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林業・和田善行さん(TSウッド協同組合):山側から提案する家づくり

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このままでは山から木が出せなくなる

TSウッドハウスの仕組みを運用する最終目標は、伐採した山の再造林や適切な山の手入れをすることで、山を健全な状態で持続していくことにあります。ところが、ここのところ、それが本当にきびしくなってきてるんです。最後に暗い話をするのも気が引けるのですが、木の家や自然素材に対する注目が高まっているのと裏腹に、木を育て、材木として出す山はこれ以上やっていけない、というところまで追いつめられつつあるというアンバランスがあることを、みなさんにも知っていただきたいのです。

みなさんもご存知の通り、昨年は全国、全世界的に地震、津波、台風など、自然災害が猛威をふるいました。私たちの山も、夏から秋にかけて大型台風に数回見舞われ、大きな被害を受けました。自然災害は天災、それ自体は動かしようのないことです。ただし、その被害がどのように及ぶか、ということは世の中のしくみそのものに左右される、ということを少しお話しましょう。

ここに、杉の立木価格、原木価格、製材品価格の推移のグラフがあります。

スギの立木価格は4,801円。およそ40年前の昭和40年が9,330ですから、なんと半分です。同じ昭和40年との比較を続けてみますと、中目丸太の原木価格はほぼ同じ。製材品となると、倍になってみます。

「平成十五年のスギ立木価格はピークであった昭和五十五年の五分の一の水準となっており、林業経営意欲を減退させている」と林業白書にある通り、特に、製材品よりは原木、原木よりは立木の価格にこうした影響が大きいのが左のグラフからも分かると思います。

このような下落ぶりの中では、林業経営の中の最大の経費である伐出賃金、つまり山ではたらく人に払うお金さえまかなえないのが現状です。立木、原木、木材の価格がピークを迎えた昭和55年と今とでを比べると、経費だけは確実に上がっているのが右のグラフから分かります。立木価格が下がっているからといって、伐出賃金を下げるわけにはいかないし、かといって、経費をきちんとまかなえる値段を付けようにも、市場では木が売れないから、それだけとれるわけではない。結果的に「伐ると赤字が出る、資産を減らしながらなんとかまわしていく」ような林業経営になってしまっているんです。葉枯らし乾燥のために、根株の上で山側に木を倒す。これはとても高度な林業技術です。「採算が合わなくなったから、どこででもよそではたらいてください」と言ってしまえば、その技術はあっという間に廃れ、TS材そのものが出せなくなってしまいます 。

外国の木や製材品に圧迫されていく国産材

木材の価格は、あくまでも市場の需要と供給の関係で決まります。お米のように政府がある価格で買い上げてくれるわけではない。ですから、供給に対して需要が少なければ、価格はいくらでも落ちます。需要が少なくなった原因として、建築の木造離れもありますが、その木造の中身も、外材や、最近では製材品として外国から入ってくるものが増えていることがあります。なぜそうなるかというと、ハウスメーカーなどが商社を通して、外国から直接大量に買い付けるからです。

外材の輸入が自由化されたのは、戦時中の乱伐と戦後の建築ラッシュで、国産材が足りなかった時から始まりました。ところが、いったん自由化となったら、堰を切ったように、国産材は外材・外国製材品におされ、今に至っています。国は外国産の一部の製材品や合板、集成材に関税をかけてはいますが、関税率は数%〜20%程度で、それさえ支払えば自由に輸入できます。 丸太の場合は無税で入ってきます。これでは国産材を守ることはできません。日本は人件費がもともと高い上に、山が急峻なために伐出経費がどうしても高くなる。その上、日本の木材流通は、原木市場、製材市場、材木屋・・と、業者が間にたくさんいて、どうしても値段がふくらみがちにある。大量に安く仕入れるには、船賃を払って、防カビ剤を大量にかけてでも、外国から持ち込んだ方が得だ、ということになるんです。

でも、よく考えてください。外国から木や木材が入ってくる分、国産材は売れないとなれば、日本の山にお金が入らないわけですから、伐採の後の造林や、間伐作業をおこなうことはできなくなるんです。手入れされない山は、地盤が弱ります。河川にも影響がでます。今回の台風被害の大きさ(詳しくは、TSのサイト内の台風被害状況レポートをご覧ください)には、そうした背景もあって、天災とばかりもいえないんです。

台風被害のための復旧補助金で
いよいよ下がる原木価格

さて、このような台風被害があると、国は、被害を受けた山に対して、折れたり曲がったりした木を整理して、山をつくり直すようにということで復旧補助金を出します。ふだんが伐出経費も出ないような情況ですから、補助金を使えるうちに、皆こぞって伐ることになる。折れて使えない木もたくさんありますが、中には市場にまわるものも出ます。市場では、需要もないのに供給が増えることになるので、木の値段はますます下がります。一見台風被害を受けていないように見える木でも、挽いてみたら内部割れがあるものも少なくない。「使えないのも混ざっているんだろうから」ということで、値段はますます下がる。せっかくの山を立て直すための補助金なのに、かえって原木価格、立木価格がかえってどんどん暴落するという悪循環が実際には生まれているんです。

