鈴、窓をあけはなして風を通して寝られる蚊帳
  • ちょっとした知恵
    水は熱を奪いながら蒸発してくれます。庭に打ち水をする、濡れタオルでカラダを拭くなど、スーッと涼しくなる習慣です。
  • 早寝早起き
    涼しい明け方から起きていれば気持ちいいものです。その分、夜は早く寝ましょう。

(2)「寒い冬に」篇


  • 暖房をする以前に、着衣で調節しましょう。身体が冷え切る前にこまめに着こむのがコツです。重ね着、レッグウォーマー、毛布を腰に、首周りをスカーフで巻くだけでも暖かいものです。肩甲骨や尾?骨にカイロを貼るのもオススメ!

  • 大根、ごぼう、レンコンなどの根菜類、しょうがなど、身体を温ためる野菜をとりましょう。

  • 温かいお茶をつくっておいて、しょっちゅう飲む習慣をつけましょう。しょうが湯、葛湯などはあったまりますよ!
  • 足湯
    それでも冷えてしまった時は、足湯がオススメです。ひざ下をバケツに入れ、ちょっと熱いかなという湯をちょろちょろと掛け流していると、足元から血の巡りがよくなってきて、全身がポカポカしてきますよ。
  • 昔ながらのあったか小道具
    湯たんぽ、すきま風防ぎのまくらなど。気密性の高い家ではむずかしいですが、火鉢は、持ち運びのできるすぐれた局所暖房です。
  • ちょっとした知恵
    コマメに身体を動かしましょう!自転車通勤などもオススメ!
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林美樹さん設計の南葉山の家。建具の用いようで、内と外とが大胆につながる。