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工務店・西條正幸さん(ビオプラス西條デザイン):北海道で無垢の木の家づくり

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北海道ならではの寒さ対策、積雪対策

北海道でこれまで「無垢の木の家」が採用されてこなかったのは、なぜでしょうか?

一番の壁は「木の家は寒いというイメージ」です。「たしかに、昔の北海道の木の家は寒かったんです。断熱がされていなくて、だるまストーブをガンガン焚いても室内は外といっしょ、ということがよくありました。そのイメージが今も根強く残っているんですよね」しかし、見学させていただいた札幌の伊藤さん宅も、このあとご紹介する苫小牧の五十嵐さん宅も「冬もあたたかいですよ」と口を揃えて言います。「木の家で寒さを我慢している」というのではないようです。それでは、ビオプラス西條デサインでは、北海道の厳しい寒さに対して、どのような工夫をしているのでしょうか?

しっかり断熱をして
家の熱を逃がさないこと

苫小牧の五十嵐邸

「暖房方法以前に、家が熱を逃がさないことを考えなければなりません。そのため、本州以上に断熱性も気密性もしっかりと確保する必要があります」と西條さんも言います。そのために、北海道の一般的な木造軸組住宅では、室内側は石膏ボードを貼り、柱と柱の間にはグラスウール、ロックウールなどを充填する軸間断熱が一般的です。最近は住宅室外側にも発砲断熱ボードを付加断熱として貼る高断熱仕様の住宅も増えてきました。

壁断面(クリックすると詳細画面を表示します)

環境との共生に配慮するビオプラスでは、単に断熱性能の数字としての高さだけでなく、断熱材の素材が環境や健康に負荷をかけないことに配慮した断熱方法を選んでいます。「木材資源の再利用ということで、新聞古紙を粉砕してホウ酸を添加したセルロースファイバーを使っています。江別に工場があるので、輸送による環境負荷も少なくて済みます」。人の肌に触れ、室内の空気を作ってくれる内壁には、ホタテ貝の漆喰、珪藻土入り土壁、和紙、木創クロスなどのエコ建材が内壁の仕上げ材です。柱間にセルロースファイバーを充填し、杉樹皮をコーンスターチでかためたフォレストボードなど、自然系の木質繊維ボード類を付加断熱とします。その上から不燃材の鉱物繊維板「モイス」を張り、透湿シートで防水し、通気層をとった上から外壁を板張仕上げにする。というのがエコプラス西條デザインの基本です。「この断熱仕様で温度測定をしてみると、外気温がマイナスであっても、室内は無暖房で5度〜15度を確保できます」

気密性を確保しつつ
結露を起こさないためには?

断熱性能を確保すること自体はむずかしいことではないのですが、注意が必要なのは、気密性の良さにつきものの結露です。断熱性も気密性もよく、室内で発生した湿気の逃げ場がなくなり、さらに外気温との差が大きければ、結露が発生しやすくなります。特に冬場、ストーブの上にやかんを置いたり、室内で洗濯物を乾かしたりすれば、結露の要因はますます増え、外気との差だけでなく、ストーブを焚いている付近とそうでないところの温度差による結露も生じます。あたたかくなった北海道の家がかかえる室内の普遍的な問題です。

寒いからといって、外と通じている換気扇をまわさなければ、かえって、湿度の高さで、結露してしまいますので、換気は必要です。かといって、外の冷たい空気をダイレクトに入れてしまうと、こんどはその接点で結露が生じてしまいます。ビオプラスでは外気を一度地中や床下に入れることにより、空気をぬるめてから室内に取り入れるなどといった工夫をしています」

温水暖房またはバイオマス系暖房を

断熱がしっかり効いて暖房効率がよくした室内空間で、どのような暖房をするのでしょうか?「今ビオプラスで採用している暖房方法には、2通りあります。ひとつが、ガスや電気をエネルギー源にして温水をパイプでまわして、家じゅうを「見えない暖気」でくるむセントラルヒーティング。もうひとつが、薪ストーブかペレットストーブといったバイオマス系の主暖房をリビングの角に置き、どうしてもあたたまりにくいに場所には局所的に補助暖房をもちいる方法です。どちらを採用するかは、住む方と相談しながら、その家の形状やご家族のライフスタイルに合わせて選択していきます」

暖房方法の違い(クリックするとセントラルヒーティングの詳細画面を表示します)

「薪ストーブを置くというのは、強力な熱源を中心から放射状に熱が出ていて、そこから離れると温度は低くなっていくので、家の中には温度差や『コールドドラフト』とよばれる対流による風がおきることになりますが、温水セントラルヒーティングの場合は、開口部や壁、床など、外の冷気が伝わりやすいところにパイプで温水をまわすことで、家の空間全体をくるむようにしてあたためるので、家の中の温度が均一になり、『コールドドラフト』がおさえられます」

特に、窓下や吹き抜け部には、暖房パネルやパイプヒーターを配置します。「テラス窓のような大ききな開口部付近は、どんなにペアガラス以上の高性能なガラス窓を使っても、壁面とくらべれば冷気を帯びます。その冷たくて重たい空気がコールドドラフトとなろうとするのに対して、温水パネルから発生する暖気であたたかい空気の『エアカーテン』を窓面の手前につくり、窓からの冷気をおさえます」冷気の侵入や熱損失を防げば、暖房効率はよくなります。ポイントは家の暖気を逃がさないことにあるのです。断熱をしっかりして、窓からの熱損失をおこらないよう囲う、その内側に、見えない暖気で家をくるむわけです。

