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「林業をやる」ってどんなこと?

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山仕事は日給制や請負制が主流

山仕事をしている人には「一人親方」と呼ばれる自営業者と、森林組合や林業会社といった組織に所属している人とがいます。ほかに個人の林業家のところで専属で働いている人もいます。森林組合や林業会社に所属しているというと、一般企業の社員をイメージされるかもしれませんが、実際はかなり違います。もちろん、中にはサラリーマンと同じように月給をもらっている人もいますが、待遇が日給制だったり、ひとつひとつの現場ごとに決まった金額で仕事をこなす請負制であったりといったケースがむしろ多いのが実情です。

日給制は日給月給とも言われます。要するに1日の日当が決まっていて、出勤した日数をかけた金額が月給として支払われるということです。ただ、それだけでは現場の士気が上がりませんから、作業量の多寡に応じたプラスアルファの手当てが支払われることもあります。請負制は現場の数をこなすほど、収入が増えていくので、仕事のできる人にとっては魅力です。しかし、請負でバリバリ稼げるようになるには、それなりの経験を積み、技術も身につける必要があります。

このような雇用形態になっている原因のひとつに林業という仕事の特殊性があります。林業は基本的に外での仕事ですから、天気が悪ければ作業ができません。もちろん、多少の雨ならみんな現場に出かけます。夏場の下刈りなどは炎天下より雨降りの方がよほど楽ですし、濡れた草の方が刈りやすいので、かえって好都合という面もあります。でもさすがに大雨では仕事になりませんし、冬場の雪も同様です。天気次第で休みになる可能性があるので、職場の管理者にとっては雇用計画を立てるのが大変です。その点、日給制や請負制でしたら、現場に出た日数や仕事の実績に応じた報酬を支払えば良いので、わかりやすくはあります。

豪雪地では冬季失業?

山村生活では林業だけでなく、農作業も大きなウエイトを占める

しかし、日給制や請負制で働いていて、例えば台風シーズンに大荒れの天気が続き、ろくに現場に出れない日が続けば、その月の収入は大きく減少してしまいます。雪国はもっと大変で、2mも3mも雪が積もる地域では冬季は仕事がまったくできなくなってしまいます。そうなると現場作業に従事する職員を雇っていることはできませんし、職員の側でも現場に出れず、給料ももらえないのでは、職場に拘束されている意味がありません。そこで、豪雪地帯では雪のために仕事ができなくなると、現場職員をいったん解雇するという措置が取られることもあります。職員の方はその間、失業保険の給付を受け、スキー場でアルバイトをしたり、除雪作業に携わったりといった単発の仕事もしながら春を待つことになります。

こうした雇用形態ではどうしても収入が不安定になりがちです。独身者ならかえって気楽で良いという面もあるでしょうが、世帯を持ち、家族を養わなければならないとなると大変です。コメや野菜は自分の家の田んぼや畑で収穫したもので、ある程度まかなうということもできますが、子供が成長して学校に通いはじめ、教育費がかかるようになると現金の支出が増えてきます。過疎地の山間部では、近くに高校がないところも少なくありませんから、高校入学と同時に下宿をさせなければならないケースもあります。そうなると仕送りもしなければなりません。

このため、何とか雇用を安定させ、職員の待遇を良くしようと取り組んでいる職場もあります。例えば、冬場や雨降りのときの仕事を確保するために、製材工場や木工所をつくり、職員が休まなくてもいいようにするわけです。しかし、そうした施設も天気次第で稼働率が上下するのでは計画的な運営ができません。せっかくの施設が赤字を出して経営を圧迫するようにでもなれば元も子もありませんから、そうした雇用対策もなかなか難しく、成果を上げている例は少ないのが実情です。

山の仕事が減っている

最近の林業は仕事量自体が減少しているという問題もあります。林業には木を伐る仕事と木を育てる仕事とがあるわけですが、木を伐る場合は、その木の売上げが伐採作業を担当する人に賃金を支払う原資になります。一方、木を育てる場合は、植林にしても、下刈りにしても作業することによる収益はその場では生まれません。それらの作業はいわば将来に向けての投資行為になるわけですから、その時点での賃金は支払う側にとって持ち出しということになります。林業が不振に陥っている昨今は、将来、良い木を育てるためとわかってはいても、お金を出すことへの抵抗感がありますし、負担も小さくありません。

そこで、そのような木を育てる作業は多くの場合、行政の補助金を活用して行われます。あるいは森林所有者が林業公社などの公的機関と分収造林契約(将来、木が育ったときの売上げを一定割合で所有者と公社が分け合う。そのかわりに植林や木を育てる費用は公社が負担する)を結んでいて、その資金を活用する場合もあります。ところが、こうした木を育てる仕事が最近は著しく減少しています。ひとつには国の財政が悪化して公共事業費が縮減されたことが原因で、ここ数年、補助金は減少傾向が続いています。ただ、もっと構造的な問題として、現場自体が減っているという事情があります。

昭和30年代から40年代にかけて、全国の山間部ではそれまでの雑木林をスギやヒノキの人工林に植え替える拡大造林が盛んに行われました。ピーク時の年間造林面積は40万haを超え、少ない年でも毎年30万ha以上の森林が人工林に植え替えられました。木を植えれば手入れをしなければなりません。拡大造林が盛んだったということは、手入れの仕事も大量に発生していたということを意味します。実際、この時期は山村に住む人々の多くが、それこそ労若男女を問わずに植林や森の手入れに携わっていました。

ところが、最近は拡大造林自体が大幅に減少していることに加え、育った木をすべて伐採する皆伐があまり行われず、少しずつ抜き伐りしながら長い年月をかけて木を育てようという方法がとられることが増えてきました。そのやり方なら新たに苗木を植える必要はありません。最近の人工造林面積は、間伐で空いたところに苗木を植えつける樹下植栽といった植林を含めても、年間30,000ha程度と拡大造林ピークの時代に比べて1/10ほどに縮小しています。木を植えなければ下刈りなどの仕事は生まれません。このような事情で、最近は育林の現場が減ってきているのです。

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