森林と林業の再生に向け、政府では林業政策の抜本改革を進める方針だ。
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森林・林業・地域再生を目指して

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森林・林業再生プランと木材利用促進法

政府は昨年12月に「木材自給率を2020年までに50%とする」との目標を掲げた「森林・林業再生プラン」(以下、「再生プラン」) を発表しました。その目標を達成するため、政府では林業政策を抜本的に改革し、国産材の生産力を大幅に向上させるための施策を2011年度から強力に進めることにしていて、現在、その具体的な中身を決める検討作業を進めています。

こちらで大きくご覧いただけます。 林野庁森林・林業再生プラン推進本部が平成22年6月10日に発表した「中間取りまとめ」はこちら (A4横のPDFファイル、11ページ 205KB)

菅直人首相をトップとする民主党政権も今年6月に閣議決定した「新成長戦略」 で、今後、成長が見込まれる有力な産業のひとつとして林業を挙げ、政策的なテコ入れを図る方針を打ち出しています。日本の林業が今、大きな転換期を迎えようとしています。

今回の林材レポートでは、現在検討されている施策の概要をご紹介しつつ、林業の将来がどうあるべきかを考えたいと思います。

木材需要は著しく減少しているが、
木材自給率は3割近くに回復している。

出典:平成21年度 森林及び林業の動向および平成 22年度 森林及び林業施策より(以下、緑の帯でタイトルのついたグラフや図の出典はすべて同様です)概要版全文(28p)をこちらからダウンロードできます。読みやすいのでぜひご一読ください!

最近、木材の需要は景気低迷の影響で著しい減少傾向をたどっています。10数年前までは年間1憶m3を超える木材(紙を含む)が国内で消費されていましたが、今世紀に入ってからは多少の増減はあるものの、全般的には右肩下がりでの推移となり、昨年の需要量(消費量)はとうとう6,000万m3台にまで縮小してしまいました。木材需要が6,000万m3台となったのは1963年以来、実に46年ぶりのことです。

ただ、国産材の供給量については、むしろ増加傾向をたどっていて、自給率も昨年は27.8%と3割近くまで回復しています。その背景には、国内の森林資源が成熟して供給力が増していることのほか、中国やインド、中東など新興経済発展国の木材消費が増えているために、かつてのようには外材を安定して調達することができなくなり、国内の製材工場や合板工場、建材メーカーや住宅メーカーなどの間で国産材にシフトする動きが顕著になっていることなどの事情があります。

いずれにしろ、よく林業の厳しさを説明するのに「自給率が2割程度に低迷している」といった言い方がされますが、そうした表現はもはや適切ではなくなったと言わなければなりません。

政府のかかげる再生プランのポイントは
国産材マーケットの拡大

実は政府の再生プランは、単に自給率のみがターゲットではなく、国産材の供給量を今の倍以上となる4,000万〜5,000万m3にまで引き上げようという目標を掲げています。

約 2,500万 haある森林の蓄積量(折れ線グラフ)は、戦後に拡大造林した人工林の成長につれて、昭和22年代と比較して2 倍以上の約4億m³となるなど量的には充実。蓄積量の比率も人工林が多くを占めるようになってきている。

林野庁の統計によると、現在、日本の森林は毎年2,000万m3弱の木材を供給しつつ、それでもなお資源量を毎年7,000万m3ほども増やしているとされています。ですので、数字の上では供給量を2,000万〜3,000万m3程度増やす余力は十分あると言えるでしょう。

ただし、いくら供給量が増えても、それを使ってくれる需要がなければせっかく伐り出された木材が市場でだぶつき、下手をすると価格が暴落する恐れがあります。そのため、再生プランの目標を健全な形で達成するためには、供給量を増やすための施策を講じる一方で、国産材のマーケットを拡大する取り組みにも力を入れる必要があります。

国産材の供給力が増している。

公共分野での木材利用促進へ政策転換

今年5月19日、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(木材利用促進法)が国会で成立しました。その名の通り、公共分野での木材利用を増やすことを目指した初めての法律です。

