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「林業をやる」ってどんなこと?

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山村に新風吹き込む新規参入者

最近は林業への就業を希望する人が本当に増えています。ストレス社会と言われますが、満員電車に揺られ、職場のデスクでパソコンに向き合う日々に疲れきってしまい、自然の中での仕事や生活に憧れる人が増えているという事情もあるでしょう。一方、そういったストレスの反動云々ではなく、環境問題に関心を持ち、森林を良くする仕事に携わりたいと、真正面から林業にやりがいを求める人もたくさんいます。大学で森林や林業を勉強した人が森林組合の面接を受けに来て、現場の作業に携わりたいと言って担当者を驚かせるといった話は枚挙に暇がありません。

緑の雇用担い手 育成対策の実績
  研修修了者 定着者 定着率(%)
15年度 2.268 1,615 71.2
16年度 1,815 1,658 91.3
合計 4.083 3,273 80.2

林業への就業を希望する人を対象にした「緑の雇用担い手育成事業」という国の研修事業も参加希望者が引きも切らない状況です。この事業は平成14年度の補正予算で導入され、実質的に15年度からスタートしたものですが、15?16年度の2年間に約4,000人が研修を受け、そのうちの約3,300人が研修終了後も林業に従事しています(17年7月時点)。少し前までは、林業といえば「キツイ、汚い、危険」の頭文字を取って「3K産業」などと言われ、就業希望者などはろくにいなかったのですから、大変な様変わりです。

このように林業に携わりたいという人が増えていることは、日本の森や山村にとって本当に喜ばしいことです。20代や30代といった若い世代の人もかなり多いので、過疎や高齢化に悩む山村にとっては将来への希望をつなぐことができます。果たして、都会から若い人が新たに参入した地域からは、移住してきた人のお子さんが入学したことで廃校寸前だった小学校が存続したとか、20年近くも子供が生まれたことのなかった集落で赤ちゃんが生まれ、近隣の人たちが自分の子や孫のように可愛がっているとか、嬉しい話がいくつも聞こえてきます。

林業をやることは地域の生き様

I ターン者同士のミーティング。伐倒技術をビデオでチェックする

ただ、現実問題として、せっかく林業に就業しても長続きせず、辞めていく人も少なくありません。もちろん、本人の忍耐が足りなかったというケースもあるでしょう。生活環境や職場の雰囲気になじめなかったり、あるいは本人はなじんでも、家族が地域社会に溶け込めなかったために、移住した地を離れることになってしまったりということもあるかもしれません。ある意味でこれは仕方のないことで、それほど都市と山村、ふつうの会社と林業の現場とは異なる点がたくさんあります。

例えば、親がちょっと留守をした間に眠っていた赤ちゃんが目を覚まして泣いているのに気づいた近所の人がその家に上がりこみ、冷蔵庫からミルクを出して与えていたという話を、あるIターン林業者から聞いたことがあります。彼は「それをありがたいと思うか、留守中に上がりこまれて迷惑だと思うかで、その人が山村に暮らしていけるかどうかが決まる」と説明してくれました。あるいは現場で親方が仕事を何も教えてくれないので最初は戸惑ったという人もいます。その人は「向こうもどう教えればいいのかわからなかったみたいですよ。いままでは子供のころから山に慣れている地元の人間ばかりだったから、何も教える必要がなかったっていうんですよ」とおかしそうに話してくれました。

この2つの例はいずれも話してくれた当人が定着しているのでいいのですが、深刻な話も少なくありません。休日に水路の掃除への参加を呼びかけられた移住者が「そんなのは役場の仕事じゃないんですか」と聞き返したことが原因で、住民からそっぽを向かれ、いたたまれなくなって出て行ったという話を聞いたことがあります。あるいは、地元の人間がUターンしてくるからと、借りていた家から立ち退きを迫られたという話もありました。

しかし、それでも地域に定着し、林業を続けていこうと頑張っている人はたくさんいます。「山で仕事をするというのは地域とつながっていること。PTAの活動をしたり、消防団で行き先がわからくなったお年寄りを探しに行ったりするのも全部林業につながっている。その意味では仕事というより生き様だと思う」。これは10年ほどのキャリアを持つIターン林業者の言葉ですが、ここには地域社会の一員としての覚悟と決意がにじみ出ています。林業や山村の将来を担う人材として、こうした人がひとりでも多く育ってもらいたいものです。

