上棟の日の朝、模型を手に説明をする北山一幸さん(右)と星野将史さん(左)
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工務店・星野将史さん(星野土建):木組み土壁のシェアハウス「ヨツバロッヂ」入居者募集中!

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ヨツバ・ロッヂ誕生を通じて
人育て&文化交流

ヨハナ 今回は、大工棟梁が静岡の北山一幸さん、左官が和歌山の小山将さん、また、上棟には三重の池山琢馬さんや増田拓史さんと遠方から応援が来ていましたが、そのようなメンバー組にされた意図は?

星野さん 星野土建にも以前から木組みの家づくりを仕切ってくれている若林棟梁をはじめ、大工のチームは社員、外の人合わせて3〜5名で常に2〜4現場はまわるような体制になっていて、今もヨツバ・ロッヂ以外で3件の現場が動いています。社員の最年少の大工が上岡谷裕平といって、今、23歳。高校卒業後、大工育成塾の研修生としてうちに来た彼を、木の仕事をきっちりしてきている若林棟梁がみっちり育ててくれ、3年間の研修終了後、そのままうちの社員になりました。性格も素直で、若林棟梁に教わることをぐんぐんと吸収している彼を、いちど同じような伝統的な構法に取り組んでいる外の棟梁のもとに修業に出したら、さらに成長するだろうな、いう思いから、刻みの段階から裕平を北山さんにつけたんです。

星野土建の上岡谷裕平さん

 

ヨハナ 刻みは三島にある、北山さんの加工場で?

星野さん そうです。一ヶ月ちょっとの間、三島に泊まり込みで、北山棟梁の下で刻みをしてきました。刻んだ材と北山さんと一緒に横浜に帰ってきた彼は、もうひとまわり成長していましたね。羨ましいくらいでした。熱心で職人向きな、良い人間なんですよ。北山さんもその人柄を感じて、よく面倒をみてくれました。その後、三重にも地棟の丸太の加工に出かけていき、向こうでもかわいがられたようです。

ヨハナ ヨツバ・ロッヂの現場が、人育ての場にもなったんですね。

星野さん 私は設計からこの世界に入りました。大工ではありませんので、大工技術という面で裕平を育てることはできません。この人は、と思える人といっしょに仕事できる現場を経験させてやる、そういった場をつくるのが、ぼくのできる人育てなのかなと思います。

地方と都市のつくり手のコラボレーション
多様な意見の中から、考えが育つ

ヨハナ なぜ、北山さんと組んだのですか?

星野さん ぼくが木の家ネットに入会して初めて出席した、川越での総会の宴会でいっしょの席で、知り合いのいない自分に話しかけてくれ、まわりの大工さんに僕を紹介してくれたり、目をかけてくれたのが、北山さんでした。いわば、木の家ネットでできた初めての仲間です。今回、北山さんに声をかけたのは、うちでいつもやっている梁通しの木組みを実践していて意思疎通がしやすいからということ、こちらでは機会の少ない土壁の家を普段からあたりまえに施工しているからです。けれど、それ以前に、そんな彼の人柄に惹かれていたからということが大きいですね。

ヨハナ 技術も大切ですが、木の家づくりはチームでの作業ですから、相性もほんとに大事ですよね!

星野さん 仕事を進めていくうちに、つながりがつながりを呼ぶようにして、池山さんや増田さんも手伝ってくれました。上棟はうちの若林棟梁や現場監督も参加してのオールスター混成チームになりました。

星野土建の若林棟梁(右)

 

ヨハナ 静岡や三重といった地方と横浜の都市部とでは、大分仕事のやり方が違うのではないですか?

星野さん 木組みも左官も、地方によって微妙に違った考えがあるますね。地域の違い以上に、地方と都市部との違いは大きいですね。都市部での施工には、土壁の防火性能や耐震性能もシビアに求められます。土壁の厚みをどう確保して木組みとのおさまりをするのか、土や竹小舞の施工方法など、互いにいろいろな意見を出しあいながら、今回の現場にとって最上だろうと思えることを選択して、施工しています。多様な意見の中から考えが育ち、人が育つ。今の現場はそんないい雰囲気で動いています。

各地から集まってきた大工たちが、息を合せて掛矢を振るう。

土壁体験がもたらしたもの
人の手で、近くにある材料で家は作れる!

