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火の用心(後編)

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theme 4 伝統の家づくりに見る防火の知恵

□瓦屋根

まずは、燃えにくい屋根の代表は瓦屋根です。もとは草や板といった飛び火に弱い材料で葺いていた屋根に取って替わっていったのは江戸時代のことでした。 現在でもこの考えは、建築基準法22条(屋根)に法律の一部として伝わっています。

□うだつ

屋根ではないのですが、隣家と接する妻側の小屋組を壁や屋根よりも付きだして、一種の防火壁とする「うだつ」というものもありました。これは室町時代から、街道に沿って家並が一筋に並ぶ宿場町などさかんだったものです。その後、「うだつを上げる」ことが、富の象徴ともなり、装飾をこらした「うだつ」が今にまで誇らしく残っている町もあります。

□土蔵造り

家そのものの防火性能を高くすることも行われました。具体的には、木でつくった骨組みに土を塗り、主に漆喰で表面を塗り固めて、防火被覆とします。塗り厚が分厚いのが「土蔵造り」と呼ばれました。土蔵はもともとは倉庫としてつくられ、米を種籾のまま置いたり、農機具や食器類、季節の道具などを収納していました。最初のうちは、鞘組と言って、土蔵の屋根野地面までを土などで塗り込め、その上に木造の屋根を置き、屋根と蔵を分離し、蔵内部を火や温度上昇から守っていました。今でも延焼のおそれが都会とくらべて低い田舎では、この方式の蔵がよく見られます。

ところが、置屋根では、まだ木部が表にあらわれているので、都市部では次第に、蔵の上に直接瓦を葺くことで耐火性を増していきいました。火事が近づいてくると、大事な家財道具を急いで蔵に移し、扉や窓を目塗りします。蔵の入り口付近には、目塗り土を山盛りにして急に備えたそうです。

住む家と別棟の蔵ではなく、主屋そのものを土蔵造りにしたものもあります。有名なのは高岡や川越の町並みで、いずれも明治時代の大火の後に、町ぐるみで通り沿いの家をみな土蔵造りに改めたということです。

□塗家(塗籠)造り

土蔵造りよりも薄い塗り厚の土と漆喰を塗り込めて大壁仕上げとします。表には木部があらわれないので、耐火性が高まります。今もっとも一般的なモルタル塗り外壁の前身ともいえるかもしれません。

□なまこ壁

土蔵造り・塗屋造りの外壁に平たい瓦を貼り、目地を漆喰でかまぼこ状に盛り上げて納めた壁です。建物の雨がかかる部分を保護するために工夫されたのですが、意匠的にも美しいさまざまな貼り方があり、左官職人の美学の見せどころともなっています。

□土壁(土塗り壁)

外壁すべてを大壁にしない、柱と柱の間を厚塗りにする真壁造の土壁だけでも、すぐれた防火の性能をもっています。雨がかかる部分は下見板張りにすることで、土壁が脆くなっていくのを防ぐ工夫もありました。木の家ネットの会員さんから火事の顛末記が送られてきているのでここにご紹介します。

■土壁が我が家を守ってくれた。

2月13日午前7時ごろに3件隣の平屋建住宅から出火。住宅密集地でさらに通報が遅れたために消防車が消火活動を始めたころには、出火元はすでに全焼状態で延焼を防ぐのに必死に放水をしていた。自宅が風下で覚悟を決めた時もあったが、幸い我が家は無傷で終わった。出火元を含めて4軒が全焼、1軒が半焼の惨事となった。風下の隣家1軒が全焼の被害を受け、あとの全焼家屋は風上側の隣家と背中合わせの家だった。現場検証も終わった頃に、ふと不思議に思い我が家の屋根に上がり写真を撮ってみた。屋根から隣家の屋根に移り全焼になった家4軒を見渡した。すると風下の住宅は天井裏の妻壁にまで土壁が塗ってあり、反対側の住宅は土壁ではなかった事がわかり、改めて土塗りの妻壁を見てみた。小舞が隠れる程度の薄い土壁だが、この壁がなかったらおそらく我が家も被害を受けていただろうと想像ができる。この土塗りの住宅が風下側の防火壁になってくれたのは明らかだった。屋根の上でこの妻壁に感謝と感動を覚え、土壁の良さを再認識する出来事だった。

土壁に感謝 感謝。

■軒裏の木を表しにできる!

建築基準法に書かれている防火構造の仕様の中には、土蔵壁や土塗り壁(外壁に下見板を張ってもよい)の規定もすでにありました。しかし、蔵ではない普通の住宅で、軒裏まで土や漆喰で塗り回すとなると、工事としてなかなかやりにくいことです。そこで、せっかく真壁に土壁で造った家であっても、軒裏の規制を守って防火構造にするためだけに、せっかくの木の軒裏に不燃ボードを張らなければならなかったのです。ボードの下には厚い野地板があって、そこで十分な燃えしろが取れていたとしても、木をむきだしにして仕上げることは許されなかったのです。

ところが、近日中に施行される予定の告示改正で「野地板およびたる木を、それぞれ30ミリ以上、45ミリ以上の木材でつくる軒裏」という仕様が認められるようになります。隣家からの火炎が軒裏にかぶってきても、建物内にある一定時間火炎が侵入してこなければ建物内部での被害は発生しない、という防火性能の考えから「木材に十分な厚みがあれば、木をあらわしたままの仕上げでよい」ということになったのです。

法律は時代につれて変化する生きものです。防火構造の細かな仕様も、時代を反映して少しずつ改訂を重ねてきています。高度経済成長期には、新建材による防火性能の確保にその力点がおかれていましたが、環境に配慮する社会をめざすという流れの中で今、「準耐火構造」や「防火構造」に木や土を使うことのできる選択肢が広がる方向になってきています。そしてその答は、特別な新しい構法にでなく、自然素材を使った伝統的な木の家づくりの中に、すでにあったのです。

この数ヶ月の間に、伝統構法にも関係する告示が次々に出されています。先人の代から次の世代へと、「よいもの」が時代に合った形でつながっていくことが真の伝統です。「いつまでも受け継いでいける技術」が何なのか。それを洗い出し、確認し、共有できるような形で次世代に継いでいくことは、とても大事ですね!

川越の町並み

なまこ壁

告示改正を伝える住宅新聞(04/4/5) クリックで拡大

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