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倉敷総会レポート

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2017年10月21日。朝からすでにポツポツしはじめていた雨は、台風の接近とともに、総会の集合時間のお昼過ぎには、ざーざー降りになっていました。全国から続々と、岡山県倉敷市美観地区の大原美術館の中にある「」にメンバーが集合しました。

「新渓園」の玄関を入ってすぐの大広間。その間口いっぱいに長机を四列並べ、ようやく参加者が座りきることのできる形となりました。「」での総会皮切りのプログラムは、会員有志による改修事例の発表と、土佐派の曳き家の岡本○○さんの講演会です。広間の向こうの広縁の外には、ガラス戸ごしに庭園を望めます。紅葉しはじめている木もちらほら。勉強会に参加しながら、雨に濡れた緑の美しい庭をも愛でることができるという、なんとも豪華な空間でした。

改修事例の発表

木の家ネットのつくり手が手がけるのは、新築ばかりではありません。木の仕事をしているため、古い木の家の改築や増築についての相談を受ける機会も、結構、多いものです。昔の木の仕事が分からない工務店や住宅メーカーだと、軸組はしっかりしていても、見た目や表面がボロボロだと「残すより新築した方が」と、解体を奨めてしまう場面が少なくありません。特に、震災後の簡易耐震診断で「赤紙」を貼られ、解体費用が行政から出ることになったりすると「解体しかない」と思ってしまうケースも多くあります。

しかし、その家がもつか、そして、どうすればこの先も構造的にもたせることができるかを見極めることができれば、その家族が住み続けていけるような価値を加えて、新しくよみがえらせることができます。一方で、古い建物の道理に合わない改修をしてしまえば、建物の寿命をかえって短くすることにもなりかねません。良い改修をするには、適切な判断と、丁寧な仕事が必要ですが!

改修にどれだけのお金や工期がかかるのかを着工前に適切に見積もるのは、なかなか難しいことで、時に新築以上にリスキーな仕事となってしまうこともあります。それも、つくり手にとっては、過去にその建物を造った大工がどのような考えで造っていたかを読み取り、学ぶことにもつながりますし、見違えるように住みやすく再生できて、家族に喜んでもらえた時の喜びはひとしおで、やりがいのある仕事でもあります。

改修にあたり、どのように判断し、どう手がけたのか。何をそこから学んだのか。会員同士が、お互いの仕事の実践から学んだ経験を共有することで、今後の仕事の手がかりにしていけるのでは!ということで、今回は、木の家づくりの「応用問題」である「改修仕事の事例発表」が、総会での勉強会のメインプログラムとなりました。

今年のテーマは
ずばり「再生・修復」

木の家ネットのつくり手が手がけるのは、新築ばかりではなく、古い木の家の改築や増築の相談を受ける機会も、結構、多いものです。軸組はしっかりしていても、見た目や表面がボロボロだと「残すより新築した方が」と解体を奨める業者も少なくありません。特に、震災後の簡易耐震診断で「赤紙」を貼られ、解体費用が行政から出ることになったりすると「解体しかない」と思ってしまうケースも多くあります。

しかし、その家がもつか、そして、どうすればこの先も構造的にもたせることができるかを見極めることができれば、その家族が住み続けていけるような価値を加えて、新しくよみがえらせることができます。一方、古い建物の道理に合わない改修をしてしまえば、建物の寿命をかえって短くすることにもなりかねません。良い改修をするには、適切な判断と、丁寧な仕事が必要です。

改修にどれだけのお金や工期がかかるのかを着工前に適切に見積もるのは、なかなか難しいことで、時に新築以上にリスキーな仕事となってしまうこともあります。それでも、つくり手にとって改修は、過去にその建物を造った大工の考えを読み取り、学ぶことにもつながりますし、見違えるように住みやすく再生できて、家族に喜んでもらえた時の喜びはひとしおで、やりがいのある仕事でもあります。