かつて政府は「不燃化推進」の掛け声のもと、木造校舎を鉄筋コンクリート造の校舎に建て替えたりと、公共建築から木造を締め出すことに血道を上げてきました。最近こそ、木造を見直す動きも出てきていたわけですが、今回、法律まで制定して木材利用に力を入れる方針を表明したのは、政策の大転換だと言えるでしょう。

かつては各地にこのような木造校舎があった。今回の政府の政策転換で、今後は再び木造校舎が増えることが期待される。

その背景には、1960年代以降、大量に植栽したスギやヒノキ、カラマツといった針葉樹人工林がそろそろ利用できる大きさにまで育ってきているにもかかわらず、国産材の利用が進まないために間伐などの手入れが遅れたまま放置され、荒廃した森林が増えていることに対する危機感があります。つまり、この法律は国産材の利用を進めて林業を活性化し、森林を健全な状態にすることを目指したものなのです。

戦後植林した人工林が成熟してきており、齢級の高い太い木がたくさんある状態になっている。(1齢級=5年)

公共的に利用される建物は
なるべく木造で

法律のターゲットとなる「公共建築物等」には2種類があります。ひとつは、国や地方自治体が整備する公共の用途あるいは公用に供する建築物で、具体的には学校、社会福祉施設(老人ホーム、保育所等)、病院・診療所、運動施設(体育館、水泳場等)、社会教育施設(図書館、公民館等)、公営住宅等の建築物のほか、国や地方自治他の庁舎、公務員宿舎などが含まれます。これらについては今後、木造にすることが可能な物件(高さが13m以下で軒高9m以下、延べ床面積3,000㎡以下)は原則として木造で建てることを最優先に検討することになります(国が手掛ける物件は木造を原則義務付け)。

木造の幼稚園。法律によって公共建築の木造化が進められる。

一方、もうひとつは、国や地方自治体以外の者、つまり民間が整備するもので、いま挙げた施設に準ずるものとされています。例えば、私立の学校や病院、診療所、運動施設や公共交通関連の施設などで、要するに民間施設であっても公共的に利用されるものなら、木造での建設を推進しようというわけです。

このほか、木造にすることが困難な施設の場合でも、内装を極力木質化すること、各種備品も極力木製にすること、木質バイオマスエネルギーの利用を図ること、木造化や木質化の妨げになっている制度や基準を必要に応じて見直すことなども、この法律に基づいて進められることになっています。これらのうち、民間の取り組みに義務付けはできませんが、国産材を利用した木造化を支援する施策を実施することで、間接的に誘導することはできますから、その効果に期待したいところです。

住宅以外での国産材需要を
創り出すほかない

住宅着工率は減少しつづけている。高度経済成長期の着工率が高かったのが、落ち着いて来たのだとも言えるかもしれない。

前記のように、このところ木材の需要は減少傾向となっていて、今後についても、例えば主要な需要部門である住宅建築に関しては、少子化や住宅の長寿命化などから、従来のような新築需要は望めないと思われます。木材需要の主要な指標とされている新設住宅着工戸数は2008年には109万戸あったものが昨年2009年は79万戸と30万戸も減少しました。住宅着工戸数が100万戸を下回ったのは1967年(99万戸)以来、実に42年ぶりのことです。

昨年の場合は、景気の大幅な落ち込みが影響したための極端な減少と言え、この水準がすぐに常態化するとは思えませんが、では以前のような100万戸を超えるような新築需要が復活し、それが長続きするのかと言えば、そうとも思えません。

そのような中で、再生プランでは国産材の増産方針を打ち出しているわけですから、需給のバランスを確保して適正な価格水準を維持するためには、新築以外の需要の掘り起こしに努める必要があります。その意味で、今回の木材利用促進法制定が住宅以外の分野での国産材需要創出につながることが期待されています。

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構造はRCだが、内装を木質化した小学校。