主屋から正面に張り出したおおらかな屋根が印象的だ。はめころしのガラス窓からも光が入る。
1 2 3

設計士・佐々木文彦さん(ササキ設計):老後を田舎で暮らす家


昔の民家風ではない、のびのびとした 明るい木の家に住みたかったんです。

新興住宅街の中に一軒だけ立つ木の家。こんな家が並ぶ町並みになったら、すてきだ。

仙台のベッドタウン、築館。ハウスメーカーの家が並ぶ分譲住宅地の端に、田中さんの住む木の家を訪ねた。

木の家でも日本の軸組を選んだわけ

リビングに続くダイニングと台所を見る。台所の上はロフトになっている。

山登りが好きな田中さん夫婦は、築館にほど近い栗駒山によく遊びに来ていた。その縁で、ここに退職後に年老いたお母さんと住む土地を求めた。自然が好きで「住むなら木の家」と考えていた二人。「といって、ログハウスや洋風の木の家は開口部がせまいのがぴんとこないんです。掃き出しの大きな窓があって、風通しのいい家がいい、ということで、最初から日本の軸組の家を希望していました。」とご主人。「かといって、家の中が暗い民家風はイヤだったんです。」と奥様。

北上産のヨシでつくったヨシ戸の向こうは、リビングに続く夫婦寝室。開け放つと、リビングとつながった広い空間になる。

住んだことのない宮城県の気候風土を熟知していて、日本の軸組を活かした、かつ民家風でないモダンな家づくりをしている人は? インターネットや建築雑誌で探して、佐々木さんの仕事に出会った。さっそく見学会にでかけ、何軒かの家を見せてもらった。「どれも木をあらわしにしていて、しかも明るい家なのが気に入りました。」

大きな木にいだかれた住まい

台所上のロフトから、木組みをながめる。家そのものが大きな枝振りの木のようだ。

大きな平屋だ。玄関ホールの板戸をあけると、手前に南北の奥行きをいっぱいに使ったリビングダイニングが広がる。無垢の床板が素足でも気持ちがいい。

深い軒のさしかかった、裏の雑木林につながるテラス。ダイニングから見る雑木林の風景は、ここが住宅分譲地の中だということを忘れさせる。

家の中心部へと上る屋根裏も、それを支える太いのびやかな木組みもあらわしの、木の大空間だ。南の表庭、北の自然林、両方に掃き出し窓。家にいながらにして、外の森の風景の中にいるような開放感だ。

北側の雑木林を見ながら入れる、明るいお風呂。

奥に行くほどに、プライベートスペースになっていく。本棚をつくりつけた中廊下をはさんで片側に台所、洗面所、トイレ、風呂といった水回りが、もう片側に和室、クローゼット、寝室、お母様の寝室が配置されるが、小屋裏はすべてあらわしだ。

「床は無垢の板だから、家じゅうどこでもごろごろできるでしょう? どこからでも木組みが見えて、気持ちいいんです。」一本の大きな木の下に、さまざまな部屋があって、どこにいてもその大きな木の梢に守られている、そんな感じのする家。大きな平面の平屋ならではだ。

これまでハウスメーカーの家にも、コンクリート造の家にも住んでいたという田中さん。でも、ほとんどの時間を家でのんびり過ごす終の棲み家には、「生活のよろこびの質」重視で、木の家を選んだのだ。


1 2 3
田中さんご夫婦と佐々木さん。「家にいることが快適。満足しています。」と田中さん。