一般社団法人
職人がつくる木の家ネット 事務局
〒711-0906
岡山県倉敷市児島下の町5-7-3 児島舎内
E-mail jimukyoku@kino-ie.net
TEL 086-486-5464

2021年10月30日(土)にオンラインで開催された職人がつくる木の家ネットの総会の様子をレポートします。

本来であれば、年に一度、全国各地より会員の皆さんにお集まりいただき、大ホールでの報告会・フォーラム・懇親会・オプショナルツアーでの貴重な建造物の視察など、2日間に渡って開催しています。今年も昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染症の拡散防止の観点から、Zoomを使っての「オンライン総会」となりました。昨年よりオンラインミーティングが一般的になったこともあり、大きなトラブルもなく多くの会員の皆さんが事務所や現場、自宅などから参加しました。

時間軸に沿って写真を交えながらご紹介していきます。


目次

●開会宣言・代表挨拶
持留ヨハナさんを偲んで
●新入会員自己紹介
●事業報告
 ①HPコンテンツ
 ②木構造部会
 ③マーケティング部会
 ④オンライン勉強会
●大工経営塾/見積部会 事業報告
●新ホームページの概要
●熊本 気候風土適応住宅 活動報告
●分科会
 分科会①「気候風土適応住宅/環境部会」
 分科会②「マーケティング部会」
 分科会③「伝統建築の未来 後藤先生のお話をうけて」
●分科会まとめ・閉会挨拶・来期総会案内


まずは大江忍代表理事からの挨拶。

昨年に引き続き、コロナ禍においてオンラインでの開催になってしまったことを非常に残念に思っています。オンラインなりの可能な範囲での様々な活動を行なった年でした。来年こそは本来の開催地である淡路島でみなさんとお会いしたいですと、挨拶がありました。
また今年8月にお亡くなりになった前事務局の持留ヨハナさんへのお悔やみの言葉がありました。


持留ヨハナさんを偲んで

今年8月にお亡くなりになった前事務局の持留ヨハナさんを偲び、木の家ネットの立ち上げから一般社団法人になる直前まで、ヨハナさんと二人三脚で本会を支えてきていただいた夫の持留和也さんからお話がありました。


新入会員自己紹介

今年は新たに8名の方が入会されました。それぞれに自己紹介をしていただきました。

橋本 洋一さん(プロフィールページ)
大分県で設計施工をやっています。手刻みで建てています。今度、気候風土適応住宅を建てていく中で、木の家ネットのみなさんと活動していきたいなと思い参加させてもらいました。よろしくお願いします。

柚山 一利さん(プロフィールページ)
愛媛県新浜市で木造建築の構造の設計をしています。住宅やお寺などの耐震診断もやっています。どうぞよろしくお願いします。

齊藤 基彦さん(プロフィールページ)
東京都で工務店をやっています。伝統建築などの経験はありませんが、その素晴らしさをもっと勉強したいと思い参加させていただきました。よろしくお願いします。

村上 聡さん
埼玉県所沢市で工務店をやっています。東京と山を繋ぎ地元の木を使えるような仕事をしています。若い世代のつくり手たちのためにも、もっと木に触れることのできる環境をつくっていきたいと思っています。よろしくお願いします。

篠 節子さん(プロフィールページ)
東京都で設計事務所をやっています。独立当初から環境のことを考えた建築をつくっていきたいと思っています。伝統的な木造住宅・気候風土適応住宅を会員のみなさんと日本各地につくっていきたいです。どうぞよろしくお願いします。

都合により当日参加できなかった3名はパネルでの紹介となりました。プロフィールページをチェックしてみてください。

新入会員プロフィールページ
唐木 俊さん(東京都)
新堂 豊さん(神奈川県)
田中 孝佳さん(東京都)


事業報告

次は、一年間の各事業報告です。

【事業報告①:HPコンテンツ】
今年度は特集コンテンツ2本と、会員紹介コンテンツ11名分の発信を行いました。

【事業報告②:木構造部会】
2020/11/1より6/22日まで全15回の「木構造部会」を会員の岩波正さん(滋賀県)を講師として開催しました。
昨年の限界耐力計算法の勉強会の続編として開催したもので、許容応力度設計や限界耐力計算法のおさらいをした上で、例題に取り組んだり、参加者からの質疑に答える形で実施しました。

【事業報告③:マーケティング部会】
今年度、新たにマーケティング部会を発足し、宮内寿和さんを中心に7名の会員とコンテンツ制作の2名を加えた9名で、SNSの発信・活用と新ホームページの検討を重ねてきました。