林業に従事することは持続可能か

このように林業や山村社会に身を投じる人がせっかく増えているのですから、何とかこの流れを継続させたいものです。そのためには林業に携わる人が安心して暮らせるようになることが大前提です。残念ながら、今は卓越した技術を持つ人でも林業で暮らしていくのは厳しい情勢です。以前、まだ仕事がたくさんあったときは、むしろ人手不足が問題でしたが、いまは林業への関心がかつてないほど高まってきたにもかかわらず、皮肉にも産業自体が疲弊し、植林が減るという構造変化もあって仕事量が減っています。しかも、林業に従事する人の雇用は不安定で、収入もけっして多いとはいえません。これではせっかく林業をやりたいという人が増えても、その思いを受け止めることはできません。

このように林業や山村社会に身を投じる人がせっかく増えているのですから、何とかこの流れを継続させたいものです。そのためには林業に携わる人が安心して暮らせるようになることが大前提です。残念ながら、今は卓越した技術を持つ人でも林業で暮らしていくのは厳しい情勢です。以前、まだ仕事がたくさんあったときは、むしろ人手不足が問題でしたが、いまは林業への関心がかつてないほど高まってきたにもかかわらず、皮肉にも産業自体が疲弊し、植林が減るという構造変化もあって仕事量が減っています。しかも、林業に従事する人の雇用は不安定で、収入もけっして多いとはいえません。これではせっかく林業をやりたいという人が増えても、その思いを受け止めることはできません。

最近は森林がどういう状態になっているのかに関心を持つ人が増えていて、近くの山の木で家を建て、その木を購入したお金が森林の整備にきちんと使われるようにしようという運動が広がってきました。木を伐った後に苗木を植えたり、育てるための手入れをしたりということが林業を継続させるために必要であり、あるいは間伐材を使うことが森林の整備につながるといったことへの理解も広まっています。ただ、こうした運動の中で、実際に木を育てたり、木を伐ったりといった作業に従事する人たちが、その仕事で生活を続けられるのかという議論は残念ながらあまり行われていないような気がします。

例えば、木を伐った後の植林は全額を公費でまかなうべきだとの意見が一部で聞かれますが、仮りにそれが実現しても、作業に従事する人の雇用条件が改善されなければ、森林や林業を持続可能にするための施策としては片手落ちです。これは例えば、木造住宅がたくさん建てられても、大工の待遇が低く抑えられているのと同じことです。職人の賃金を渋って建築コストを引き下げ、低価格で売り出された木造住宅が人気を呼んだとしても、良いことは何もなく、かえって産業としては衰退の道を歩むことになってしまいます。林業も同じで、森林を健全な状態に保ち、林業を持続させるためには、山仕事に従事する人たちの暮らしが成り立つようにすることが必要です。森林や林業の活性化、木材の利用促進といったことを議論する際には、「林業をやっている」人たちのことも常に視野に入れるようにしていただきたいと思います。

最近は森林がどういう状態になっているのかに関心を持つ人が増えていて、近くの山の木で家を建て、その木を購入したお金が森林の整備にきちんと使われるようにしようという運動が広がってきました。木を伐った後に苗木を植えたり、育てるための手入れをしたりということが林業を継続させるために必要であり、あるいは間伐材を使うことが森林の整備につながるといったことへの理解も広まっています。ただ、こうした運動の中で、実際に木を育てたり、木を伐ったりといった作業に従事する人たちが、その仕事で生活を続けられるのかという議論は残念ながらあまり行われていないような気がします。

例えば、木を伐った後の植林は全額を公費でまかなうべきだとの意見が一部で聞かれますが、仮りにそれが実現しても、作業に従事する人の雇用条件が改善されなければ、森林や林業を持続可能にするための施策としては片手落ちです。これは例えば、木造住宅がたくさん建てられても、大工の待遇が低く抑えられているのと同じことです。職人の賃金を渋って建築コストを引き下げ、低価格で売り出された木造住宅が人気を呼んだとしても、良いことは何もなく、かえって産業としては衰退の道を歩むことになってしまいます。林業も同じで、森林を健全な状態に保ち、林業を持続させるためには、山仕事に従事する人たちの暮らしが成り立つようにすることが必要です。森林や林業の活性化、木材の利用促進といったことを議論する際には、「林業をやっている」人たちのことも常に視野に入れるようにしていただきたいと思います。

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