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探ってみよう、木の家の「底力」

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■「古い道理」の見直しと科学的な検証がはじまる

西洋の建築学の流れをくんだ「新しい道理」に対して、「古い道理」は大工棟梁が経験則としての造り方の道理を伝えて来た技術であり、科学的とはいえず、耐震性もないだろう、というのがコンドル博士以来の建築行政の流れにあったように思われます。 でも、本当に「古い道理」は科学的に耐震性をもたないのだろうか? これまで経験則としてしか伝えられてこなかったものを、科学的な検証というまな板にのせてみよう、という動きが今起きてきています。

大工技術という日本の文化を支えてきた技術を継承することの社会的な意味、自然素材を多用する伝統的な家のすぐれた環境特性への注目、まちなみの再生・・・さまざまな視点から起きて来た動きです。阪神大震災という大きな災害を契機として活発になっています。戦後日本がたどってきた急速な変化の中で失ったもの、切り捨てたもの、忘れて来たものの価値がようやく見直されているのです。

「古い道理」は古いし科学な根拠のないものだからすぐれていない、あるいは古くから大工棟梁たちが伝えて来たものだからこそすぐれているはずだ、という議論ではなく、建築学的には「番外地」であり続けて来た日本の大工技術を科学的に再評価していこうということです。「古い道理」は「新しい道理」によって乗り越えらるべきものではなく、「新しい道理」では見落としていた考え方にもとづく道理なのだ。優劣をつけるのではなく、それぞれちがった道理として検証してみよう。そしてその中から「古い道理」がもっているすぐれた要素を「これからの道理」として活かして行こうよ、という考えです。「古い道理はよくないもの」と決めつけてきた時代の学者には考えられない研究姿勢が建築学の世界にもようやく登場してきたのです。

さる5月15日、木造に関わる研究者や実務者である設計士・大工などが学び、情報交換しあうために組織された「NPO木の建築フォラム」の公開フォラムで、「木構造の実験報告」がありました。(木の家ネットのメンバーで参加している方も多数います)「日本に昔からある木の家は地震に耐えるのか?」ということをさまざまな視点で探っている研究や実験の報告がされていました。このような発表会が開かれること自体が、「職人の手によって造られてきた日本に昔からある木の家」が見直されているあらわれと言えるでしょう。

※右の写真の模型は6/4までの水曜?土曜 午後午後1時?4時半、武蔵野美術大学8号館北側、建築学科工房二階の源スタジオにて展示しています。(問合・042-342-6067)

■これからの道理を探る流れ

木の建築フォラムの中心的な役割をになうひとりである大橋好光先生(木の家ネットの第二期総会で講演をしてくださいました)はこう言います。「伝統的な建物が古いから悪いのでもなく、古いからいいのでもない。きちんとつくられたいいものはいいし残っている。いい加減につくられた悪いものは地震でとっくにつぶれている。いい建物や、いい建物をつくる技術から、学べることがたくさんあるはずだ」。

その確認ために実験を行い、検証することで木造技術として明確に位置づけるという作業がさまざまな研究機関などで行われるようになってきました。木の家ネットのつくり手メンバーたちが家づくりの現場で実践している再発見の作業が、建築の研究分野でも始まっているのです。

「木の建築フォラム」では、7人の発表がありました。あまりにも専門的な内容なのでここでは詳しく述べることはしませんが、ざっとご紹介します。詳細をご覧になりたい方は木の建築フォラムで報告集を頒布していますので、右の連絡先にお問い合わせください。

  1. 若い大工が伝統的な大工技術や構造を学ぶ「大工塾」(出身者の多くが木の家ネットのメンバーとなっています)での実験報告
  2. 仕口に用いられる込み栓の強度実験
  3. 戦後に建築基準法を守って建てられた公営住宅の取り壊し実験、振動台に乗せての実物大の建物の加振実験
  4. 建築基準法における土壁の見直しにつながった土壁実験
  5. 戦後に建築基準法を守って建てられた公営住宅の取り壊し実験、振動台に乗せての実物大の建物の加振実験
  6. 五重の塔はなぜ地震で倒れてこなかったかということについての観測データをもとにした検証
  7. 古い民家の静的加力実験から変形、接合部の強度、限界耐力計算との比較検討

■家づくりの現場、研究者、法律がよい形でつながることに期待!

研究者が実験をし、その結果を出して行くことが、建築基準法における伝統構法の再評価につながっています。(大橋先生の土壁実験が土壁の壁倍率の評価を上げる「土壁告示」につなげていったことについてはこちらをご覧ください)「次のテーマは差鴨居です」と大橋先生は話しています。実験で明らかになったことが、これまで番外地におかれてきた「大工の木造」を正当に位置づけて行くことにつながります。研究の方向性が「大工の技術」から離れて行くことがないために、現場と学問の世界との交流、対話、情報交換が大切です。「木の建築フォラム」はそうした場のひとつとして期待されています。

ずっと画面の横でご紹介してきた西澤政男(木の家ネットの会員)さんの「伝統工法による木造住宅5分の1模型」は、木の建築フォラムに集った研究者や実務者、学生たちに大きなインパクトを与えていました。模型だからといって省略したりすることなく、実際の住宅と変わらない技術をかけて刻み、組み上げられました。その家の細部を観察し、手で「加力実験」する研究者の姿もありました。(触ってはいけません、という立て札がないばかりか、触ってみてくださいと書かれた仕口の実物模型が置いてありました)「伝統の技術で建てられたよい建物」に触れるということは、研究者にとってもよいインスピレーションを与えたにちがいありません。

研究者も多く学術的に全国活動をおこなっている「NPO木の建築フォラム」と、木の家づくりを実践するつくり手の集まりである「職人がつくる木の家ネット」とは、それぞれの立場で、「古い道理」のよいものを「これからの道理」につなげていくための努力を重ねています。大地震のたびに、建物の梁にはさまれて圧死する方がいらっしゃることは、とても残念なことです。家づくりとは、なによりも家族のいのちを守るものでなければなりません。安全に長く住み続けることができる家づくりをするための「これからの道理」がさまざまな立場で、日々追求されています。

2005.5.15 NPO木の建築フォラムで行われた 木構造の実験報告

報告資料は千円+送料で下記にてお求めいただけます。

〒104-6204 中央区晴海1-8-12 オフィスタワーZ 4F (株)日本建築センター 内 NPO木の建築フォラム事務局 TEL: 03-5144-0056  FAX: 03-5144-0057  E-mail: office@forum.or.jp

1.自分がつくるもののリアリティを追求する大工たち?大工塾主催耐力壁実大実験報告

丹呉明恭建築事務所

丹呉明恭

2.ほぞ差し込み栓の実験 – 込み栓の樹種・寸法・形状・金物との併用実験報告

雇用能力開発機構 関東職業能力開発促進センター

渋谷泉

3_1.既存木造住宅の静的加力による倒壊挙動とその経年劣化の影響

3_2.大大特木造住宅倒壊実験

国土技術政策総合研究所 建築研究所

槌本敬大

4.土壁の強度 – 実験に見る実際の土壁の壁倍率

武蔵工業大学工学部建築学科

大橋好光

5.東北の伝統的民家の水平加力実験

工学院大学

宮澤健二

6.伝統的木造五十塔の振動特性に関する研究?伝統構法五十塔の地震観測

東京都立大学大学院工学研究科建築学専攻

藤田香織

7.伝統構法木造建物の耐震性能評価実験 – 東三河伝統民家耐震調査実験

京都大学防災研究所

鈴木祥之

主催・木の建築フォラム

会場・東大弥生講堂

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