木の家ネットのインスタグラムアカウント @kinoienet を開設し情報発信を始めました。会員の皆さんも是非ハッシュタグ 「#木の家ネット」をつけて家づくりだけに留まらず広く発信していっていただきたいです。
また、5月からYouTubeにてリレートークをライブ配信する試みも始めました。「ウッドショック」のことを取り上げたの発端に、大江さん・宮内さんが聞き手となり毎回各方面のゲストをお招きして進めています。9月までで17回発信し視聴数は17194回になっています。これからも引き続き配信していきます。

【事業報告④:オンライン勉強会】
8/21、外岡豊氏(埼玉大学名誉教授)講師にお迎えし「LCAで考える伝統的木造建築の省エネルギー性能 〜建築から廃棄までのエネルギーを考える〜」というテーマで初めてのウェビナーを開催しました。


大工経営塾/見積部会 事業報告

「大工経営塾/見積部会」について金田克彦さん(京都府)・水野友洋さん(岐阜県)より報告がありました。詳しい報告会は興味のある方に向けて来年初めに開催する予定ですが、見積部会の目的・方向性・運用例のさわりの部分について発表していただきました。

「一見難しそうな内容ですが、素敵な仲間に恵まれ、単純な計算で使えそうなものができつつあります。年明けに開催予定の発表会では、経営にまつわる講演会も行おうと考えていますので、奮ってご参加ください」(金田さん)


新ホームページの概要

今後リニューアル予定の、木の家ネットのホームページの概要について岡野さん(コンテンツ担当)より進捗状況の報告がありました。


熊本 気候風土適応住宅 活動報告

昨年に引き続き、古川さんより熊本での気候風土適応住宅の活動についての報告がありました。まず、欧米諸国との家庭でのエネルギー消費量の比較に触れ、はたして日本は本当に省エネ後進国なのか、また国内でも暖房器具の使用状況が地域で差があるので、ひとまとめでは語れないのではないか。そして伝統的構法の家・気候風土適応住宅こそが、生産・廃棄等を含めれば最高のエコハウスなのではないか。とのお話をしていただきました。


分科会

休憩を挟んで恒例の分科会を開催しました。今回は【①気候風土適応住宅/環境部会】【②マーケティング部会】【③伝統建築の未来 後藤先生のお話をうけて】の3つテーマのミーティングルームに別れ、熱い議論を交わしました。

【①気候風土適応住宅/環境部会】

2025年の建築物省エネ法基準義務化、2050年のカーボンニュートラル達成を視野に社会が動いています。高気密高断熱一辺倒の省エネ手法に多様性を持たせるため、今年度より木の家ネットで「環境部会」を立ち上げることになりました。環境部会では、木の家に相当しい省エネ手法の評価方法の確立を目指しているという旨のお話を綾部さんよりしていただき、意見交換を交わしました。

【②マーケティング部会】

リーダーの宮内さん(滋賀県)を中心に「マーケティングの本質とは」「目標・目的・戦略・戦術」など、資料と例題を交えて、参加者全員でマーケティングの勉強をしました。最後に「我々が建築のプロフェッショナルであるということをきちんと発信していくべきだろう。そのためには会の目標・目的・戦略・戦術を明確にする必要がある」とまとめました。
マーケティング部会からのお願い:木の家ネットYouTubeチャンネルに登録をお願いします。現在500人ほどの登録がありますが、1000人を越すと収益化など、できることも増えますので、あと500人の登録を直近の目標にしています。

【③伝統建築の未来 後藤先生のお話をうけて】

総会と同日開催されたウェビナー「伝統技術・技能を広めていくために/伝統を未来につなげる会 後藤治会長からの話題提供」をうけ、登壇いただいた後藤先生にもご参加いただき、議論を交わしました。ウェビナーでは、後藤先生から「公共建築に匠の技を」「防災対策としての地域の伝統家屋の空家利用」という提案をしていただいており、参加者からは「まずは木の家の需要を作らなければ、職人の担い手も増えないし育たない。とてもためになるお話をありがとうございました」「伝統構法の家は、新築もリフォームも同じ職人さんができるということを強く発信していきたい」などの感想が聞かれました。


閉会挨拶・来期総会案内

各分科会のまとめの発表をはさみ、最後に丹羽明人さんから閉会の挨拶がありました。

「今年は昨年に引き続き2回目のネット総会となりましたが、充実した内容の会になったと思います。2001年に始まった木の家ネットはちょうど20年を迎えました。振り返ると、木の家をつくっている仲間にとって色々な社会問題や環境問題がありました。我々はその都度、積極的に様々な対応や情報発信をしてきた会ですが、今日も世の中は変わり続けており、これからも変化に対応し続けていかなければならないなと感じています」

