有限会社アマノのゲストハウス内部
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静岡会員物語

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静岡会員物語の2ページ目。ここでは大工北山の北山一幸さん、木ごころ工房の松村寛生さん、アトリエKAYA一級建築士事務所の山本康二朗さんのご紹介です。

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北山一幸さん
大工北山 (静岡県沼津市)

遅いスタートだったからこそ
一棟一棟を手刻みで丁寧に

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自分も大工ですが、家業で代々工務店としてやってきている中川さんとはタイプが違います。美術系の大学で彫刻を学び、大学院を出て、29になってから大工修業を始めたという遅いスタートの大工です。

自分が弟子に入った親方は、大学の先輩で、群馬の水上で大工をしていました。そこで折置組を中心とした伝統構法や、簡易的な製材などを学び、30代後半になってようやく一棟、自分で手がけることができるようになりました。

地元の沼津に戻ってからは、もう年なので、量を求めるのでなく、一棟一棟丁寧に手刻みでやっていこうと心を決めました。設計は自分でします。ほとんどが土壁で、骨組に金物は一切使いません。

「庶民のための家づくり」をしたい!

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原の住宅(左)と三島の住宅

名古屋の中村武司さんのところで仕事させてもらっている頃、愛・地球博での「サツキとメイの家」プロジェクトがあって参加することとなり、木の家ネットの三重のメンバーの池山君、高橋君、増田君と知り合い、輪が広がりました。

そのような輪の中で考えたのが「誰のために家づくりをしたいのか」ということ。自分の人生の中で手がけられる物件がそう多くないことを考えたら、金持ちのための家でなく、自分と同じような、庶民の家づくりをしたいと強く思うようになりました。そこで三重の仲間達と取り組んだのが「施主さんと一緒にする家づくり」ということです。

施主が参加する余地がある
土壁の家づくり

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土壁の家づくりには、施主に参加してもらえるパートがたくさんあります。土壁の土づくりに始まり、小舞に使う竹伐り、荒壁つけなど、多くの作業に施主さんや家族、友達などに参加してもらって、楽しくやっています。

コストとしては、土壁は高いと思われていますが、土を現地調達すれば、それほどはかかりません。高いのはむしろ、土を遠くから持って来る運賃だったりするんです。竹だって、竹伐りをして調達する分にはタダ同然です。左官屋さんはもちろん入ってもらいますが、荒壁つけを施主や仲間達で一気にやることで、多少人件費も浮きます。

施主OBで「北山施主の会」というのを作ってくれていて、そういった作業の時に、OB達が手伝ってくれたりするのもありがたいです。案外、自分の家づくりの時にはいっぱいいっぱいで作業を楽しむ余裕がなかったりするのが、OBだと楽しめるみたいです。

「時間がかかること」を
納得してさえもらえれば、うまくいく

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熱海の住宅

施主を巻込まない家づくりの方が、時間的なことを考えると、うんと手早く済むのですが、時間がかかることさえ了解してもらえていれば、一緒にする家づくりの方が、クレームも出ないし、営業的にもお施主さんが次のお客さんを連れてきてくれるようなケースが多くなって、助かっています。

かかる時間ですか? 土壁の場合は、工事に一年はみてください、と言っています。荒壁をつけてから上塗りをするのに2ヶ月は現場が止まるので、その間に、別のかけもちの仕事を進める感じでやっています。

とにかく、時間をみること。話が決まったら、やっている現場の「一緒に施工」の場面に連れていってしまいます。そこで「やりましょう!」となったら、プランやなんかが決まる前に、現場に土手をつくって、土を入れる、というような流れで、もっとも時間がかかる土を合わせて寝かせておく工程が後手後手にならないようにしています。

隠し事なし、納得してもらいながら
進めていく

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施主さんには「隠し事なし」でのやりとりをしています。「ここに虫食いがあるけれど、大丈夫」「ここに割れがあるけれど、致命傷にはなりませんよ」などと、リスクとなりそうな要因について、丁寧に説明をして、納得してもらいながら進めています。

今までのところ、このように進めて来てクレームなどの問題は起きていません。家を建てたい、と言って来てくれる人に、これまで施工した家を見てもらうと、大概「こんな感じでお願いします」と言ってもらえています。

山口そういう風にしっかり説明してくれているのはありがたい!一番困るのは、施主さんにどこまで説明してくれているのか、分からないというケース。「材木のことは材木屋に訊くと分かるよ」と、連れてきてもらえると、天然乾燥材のよいところもリスクも話せるんだけど。

松村北さんの「施主さんといっしょに家づくり」方式で、土壁とかやってみたい!いずれ、やります!