改修にあたり、どのように判断し、どう手がけたのか。何をそこから学んだのか。会員同士が、お互いの仕事の実践から学んだ経験を共有することで、今後の仕事の手がかりにしていけるのでは!ということで、今回は、木の家づくりの「応用問題」である「改修仕事の事例発表」が、総会での勉強会のメインプログラムとなりました。

横山 潤一さん
潤建築山梨

改修後

改修前

山梨県の山間部での古民家改修事例です。施主は東京の設計者で、週末や休みの時に家族や仲間で集まる別荘的な使い方をするのに、この古民家を購入。当初は本人がセルフビルドの延長で直すつもりでいて、施工を手伝ってほしいという依頼だったのですが、現地調査をしてみて、やはり地盤の悪さによる建物のよろびや耐震補強が必要だという結論に至りました。曳家が入り、揚げ家をし、腐った柱は切って根継ぎをし、敷地ごと隣地に落ちていきそうだった地面には、石場建ての石を囲うようにして鉄筋を配筋した上で土間コンクリートを打ちました。実行予算は、セルフビルドで考えていた時の3倍近くとなりましたが、安心して使えるようになりました。

鈴木 直彦さん
鈴木工務店山梨

「継ぐ家」と名付けられた、甲府盆地でのリノベーション事例です。古民家に住みたいという若い家族が、この築130年の古民家を購入するところからアドバイスしながら、今の生活に合うように改修しました。古い建具をうまく使いながら、現代的なセンスが光る、おしゃれで魅力的な室内空間になっています。暖房は薪ストーブです。解体後にシロアリ被害が発覚したことによって、数十万単位で発生した追加費用を「開けてびっくり」費用と命名。解体工事、構造改修工事、リノベーション工事をそれぞれ別契約としてそれぞれの工期と予算を配分することの必要性を感じたとのこと。鈴木親方の息子のお嫁さんである鈴木百江さんが主宰する「日々と建築」の設計なのですが、当日、百江さんが来られなかったので、写真や図面をめくりながら解説をしていく「紙芝居型動画」での発表だったのも、おもしろかったです。

日高 保さん
きらくなたてものや神奈川

改修後

改修前

構造材に東京大空襲の時の延焼の焼けこげが残っている!という、東京神田の古い「看板建築」の商店の改修事例です。元は一階が店舗で二階が住居でしたが、若い家族が住むために改修をしました。二階の上には、洗濯物を干すための塔屋があったり、隣家との境壁が、おそらくそれぞれがさまざまな時代に張られたカラフルなトタンだったり、昭和以前の香りがたっぷりの建物でした。主要構造物にまで解体し、竹小舞から編み直して土壁を塗りました。小舞編み途中は、隣のビルの壁に竹小舞の影が映っていてとても美しく、道行く人が足を止めて見て行ったそうです。耐震性能不足は、無垢の角材ではしご状の部材をつくって入れることで解決。補強部材があらわしで見えていても違和感がありません。飴色になった梁や天井板を活かすために碍子配線に裸電球の照明にするなど、元の建物の美しさがさらに際立つリノベーションとなりました。

池山 琢馬さん
ひとみね建築三重

池山さんが語ってくれたのは、百年以上の時を遍歴してきた木の物語です。その話は、兵庫の山間部で保健センターとして使われていた昭和期の建物を改修したいという相談を、池山さんが友人から受けたところから始まります。その際、池山さんはそこの地元の人から、建物のすぐそばにある神社には「本来は伊勢神宮で使われるはずだった、神宮備林産の木材が使われている」という話を、聞きます。まさにその木の切り株を、2年前の岐阜の総会で訪れた神宮備林で見ていた池山さんは「あの木がここで生きてるんや!」と、感動。その隣の建物を改修する日を心待ちにしていたのです。