「近年は自主的に様々な分科会も生まれ活発に活動しています。またホームページのリニューアルも控えており、より活発な情報発信の場になる予定です。木の家ネットの会員のみなさんは意識の高い方ばかりです。それが全国各地にいるということが最大の特徴であり強みだと思います。みなさん、是非、自分が情報を発信する側なんだという意識を持って、より主体的に参加していただき、さらに活発な情報交換・情報発信をできる会にしていきましょう」

オンラインでこれだけの検討や議論が行える会です。直接顔を合わせることができれば、さらに充実した総会になることでしょう。来年こそ淡路島でお会いしましょう!


取材・執筆・写真:岡野康史 (OKAY DESIGNING)

2020年11月1日(日)に開催された職人がつくる木の家ネットの総会の様子をレポートします。

本来であれば、年に一度、全国各地より会員の皆さんにお集まりいただき、大ホールでの報告会・フォーラム・懇親会・オプショナルツアーでの貴重な建造物の視察など、2日間に渡って開催しています。しかし今年はご存知の通り新型コロナウイルス感染症の影響下にあり、開催方法の変更を余儀なくされ、一般社団法人として第二回目となる今回の総会は、Zoomを使っての「オンライン総会」となりました。40名以上の会員の皆さんが事務所や現場、自宅などから参加しました。

時間軸に沿って写真を交えながらご紹介していきます。


目次

●開会宣言・代表挨拶
●自己紹介(新入会員・新運営委員・新事務局)
●事業報告
 大工経営塾/見積部会
 その他講習・勉強会(民法改正講習/気候風土適応住宅講習/京大勉強会/限界力計算勉強会
●「伝統建築工匠の技」ユネスコ登録活動報告
●気候風土適応住宅/SDGs の取り組みについて
●熊本マニュアル活動報告
●分科会
 分科会①「気候風土適応住宅/SDGs」
 分科会②「既存伝統的建物の耐震診断の諸問題について」
 分科会③「熊本マニュアル」
 分科会④「職人と伝統の伝承」
●分科会まとめ・閉会挨拶・来期総会案内


まずは大江忍代表理事からの挨拶。

 

コロナ禍において会員紹介コンテンツの取材が一部オンラインで行わざるを得なくなった旨や、今後建築業界が受けるであろう影響を鑑みて、今ある仕事を大事にしながら共に乗り越えて行きましょうといった挨拶がありました。


自己紹介(新入会員・新運営委員・新事務局)

 

今年は新たに3名の方が入会されました。まずは新入会員の兼定 裕嗣さん(岐阜県)さんの自己紹介から。

 

兼定さん:「手加工での家づくり、伝統技術を引き継いでゆくことを大切に仕事をしています。会員の皆さんと情報交換をしながらレベルアップを図りたいと思っています」

 

福島 教仁さん(埼玉県)、清水 裕且さん(徳島県)のお二方も今期より入会されました。当日は都合により参加できなかったためパネルでの紹介となりました。ご両名についてはプロフィールページをチェックしてみてください。

新入会員プロフィールページ
>>兼定 裕嗣さん >福島 教仁さん >清水 裕且さん

次に、7月より事務局を引き継いだ中田京子さん(岡山県)のご紹介。

 

中田さん:「会員の皆さんの情熱を持って仕事をされていて、刺激を受けながら携われることにありがたく思っています。木の家ネットの事を多くの人に知ってもらいたいです。皆さんのお役に立てるように頑張って行きますので、よろしくお願いします。」

また、賛助会員として森田 康司さん(秋田県)も今期より入会されました。


事業報告

続きまして、一年間の各事業報告に移りました。

 

【大工経営塾/見積部会】
まずは「大工経営塾/見積部会」について金田克彦さん(京都府)より報告がありました。

 

大工もこれからは経営のこともしっかり考えていかなければいけないので一緒に考えていこう」という趣旨で4年前から活動しているのが大工経営塾です。さらに一歩踏み込んで、伝統構法などの木組みで家づくりをする際の見積もりの考え方に統一性を持たせて活用できるデータを作っていこうというのが見積部会になります。

金田さん:「木工事と左官工事がなかなかデータもなく分かりにくいので、そこに重点を置いて勉強会を開いています」と近況を報告してくれました。

 

【その他講習・勉強会】
今年度は、大工経営塾として京都大学勉強会・気候風土適応住宅講習・民法改正講習・限界耐力計算勉強会が開かれ、会員の皆さんが熱心に参加されました。それぞれの集まりについて大江代表理事より報告がありました

