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土壁告示

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■資源循環時代に向けて 再評価されはじめた伝統構法

在来工法(上)と、ツーバイフォー工法(下)の緊結部分。両方とも金具を使っているので、施工者の技術力の違いによる性能のばらつきが少ない。

法律が変わる時には、必ずなんらかの契機があります。この施行令46条の変遷をふりかえってみると、昭和55年に、それまで土塗り壁と木ずり壁、筋交いしか載っていなかった壁量の倍率表に、構造用合板をはじめとした工業製品の壁が次々に加えるという大きな変化がありました。その頃、ツーバイフォー工法が日本でオープン化され、耐力壁には合板などの面材が有効だということが知られるようになったからです。さらにそこに石膏ボードや繊維板なども続々と加えられ、アメリカなどの外圧もあってOSBなどの輸入品にも対応できるようになっていきました。経済が右肩上がりに成長していく中で、新しい工業化されたものこそ優れたものだという認識が、このような法改正を後押ししていたのですね。

それでは、伝統構法の見直しの第一歩ともいえる今回の土壁告示がつくられるに至った経緯には、どのような背景があるのでしょうか? 伝統的な木造技術を評価するという流れは、工業製品をもっとも優れたものとする今までの認識とは、ちがった潮流のようです。今回の改正にあたって国土交通省から出てくる文書には「これからの資源循環時代に向けて」というスローガンがよく出てきます。つくっては壊し、壊してはつくるといった「消費型の家づくり」によって失ったものの大きさに気づき、それを今後続けていくことのできない社会になっていくことを予感しているのです。

限りある資源を、なるべく長く使いつづけていけるような家づくり。家づくりの過程だけでなく、壊す時のことまで考えて、二酸化炭素濃度や土に還らないゴミを増やさないこと。そういったことをよしとするものさしに見方を切り替えると、基準法の中で明確に位置づけられてこなかった「伝統構法」が見直される必然性が浮かび上がってきます。伝統構法の家づくりはそもそも、使い捨ての家づくりとは逆で、再生可能な資源である木を、できるだけ長く使い続けられるような形で用いる、長寿命の家づくりだからです。短い目で見た経済効率ではなく、環境への配慮、持続可能な社会に向けての有効性に着目すればするほど、伝統構法にこそこれからに向けての可能性がある。国がそのことに気づき始めたというあらわれが、今回の告示改正だといえるのではないでしょうか 。

■建築基準法でも問われる職人技術の中身

土壁、板壁、格子壁というものは、工業製品ではありません。それを作る職人の技術によって品質が大きく左右されます。「つくる人の技術によって性能にばらつきがあり、一律な評価をしづらい」ということが、今まで伝統構法が基準法に位置づけられにくかったひとつの理由です。たしかに、木のクセを一本一本、目で見て、職人の技術で組んでいく伝統構法の家は、工場の管理下で精算される均一な量産部材を組み立ててできる家とをくらべれば、つくり手の技に依存する割合が高いのです。そのことが、一品生産品のきめ細かな対応にもつながるのですが。

今までの「土壁0.5」という低い評価の時には、その土壁がどういう仕様なのか、ということまでは細かく規定されていませんでした。裏を返せば、いい加減なつくりのものであるかもしれないことも考え、安全側をみて、低い倍率しか与えていなかった、という言い方もできます。ところが、今回の条文では、土壁のつくり方ひとつをとっても、貫の厚み、土壁を塗る下地となる小舞の材料や編み方など、細かく仕様が示されています。つまり、土壁であればそれでいい、ということではなく、きちんとした仕事を確実に行える技術や技能が要求されているのです 。

■伝統構法を成り立たせているのは職人の技術

量産化は人の手間を減らし、目先のコストをいかに下げるかを目指してきました。が、それと同時に、人の手も技術という大切なものを失ってしまったようです。今までの建築基準法が、簡便な「在来工法」や、職人の技術の割合を最小限にしていくことをめざす工業製品の家づくりを結果として推進してしまったことが、日本のすぐれた職人文化を衰退させる方向にはたらいてきたことも確かです。

その建築基準法の条文が、職人の技術や経験にまで踏み込むようになった。悪くとれば「なんでも細かにマニュアル化して・・・・」に陥る危険もありますが、家づくりの最低基準を示す建築基準法において、職人の技術を、継承可能なものとして、さらに、継承されてふさわしいレベルで位置づけているということは、現時点では画期的なことではないでしょうか。

なんのことはない、今まで親方に怒鳴られながら修行を積んできた職人の技術が不可欠だ、ということなのです。幸いにも木の家ネットの仲間は、土壁の技術に限らず、木のクセを読み、木を刻み、組みあげるなど、親方から受け継いできた技術を現代に生かし、家づくりを実践しています。今後、土壁以外の伝統構法の技術についての見直しが本格的に進みそうです。木の家ネットとしても、伝統構法の家づくりの現場に携わる立場から、これらの技術がよい形で未来につながっていくためにのによい形で位置づけていくために必要な発信や活動を続けていきます。読者のみなさんにも、伝統構法の家づくりを望まれるのであれば「職人の技術」がその質を大きく左右するのだということをぜひ覚えておいて、腕のいい職人さんに頼まれることをお勧めします!

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