ところが、その建物は、残念ながら解体を余儀なくされることとなります。屋根を支える構造材には、明治時代の小学校のトラス材が転用されていたのですが、解体されれば廃棄の運命。そこで池山さんの心に「伊勢に行くはずだった神宮備林の材がここで活用された」という話が浮かんでしまいます。そして「せめてこの明治のトラス材は、どこかで生かしたい!」と思った池山さんは・・使うあても保管する場所もないままに、引き取ってしまうのです。あれこれ考えるうちに「ああ、山梨の横山さんが作業場を建てるって言うとったな」と思い出して・・・結果、トラス材は遠路はるばる山梨にまで運ばれるとことなるのです。池山さんも潤建築作業場の建前に駆けつけ、トラス材の上棟に携わりました。「可愛い娘がいいところに縁付いて良かった、というような気持ち」と、晴れ晴れした顔で語る池山さんでした。

奥隅 俊男さん
千尋建築設計埼玉

埼玉県岩槻市の、後からできたRC造の建物と連結する木造住宅の改修事例です。ある程度以上昔の家だと、台所は土間、風呂や便所は別棟、というケースが多く、住み継いで時代を下るにつれて、コンクリート基礎を立ち上げ、台所・風呂・便所といった水回りをシステムキッチンや給湯付き風呂、水洗便所に替えていく工事をするようになります。ところが、この水回り部分から家が傷んでくることも多いものです。この事例もそうで、石場建てに縁側、障子、畳の間という開放的な構成をした家の表側はよく保存されているものの、布基礎をたちあげ、壁でふさぎ、水回りを持ち込んだ家の裏側は柱の沈下もはげしく、建築的な魅力も乏しくなっていました。それを建築当初の意図に近づけるような形に復元することで、丹精な美しさと品格を取り戻しています。

佐藤 恵子さん
佐藤総合計画徳島

徳島県南部にある牟岐の町から連絡船で15分のところにある漁村、出羽(てば)島「波止の家」の再生事業です。島は周囲が4km、住民は70人。車が一台もないこの島には、地域の材料で、地域の職人が建てた家が波止場を中心にギッシリと並びます。「波止の家」は漁港の入口にある、明治時代に建てられた家で、「ミセ造り」という、島独自の上下に分かれた雨戸が特徴的です。雨戸の上半分は蔀戸(しとみど)のように上にはねあげてツッカエ棒で支え、下半分は、足が出て、ベンチのように座れるようになっています。この家を、元からの島民、島への移住者、島を訪れる人、誰もが気軽に集まれるコミュニティカフェとして再生する事業を、学生や設計士が集まってのワークショップ形式で行いました。こうした活動が、この島の漁村集落が平成29年、伝建地区に指定されるという成果につながったのだそうです。

宮本 繁雄さん
建築工房 悠山想福岡

宮本さんは福岡県甘木市で、伝統的な「匠の技」をもつ大工集団を抱えて設計施工をする工務店を主宰しています。土地の気候風土を知り尽くした職人技術と、それまで住み続けてきた歳月をさらに次の世代まで住み継げるような融通性や魅力をもった家として再生する設計とで、地域の古民家再生に携わっています。その施工事例から、歯医者さんの診療所兼住宅の再生事例をご紹介いただきました。天井をはがしてみると、立派な黒光りする梁組があらわれたので、これが見えるようにあらわしにして使いました。建築当時から何回か施されてきた修理工事で、見えなくなっていたその家の魅力を引き出すというのが、民家再生工事の醍醐味ですね。

川村 克己さん
川村工務店滋賀

滋賀県の茅葺き民家の再生事例です。工事前までこの家の茅屋根は、現存する茅葺き屋根の多くがそうであるようにトタンで覆われていた状態になっていました。そのトタンを剥がし、茅をおろし、入母屋のついた合掌づくりの状態にまで戻して、再生しました。ここまでの茅葺き再生をすることは、なかなかないので、垂木と竹の結び方、茅葺きのための道具などの写真をこまめに撮ってあり、川村さんが技術の伝承という文脈でもこの現場に熱心に関わったことがうかがい知れる発表でした。特に、切り揃った茅と棟押さえとが交わる妻飾りの様子を写真で詳しく見ることができて、興味深かったです。