京都大学勉強会では、講師に藤井義久先生、補助講師に安田哲也先生をお招きし、「山と木材など木の家を取り巻く環境が変化して行く中で、伝統的な技術を持った人たちがどうやって生きていくのか」などをテーマに講演が開催されました。

 

気候風土適応住宅講習では、木の家ネット会員の高橋昌巳さん(つくり手リストはこちら)に講師なっていただき、気候風土適応型住宅の申請ポイントを伝授していただきました。かなり具体的な話をしていただき、申請を検討中の方にとっては参考になったのではないでしょうか。

 

民法改正講習では、建築関係の法律に詳しく各所で引っ張りだこの弁護士、秋野卓生先生を講師にお招きし、契約書・契約約款の作り方や民法改正のポイントの説明をしていただき、かなり勉強になったかと思います。今後の展開として、会員の皆さんが使える木の家ネット独自の契約約款を作りたいなと考えています。秋野先生や会員の皆さんのお力を借りながら進めていきたいと考えています。

コロナウイルスの影響が出始める前の開催でしたので、居酒屋での様子が写っています。今見返すとこの1年で世の中がガラッと変わってしまったんだなと実感します。来年の総会の頃には日常が戻ってきている事を期待しています。

 

講師の岩波さん、参加された方々からのコメントもいただきました。

限界耐力計算勉強会では、木の家ネット会員の岩波正さん(つくり手リストはこちら)に講師になっていただきました。6月から9月にかけて全7回の連続講座となりました。難しいのではないかと敬遠されがちな限界耐力計算ですが、多い時には70名を超える方々に熱心に参加していただきました。次の展開としまして、木構造計算の初歩から始める「木構造の勉強会」を開催していきます。

 

【「伝統建築工匠の技」ユネスコ登録活動報告】

ユネスコ無形文化遺産への登録を目指し活動をしている【伝統建築工匠の技】の近況報告を行いました。
また国立科学博物館にて、2020年12月8日(火)~2021年1月11日(月・祝)に開催予定の【日本のたてもの -自然素材を活かす伝統の技と知恵】に、京都迎賓館の模型が展示される予定になっています。“新築に採用された伝統建築技術”が国に認められ展示されることになりますので、大きな前進と言えるものです。

 

【気候風土適応住宅/SDGs の取り組みについて】

来年2021年4月より施行される改正建築物省エネ法、及び気候風土適応住宅の場合の省エネ基準やガイドラインなどについて綾部孝司さんよりお話がありました。

行政庁に対して私たち自身が語りかけていかなければならないこと。曖昧な言葉の定義をはっきりしていく必要があること。また、SDGsの観点からは気候風土適応住宅には優れているポイントが備わっているので、それを武器にプレゼンテーションしていくのがいいのではないか。といった内容をお話していただきました。

 

【熊本マニュアル活動報告】

次に古川保さんより「熊本マニュアル活動報告」として今年2月に熊本県で策定された「くまもと型伝統構法を用いた木造建築物設計指針」の説明をしていただきました。

同マニュアルは、伝統構法の木造建築物の設計方法について、構造計算が比較的容易にできるようになり、木造伝統構法の技術を発揮できるフィールドをより広め、伝統技術の継承、地産地消による地域産業の活性化、安全で質の高い木造伝統構法建築物の供給促進を図ることを目的としています。


分科会

休憩を挟んで恒例の分科会を開催しました。今回は【①気候風土適応住宅/SDGs】【②既存伝統的建物の耐震診断の諸問題について】【③熊本マニュアル】【④職人と技術の伝承】の4つテーマのミーティングルームに別れ、熱い議論を交わしました。

 

【①気候風土適応住宅/SDGs】

事業報告で触れた内容について、引き続き綾部さんに詳しく解説していただき、参加者の皆さんからも質問や意見が飛び交いました。篠節子さんからは「自分で計算できるようになってください。そうしないと何も言えなくなってしまいます。」と鋭いコメントも。

 

【②既存伝統的建物の耐震診断の諸問題について】

限界耐力計算勉強会と同じく岩波さんに講師になっていただきました。「難しいと思われがちですが、構造計算も頑張ってみようという設計者は是非やって欲しい」「きっちり計算できる人があちこちで増えていかない行政に対して発言することは難しいので、みんなで動いていこう」など力強いメッセージは発せられていました。

 

