平日の昼間ながら、会場はほぼ満席となりました
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2/16 衆議院第二議員会館 調査報告会レポート

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このページでは、衆議院会館で発表した木の家ネットのメンバーの実例をご紹介しましょう。それぞれのつくり手が「気候風土に合った、低いエネルギーで気持ちよく暮らせる家」を実現している手法や、どのような家づくりが、省エネにつながると考えているかというひとりひとりの想いをお伝えできればと思います。

詳しい報告は次のページにゆずりますが、事例発表に先立って、JIAの伝統的工法のすまいRUによる調査報告の結果発表がありました。この調査は、それぞれの事例について (1)その家が外皮性能基準を満たしているか (2)外皮性能や設備を計算式に代入して得られる「設計一次エネルギー消費量(その家の使用エネルギー量の推定値)」が、基準を満たしているか(3)実際の生活実態調査から見た実際のエネルギー使用量を調べたものです。

(1)(2)では「失格」という結果が出ても、(3)の実際の生活実態調査をしてみると、低いエネルギー消費での暮らしを実現している例が多いことが分かっています。調査結果が分かっている事例については、写真にその結果を表示していますので、参考にしてみてください。

綾部工務店
綾部 孝司さん

構造をあらわしにした「真壁づくり」での
長寿命の家づくりが、何よりの省エネ

木組み土壁の家づくりをしていますが、柱や梁などの構造材をおもてにあらわす「真壁」を基本にしています。断熱材は、屋根裏に杉樹皮を利用したフォレストボードなどを入れることはありますが、壁には、普段入れていません。土壁だから「断熱材を入れられない」というのでなく、「入れない」選択をしています。

その理由は、長寿命の家を実現するには、点検や維持管理をしやすく作ることが大切だからです。構造材が断熱材で覆われてしまっていれば、内部で構造材が腐蝕、劣化していても、虫害にあっていても、気がつくことができません。これまで、リフォームなどで、そのような手遅れになってしまった例をたくさん見てきました。

しかし、構造材がおもてにあらわれている「真壁づくり」であれば、家を支える構造に不具合があればすぐに分かり、早いうちに直すことができます。あるいは、土壁を雨水の侵入から保護するために板張りすることがあっても、板を部分的にはがして中を直すのは容易です。

家をつくること自体に、大きなエネルギーがかかるのですから、長持ちさせることが、何よりもの省エネ 。そのために、メンテナンスのしやすい真壁づくりをお勧めします。長寿命の家で、低エネルギーで暮らせるような家づくりは、外皮性能を高くして冷暖房効率をあげること以上に、真の省エネにつながると、私は考えています。そこで、屋根や床に断熱材を入れても、壁には、あえて断熱材は施工していません。

断熱材が入っていなくても、気持ちよく暮らせるような設計施工上の工夫をいろいろとしています。軒を深くして陽射しをコントロールし、風が抜けるような間取りを計画します。庭が大きく取れない場合も、緑の上をわたる風を得られるような植栽をします。住んでいる実感を訊くと、夏はガラス戸や障子を開けはなって風を通して気持ちよく。冬は、昼間は深い軒から入る陽射しをとりこみ、夜は障子をしめた空間で暖房時でも15℃ぐらい、寒いと感じはじめるのは12℃を切るぐらいで暮らしているようです。エネルギー使用の実態としては、総務省での家計調査と比べると20%低く抑えられています。断熱材を入れなくても、このような暮らしが実現できていることをお伝えしたいのです。

ビオフォルム環境デザイン室
山田 貴宏さん

省エネを大きな文脈で考えれば、
達成する道筋はさまざま

土壁のよさはいろいろありますが、私は土壁の蓄熱性能を最大限に活かす造り方をしています。冬の陽射しのダイレクトゲインや、薪ストーブの輻射熱によるあたたかさを、夏の夜から明け方の涼しさをうまく土壁に蓄えて利用できれば、冷暖房にかけるエネルギーを最小限にできるからです。

土壁は断熱性が低いので、せっかく蓄えた熱を逃がすことがないよう、外皮性能をあげる工夫をしてます。具体的には、土壁の外側に空気層をとり、羊毛系断熱材を入れ、板張りに施工した大壁づくりを採用しています。私が住んでいる「里山長屋」の例では、今回の発表事例でめずらしく、省エネ基準の外皮性能を満たしています。

