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森林・林業・地域再生を目指して

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改革の要は林地集約化と路網整備

国産材の増産には
生産現場の競争力引き上げが急務

国産材の増産による需要の受け皿づくりについては、新しい法律やその他の取り組みに期待するとして、では、どうやって国産材を増産するのかという問題があります。

これまで国産材の供給が伸び悩んでいたのは、需要の低迷もありますが、外材との競合関係の下でコスト的に引き合わないため、林業生産活動が停滞しているためというのが大きな理由です。もちろん、木材価格が低迷しているために採算が確保しづらくなっているという面もありますし、一定以上の品質の木材が適正な価格で取り引きされる市場をつくることが、丹精込めて木を育てている林業家の気持ちを繋ぎとめるためには、ぜひとも必要です。

ただ、一般的な品質の木材であれば、結局は価格競争にさらされるので、生産現場のコスト圧縮を図り、競争力を引き上げることが増産を実現する必須条件になります。

80~100年の長伐期林業へのシフトと
間伐による木材生産の奨励

従来の日本林業では、植林から40〜50年程度経ち、木がある程度の大きさに育ったところですべて伐採(皆伐)し、跡地に苗木を植えて森づくりを再スタートするというやり方が一般的でした。

ところが、昨今の木材価格では、皆伐しても次世代の森づくりに投資する資金を確保するのが難しいため、最終的な伐期は80年なり100年なりに先延ばしし、それまでの間は間伐でしのぐという経営手法が政策的にも奨励されています。そのため、まだ若い森について間伐に力を入れるだけでなく、ある程度成熟した森でも間伐が行われるという形が今の日本では一般的になりつつあります。

京都議定書目標達成計画に定める 1,300 万炭素トン(第1約束期間の年平均値)の森林吸収量を確保するため間伐を積極的に実施している。

そうした事情を踏まえ、森林を保育する目的での間伐と、木材を生産する目的での間伐の双方について、適切な作業ができるような条件を整えることが、政策の基本目標になっています。つまり、国産材の増産は主に間伐による生産でまかなおうというのが政府の考え方です。

現在、政府では再生プランを実現するためにこれからどのような施策を行うべきかについて、5つの検討委員会を設置して具体的な検討を進めています。

農林水産省内におかれた森林・林業再生プラン推進本部の組織図

これら委員会の中で、今後の施策やその実行体制を総括的に検討している森林・林業基本政策検討委員会が今年6月10日に「森林・林業の再生に向けた改革の姿」(中間取りまとめ) を発表しました。

最終的なまとめは今年11月に予定されていますが、すでにこの中間取りまとめでも大枠の方向が示されていて、今後の施策としては、①集約化をベースとした適切な森林施業を確保する仕組みの整備、②低コスト化に向けた路網整備等の加速化、③担い手となる林業事業体やフォレスター等人材の育成、④国産材の需要拡大と効率的な加工・流通体制の確立――の4項目が推進されることになっています。

林地を集約化して経営を効率化する


複雑な林界

この中で、政府がもっとも重視しているのが、①に掲げた集約化です。森林の所有構造は国有林や公有林(都道府県や市町村が所有している森林)あるいは大規模所有者が所有している森林を除けば、多くは零細かつ分散的です。森林所有者の4分の3は所有面積が5ha以下の小規模所有者で、しかも所有林が1カ所にまとまっていればまだしも、こっちに1ha、あっちに0.5haと分散しているケースが少なくありません。

そのような小規模所有者が個々に経営をしていたのでは、とても効率が上がりませんから、森林組合や林業会社、あるいは意欲のある林業経営者が複数の所有者の林地を取りまとめ(集約化)、効率的な経営を行えるようにしようというのが政府のシナリオです。要するに意欲のある者が複数の所有者から経営の委託を受け、規模拡大を図れるようにしようというわけです。

委託を受けた林地で伐採収入があった場合は、売上げから伐採などの経費を差し引き、残った額を所有者に支払うという形が取られます。例えば、3人の所有者が所有している合計10haの林地を集約化したとしましょう(計算しやすいように人数は少なく、林地面積も小さく仮定しました)。それぞれの所有面積が5ha、3ha、2haだとすると、それらの林地で木材を生産して得られた利益(木材売上げから経費を差し引いた額)を所有割合に応じて、5割、3割、2割と配分すればいいわけです(実際には樹齢や品質など諸条件によって、もっと細かい条件設定が必要になる場合もあります)。