【③熊本マニュアル】

前半の活動報告に引き続き、古川さんに熊本マニュアルについてさらに踏み込んで説明をしていただきました。参加者の皆さんからは質問が相次ぎ理解が深まったことと思われます。「大工さんが今までつくってきた建物を普通に大工さんでも建てられるようにするのが目的だと聞いて感動しました」という感想が聞かれました。

 

【④職人と伝統の伝承】

「職人と技術の伝承」では剣持大輔さんが音頭を取りながら、誰かが発表するという形ではなく、参加者の皆さんがディスカッションする形で熱い議論が繰り広げられました。「試しに毎週土曜日を休みにしてみたら、効率が落ちるようなことは全くなかった」「コロナ渦において人手が余るようなことがあれば、木の家ネット内で声を掛け合って忙しい現場に出張していくようなネットワーク体制があってもいい」など、今の時代を象徴するような働き方の変化についての声が聞かれました。


閉会。そして淡路島へ。

各分科会のまとめを発表した後、全員カメラをオンにして記念撮影。離れていても一体感を感じることのできた瞬間でした。

そして最後に杉岡世邦さんから閉会の挨拶がありました。
「今年はイレギュラーでこのような形での開催となりましたが、このような場を持つことができて非常によかったなと思っています。来年は淡路島でお会いできればなと思っています。本当に今日はお疲れ様でした。ありがとうございました。」

今年の経験を、様々な形で日々の仕事や、木の家ネットの活動に生かしていけば、来年はさらに素晴らしい報告や議論のできる総会が開催できることでしょう。次回こそ淡路島でお会いしましょう!

 


取材・執筆・写真:岡野康史 (OKAY DESIGNING)

2019年10月5日(土)〜10月6日(日)の一泊二日、佐賀県唐津市にて職人がつくる木の家ネットの総会が行われました。今回はその報告記事です。

まず10月5日(土)の午後に「災害に学ぶこれからの木の家」と題した公開フォーラムを唐津市文化体育館で開催。その後、ホテル&リゾーツ佐賀唐津に移動し、宴会と分科会で交流を深め、翌朝10月6日(日)には一般社団法人として初めての総会を執り行いました。解散後は、国指定重要文化財 旧高取邸へのオプショナルツアーを楽しみました。

唐津市は九州北部にあります。およそ4.5kmの長さにわたる「虹の松原」は、
400年ほど前に防風防砂林としてつくられました。

総会の開催地となったのは、玄界灘に面した佐賀県唐津市。「唐への渡海拠点」という名の通り、白村江の戦い、元寇、秀吉の朝鮮出兵といった戦をはじめ、人の交流や大陸文化の流入の痕跡も多くあり、朝鮮半島や中国大陸との関係が深い土地です。曳山まつり「唐津くんち」や、江戸時代の新田開発のために植林された防風防砂林「虹の松原」でも有名です。

1591年(天正19年)に秀吉が朝鮮出兵(文禄・慶長の役)の拠点として、現在の唐津市北部に名護屋城を築城しました。壱岐の島かげの向こうに朝鮮半島を見据える城跡が、今も残っています。秀吉が全国の大名たちを呼び寄せて陣を敷かせた当時は、10万を越える人が集結したとか。さまざまなお国言葉が飛び交ったであろう出陣前の様子を想像するにつけ、北は秋田から南は鹿児島まで全国各地から木の家ネットの総会に集まってきたことが、どことなくオーバーラップするような不思議な気持ちがしました。

公開フォーラム:
災害に学ぶこれからの木の家

開会の挨拶をする大江忍 代表理事と、公開フォーラムの会場の様子

初日の午後には「災害に学ぶこれからの木の家」と題し、地震、台風などの災害から逃れられない日本にふさわしい家づくりとはなにか?を考える公開フォーラムを行いました。

筑波大学名誉教授 安藤邦廣さんの基調講演「災害に学ぶこれからの木の家」に引き続き、各地からの事例報告として、東日本大震災について佐々木文彦さん(宮城県石巻市)、熊本地震について古川保さん(熊本県熊本市)、西日本豪雨について和田洋子さん(岡山県倉敷市)、九州北部豪雨について杉岡世邦さん(福岡県朝倉市)から、被災状況やその後について生の声を聞くことができました。休憩後のパネルディスカッションでは、会場からの質疑応答もまじえて活発な議論が行われました。