室温測定を続けていますが、冬の昼間は南面の大きなガラス窓からの陽射しのあたたかさだけで外気温10℃でも室温は21℃ぐらい。日がかげってから寝るまで薪ストーブを焚けば、蓄熱した土壁のおかげで明け方外気温がマイナス4℃でも室温は14℃に保たれています。夏は、昼間、障子をしめて日射を遮り、夜は網戸にして冷気を土壁に蓄えます。加えて、庭先の菜園や周辺に緑が多いことも、涼を生む微気候を作り出しています。

以上、私が実践した建物の温熱環境の造り方をご紹介しましたが、断熱材を入れる入れないをはじめ、省エネ性、環境性、快適性というゴールに至るためのアプローチはさまざまです。温熱環境だけにこだわらず、もっと広い文脈で「省エネ」をとらえることも大切です。一例をあげれば、里山長屋には「コモンハウス」という住人のための共有スペースを備えてます。一緒にご飯を食べたり、来客のある時に泊まってもらったり、ワークショップや会合を開いたり。コミュニティで「シェアする暮らし」も、省エネにつながっています。資源や職人技術における地産地消も、省エネにつながる要素といえるでしょう。

省エネのゴールは、環境への負荷を少なくしつつ、気持ちよく暮らすこと。そのためにできることがたくさんあります。外皮性能をアップすることもそのひとつですが、ほかにもある多様な軸が評価されていくようになることを願っています。

きらくなたてものや
日高 保さん

そこそこの暑さ・寒さが健康な身体をつくる。
現代版「結い」でコミュニティー力を高めることも、省エネに

湘南で木と土壁の家を作っています。断熱材は入れず、家の角や上方に空気が抜けるプランニング、「きらくな網戸」と呼んでいるスリット入りの建具、薪ストーブの活用、敷瓦への蓄熱など、設計上のさまざまな工夫で、夏は涼しく、冬はあたたかく暮らせるようにしています。

昼間の陽射しと夜焚く薪ストーブとで、冬の室温は昼間で18℃ぐらい。20℃を越えることもありませんが、夜でも13℃以下にもならず、我慢しなければならないほどの寒さにはなりません。夏は、陽射しをさえぎったり、夜でも風を通したりできる建具で調整をしながら、27℃〜30℃ぐらい。エアコンなしでも過ごせます。

省エネ基準では、冬の暖房時は20℃以上、夏の冷房時は27℃以下が前提になっているようですが、それってあたためすぎではないでしょうか?冷やしすぎではないでしょうか? 身体を「甘やかす」ような室温を保つことが本当に健康によいのか、疑問です。エアコンの普及率が9割以上、一家に3台があたりまえになり、かえって熱中症にかかる人が増えています。機械空調した変化の少ない「快適」な室内環境が、人の基礎代謝や免疫力を低下させている気がしてなりません。夏の暑さも冬の寒さも、自然にしのげる位の温度変化は受容しながら、身体調節機能や季節感を育むのがいいように思います。

もうひとつ、伝統的な木造住宅の造り方が省エネにつながる大きな要因が「身近な材料を使い、みんなで楽しく作れる」ことだと思っています。

土壁塗り、竹伐り、竹小舞編み、柿渋塗りなど、建て主さん家族にもできる作業がたくさんあります。一人ではできないことですから、友達や過去の建て主さんなどが集まり、おいしいご飯をいっしょに食べながら「現代版・結い(ゆい)」といった感じで、共同作業をします。子ども達もうろちょろしながら、参加します。自分が住む家に手をかける、みんなが手伝ってくれた、そういった体験は、家への愛着だけでなく、地域のコミュニティーづくにも自然とつながっていきます。

手を動かす。身体を動かす。楽しい。おいしい。そういった体験の中で「こうなっていったらいいな」という暮らしの哲学が共有されていく、そういった草の根での広がりが、省エネな世の中を作っていくのだと思っています。

シティ環境建築設計
高橋 昌巳さん

真壁づくりの風景を残したい。
温熱環境は設計力でカバーできる

日本の原風景として将来に残せるような、家を造りたい。そう願って、東京で、木組み土壁の家を、できる限り内外真壁で、造っています。内外真壁の白壁に柱や梁が直交する外観は、地域に「美しい景観」を形作ります。高い外皮性能は望めませんが、家は、温熱環境のためにだけ建てるわけではありません。町並みや風景をつくるのも、大事な要素のひとつです。

