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家のお風呂 こうやって作る、こうやって保つ

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お風呂の水がかりリスクに悩むのは、大工だけではありません。主婦にとっても、大いなる悩みの種ですね。浴槽には湯垢がたまり、タイルの目地にはカビがはえ、木の壁であれば、長い年月のうちに黒ずんでくるし・・・ドラッグストアに行けば、風呂掃除に特化した洗剤の種類のあまりの多さに、風呂場をキレイに保つことのむずかしさを思い知らされます。

例の大工さんたちが、またまた休憩時間に、こんどはお風呂のお掃除談義をはじめましたよ!

木のお風呂は施主を選ぶ?!

大工1 今回のお施主さんは、木の浴槽、壁も木がいい、っていうんだよね。「いいですね」って同調する前に「かびますよ」とか「風呂桶は20年ぐらいまでしかもたないかもしれませんよ」とか、リスクを語るようにしてるよ。

大工2 施主に覚悟か、鷹揚さが要るよな。木の風呂を採用するにはね。

大工1 なんだよ・・それって、なんか真逆じゃない!?

大工2 覚悟。これは、メンテナンスフリーじゃないからね、掃除はちゃんとしてね、っていうこと。鷹揚さっていうのは、どんなに掃除したって、どっかしらカビたりもするよ、多少黒ずんだりしてきても、ゆるしてやってね、っていうこと。

大工1 なるほどね、そう言われてみりゃ、どっちも正解かもな。

大工2 ズボラすぎてなーんにもしたくない!っていう人にも、神経質すぎて、ちょっとの汚れも気になるっていう人にも木のお風呂は向かないと思うよ。

お手入れはしてね! けど、
気にしすぎないでね!!

大工1 逆をいえば、手入れにはある程度気をつかってね!けど、ちょっとぐらいの変化はまあ、大目に見てね!っていうぐらいの人がいいってことだよね。

大工2 そうそう。そんな感じ!

大工1 知り合いの施主で、木の浴槽、木の壁のお風呂をこよなくアイシテル、っていうタイプの人がいるんだ。最初は毎日ちゃんと掃除してたらしいんだけど、子どもができて、前ほどきっちりでなくはなったけど、それでもまわってるって言ってたな〜

大工2 いい加減になったっていうより、ちょうどいいほどほどの「良い加減」が身についてきたってところなんだろうな。

大工1 だね。二人目の子育てと似てない?

大工2 なんだよそれ!

大工1 第一子の時は神経質にこだわり過ぎて、くたびれたりキレたりしてたお母ちゃんが、第二子になると、手抜くところはいい具合に抜いたりしたりするじゃん!

大工2 なるほどね。じゃあ、その施主さんは、子どもが生まれて、風呂が第一子じゃなくて第二子になったってことか!

大工1 ん??? よく分かんないたとえだけど、ま、いいや。ちょっと、その若いお母ちゃんの話、聞いてみようよ!

毎日のお風呂のお手入れ、
重宝しているのは、車用のアレ

きらくなたてものや日高さんの設計で、鎌倉に家を新築した山根弓子さんにお話をうかがいました。まだ小さい息子さんと旦那さんと、木の家で3人暮らしです。お風呂のタイルは、前ページでご紹介した小澤さんが張りました。

山根 (山根弓子さん)うちのお風呂は浴槽が木、洗い場はタイル張りで、上の方は板張り。木の香りがして、肌あたりがやわらかくて・・お風呂に入ると、一日の疲れがほどけていくようで、大好きです。

ヨハナ 木のお風呂はメンテナンスが大変って聞きますが、普段、どのようにお手入れしているのですか?

山根 必ずしているのは、最後に入った人がお湯を抜いて、お風呂場の窓を開けて換気すること。お湯は抜いても底に薄く残るので、ゴムの水切りがついてる、車用の窓拭き道具で水を切り、そのあと、乾いたぞうきんで水気を拭き取ります。

山根弓子さんとお子さん、それに愛用の窓拭き。

ヨハナ 子どもさんが生まれて、掃除法が変わったりしました?