詳しい内容は、次回11/1公開予定の特集記事で、あらためてご報告します。

年に一度の懇親会

フォーラム終了後は、ホテル&リゾーツ佐賀唐津に移動。ホテル上層の展望風呂で旅の汗を流してから、懇親会場へ。

木の家ネットが任意団体の時の初代会長で、現在は一般社団法人の監事の加藤長光さんの音頭で乾杯。お刺身や唐津名物のいかの和え物など、旬の海の幸に舌鼓をうちました。地元九州のメンバーからご当地自慢の芋焼酎や日本酒の差入れがふるまわれると、場は一層もりあがり、全員が年に一度の懇親会を楽しみました。

懇親会のフォーラムの共催団体でもある認定NPO法人 日本民家再生協会九州沖縄地区、NPO法人伝統木構造の会 九州地域会、九州杢人の会、新建築家技術者集団 福岡支部、九州大工志の会、、LLP木の環のメンバーも懇親会にも出席して場を盛り立ててくださいました。

今回の幹事の実行委員長である杉岡世邦さん(福岡県朝倉市、杉岡製材所)はじめ、宮本繁雄さん(福岡県朝倉市、建築工房 悠山想)、土公純一さん(福岡県福岡市、土公建築・環境設計室)、松尾壮一郎さん(佐賀県鹿島市、夢木香)、池上算規さん(長崎県長崎市、 大工池上)、梅田彰さん(熊本県熊本市、FU設計)、田口太さん(熊本県八代市、土壁の家工房 田口技建)、古川保さん(熊本県熊本市、すまい塾古川設計室)は、木の家ネットに加えて上記いずれかの会に所属しているメンバーも多く、九州地域内での横つながりがさかんなことを感じさせられました。

先日、急逝された夢木香の松尾進さんの跡継ぎである松尾壮一郎さんと、
フォーラムで司会を担当された北島一級建築士事務所の北島智美さん

宴会では毎回恒例の金田克彦さんのお子さんによる加工食品販売も。今年は「いなごのつくだに」でした。
宴会最後の一本締めは、古川保さんの音頭で。

最後は、全員で気を合わせ、一本締めで楽しい会を締めたのですが、ここで終わらないのが木の家ネットの総会。いったん散会後「災害対応」「マーケティング」「人材育成」「見積もり」と4つのテーマで、各部屋ごとに分かれ、車座スタイルでの「分科会」を行いました。部屋によっては日付が替わっても議論が続いたようです。

九州メンバーは、別の部屋で、九州地域での各団体をつなぐ連絡会をつくるための話し合いをしたそうです。今後のますますの連携が楽しみです。

一般社団法人としての、初めての総会

翌朝は虹の松原や玄界灘を一望するスカイレストランでの朝食を楽しんだあと、唐津市文化体育館の会議室に再集合し、一般社団法人としての第一回の総会を行いました。

まずは大江忍代表理事から、職人がつくる木の家ネットの活動を次世代につなげていくために一般社団法人化し、安定的に運営していくために倉敷の事務局を中心とする新組織をつくったことについて説明がありました。

伝統的な知恵に学び、無垢材を手刻みして一棟一棟つくる木の家づくりでもっとも大事なテーマは「次世代への継承」。この災害の多い日本各地の気候風土に合った形で先人たちが編み出してきた技術の真髄を、現代の生活に柔軟に対応しながら伝えていくことが、今世代の私たちの役割だとすれば、この会も、20年前に発足したままの体制から、より若い世代に引き継ぎ、持続できる形にしていく必要があります。

これまで、コンテンツ執筆と事務局との両方を担ってきていたところを、新たに加わった二人のライターさんと、専任の事務局スタッフとで分け持つ運営体制に変わったのが、今年の5月。それからまもなく半年というに節目にあたり、総会に集まった会員に顔の見える形での「バトンタッチ」の報告がされました。それぞれのスタッフのメッセージをご紹介しましょう。

事務局の福田典子さんと、コンテンツ担当の丹羽智佳子さんのご主人の丹羽怜之さん
そして同じくコンテンツ担当の岡野康史さんと持留ヨハナ

事務局の福田典子さん「一般社団法人の事務局所在地の児島舎に通い、会員対応、名簿管理、入出金管理などをしています。まだ慣れないこともたくさんありますが、みなさんのお役に立てるよう、がんばらせていただきます」

次に新しくライターとして加わった、丹羽智佳子さん、岡野康史さんの紹介がありました。二人がコンスタントに会員紹介記事を取材執筆しているおかげで、月に2回のコンテンツ発信が実現できています。

丹羽智佳子さんは産後2ヶ月ということで、夫で木の家ネット会員の丹羽怜之さんが代理で:「もともと新聞記者だった妻は、木の家ネットのメンバーを取材するのをとても楽しんでいます。建築が専門でないのですが、つくり手の方の人となりを浮き彫りにする記事を心がけているようです」

