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設計士・岩波正さん(三和総合設計):なんで木の家がいいのか、とことん考える

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ふだんからやっていることを
「ひとときネット」という形にしてみました

平成13年の10月に大津を中心にいっしょに仕事できる人と組んで「ひとときネット」という小さなネットワークをつくりました。内容的には、ずっと今までやってきたことと変わらない、国産材・自然素材で、庶民の住む木の家づくりなんですが、考えていることをあらわしたパンフレットをつくり、ひとときネットというマークもデザイナーの友人につくってもらいました。この事務所のとなりにある私の家がひとときネットの第1号。完成見学会には100組以上来てくれはりました。もう3棟め、4棟めを施工中です。

ひとときネットのメンバーは設計士が私とうちの奥さん、それからいつもいっしょにやっている工務店さん、大工さん。それから、県産材を使おうということで、木は滋賀県の、甲賀の森林組合から入れています。このメンバーとお客さんとで、木の家づくりを進めていこう、ということなんです。ひとときネットという形にすることで「こういう考え方でやっているんですよ」と、お施主さんと共通のベースをもつことがしやすくなりました。

このあたりだと、地に根ざした人が地元のつながりで昔からの工務店に頼むか「古くさい日本の家なんてイヤや」といきなりプレハブに走るか、どちらかが多いんです。ひとときネットが考えているのは、その中間。「日本家屋がイヤだったらメーカーハウス? そんなことはないんじゃないですか? 現代に合った木の家が建ちますよ」というあたりを、焦点にしています。

庶民に手の届く木の家をつくるのが
ひとときネットの仕事です

ひとときネットがつくる家は、庶民の木の家です。木の家だからといって、京都の数寄屋のような高級なものにはしたくない。庶民にでも手の届く木の家をめざしています。うちの奥さんも主婦しながら設計してますから、そんな感覚も反映されていますね。

木のよさを最大限に活かすために、木は一等材を、なるべく呼吸できるように、おもてに見える形で使います。また、日本の高温多湿な気候風土に合わせて開放性や通気性を考えます。

もちろん建て売りの値段ではできないけれど、住宅メーカーのプレハブの注文住宅ぐらいの値段ではつくれます。「木の家だから予算的にできない」ということにしたくないから、ほんとうに必要なものは何かをよく見極めてきりつめていって、ギリギリのところ、坪あたり62、3万円ぐらい。土壁や、左官仕上げの内装だと、もうちょっと出ますが、標準的な仕様であれば 仕上げ、断熱、構造含めて「ちゃんとした木の家」がこのくらいで建ちます。

基本的な標準を見失わないことが大事ですね。たとえば、ギリギリきりつめて庶民価格で木の家をつくろう、というところに、100万以上もするユニットバスや高級な輸入キッチンを入れたいと言えば、庶民的な値段では無理になってきますよ。そのあたりはお客さんに分かってもらって、あきらめてもらうか、別にお金を出してもらうかします。

とにかく十分に話をして
分かってもらうことが大事

岩波さんの自宅。左奥に見えるのは、隣の家の敷地に建っている蔵。一見すると一続きの建物のよう。

この庶民価格の木の家を実現するのって、結構大変なんです。木の家の良さを生かしながら、お客さんとじっくり話して、60何万に抑えて造るというのは手間がかかる。「これをやめて、あっちにかけよう」とか「ここにはほんとにこれがいるのか」とか、ひとつひとつていねいに考えていった積み上げとして、この庶民価格の木の家が実現できるんです。

作家性で仕事しているわけではないので、基本的には、打ち合わせを重ねていきながらお客さんの要望をいかにプラン化していくか、という手法になります。けど、お客さんの要望をただ受け入れるばっかりで木の家のよさをなくしてしまってはダメ。そのあたりを受け答えの中で気づいてもらう、というのがいちばん大きな仕事かもしれませんね。

一般の人は「木の家がいい」と感覚的に分かってはいても、じゃあ、どうすればいいのか、までは分からないんです。「お客さん、こういうこと要望しはると、木のこういうよさがなくなるんですよ」ということを説明します。間取りのイメージはあっても、深いところで、日本の気候風土にあうかどうかや構造的によいかどうかまではなかなかお客さんには判断ができないでしょう? そこをちゃんと説明して、住まい手にも、社会環境にも、長い目で見てメリットがあるようなプランにもっていくのが仕事ですね。でも「ここは木の家だから、こうなんだ!」と決めつけるようなことだけはしたくない。あくまでも話し合いで納得してもらって、きもちよく住んで欲しいなと思いますね。

町並みや風景に
なじむ家がいい

外に向けてデザインしよう、とは考えていないですね。このあたりは町並みも環境もいいところもまだまだある。だから、新しい家を建てることで落ち着いていた町並みの中に浮いてしまうことのない、ごく普通に風景になじむ家でいいと思っています。「がんばって建てはったんだろうけど、なんかイヤやね」と言われるようなのはつくりたくない。ひと味ちがっていいね、訊いてみたら設計士さんが建てはったのや、というのが理想ですね。

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