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松村 寛さん
木ごころ工房(静岡県周智郡森町)

ログハウスから民家へ

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独立後、最初に手掛けた「野草こども診療所」。1階がクリニックで2階が住居。建物中央の吹き抜けがポイントになっている。

若い頃は何をしようか迷っていて、したいことが見つからなくて、とにかく自分で住む家を自分で作れるようにはなっておこうと思って、ログハウスを作る大工の道に入りました。

ログハウスを一通り覚えると、やはり日本人の地が騒ぐというのか、同じ木を使って家をつくるのでも、日本の民家に惹かれるようになり、福島の会津で古民家再生をする阿部工務店に弟子入りしました。

茅葺き屋根の民家が並び、国指定の重要伝統的建造物群にも選定されている大内宿のそばにある工務店で、茅葺き民家の解体、修理工事をさかんに行っているところだったので、そこで修業したことで、先人たちがどのようにして家を作って来たかが、身体に入ってくるように、よく分かりました。

いよいよ独立することとなり、日本で生まれたからには、日本の風土にあった日本の自然から生まれ、自然に還っていくような素材での家づくりをしていこうと決意しました。

アマノの一角の作業場で
大工仲間たちとシェアしています

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アマノの貸し作業場

独立して最初に任されたのがこの静岡の地での家づくりだったので、こちらに来て、アマノとも縁ができました。

アマノの一角に、大工たちが使える作業場があり、アマノの材を使うということだけで無償で使わせてもらっていて、助かってます。何組かの大工たちで共同で使っていて、大工長屋状態になっています。基本的な道具類は自分たちもちですが、ホゾ取り、プレーナーなど、大型の機械は備え付けられています。

作業場がないという悩みが解消するだけでなく、そこに集まる大工たちの間で情報交換したり、士気を高め合ったりできるのも、とってもありがたいです。「木遊会」という大工仲間の会を作って、仕事以外でも交流を深めています。

今の日本で、伝統的な家づくりを
どう実現していくのか?

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木組みの構造がそのまま室内やベランダのデザインになっている家。リビングには木登りできる、枝付きの木も

木・土・紙など、自然から生まれやがて自然に還る素材での家づくりをしたいと思い、伝統的な家づくりに惹かれるのですが、どうすれば、今の日本でそれを実践していけるのか日々悩みながら仕事をしています。そうした家づくりを実践されている人達と学び、行動していきたいと思って木の家ネットに入りました。

今は、アマノの材で作る家を設計する設計士さんの施工をすることが多いですけれど、近いうちに自宅を石場建て&土壁でつくりたいと思っています。木の家ネットを通じて参加した熊本での家戻しで得たことも大きかったし、北山さんの言うような身近な材料を使って作るという考え方も取り入れていきたいなと思います。総会でまたいろいろな話ができたら嬉しいです。

北山アマノの作業場は自分も使わせてもらってます。ほんとにありがたいよね。

山口昔の材木屋は、大工に刻み場を提供するのはあたりまえのことだったんですよね。刻み場がないがために、プレカットに流れざるを得ない、という状況を、材木屋としてもなんとかしたいという思いもあります。

北山自分の代から始めるとなると、加工する場所を自前で持たなきゃならなくて、それは結構、大変なことなんだよね。

山口材木屋が材料だけでなく、材料を加工する場所も提供することで、木のよさを活かした家づくりが広まっていけば、万々歳です。

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山本康二朗さん
アトリエKAYA(静岡県静岡市)

