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2/16 衆議院第二議員会館 調査報告会レポート

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衆議院会館での報告会では、つくり手による個別の事例報告に先立って、説得力のある分析の発表が二つありました。その内容を簡単にお伝えしましょう。

JIA 伝統的工法のすまいRU
篠 節子さん

伝統的木造住宅の家を
外皮性能ではかると、
どのくらいになるのか?

外皮性能は高くない伝統木造住宅でも
低エネルギーな暮らしが実現できている

各事例に入る前に、JIAの伝統的工法のすまいRU(リサーチ・ユニット)がさまざまな機関や団体の協力を得ながら行った、温暖地である5〜7地域で、伝統的木造住宅の要素(土壁、縁側、深い軒の出、障子など建具による調整など)を取り入れた新築住宅の調査についての報告がありました。

「建築物省エネ法」では、その建物が省エネかどうかを判定するにあたって、外皮性能重視の「寒冷地型 閉鎖型モデル」の基準を使うことになります。では、伝統的な木造住宅の要素を取り入れた「温暖地型 開放型モデル」の住まいは、この基準に、合格できるのでしょうか?

各事例について、調査したのは、次の項目です。

  1. その建物が外皮性能がどのくらいになるのか
  2. 省エネ基準で用いる計算プログラムによると、どのくらいのエネルギーを使う家と推定されるのか(=設計値)
  3. 実際の暮らしでは、どのくらい使っているのか(=光熱費のレシートから積算したエネルギー使用量の実態値)

その上で(1)〜(3)が「基準に合っているかどうか」判定をしてみました。基準に「適合」となる条件は、

  1. (1)5〜7地域では、Ua値=0.87以下(それを上回ると、断熱性能が悪いと見なされ、不合格)
  2. 設計値は、国が示す基準値を下回らなければなりません。

さて、どのような結果になったかというと・・

伝統木造住宅の外皮性能は
あまりよくありません

調査例のうち「外皮性能0.87」を満たしていたのは、わずか3例でした。調査事例は土壁塗りですので、壁の内部に断熱材を入れるスキマはありません。したがって、断熱材は入れないか、土壁の外側を板張りにする場合に、土壁との間に少し入れるか、ということになります。入れるとしても、自然系の断熱材を採用することが多いので、数値はなかなか稼げません。

また、どのような断熱材をどれくらい使用しているかという以前に、伝統木造住宅では、縁側のガラス戸や窓など、開口部を大きくとっていることが、外皮性能の数値を満たせないことに大きくつながっています。省エネ講習会のテキストで扱われている高気密高断熱住宅が10%ぐらいなのと比べると、開口率は15%。となれば、断熱材を施工できる総面積も当然、少なくなります。

また、外皮性能を元にプログラムではじきだされる「設計一次エネルギー消費量」は、「基準一次エネルギー消費量」を大きく上回り「不合格!」となる例がほとんどでした。エネルギーの使用シーン別でみていくと、暖房時に大きくエネルギーロスがあるために、そのような結果となります。

けれど、実際には
エネルギー使用量の低い暮らしができています

ところが、興味深いことに、実際の「使用一次エネルギー消費量」を見ると、これくらいのエネルギーは使っているだろうと計算プログラムで推定される「設計一次エネルギー消費量」を大きく下回り(差が大きいところでは4倍もの開きがありました)「基準一次エネルギー消費量」の範囲にはちゃんとおさまっている、つまり、低エネルギーでの生活をしている家庭が多いのです。

丁寧なヒアリングや生活記録調査から、伝統木造住宅を新築する住まい手には、環境問題や健康への意識が高く、そうした意識で自ら探した結果として、気候風土に合った伝統木造住宅を主体的に選択しているという傾向があることも分かりました。よって、省エネに対する意識も高く、自然で、エネルギーを多く使わない、多少の寒さや暑さも季節感として楽しむようなライフスタイルで、生活しています。