窓の下には、埋め込みヒーター(左)、パイプヒーター(中)、パネルヒーター(右)を配置し、エアカーテンをつくる。

「昼間外出がちなお宅でも、室内のサーモセンサーで温水暖房の温度設定を15度にしておけば、帰宅時に家が冷え切っていることもなく、冬も快適に暮らすことが出来ますし、窓面などに生じやすい結露も、この方法だと、解消されますよ」なるほど、お話をおうかがいしていると、北海道だからこそ工夫された、「昔ながらの木の家」にはなかったような新しい知恵が、しかも、無垢の木の家のよさをそこなわない形で、活用されていることが分かります。

費用の問題さえクリアできれば、温水暖房とバイオマス系暖房を併用するといった例もあるそうです。「晩秋や春先など家じゅうをあたためなくてもまだしのげけれど、あたたかさが欲しい時には、かえって効率がいいかもしれません。また、震災時のように電気などのインフラが使えなくなった時にも、自前で暖を取る方法としてシンプルな熱源を確保しおくことも必要な時代になってきたと思います」

屋根に積もる雪の対策

北海道じゅうが、冬になれば大雪に閉ざされるかと思われがちですが、そうでもありません。北海道自体が7つの気候区分に分かれており、積雪も気温もそれぞれに違います。たとえば、ビオプラス西條デザインがカバーするエリアである道央地域でも、千歳より南だと太平洋側の気候となり、気温は低いものの、積雪は冬でも道路が見えている程度しかありませんし、伊達支店がある道南地域は、津軽海峡を暖流の「対馬海流」が流れるため、北海道の中では「北海道の湘南」といわれるほど温暖です。ところが、ビオプラス西條デザインのメインエリアである札幌は、日本海側の気候で、冬の積雪量が多く、12月から3月は1m,時には2mの積雪となることもあります。こうした雪の中、人口が密に集中する百万都市として機能しているのはおどろくべきことです。たとえば、3車線ある広い道路が多いのですが、これは1車線分は除雪した雪が壁となって埋めてしまうからだそうです。このような札幌では、積雪対策、そして、積もった雪をどのように処理するかという落雪・溶雪対策なしには、家づくりは語れません。

屋根断面(クリックすると詳細画面を表示します):図の両端に見える折り返し付きの立ち上がりが、横張りにしたガリバリウム鋼板のジョイント部分で、雪止めとしてもはたらく。折り返しを二重にし、かつ防水テープを貼っている。ジョイントとジョイントの間に見える突起は、鋼板の歪み止めだが、これにも若干は雪止めとしてはたらく。

田舎で敷地に余裕があり、積もった雪を落とすスペースがあれば、屋根に傾斜をつけ、敷地内に雪を落とす「落屑屋根」のが一般的ですが、家が密集する札幌ではそうもいきません。隣地に雪が落ちたり、固まった雪が通行人にぶつかれば、トラブルの原因ともなりかねません。そこで、市街地では、雪を落とさずに風で飛ばすことに期待するストッパールーフや、わずかに屋根中央に向けて傾斜をつけ、屋根に触れている面から融けて水になる雪をダクトで下に流す「ダクト屋根」など、平らな屋根にして家が「四角い建物」になる例が多くなりがちです。「ビオプラスでは、ガリバリウム鋼板を横張りにし、鋼板同士のジョイントを通常よりも高くして雪止めを兼ねるのスノーストッパールーフを採用しています。フラットではなく、6寸~1.5寸ほどの勾配のついた、木の家らしい屋根をつくります。屋根に積もった雪が雪止めに食いつき、流れずに越せておくことで、風で飛ばされたり、融けて樋へと流れていくなることに期待する方法です」

エコビレッジ構想

伏古の家

北海道という地域性や、住む人の健康や環境に配慮した家づくりを知ってもらおうと、西條さんは今でもモデルハウスとして公開している「伏古の家」を、ゆくゆくはカフェとして営業し、自然素材や北海道産の無垢の木の家づくりについて情報発信をする拠点にしようという夢をもっています。無垢の木の家づくりが実現できるということが知られるようになれば、それを選ぶ人は増えるはずだからです。今でも雑誌に記事が掲載されたり、西條さんの家づくりについて知る手がかりはあるのですが「やはり、その空間に居て感じる心地よさを体験していただくのが第一ですから」と西條さんは言います。

伏古の家 ダイニング

また、個別の家づくりのほかに、札幌、伊達でそれぞれ、エコビレッジを構想しています。札幌では、都市型の農的暮らしをめざし、モデルハウスのすぐ近くの700㎡の土地に3世帯の住む無垢の木の家を3棟とコミュニティ菜園とを計画しています。都会に住みながら、家族の食べる野菜を有機農園でつくる、雨水利用や堆肥づくりなどを体験したり、菜園をつうじて、豊かな近所づきあいや、楽しい子育て環境あるエコビレッジを構想し、現在、残り1世帯の住まい手を募集中です。詳しくはこちらへ

札幌より温暖な伊達では、すでに計画が進行中で、2012年から住戸完成順に入居が始まっています。敷地は4世帯で1000㎡と札幌より広めで、それぞれのプライベート菜園のほかに共同菜園や広場、来客用の共用駐車場といったゆとりのあるプランになっています。現在、入居する4世帯のうち、2世帯が完成し、最後の1世帯を現在募集中だそうです。詳しくはこちらへ

化学物質を排除した、自然素材の家というだけではなく、寒さや雪対策や菜園生活を含めた構想など、どのようにして「北海道に生きる暮らしをデザインするか」をトータルに考えるビオプラス西條デザインの木の家づくり。自然な生活を求める住まい手の間でじわじわと浸透していくにちがいないと感じました。「こういった暮らしを実践していくための、特に子育て中の世代のみなさんのお手伝いをぜひさせていただきたいです!」と西條さんは言います。菜園のある、無垢の木の家で育つ子どもたちが、健全な感覚をもって未来を明るくしてくれることを願ってやみません。

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エコビレッジのスケッチ