これまでに建ててきた家の室温のデータ測定を継続して行い、住まい手の生活実感をフィードバックし、外皮性能を高めること以外で温熱環境をよくするための工夫に活かしています。外皮性能で「0.87」をクリアしなくても、冬にも暖房ピーク時で20℃、無暖房時でも15℃の室温を保つことができていて、住む人もそれで十分と感じていることが分かっています。

心地よい温熱環境をつくるために、軒や庇の出し方、開口部の取り方、薪ストーブの採用、脱衣室のような居室でないところでの局所暖房などを工夫しています。たとえば、冬の陽射しのダイレクトゲインを、居室にもっとも効果的に取り込むためにはどうしたらいいか、軒の出し方、窓の大きさ、高さなど、かなり綿密に計算して設計します。住まい手の希望、気候条件や立地などに合わせて、その住まいに固有の必要十分な温熱環境をつくる。それこそが「設計力」ではないでしょうか。

景観と外皮性能向上との折り合いはどのあたりでつくのか、シミュレーションをしてみました。内外真壁(床、天井は断熱材あり)のままだと外皮性能が「2.26」である事例について、土壁の外側に断熱材を入れ、板張りにすることで、真壁率をおとしていく。その割合をどの程度にすれば「0.87」になるのでしょうか? やってみたところ、なんと、真壁率をゼロにしてみても「0.98」にしかなりませんでした。開口部の熱損失の方が大きいのですね。

「0.87」を守ろうとすれば、真壁づくりの風景は消えます。半分真壁で「1.38」。これくらいまではできるようであってほしい。東京にも江戸から400年続いた建築の歴史があります。それを途絶えさせたくないですね。

ストゥディオ・プラナ
林 美樹さん

さまざまな設計手法を組み合せて気持ちよく暮らす。
土に還る材料で作るのが省エネ

諏訪で古民家再生を手がけたのが、伝統的な木造との出会いでした。意匠はなるべくそのままに、冬の寒さを解決する設計上のさまざまな工夫をしたその再生事例で、土壁の気持ち良さを知りました。

私が設計する新築住宅の多くに土壁を採用しますが、土壁の外側に無理なく入るぐらいの厚みで、断熱材を入れます。柱は大体4寸角で、60ミリ厚の土壁を塗りますから、残る45ミリの隙間に自然系の断熱材を入れ、その外側に板を張ります。このような方法では「0.87」はなかなか達成できませんが、冬の無暖房時の室温が18.5℃より下がることはなく、年間のエネルギー使用量は基準値の半分以下で済んでいます。体感として、このくらいで十分なのではないかと思っています。

外皮性能を高めるほかにも、温熱環境を調整するためのさまざまな設計手法を用いています。草屋根、緑のカーテンなど、自然の緑の蒸散作用、気化熱などを活用して夏を涼しく過ごすのも有効です。冬あたたかく過ごすために、夏よりもひとまわりこじんまりと暮らせるように内側に建具をたててバッファゾーンをとったり、冬の昼間の低い陽射しを蓄熱する土間を造ったりしています。こうした手法を組み合わせて、総合的に気持ちよく暮らせる室内環境が得られればよいのです。

もっと大きな文脈で伝統木造が「省エネ」であると思うのは「土に還る素材で造る」という点です。民家を直した時にも「古い畳は、田んぼになげておけばいい」と地元の方に言われました。「土に還る素材で造る」ということは、処理に困る産廃ゴミを造らないということなのです。リサイクル技術の発展で、さまざまなものの再利用が可能になっているとはいえ、そもそも「再利用できる」「土に還る」素材で造れば、リサイクルするためのエネルギーすら使わないで済むのです。それも「省エネ」の大事な要素ではないでしょうか?

数多くの超高層ビルを設計してきた私の元上司が、リタイア後に終の住処として造ったのは、茅葺き屋根の家でした。その方の「21世紀の暮らしは、江戸に学ばないと」という言葉が印象的でした。「ゴミを出さない」ことが省エネ性能のひとつとして評価されてよいと思います。

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国会の会期中なので、会場には衆参の議員も訪れました。