TS材は、それを使う人に直接買って頂く「産直」なので、市場経済に依存していないのかというと、そんなことはないんです。山から出た材の5割は原木市場行き、2割は製材工場への直接売り、産直のTS材として使えるのはたった3割です。ということは、家1軒分のTS材を出すには、その3倍の原木を伐採するんです。TS材の売上と、原木市場の売上との合計で、なんとか伐出賃金や次の造林・育林費用が捻出するのです。ところが、7割の木が行く先での価格が、暴落しているんです。表を見ていただけると分かりますが、今、原木市場、製材工場に出て行く木の値段をすべて平均すると1立米あたり約2万円。平成8年頃の半値です。1立米あたり平均3万円はいかないと山の再造林費は出ないので、最近では徳島でも半分ぐらいは再造林せず、ほったらかしの山が増えました。木材は自然素材で何十年も生育期間があるので、古い木ほど欠点材(曲がり、色黒、腐り)の比率も多くなっていくので、ほうっておいていいことはないんです。特に今は、高樹齢だからといってそれに見合う値段がつくような情況でもないですし。うちの山では伐採量を半分ぐらいにして何とか再造林しています。どんどん大変になっていくのを実感しています。

行き先 割合   平均価格(1立米あたり)
TS材 30% 80年生、良材
20,000円〜30,000円
原木市場 50% 80年生
10,000円
製材工場 20% 芯去柱用 (40cm〜)
30,000円
  小径木 (14・16cm)※
13,000円
すべての平均(平成17年現在)
20,000円
すべての平均(平成8年)
40,000円

1立米とはどれくらいの量なの?

たとえば10.5cm角の柱をとるのに適した、末口直径16cmの丸太(表中の※のランク)だと、長さ4mのもの10本分(つまり柱10本分の原材料分)にあたります 。

原木市場や製材工場に出しても造林費用すらまかなえないような情況の上にに、山そのものにも台風被害があってよい材を得るためによりたくさん伐らなければならないとなると、家1軒分のTS材をつくるために必要な経費はどんどん跳ね上がっていってしまうんです。でも、そうした情況があるからといって、むやみにTS材の値段を上げるわけにもいかないでしょう?

「山河破れて」どこへ行くのか日本

国土の森林を守るという観点から、国産材を外材の圧迫に対して保護するという政策をとることはできないのでしょうか。グローバル経済、自由貿易、という流れでは、競争力のある外材や外国製材品が入ってくるにまかせる以外ないのでしょうか。日本政府は日本の山を見捨てているのではないかとさえ、思えてきます。クルマをたくさん売るためには、引き替えに木や木材を買う、そんな取引のために、自分たちの国土が荒廃することになってもよいのでしょうか?

長い目で見れば、それは先々の何世代にもそのツケをまわす、罪なことなのです。外材や外国製材品に関税をかけることができないのならせめて、環境的な側面から外材や外国産製材品を購入することについて「炭素税」を課するとか、国産材で家を建てる人の住宅取得に関する税金や固定資産税を優遇する措置をとるとか、ほかの策があってもよいのではないでしょうか。

せめて、このインタビューを読んでいるみなさんには、分かっていてほしい。自分がどこの木を使おうとしているのかを意識した消費行動をとってもらいたい、と思うのです。あるいは、日本という国が、対外的な経済以前に、国土そのものを守る政策に変わっていくような人が政治の舞台にでてくるように声をあげてもらえたらと思うのです。日本の議員さんの中で、どれほどの人が日本の山河のことを真剣に考えてくれているのでしょうか。人工林率の高い日本で、山を維持するのが仕事の林業家がつぶれてしまえば、文字通り山河が荒廃します。「国破れて山河あり」でなく「山河破れて」後になにが残るというのでしょうか・・・。

私は最後の望みを、住まい手のみなさん、一般の消費者のみなさんに、かけています。20年前にはほとんど流通していなかった無農薬野菜、有機野菜がいまや、市場に出回っています。そして、環境と健康を守るために求める人はその値段が多少高くなることをも了解し、生産者を支えているのです。山も同じです。政治的な解決がなかなかむずかしいのだとしたら、自分たちが山を支えるんだ!という意識をもつ人が、きちんとつくられた国産材の家づくりをすることで山を守るしかないんです。そのことが新しい流れをつくっていくことを信じています。

山の問題は、農薬や化学肥料の問題よりは多少見えにくいし、野菜は日々買うものであっても、家は一生に一度つくるかつくらないか、です。でも、だからこそ、こうした情況になっているのだということをまず知っていただくことからしか始まらないと思うのです。この「職人がつくる木の家ネット」や日本の山が健全でいられるように山と都市とを結ぼうとしている「NPO法人緑の列島ネットワーク」などが山の現状を発信していくことの意義もそこにあると思います。また、全国のさまざまな国産材の家づくりネットワークがほんとうに山を守る形で展開していくことを、心から願っています。このインタビューを読まれたみなさんの心の中でなにかが動き始めることを期待しています。

※TSウッドハウス協同組合の春の植林ツアー(2005/3/26-27)では、台風被害の山に木を植えます。詳細はこちらへ

TS材の技術資料のページはこちら

TSウッドハウス協同組合の取り組みについて詳しくはhttp://www.ts-wood.or.jp/にてご覧ください。葉枯らし乾燥や杉の強度についての技術資料、山と設計士と大工と施主の望ましい関係など、興味深い内容満載の充実したサイトです。

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