ヨハナ 土壁は、荒壁土に藁を入れて混ぜるところから、横浜の現場でされたんですよね。

星野さん そうです。近所の人たちも、なにもない更地に土のプールがあらわれて、何が始まったんだろう?と興味津々でしたね。土に混ぜ込むための藁や、小舞を編む竹を、田んぼや竹林に行って調達するところからやったのは初めての経験で、僕自身もどろんこになって素足で壁土をこねたり、竹を割ったり、貴重な体験がたくさんできました。

ヨハナ 小舞かきと土壁塗りは、ワークショップにしましたが、なぜそうされたのですか?

星野さん 家は買うものでなく、作るもの。すぐそこにある、自然の材料を使って作るもの。たくさんの「人」が関わって作るもの。そして作るのは、楽しい!そういったことを、ひとりでも多くの方に体験していただきたいという思いで、ワークショップにしました。参加者の中から入居したい人が出てくるというのが理想です。

ヨハナ 自分が入居するシェアハウスに、土壁塗りから参加できたら、こんなにステキなことはないですよね!!

星野さん ヨハナさんは、息子さんと小舞かきのワークショップに参加して、どのような感想をもたれました?

ヨハナ 割り竹を小舞竹の間に差し込んで、縄できゅきゅっと縛っていく。その繰り返しで、土をつける下地となる小舞が出来上がっていく。そうした一連の作業を体験してみると、ああ、これは、田や里山のあるところに住んでいる、ごく普通の人の生活の中から生まれた、手に届く技術なんだなーと実感しました。もちろん、きちんとした仕上げや精度のある仕事はプロでなければできないことなんですが、小舞かきや土塗り壁といった基本的な技術は、やってみればできる!ということが分かって、嬉しかったです。セルフビルトなんていう言葉がなかった時代から、そうやってきたんですよね。星野さんは、いかがでしたか?

星野さん ワークショップ当日のことではないんですが、池山さんと小山さんの粋な計らいでとっておいてくれててた地鎮祭の時の藁縄を使って、一カ所だけ、父と一緒に小舞かきをしたんです。ほんの短い時間でしたがが、ステキな時間になりました。

ヨハナ お父様が工務店を継がれた時には、もう土壁の仕事はなかったとおっしゃっておられていました。初めての小舞かきが親子でできて、よかったですね!

星野土建の今後
集まって住む「シェアハウス」の可能性

ヨハナ 上棟の後のお祝いでみんなで中華街に行った時に、紹興酒でほろ酔いのお父様に「将史さんのシェアハウス、どう思われますか?」と質問したんです。そしたら「息子の時代になってくんだから、思うことを思いっきりやっていってくれればいい」とおっしゃってましたよ。

星野さん 祖父の時代、父の時代があって、今の自分がいるわけでが、。高度経済成長期も過ぎ、環境や資源を意識せざるを得ない時代に入り、これまでとはまたちがった家づくりが求められています。私の考えを汲んで「やってみろ」と任せてくれる父に感謝しつつ、工務店経営者としてこれからの時代をよりよく生きることに取り組んでいきたいです。

星野将史さんの父で、星野土建社長の星野修司さん

 

ヨハナ ただただ頼まれた家づくりをする、というだけでなく、自然な家づくりの提案、地域づくり、人育て・・課題がたくさんあって、やりがいがありますね。

星野さん そうですね。星野土建を支える大工、スタッフ、そしてまわりのみなさんといっしょに、明るく前向きにやっていきたいと思っています。

ヨハナ ところで、シェアハウス計画は、今回のヨツバ・ロッヂ一棟だけでない、今後の展開もあり得るのでしょうか?

