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林業・和田善行さん(TSウッド協同組合):山側から提案する家づくり

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日本初のスギ実大強度試験!

地元では、あたりまえに杉を梁に使っていましたから、強度がないはずはない、と経験的には思っていました。なぜ建築基準表に書かれたような低い値になるのだろうか・・と調べていったら、建築基準法に記してある数値は、たった3cm角の試験体を破壊して強度を測定しているとのこと。国立林業試験場(現・森林総合研究所)で相談してみたら「実物大の材で実験したら、もっといい結果が出るのでは?」とのアドバイスを受けたので、青年部の仲間達と話し合って、実大材をもちこむことに決めたんです。青年部の仲間である亀井さんの山の木を、正角、平角四種類、計124本、10tトラック1台分!を、県から運送費の分の助成を得て、日本初のスギ実大強度試験に持ち込みました。べいまつより強いという、それまでの常識を破る好結果が出て、勇気づけられました。

この実験がきっかけともなって、その後、徳島県に新しい試験機が導入され、このような実験は何度となく行っています。1990年には、丸太材、太鼓材、平角材のの実大強度比較実験をし、丸太、太鼓、平角の順に強いこと、そして、太鼓や平角にするのでも、白太の部分を残した方が強いことも分かりました。経験的に「強いだろうな」ということを、実際に実験して裏付けていけば、それは家をつくる人や住まい手が漠然ともっている常識をくつがえしていく材料になるんですよね。

葉枯らし乾燥を見直す

試験体を実験場に持ち込むにあたり、「木材は乾燥していないと強度が出ない」ということを言われ、前処理として乾燥を行う必要がありました。この時は人工乾燥をしたのですが、大変でした。どうやったら乾燥するのだろうか、木にとって本当にいい乾燥方法とはなんだろうか。そういう課題を与えられ、大型集材機が導入された戦後15年後ぐらいまでは地元ではあたりまえにやっていた「切り旬を守った葉枯らし乾燥」をもういちど見直すという新たなテーマが浮上してきました。

葉枯らし乾燥とは、木を伐る時に根株の上で山側に寝かすようにして倒し、枝葉を赤色っぽく枯れるまで残したままにしておくことで、太陽エネルギーと葉の蒸散作用を利用して木の内部から水分をゆっくり蒸発させて原木を乾かす、自然な乾燥法です。山ではたらく人にとっては、枝を落とす時にかたくなって大変なことではあるのですが、化石燃料も使わない環境負荷のかからないやり方であるし、経験的にはなんといっても色つやがよく、後からの割れや反りが少ないということは分かっていました。

少し前まではあたりまえにやってきていたこと、そして現代には忘れられようとしていることを、あらためて青年部の仲間たちといっしょに調べ直してみたら、これは知れば知るほど、太陽の力と木の生理そのものをうまく利用したすばらしい方法だということが分かってきたんです。

玉切り材では72日間放置しておいてもなかなか抜けない辺材の水分が、葉枯らし材だと、よく抜ける。心材との差が少ないことが、割れや反りの要因を少なくしてくれる。

伐り旬にもわけがあった!

まず、伐ってすぐの生材、伐った直後に枝葉を落とし丸太に玉切りして72日間置いておいた材、同じ期間葉枯らしした材とを比べると、葉枯らしをすると水分の多い辺材の含水率が下がって、全体の水分分布が均一になることが分かりました。玉切り材と葉枯らし材とを比較してみると、そのすごさが一目瞭然です。心材と辺材の乾燥度合いの差が少ないから、反りや曲がりが少なくなるんだということもあらためて分かりました。山から運び出す時の重量が、水分が抜けた分7割ほどになり、輸送コストをさげることができます。

では、とにかく葉枯らしすればいい、のかというとそうではなく、季節とも関係があるんです。昔から言われている「伐り旬」です。「虫がつくから春には伐らない」というんですが、実際に調べてみると4月〜7月頃は辺材部のでんぷん含有量がとても多くなるんです。それでキクイ虫がつきやすいんですね。8月〜2月でんぷんを消費していくことが分かりました。でんぷんが少ない上に、虫も活動しなくなるこの時期が伐り旬だったんです。第二に分かったこととしては、季節によって含水率がずいぶんちがう、ということでした。真夏は含水率が高く、冬は低い。でも、夏には太陽エネルギーが強く、冬には弱い。結果としては、丸太として出荷する時のめやすである含水率80%になるまでに7月〜8月に伐った夏伐りの木だと2ヶ月、9〜10月の秋伐りだと3ヶ月、11月以降の冬伐りだと4ヶ月かかることが分かりました。

玉切りしてすぐ製材、桟積みの天然乾燥で時間をかけて乾かす

さて、丸太まででやっと含水率80%。家として建つまでには、空気中の平衡含水率である15〜20%にまで水分が抜けていくことが、自然乾燥の最終目標です。そのために、葉枯らしを終えて枝を落とし、玉切りしたらすぐに製材し、桟積みしてゆっくりと天然乾燥させます。土台、柱、梁だったら2〜3ヶ月乾かし、その後さらに修正挽きをして出荷。板材は、薄板(15ミリ)の壁仕様は3ヶ月、床板は最低4ヶ月〜通常6ヶ月、厚板(30ミリ.40ミリ)の野地板仕様は4ヶ月、床仕様は6ヶ月で出荷しています。これだけゆっくりと時間をかけて乾かして、やっと製材品として出すことができるんです。TSウッドハウス材になるまでに、時間を追って含水率がどのように減っていくのがのぞましいのか、というめやすをつくりました。山に立っている木が建築材料として使えるよういなるまでに最低でも半年から1年ぐらいははかかるということがお分かりいただけると思います。

木を伐採してから大工さんが刻みに入るまでに「葉枯らし乾燥」製材して後の「桟積天然乾燥」と、ゆっくり時間をかけて木を自然乾燥していく。TS材出荷時の含水率は30~35%だが、刻みから竣工の間にも木は乾燥していき、最終的に平衡含水率(空気中の水分率)に近づいていく。無理に高温をかけて人工乾燥させた材と比べ、刻む時はしっとりとしていて、後から高温をかけたことによる内部割れが起きないのが時間をかけた自然乾燥した材のメリット。
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