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大工・中村武司さん(工作舎):旅する大工、つながる大工、話せる大工

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つながる大工:木の家づくりに関わりたい大工たちのネットワーク

「大工塾」

親父との仕事をしながら、機会があれば外に出て経験を積む、そんな生活をしているうちに、長野の富澤さん、長崎の池上さんとぼくの3人で埼玉県朝霞市にある初雁木材の新築工事の一部を任せてもらうというチャンスに恵まれ、ぼくはそのうちの下小屋(作業場)を、伝統的な木組みの仕事としては初めて、棟梁として請け負うことになりました。建前の手伝いとは違い、こんどは墨付け、刻みも自分の裁量でまとめあげることになり、悪戦苦闘しましたが、仲間たちにも助けてもらいながら、一ヶ月半後には無事上棟することができました。

こうしてぼくを含め、若い大工達の建てた小屋群が囲む中に、小学校の屋根組を再利用した「もくねっとハウス」(*2)も建ち、98年5月からは、ここの2階の研修室で、月一回、一泊二日の「大工塾(当時の名称は「もくねっと大工塾」)」が始まりました。これは、丹呉明恭建築設計事務所と山辺構造設計事務所が事務局となって運営している、主に大工を対象にした勉強会です。どのような住宅に住み続け、どのような住宅を造り続けてゆくのか、造り手としてトータルな視点で考えてみたいという思いからはじまり、今まで勘に頼ってきた大工の知識や技術に、ある程度科学的裏付けをし、棟梁として仕事をまとめていく上で関わってくるさまざまな問題に対しての考え方を身につけよう、というものです。授業は土曜の夜の一時限と、日曜の午前中から昼にかけての二時限。講師には建築や構造、木材、ゴミ処理問題などの専門家が来てくださいました。福島、佐渡、群馬、長野、長崎・・・。全国から車で、夜行バスで、集まってくる大工たちは、土曜の夜は泊まり込み。経歴や年齢はちがっても、新しい大工像を模索している点では、同じ。夜が更けても話は尽きません。

*2 もくねっとハウス

モクネット事業協同組合の関東拠点として、埼玉県朝霞市に98年にオープン。建物自体が、産直の秋田杉並材を活かした木組みの家のショールームとなっている。

大工同士のネットワークを育てたい

大工塾での構造実験

大工塾での構造実験

ぼくはその大工塾の第一期生(98年5月〜99年4月)として受講しました。山のこと、ヨーロッパでの職人の育成方法、産業廃棄物のこと・・・さまざまな講義があり、耐力壁実験など、構造実験もしました。これは、壁の構造によって、力を加えていったときにどのような変形・破壊のしかたの違いが出るのかを、自分たちの手と眼で実感できる、貴重な体験でした。大工塾に参加した大工同士のつながりはずっと続いていて、何よりの励みになっています。お互いの仕事を手伝う機会も多いし、これからもそうした連携はますます強まっていくでしょうね。2001年の4月から今年3月いっぱいまでは、第3期生が学んでいます。大工技術だけでなく、構造や環境、経営まで幅広い意識をもった若い大工たちが、お互いにつながりあいながら、これからの木の家づくりを担っていくことと信じています。

全国から集まった、大工塾第一期生

全国から集まった、大工塾第一期生

「職人がつくる木の家ネット」が、かつて「木の住まい」がそうであったように、大工をネットワークするものになっていくことを望んでいますし、そうなる日も遠くないと思っています。今ではまだまだパソコンを使わない大工も多いですが、近い将来にはみんながつながるためにあたりまえの道具になっていくでしょうしね。ネットだけではなかなか話もできないから、集まれる範囲内で、若い大工や職人の自主的な勉強会をはじめる、なんていうのもいいですね。

これから木組みの家づくりをめざす大工に伝えたいこと

去年の9月、静岡県湖西市に、ボルトなどを使わない木組みの仕事でまるごと一棟てがけた家が完成しました。丹呉明恭さんの設計で、棟梁として自分を選んでくれたのは、なんとお施主さんご本人。名古屋での「木の住まい」読者の会で、阪神大震災後の木造住宅の壊れ方を写真を見せながらレポートしたのを、聞いてくれていて、それでぼくを指名してくれたのです。

はじめから終わりまで自分でやってみて思ったのは、手間はかかるけれど、木組みの家を建てるというのはそうむずかしいことではない、とても基本的なことの積み重ねなんだ、ということです。基本的な上がり下がりの墨の打ちかた、追っかけ大栓、金輪などの主要な継手、渡り腮(あご)、重ほぞの納まりなどが分かっていれば、そんなに気負わなくたって、できるんです。だから、今までやりたいけどやる機会がなかった、という大工でも、大丈夫。もちろん実践は必要。大工塾や木の家ネットなど、つながりをうまくたどっていけば、現場に学ぶ機会はあるはず。道は必ず開けます!

湖西市 鈴木さんの家

伝統的構法の住宅として、はじめて一棟まるごと自分で手がけた「静岡県湖西市、鈴木さんの家」

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