星野さん 不動産経営もしている立場からいうと「あり」ですね。星野土建で賃貸しているワンルームマンションもあるんですが、一人分の専有面積は小さくても、設備はフルにかかるので、結構、施工費は割高になります。それだったら、設備にお金をかけるかわりに、木組み土壁の家にしてもいいんじゃないか、ということです。古びたワンルームマンションにはなんの魅力もありませんが、木組み土壁のシェアハウスなら経年変化とともに魅力が増していくので、シェアハウスとして使わなくなっても、家族用の賃貸や売家に転用することもできます。

ヨハナ なるほど! 10年で魅力を失うものを作るより、賢い選択ですね。

星野さん もうひとつは暮らしのインフラは共用でいい、ということの合理性です。ひとりひとりがひと通りの設備を揃えた家に住むというのは、割高以前に、無駄に近いことです。

ヨハナ  給排水などの設備以外でも、冷蔵庫や洗濯機、テレビなど、一人暮らしなら買いそろえる家電類が、ほんとにひとりひとつずついるのかといえば、そうではないですよね膨大な消費だし、エネルギー消費量もばかになりません。

星野さん 今の人は、モノをもつという所有欲は少ないように思うんですよね。好きなものにはお金をかけたいけれど、家電一個一個を、自分で所有したいとは思わないでしょう?好きなものは欲しいけれど、好きなものにお金をかけるためにも、要らないものは所有しなくていい、という感覚は、あたりまえになりつつあります。

ヨハナ そうですね。たとえば、クルマが好きな人はもちろん自分の好きなクルマを買いたい。けれど、たまにクルマが使えればいいや、という人はカーシェアリングやレンタカーでいい。CDは買わなくても、レンタルやYouTubeで十分。そんな割り切り方が広がりつつありますよね。携帯電話やモバイル関係の利用料といった、以前にはなかったような出費もかさみますし。

星野さん モノはひと揃い持たなくてもいい。そのかわり、人とのふれあいは欲しい。そういう人が増えているように思います。つながり、きずな、という言葉がやたらと使われているのもそのような傾向を象徴していますよね。

建設現場の横を通る地域の人が、声をかけてきてくれる。

ヨハナ 「ネト充」「リア充」という言葉が一時はやりましたが、シェアハウスとはまさに「ネット上でなく、リアルな生活が充実する」ことです。生声で会話する、実際に会って何かする、そういうあたりまえのことが、見直されてきてもいるからこそ、シェアハウスが流行るんでしょうね。

星野さん 魅力あるシェアハウスをつくれば、人は入るし、入った人がそのシェアハウスを育ててくれます。人生がまだかたまっていない若い人が、木組み土壁のシェアハウスに住む体験をすることは、将来のその人の家づくりの選択肢にいい影響を与えることにもなります。

ヨハナ 所有しないという考えからすると、木組み土壁の家には社会資本としての価値が高いといえますよね。ヨーロッパの都市の中心部では、古い石造りの家のワンフロアをリフォームしながら賃貸するということもごく一般的なことです。日本でも人の寿命より長い木の家が、そのように活用されていくといいですね。

星野さん ヨツバ・ロッヂは、ワンルームマンションとは違って長寿命の家です。いったいどんな人が入れ替わりながら住んでいくのか、ヨツバ・ロッヂがどんな歴史をこれから刻んでいくのか、楽しみです!

ヨハナ 何年か後にまたヨツバ・ロッヂでどのような暮らしが展開されているのか、取材してみたいですね。

星野さん 星野土建のサイトからリンクするヨツバ・ロッヂのブログも立ち上げる予定ですので、今後の動向をぜひみなさんで応援してくださいね。なお、シェアハウス入居についてご興味ある方は、星野土建のWebサイトに入居希望者エントリーフォームがあるので、アクセスしてみてください。わくわくしながら、お待ちしています!

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上棟したばかりの頃のヨツバ・ロッヂ(撮影日:2012年11月19日15時)