容易でない集約化を進める
森林施業プランナーの育成

ただし、林地を集約化するのは簡単ではありません。第一にやらなければならないのは、集約化しようとしている林地について、どのような経営を行い、収益がどれくらい見込めるのかといった計画をつくって所有者に提案し、全員から了解してもらうことです。計画づくりには林地の条件に即した経営手法を立案することと、経費の詳細な見積もりが必要になりますから、担当者には林業に関する実際的な知識と技術を有していることが求められます。

さらにせっかく良い計画ができても、全員がすんなり了解してくれるとは限りません。一般的には、所有者に何度も集まってもらい、粘り強く説明するというケースがかなりあるようですし、その土地を離れている人がいれば文書を送るか、あるいは直接訪ねるかして計画を説明しなければなりません。誰が所有しているかわからない林地があれば、所有者を探し出さなければなりませんし、境界が不明なら、その確定作業も必要になります。

こうした一連の集約化作業を担う人材として、政府は「森林施業プランナー」の育成に力を入れることにしています。

平成 22年度森林及び林業施策概要中に事例として紹介されていた例

山の中に作業道を張り巡らせる

高密度で張りめぐらされた路網

集約化とセットで政府が力を入れることにしているのが路網の整備です。政府では木材生産を行う森の中に文字通り網目のように道を張り巡らせることを計画しています。森林整備や林業生産活動にとって、道があるかないかは作業の効率性や労働強度に大きく影響します。道があれば大型の機械を駆使した作業システムを導入することができますし、現場まで車で行くことができますから、作業コストが下がるばかりでなく、作業員への負担が軽くなります。


急峻な場所では丸太で路肩を補強することもある。

皆伐の場合は作業が進むほどスペースが空くので道に頼らなくてもある程度効率を上げることができますが、間伐の場合は伐採作業をするにも木を運び出すにも、道があるほどやりやすくなります。

ただし、急傾斜地の多い日本の林業地で路網を整備するのは簡単なことではありません。斜面を切り取って道を付けるのは、山が崩れる危険と背中合わせですし、それだけなく、道が風の通り道になって台風で木が倒れる危険が増す、道を開けた分だけ木が減るといった理由を挙げて道づくりを敬遠する人もいます。育った木をすべて伐採する皆伐方式なら、そこまで細かく道を入れなくても、ある程度の効率性は確保できるという考え方もあります。このような事情があって、これまで日本の林業地では、一部の地域・所有者を除いて道づくりはあまり行われてきませんでした。

林業の生産力強化には
道づくりと機械化が必要

ここ10数年で日本の木材市場にはヨーロッパ産の木材が大量に輸入されるようになりました。そのこともあって、林内に道を張り巡らせて大型機械を駆使するヨーロッパの生産スタイルが注目されるようになり、国内でも道づくりや機械化を独自に進めてきた産地や林業家の取り組みが見直され始めています。

右から、日高さん、藤間さん、湯田さん

現在、日本の林業地における路網密度(単位面積当たりの道の距離で表す)は17m/haと、ドイツ(旧西独、118m/ha)やオーストリア(89m/ha)といったヨーロッパの林業地に比べると著しく低い水準にとどまっていて(データ出典:平成21年度森林・林業白書)、林業の生産力を強化するには、路網の整備が重要だという認識が現在では主流になりつつあります。

ただし、やみくもに道を付けるわけにはいきませんから、政府では少々のことでは壊れず、山を傷めないような道づくりの技術マニュアルを整備するとともに、ルート設計や現場での開設技術に長けた専門家の養成に力を入れることにしています。それによってヨーロッパ並みに道を入れ、機械化を進めて国産材の生産力を高めようというわけです。

林地の状況に合わせた最適ルートで道を付けようとするなら、境界にこだわってはいられませんし、路網を利用して大型の機械を存分に働かせるには、まとまった面積の事業地が必要です。結局、ここでも林地を集約化できるかどうかがカギになるわけです。

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高性能林業機械を駆使して間伐材を生産している現場。