具体的には、夏は、エアコンにはあまり頼らず、大きな開口部や建具をうまく使いながら、風通しをよくして過ごす。冬は、昼間は低い陽射しをうまく採りいれ、寒くなる時間帯以降は障子などで囲ってあたたかくした部屋で暮らす。といった具合に暮らしています。

また、省エネ基準では「夏の冷房時に28度以下、冬の暖房時に20度以上」を目標値としていますが、「夏は30度くらいまで、冬は15度〜18度ぐらい」で、十分に気持ちよいと感じながら、ほどほどの暑さ寒さを季節感として楽しみながら暮らしていることも、温度の実測と住まい手の温熱感の調査から分かりました。冬の主暖房として、薪ストーブやペレットストーブといった輻射系暖房を採用しているところが多いため、室温はそんなに高くならなくてもあたたかいと感じているのも、その要因となっています。

低エネルギーでの暮らしの実現は、
住む人のライフスタイルと関わっている

「省エネ基準には適合しない、外皮性能の低い伝統木造の家で、実際には低いエネルギーで暮らせている事例がある」ということが、数値で示されたわけです。なお、留意しておきたいのは、それが「建物としての性能」単独ではなく、住む人の「ライフスタイル」と深く関わっているということです。調査事例の中で、実際のエネルギー使用量が基準を上回る例がまれにありましたが、そういった家庭では、家電の使用量が大きいのです。「エネルギーは、なるべく使わずに暮らそう」という意識でコマメに窓や建具を開け閉めしたり、意識的に冷暖房をつけ消ししたりすることが、家のつくりと相まって「低エネルギーでの暮らし」を実現するのです。

すまい塾古川設計室 (有)
古川 保さん

温暖地で外皮性能をアップすることが、
本当に省エネにつながるのでしょうか?

温暖地以南では、外皮性能アップによる
省エネ効果はそんな期待できない

外皮性能をアップしましょう、というのは、暖房費を節約するための、北方型の基準です。ところが、家庭におけるエネルギー使用量のうち、暖房の占める割合は、北海道や東北はともかく、温暖地では、実はそんなに大きくないんです。

その地域で暖房が必要となる期間中の平均外気温と暖房温度の差を積算して得られる数値を「暖房度日」と言いますが、奄美大島では500℃日、新潟2500℃日となります。随分と違いがありますが、そのどちらでも「0.87」という同じ外皮性能を要求されます。気候条件が大きく異なる土地で、本当に同じだけの外皮性能が必要なのでしょうか?

外皮性能は、窓面積が大きくなれば、さがります。暑い奄美の方が、窓を大きくとりたいのは当然ですよね? となると、新潟ではペアガラスでいいのに、奄美でトリプルガラスにしなければ、同じ外皮性能を確保できない!というおかしなことになります。

私の住んでいる九州では、暖房費に使うのは年間たかだか2万円台。そこで、基準で求められる断熱化にかかる建築コストは100万円。得られる効果に対して、負担すべき費用は膨大です。最近では「いや、健康のために必要なのだ」という論調も強いようですが、そこまで費用をかけて断熱化する必要がそもそもないように思います。

省エネの目的がエネルギーを減らすことであれば、使用量の大きい分野から手をつけるべきではないでしょうか? 家電や給湯を減らすことの方が先決ですし、効果があります。省エネを達成するのに、本当に必要なのは、何なのか。それぞれの地域に合った方法を探ってみる必要があるのではないでしょうか。

以上、事例報告や、生活実態調査、費用対効果のシミュレーションなど、さまざまな角度から「外皮性能を高めることだけが省エネではない」ということを、ご理解いただけたかと思います。「建築物省エネ法」が、日本の気候風土にあった方法で、低いエネルギーで暮らせる多様なやり方を認めるような、住まい手のみなさんが省エネを実現する方法を選べるような仕組みとなることを願っています。そして、今後も、住まい手のみなさんのライフスタイルや希望にお応えする家づくりを、木の家ネットの各地のメンバーは実践し続けていきます。

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