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設計士・古川保さん(古川設計室):木の家づくりは仕組みづくり

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2008年7月12日、東京の工学院大学でひらかれた公開フォーラム「このままでは伝統構法の家がつくれない!」で、古川さんが発表したスライドの一部を掲載します。

建物の構造安全性を確保するには(A)基準法で定める「仕様規定=筋交いや合板を規定の量以上入れた耐力壁をつくる」どおりにつくるか (B)「性能規定(仕様規定によらない場合は、個別に構造計算して安全性を証明)」か選べます。石場立てや足固めは「仕様規定」外なので(B)。限界耐力計算で構造安全性を証明します。

平成19年6月の基準法改正で、木造の2階建て等の「小規模な建築物(4号物件といいます)」であっても、限界耐力計算をするのなら「大規模な建築物」と同じ手続きを取りなさい、ということになってしまいました。書類作成費と申請費が多大。

地震に耐えるには耐震壁の強度だけではありません。粘りも必要です。左の図で黄色の面積が同じだったら地震耐力は同じです。

木造住宅は、腐蝕やシロアリの害など、足元の被害が多いようです。筋交いは接点に力がかかるので被害は50%でも耐力はゼロになります。貫は接点数に比例します。また、腰窓や小窓部にも貫は入れられます。

「土があればシロアリがいる」というほどシロアリの多い九州では、建物は昔から石場立てでした。布基礎を採用したら空気が動かなくなり、シロアリは木部に上がってきてしまうからです。

関東では土台+足固めがありますが、九州では土台敷き工法はほとんどありません。

断熱だけが話題になりがちですが、夏の輻射熱も相当なもの。温度計を外、縁側、室内と3箇所に置いた温度をご覧ください。ところが、深い軒の縁側には、仕様規定だと筋交いが必要となってしまいます。そこで、性能規定を使い、軒の分の耐力計算をします。

簡易住宅が増え、軒の無い家ばかりにはってきています。「軒の無い家」に生産時に膨大なエネルギーを使う太陽光発電をのせるより、「軒を深くする」という昔からの日本の知恵である深い軒を活用する方がよっぽど「省エネ」だと思いませんか?

エコリフォームが増えているのに、消費電力は過去最大と、現代の家づくりは矛盾だらけです。石油のような地下資源がなかったころの家づくりを参考にして家づくりをしませんか?

風は取り込むが家の中が見えにくい格子戸。簾。欄間。深い軒。無双窓…日本の家づくりには省エネの知恵がたくさんあります。

昔の家は暗いし、寒いし、現代のライフスタイルには合わないと思っていませんか? 断熱材を入れるなど、ちょっとした工夫をすれば、昔ながらの日本の知恵を活かした家づくりは可能です。

オール電化にするよりも、高気密省エネ住宅にするよりも、夏は風通しをよくし、冬は薪ストーブを使うという家づくりが、ほんとの省エネ。これは、田舎だったらできます。日本の土地の半分は、田舎。田舎だからできることを、しませんか?

大工職人がいない、だからプレカット…というのは、東京・大阪の話。伝統構法とは、普通の大工がつい最近まで建てていた構法のこと。地方には、伝統構法ができる職人はたくさんいます。むしろ仕事がなくて困っているのです。

石場立て&足固めの家には、基礎コンクリートの立ち上がりがありません。地震の時に揺れる地盤にあえて「しがみつかないのが良い」という発想です。

柱の中心には16ミリの鉄筋が入っていて、ガタガタとローリングして地震を吸収します。基礎の立ち上がりがあるのは浴室部分。ここは壊れるでしょうが、建物を倒壊させることはありません。

イカをサランラップで包んだら1日で腐りますが、スルメにすれば1年はもちます。木材もイカと同じ、有機物。サイデング等で包まないで空気にさらした方が長持ちします。ただし、軒は長くすること!(雨さらしのデッキは15年でダメになります)

真っ直ぐな木は柱に、曲がった木は梁に。完全に乾燥させた木より、少々生っぽい木の方が、伝統構法の場合には刻みやすくていいのです。木の欠点を荒探しして人工乾燥材・集成材・加圧注入材に走るより、無垢材を木の摂理に従って使う家づくりをする方が、山にとっても良いのです。

建築基準法・品確法・200年住宅に素直に従った結果、今の日本の家並みは「リカちゃん人形の家」みたいになってしまいました。これが法律を守った結果だとは、なんだか皮肉ですね。

元・東京地検の郷原信朗氏は「法令遵守が日本を滅ぼす」で言っています。法の基本的なことではなく細かいこと・枝葉末節なことばかりに目がいっているために膨大な法令ができ、法の本来の目的を見失っていると。なんとも「言い得て妙」ではないですか!

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