岡野康史さん:「グラフィックデザインが専門ですが、写真も撮りますし、文章を書くのも好きです。魅力あるつくり手の方とお会いして感じたことから、何を取捨選択して読者の皆さんに伝えるか、毎回新鮮な気持ちで取り組んでいます」

持留ヨハナ:「これまで20年間、大変お世話になりました。今後は若い二人のライターさんに執筆をゆずりつつ、テーマをもうけて複数の方の考えを横断的に紹介する特集記事など、ニーズがあれば引き続き、関わらせていただければと思います」

田口太さんから、杉岡世邦さんへバトンタッチ

もうひとつの新旧交代として、これまで運営委員だった田口太さんが辞任し、かわりに同じ九州の杉岡世邦さんが就任しました。今後ともどうぞよろしくお願いします。

初参加の会員たち

1:設計事務所nonaの柴田亜希子さん、2:m28e有限会社の古川乾提さん、
3:岡崎製材所の岡崎元さん、4:野の草設計室のスタッフ島崎希世さん

スタッフの引継ぎに続いて、恒例の「新会員さんいらっしゃい」の時間。おひとりずつのコメントを紹介します。

愛知県名古屋市で設計事務所 nonaを主宰する柴田亜希子さん「自宅を石場建てで建築し、伝統的な家づくりのよさをさらに実感しています。自宅を啓蒙の場として使いながら、このよさをより広く伝え、木組みの家づくりが選択肢の一つとしてあがるようにしていきたいです」

愛知県一宮市でm28e有限会社を主宰する庭師の古川乾提さん「伝統的な家づくりをする大工さんたちと出会い、同じようなことを庭でやっているので、入会しました。家と庭とがもっと密接になるような話ができたらいいなと思います」

岐阜県八百津市の岡崎製材所の岡崎元さん「これまでおやじの岡崎定勝が総会でお世話になってきたかと思いますが、今年は僕が初めて参加させていだたいています。今後も、みなさんと協力して地域で山と木の家づくりをつなげていきます」

愛媛県今治市の、野の花設計室のスタッフの島崎希世さん。「これまでまったく違う分野の仕事をしていましたが、伝統的な家づくりに惹かれ、転職して2年目です。多くを学んで吸収し、発信できるようになりたいと思います」

分科会

その後、分科会各部屋からの報告にうつりました。分科会で話し合った内容を模造紙にまとめたものを発表をした部屋、前夜に主だって話した何人かが代表して発言をした部屋、それぞれのスタイルのまま、お届けします。

分科会1:
災害をふまえた木の家

それぞれの地域に起きやすい災害に対応した建築や住まいのあり方が昔からある。三陸では、津波がくる浜辺には作業小屋だけがあり、住居は高台に別にもうけていた。水害の多い福知山では、家が浸水する前に家財道具をあげておくための三階がある。

そうした地域ならではの工夫に加え「補修ができるようにつくる」ということが基本ではないか。構造材があらわしになる真壁づくり、補修すべきところが見えて、メンテナンスがしやすい。

現代のプラスターボードの家は、水害で浸水すれば粗大ゴミにしかならない。ベタ基礎の立ち上がりの中に入り込んだ水は、ポンプで排水するしかなく、水害の後が大変。化学物質や農薬による水汚染も心配。復旧しづらい家は、災害の多い日本では、つくってはいけないのではないか。

真壁づくりのもうひとつのメリットが、日々木を見えていることで、普段から森を意識できるという点。木には、単なる建材というだけでない、人の暮らしを守ってくれる大いなる安心感がある。神を数える単位が「柱」であるのも、木を心のよりどころにしてきた日本人の精神性のあらわれかもしれない。

分科会2:
弟子の育成

北山一幸さん、丹羽明人さん、川端眞さん

北山一幸さん(大工):今の時代にあった人材育成は、昔とは違うと。昔は大工修業といえば、生活や立ち居振る舞いすべてにわたって親方が全人格を育ててきたが、今はそこまでなかなか踏み込めず、仕事ができるよう技術的なことを教えるにとどまっている。生活スタイルや精神的なことまで伝えようとすれば、つぶれてしまうような感じがある。それでも、若い人を教え、育てないとこの業界は続いていかないので、しょっちゅうは怒らず、ここぞという時だけに控えるようにしている。

古川乾提さん(庭師):若い人が集まらないのは、手間が安すぎるからではないか。単にブロックを積むだけの仕事でも、山から石を選んで運んで据える仕事でも、同じ日当というのは、割があわない気がする。経営者であれば、企画料など、のせられる項目もあるが、一職人となると、そこを上乗せするのはなかなかむずかしい。けれど、ちゃんとしたものをつくる人は、ちゃんとお金を取れるのが本来のあり方ではないかと思う。

