「来て5年になる子に墨付け任せてます。責任もたせると、がんばるんや。毎晩夜なべしてるよ」
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大工・川村克己さん(川村工務店):石場立ての家

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家を建てる人に選んでもらえる機会をつくる、 ちゃんとした家を建てられる大工を育てる。

プレカットでは木が活かされない

「今在家の川村んとこで修業した大工なら、と言わるようになれば、本望や」と川村さん。

高度経済成長以降、質より量、経済優先という流れの中で、大工の腕の発揮しどころである墨付け・刻みの工程は、プレカット工場での大量生産に置き換わってしまった。木を見る大工の目も、手の技術もいらない。「やりがいないですわ。金物つけたりパネル打ったり、いちんちじゅうビスをびゃ?んではね。」木材も細くなっていった。プレカットの家の材積は、太い木と木が組み合う伝統構法の3分の1以下だ。軸組の粘りによってでなく「剛(かた)い、強い壁」をつくることで地震に耐えるために、細い柱や梁を金物でつなぎ、柱間に筋かいやパネルを入れて強度を出す。壁の下地になりさがった柱や梁は、ボードやクロスで覆われてしまうつくり方になってしまった。そこに大工の手仕事の跡はない。

広い工場の二階には川村さんがつくった模型や木工品が所狭しと並んでいる。手にしているのは、学習会で使った壁のサンプル。右奥は森の動物が枝にとまっている木。

大手ハウスメーカーの重役が、建築中のオープンハウスを見学しに東京からわざわざやってきた。案内すると「木造はこうがいいと、分かってはいるんだが・・」と吐露した。プレカットが本来の木の家づくりでないことを、その重役は知っているのだ。家づくりが目先の経済を優先し、大量生産の流れに乗ると、丈夫な架構を約束する木材費やきちんと施工する大工手間に資金がつぎ込めなくなる矛盾をも。

分かる人、つくれる人を育てること

これも学習会で使った四方差し断面サンプル。「細い材を金物でつなぐのと、太い材を金物なしの仕口で組むのと、どっちがいいか、一目で分かりますやろ?」

在来木造・パネル工法・ツーバイフォー・・・。今の家づくりには選択肢は多く、人は迷う。「みな、知らんのですわ。」だからこそ、伝えなくては。太い木をしっかり組む木組みなら、金物に頼らなくても地震にも粘り強いことを。地元の木を使うことは山の再生につながることを。木の調温調湿機能でエアコンに依存しない暮らしがあることを。かつて「あたりまえ」だった伝統構法を「知ってもらう、選んでもらう」必要がある。オープンハウスがそのきっかけになれば、と川村さんは願っている。

なるべく地元の木を使うようにしている。同じ東近江市の永源寺の山からの材。

みんなが休憩する事務所には板に墨書きで川村さんお気に入りの言葉が書かれている。

川村工務店のある今在家の四つ角に立つモニュメントは「愛ちゃんと勇気くんや。愛と勇気をもって伝統構法やってこうっていうことですわ」。

川村さんの下では、息子さんたちを含め、5人の若者が互いに切磋琢磨し合い、若いながらもしっかりと伝統構法を身につけていっている。川村工務店のある今在家は、優秀な大工が多いことから「匠の里」とよばれてきた。その地で川村さんは、伝統構法の家づくりを未来に向けてつなげるための種を播いている。それはやがて大きな木になり、湖東の地に新たな種をたくさん落とすにちがいない。

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左・中/川村工務店のこれからを担う若者たち。みんな生き生きと仕事している。
右/笑顔で上棟の川村さん。