山根 もともとがシンプルな掃除法なので、特に変わったこともないけれど、お湯を抜いたあと、拭くのが翌朝になったりすることが増えたかな。浴槽とタイル張りとが下の方で合わさるあたりや、浴槽の底板とか、少〜し黒ずんできます。これも自然な変化のうち!と思えています。

木の風呂掃除のポイントは、
乾いた状態を保つこと

大工1 風呂掃除って、一回一回やっていることみれば、むずかしいことじゃないんだけど、継続するのはなかな大変、ということなんだろうね。

大工2 そこは家族のライフスタイルとも関わってくるよね。家族が続けて入れる家ならいいけれど、誰かが遅く帰って来て、その人が掃除をしない人だったりすると、なかなかね〜

大工1 風呂の水をしっかり抜いた上で、乾燥したぞうきんで拭く。そこのダメ押しが秘訣なんだろうな。あとは、窓をあけたり換気扇をまわしたりして、湯気が滞留しないようにする!

大工2 なにしろ、あったかい水分を残さない。これに尽きるね!

材料のいいところも
悪いところも知った上で選ぶ

大工1 それでも、掃除してたって、いつまでも白木のままではいられなくて、年々、青黒いような点々や線は入ってくるよね。

大工2 それを良くないもの、キタないものとして見るか見ないか。そこにかかってくると思うよ。水回りに木を使うからには、ある程度は「木の性質」として受け容れてもらえないとね。

大工1 そこを俺らつくり手が、木の性質をどこまで説明できるかだよね。水がかかるとどうなる、乾くとどうなる。年月が経つとどうなる、ってね。

大工2 いろんな材料のことを知っている、その俺らの引き出しを、施主には見てもらう。たくさんある中からどれを選ぶかは、あくまでも施主なんだよな。納得できていないと、木の本来の性質から当然起きるようなことでも、クレームになっちゃう。

大工1 そこだよね。クレームっていうのは、買い物をした人がその商品が「こうであるはずなのに、そうじゃない」って文句をつけることだろ?けど、家づくりっていうのは、できあがったものを買うんじゃなくて、どんな材料をどう使うか、施主とつくり手が話し合って、内容的にも予算的にも折り合ったところで作っていくものなんだよね。 その材料のいいところも悪い所も、どっちも納得して使って、あとから起きること、たとえば木の風呂の例だと、掃除する事も、あとから少し黒くなってくることも引き受ける。そういう、施主の主体的な意識が、なにより大切だと思うな。

次に、今回の聞き役、木の家ネット事務局のヨハナから打ち明け話をお届けします。

どうする?! 木の浴槽が
グズグスになっちゃったら??

わが家は、築70数年の古民家。16年前に移住してた当時は、土間の一部があとから作った風呂場で、FRPの浴槽が置いてありました。その風呂場を撤去して、圧着式のタイル貼り、風呂場の腰から上はヒバの板張りという風呂場を、地元のタイル屋兼左官屋さんに施工してもらいました。

風呂桶は、天竜の製作所から直送してもらいました。サワラで出来た結構深い浴槽で、トラックで届いた時には近所の子らで中に入って「おでん、おでん〜」と遊んでました。

16年使い続けてきて、水を張るラインより上にあたる浴槽の壁部分がブヨブヨしてきたり、ひどいところはコンビーフのように剥がれるようになりました。購入時に「木の風呂桶は、もって15年」と言われていたので、替えるしかないのは分かっていたのですが、我が家は長男の大学受験目前というキビシイ財政状況のまっただ中。「一体どうしたら・・」と途方に暮れてしまいました。

腐朽して傷んだ木の風呂桶。

ありものの風呂の内側に
桧の板を内張りに!

そんな時に思いついたのが「内張り」という奇策。信頼できる大工さんと相談の上でまとまった計画は
(1)水際の上になっていた部分は切断して撤去。幸い、深めの風呂だったのでそれだけ切っても入浴時の深さは十分に確保できる。
(2)浴槽の残り部分に桧の板を内張り。底にぴっちりと敷き詰め、内壁にも縦張り。上端には、肩から腕を預けて休めるアームレストも兼ねて笠木をつける。
(3)浴槽の基部とタイル床との隙間がせますぎて掃除しにくかったので、パッキンをかませて浴槽を少し持ち上げる。
というものでした。