川端眞さん(設計):うちは所員のできがいいので、人材育成には困ってない。大概の人は「自分のコピー」をつくろうとするから、うまくいかないのではないか。自分と同じことを相手に求めない。弟子が二人いたら、同じことをさせない、比べない。それぞれに合ったことをさせていけば、うまくまわる。

分科会3:
マーケティング

大江忍さん(設計):SNSの中ではInstagramが若い人には人気があり、入口になる。伝統木造に興味がある人はまだまだfacebook世代。Google my business に登録し、口コミをしてもらうことで、検索数があがる。

大江忍さん、橋詰飛香さん

橋詰飛香さん(設計):特定多数に対して発信をしても、このような家づくりのことが心に響くのは、特定少数。そう考えると、検索に上手にひっかかることだけでなく、その少数にしっかり届く内容を発信することが大事。そのためには、個々の会員紹介との両輪で、伝統構法への想い、山とのつながりなど、木の家ネットとして『共同のピュアな思い』を表明するような発信形態があってもいいのでは?

分科会4:
見積もり部会

ここ数年、見積もり部会としてネットを活用した月一回のZoom会議を積み重ねてきた。独立したての若い人がどう見積りをしていいかわからない、設計者と施工者とで概算見積りにかなりギャップがでるのでせめて7%以内ぐらいには抑えたい、という問題意識で始めた。

このところ同一の図面について、別々の施工者が大工工事の手間だけを抽出して作った見積もりを比較検討する作業をしている。

全体を「墨付け・刻み」「外壁」「内部造作」と3パートにわけるというあたりまでは共通だが、「墨付・刻み」1パートをまるごと一式で書く人、部材をひとつひとつ拾っては材工を積み重ねていく人など、表現はさまざま。

総会に参加できなかった岐阜の水野友洋さん、各務博紀さんと、Zoomでつないで分科会。座長は金田克彦さん

概算見積もりを簡単に出す方法を探りたい!とは思うが、結局は木拾いをして伏せ図、展開図、矩計図とつくらなければ見積もりは出ない。そこまで手間をかけていては、「概算」見積もりではなくなってしまうのだが・・・そのあたりで堂々巡りしている。結局は、見積もり → 作業日報 → 作業手間の積算ということを繰り返す中で「これくらいだな」という経験知を身につけていくしかないのかもしれない。見積り以上に施主の要望由来でなく手間がかかった時に、施主に請求できるかどうかについては、意見が分かれた。

せめて見積りをつくる際に単価を掛ける元となる「単位」を決めようという話にもなった。坪単価は平米で出すのが普通だが、材積と手間とが連動するので、立米単価で考えてはどうか。材積は坪あたり1立米〜多い人では1.2から1.5立米くらいという幅もわかった。

気候風土適応住宅について

古川保さんによる報告

最後に、気候風土適応住宅についてのお話が古川保さん(設計)からありました。「いまのところ、小規模住宅は、省エネ基準への適合義務はなく、努力義務でよいというところに落ち着いてはいますが、それがいつ報告義務や適合義務にシフトしていくか分からないので、だた『適合しなくてもいい』でなく『これは気候風土適応住宅だから、適合しないのだ』と確信をもって言えるよう、各地で指針づくりをしてください」とのことでした。

解散後、駐車場に様々なナンバーの車があるのが、興味深かったです。もっとも遠方なのは秋田ナンバーをつけていた、監事の加藤長光さん。珍しかったのは、兵庫の高橋憲人さんのキャンピングカー。京都の金田さん一家も同乗して、にぎやかな帰路につきました。

オプショナルツアーは旧高取邸

オプショナルツアーは国指定重要文化財の旧高取邸。炭鉱主・高取伊好の邸宅として建てられた近代和風建築です。ライターの岡野康史さんから「今ではなかなかお目にかからない立派な柱や手仕事の光る建具など、隅々まで当時の職人や高取さんの熱量をとても感じました。」との感想を聞きました。

次回の総会は、兵庫県の淡路島で11月に行われる予定です。またの再会を楽しみに、それぞれが充実した一年間を過ごしましょう。

取材執筆=持留ヨハナ(モチドメデザイン事務所

© 2022 kino-ie.net. All Rights Reserved.
linkedin facebook pinterest youtube rss twitter instagram facebook-blank rss-blank linkedin-blank pinterest youtube twitter instagram