佐々木 文彦さん
ササキ設計宮城

佐々木さんの設計事務所は、東日本大震災でもっとも過酷な津波被害を受けた三陸海岸沿岸にあり、自宅兼事務所も甚大な津波被害に遭いました。そのような大変な状況にありながら、佐々木さんは、震災で住み継がれることが困難になってしまった古民家を一軒でも多く残そうと、佐々木さんがもうひとつの拠点としている仙台などに移築再生することを熱心にしてこられました。その中から一つの事例をご紹介いただきました。気仙大工が建てた、幾重にも梁が重なり、寺かと思うような立派な軒をもつ古民家が、外観こそ元の姿とは全く違う洋風住宅になったものの、内部は木組みのすばらしさが再生されています。元住んでいた人の手から、地域も異なる新しい住まい手に住まわれるようになり、黒光りする美しい材もよろこんでいることでしょう。

古川 保さん
古川設計室熊本

熊本も地震の影響で住まわれなくなった多くの古民家が空き家になっています。再生事例の発表のタイトルは「廃屋再生」。たしかに一見ボロボロで、一般的な感覚では「もう住めないだろうな」と見えるような家ですが、中を調査してみると、立派な木組みが健在であることが分かり、結果、見事に再生することができました。住まい手にとって大きな関心事となる施工費について、ローコスト住宅を新築するのと比べても、長年もつことを考えれば「ずっとお得なのだ」ということを計算してみせてくれたプレゼンテーションが、よかったです。

丹羽 明人さん
丹羽明人アトリエ愛知

丹羽さんは、いわゆる「古民家」ではなく、昭和の時代につくられた一般的な住宅を、住みやすく改造した事例を発表してくださいました。骨組みにまでばらしても、古民家のような建築的な魅力には欠けますが、新しい住まい方を提案するとともに、構造補強、温熱環境改善もしっかりと行った結果、とても魅力のある住まいに生まれ変わりました。丹羽さんが設計段階ではじきだした概算工事費と、実際にかかった工事費との間にほとんど差がなかったという話には会場からどよめきが!新築よりも状況が見えにくく、予算をオーバーしてしまうことの多い改修事例でリスクを負わないようにすることは大きな課題で、みんなが概算工事費の見積もりの仕方の工夫に耳を傾けていました。

ジョン・ストレンマイヤーさん
杣工社岡山

日本の伝統建築に魅せられ、アメリカから日本にわたり、京都の数寄家専門の工務店で修業したのち、岡山の杣工社の山本耕平さんとの出会いから、倉敷に移住し大工をしているジョン。地元倉敷での総会ということで、準備や進行、そして、アフター総会の「はつり会」でも大活躍でした。杣工社での現地再生の事例を、土葺きの瓦をおろすところからずっと、丁寧に紹介してくれました。豪快な木組みを生かしたリビング、美しい天井仕上げの和室、焼杉の黒と白木の格子戸の対比が映える玄関など、繊細でありながらのびやかな仕上げも素敵でした。

沖野 誠一さん
沖野建築高知

高知県香南郡赤岡町は、江戸時代末期から明治にかけて、血みどろの芝居絵を描くことで人気の高かった浮世絵師 絵金の生まれた町です。人々は絵金の里であることを誇りにしていて、絵金の芝居屏風絵を商店の戸外に飾り、日暮れ以降、蝋燭の灯りで見せる「絵金祭」を毎年7月に行っています。ほかにも真冬に商店街にコタツを出してあたたまる「冬の夏祭」なども行うなど、商工会の町おしがとてもさかんなところです。この赤岡町にある、明治期建造とされる赤れんが商家を、高知工業専門学校の北山めぐみ先生と生徒たちで再生するプロジェクトに、大工棟梁として関わったことについて、沖野さんから報告がありました。これから建築に携わる学生達が、古い建物の修復に携わることは、将来の建築的な視野を広げることにつながっていることでしょう。別の場所では、高知工科大学の学生と限界集落にある農家の再生とそこを拠点とする活動もはじめていて、沖野さん夫婦は家づくりだけでなく、人づくりをしているのだなということがよく分かりました。

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