周囲環境まで含めた家づくりを
無垢材・自然素材で

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石場建ての家

設計をしていますが「家一軒」を建てるだけでなく、庭の畑や、地域とどうつながるかなど、まわりの環境まで含めて考えた設計を、いつもしています。

そういう主旨に賛同して頼んでくれる人と一緒に、どんな家にしようかと考えていくと、おのずと無垢材、自然素材になっていくんですよね。家だけでなく店舗を頼まれることも多いのですが、デパートの食品売り場でも無垢材を使ったりしています。

石場建ての家の設計を通して知った
伝統構法の粘り強さ

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石場建ての家 中通路

2階建ての石場建ての家を頼まれることがあって、はじめて本格的な伝統構法に取り組みました。ほぞの組み方とか大工さんに教えてもらいながら、構造設計者にも入ってもらい、貫と土壁の試験体を作って破壊試験をして強度を確かめたりしながら、3年かけて、金物を一切使わない伝統構法の家が、ようやく建ちました。

設計段階で実施した破壊試験を通して、貫と土壁の柔軟性をつくづく実感しましたね。変形しても粘って、倒れない。込み栓が飛んだりしても、柱も梁も壊れない。土壁が冬寒くないというのも分かり、温熱環境としても結構いけると思いましたね。

「こうだったらいいなあ」という町づくりを
エコビレッジで計画中

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愛鷹ファームビレッジ プラン(部分)

今、沼津市で愛鷹(あしたか)ファームビレッジというエコビレッジを計画していて、マスタープランを作っています。

住むのは151世帯。集会場を中心にして12のブロックが並び、それらをコミュニティー道路が結んでいます。この道路はあえてまっすぐにしない、車道に樹木を植えるなどして「車にとって通りにくい」ように、そして歩行者にとって歩きやすいようにしました。

家を建てる用地およそ60〜70坪の一区画あたりに、30〜100坪の緑地をつけます。緑地は、畑だったり、コミュニティー道路だったりします。畑で作る野菜は、家で食べるほか、ファーマーズマーケットに出したり、ビレッジ内のレストランや居酒屋で使ってもらう事も出来ます。

排水は集中浄化槽で生物浄化により 5ppm以下にまできれいにして、ホタルが棲めるような池に流す、電柱もすべて地下埋設に、などなど、こうだったらいいなあ、という町づくりをいろいろと考えています。

そこに建つ家も、無垢材、自然素材になっていくといいなあ、と思いますが、どんな人が区画を買うのか、どこが建てるのかによって、どうなっていくかは分かりません。

それぞれのブロックに、プロトタイプとなるような家を建て、厳しいルールで縛ることなく「あんな家がいいなあ」と思ってもらえる、ゆるいお手本にしてもらえたら、と考えています。

大工が手刻みする家のよさを
施主に根拠をもって説明できるように

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石場建ての家 リビングから中通路を望む

木の家ネットに入ってまだ日が浅いのですが、「職人がつくる木の家」づくりをしているみなさんに、どうしてプレカットではなく大工が手刻みするのがいいのか、天然乾燥材のよさなどについて、教えてほしいです。住まい手の人に納得してもらえるよう、根拠をもって説明できるようになりたいです。

中川町ごと作るっていうのは、面白いですね。新しい町にどんな家が建つのか、楽しみです。

山本みなさんにも一区画買い上げてもらえるといいんだけど。ぜひそこで、思うような家を建ててくださいな!

お昼から夕飯時まで、話はなかなか尽きませんでしたが、続きはまた全国のメンバーが集う総会で!ということで、お開きとなりました。大工が3人居ましたが、同じ木の家づくりをしていてもその業態はさまざまで、おもしろかったです。

今回感じたのは、材木屋さんが本来「材を作る」というだけでなく「場を作る」役割も果たしていたのだな、ということです。そういう材木屋さんが少なくなってきた中、アマノが大工への刻み場の提供、天然乾燥材の魅力を施主に体感してもらえる場の提供などをしているのは、素晴らしいことだと思いました。ショールームを取材の場として使わせていただいたことについて、天野社長、山口さんにあらためて御礼申し上げます。

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アマノの作業場で、模型を囲んで話は尽きない