いよいよ学校の冬休みに決行。冬場は毎日風呂に入れなくてもなんとかなるし、休み中は近くの温泉に行く時間のゆとりもある。お正月の帰省期間で実家で入ればいい。ということで、年末の餅つき後、浴槽は大工さんの作業場に引き取られていきました。正月を乾燥期間に充て、乾燥具合を見ながら内張り加工に取りかかったのは、浴槽が家を出て半月ほど経った頃でした。

帰って来たお風呂は、桧風呂のいい香り!表面もすべすべ!気持ちよく風呂に入れる状態が戻ってきて、嬉しかったです。本来は交換すべきところの「なんちゃって」な延命措置ではありますが、木の浴槽を取り替えるとなれば20〜30万は覚悟しなくてはならず、その出費を何年か先延ばしできたことで、大学受験で地元を離れる子のためのお金に手をつけずに済みました。

そしてその仕上りは、予想以上。風呂に入った時の香り、肌あたりは、格別です。そして、それ以上家族の「風呂を大事にする気持ち」が変わりました。山根さんのいう「水を切る」掃除をし、窓を開け放ってもやもやした空気を逃がし、小澤さんの姿を思い浮かべては、風呂に入りながらも気になるところをキュキュっとブラシでこすってみたり・・それが一番の成果かな!

修繕が終わった風呂桶。桧の板を貼ったのは内側と天面だけで、外側は以前のまま。

直せるって
素晴らしいこと!

大工1 いやあ、苦肉の策だったね。

大工2 接着剤で貼ったわけだし、そう長持ちするとは思えないけどな。でも、まあ、大学でお金がいちばんかかる時期を当面しのぐことはできた、ということか!

大工1 だよね。木の家づくりって、おもしろいよね。

大工2 なんだよ。どんな風呂敷広げようっての?!

大工1 今回のは「なんちゃって」修繕だけどさ、それでも、家を大工の手でなんとか救える、再生できる手だてがある、っていうのはいいもんだな、と思うんだよ。

大工2 言われてみればそうだよな。あそこんち、庭に建てた土壁の仕事部屋の土壁をやり直したらしいじゃない?

大工1 土壁が落ちたら塗り直す。そういうのも、修繕できる余地っていうことだよな。新建材の壁やなんかで状態が悪くなってきたら「取り替える以外ない」っていうことになるけど、そうでなく木や土で部分的に直せる、というのは、優しいことだよね。

日々のメンテナンスと
時々修繕とで、長く住み続ける

大工2 メンテナンスフリーなんてあり得ない。家を建てたその時から劣化が始まると言ってもいいくらいで、それに対して日頃、どんな手入れをしていくのか、何年後にどんな修繕的な工事をするかということを見通せないとね。

大工1 といって、ほとんどの人が家をつくるのは初めて!という中で、なかなか見通せないよね、そこまでは。事務局んちだって「15年はもたない」って言われていながら、金の工面はしてなかったんだろ?

大工2 だからこそ、俺らが、そういったことを伝えてかないと、ってことさ。まあ、暮らし始めちゃうと日々のゴタゴタにそんなことも忘れちまうから、時々様子うかがいに行って、家の状態を見てやったりすることも、俺らの大事な仕事だよ。

大工1 そう。それ、それ!施主さんち巡りが、結果的に営業になったりもするよな。

顔の見える関係で、
家を維持していく

大工1 考えてみると、地域の大工の仕事の半分は、やってきた家の改修とか修繕だよな。俺なんて新築は半分以下さ。

大工2 家を建てる分だけ、俺らが気にして目をかける家族が増えるっていうようなもんだよ。家を建てさせてもらった家族は、親戚の数よりずっと多いよね。

大工1 そうやって地域の建築の維持管理をする意識で仕事していれば、俺らもそこで支えられる、ってこと。人間、信頼第一!顔の見える関係では特にね!!

大工2 おっと〜 今回も大風呂敷広げたね!休憩、終わり。戻るぞ〜!

顔の見える職人が作る姿を見ること。つくり手と施主と相談したり提案したりというやりとりのある豊かなコミュニケーション。それが家への愛着を生み、竣工後も家を大切にする気持ちを持続することにつながる。今回の風呂特集「こうやって作る、こうやって保つ」で伝えたかったのは、ハードとしての家だけでない、職人に守られているという安心感のある家っていいよね!ということ。お風呂の話を通じて、その一端を感じていただけましたら、幸いです。

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