木の家ネット事務局 八ヶ岳便り

2018年1月1日

石巻のマイケルの大工 兼 漁師人生

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12月半ば、岡山のジョン(アメリカ人)、事務局のヨハナ(ドイツと日本のハーフ)と並ぶ「木の家ネットの外人部隊」の一人で宮城県石巻在住のマイケルこと杉原敬(アメリカと日本のハーフ)から電話がありました。「今、牡蠣を剝いてるんだ。送るよ!」と。話を聞くと、マイケルは大工と漁師の二足のわらじで生きているというのです。

マイケルはもともと埼玉県飯能市で大工をしていましたが、2011年の東日本大震災を機に「復興大工」としてはたらきたい!と気持ちが強まり、震災の年の秋に石巻で行われた木の家ネットの総会で石巻の会員、ササキ設計の佐々木文彦さんとの出会いなどから、少しずつ現実になっていきました。

そしてついに、2012年7月「北上ふるさとプロジェクト」をたちあげ、津波被害が大きかった石巻市の北上町入り。プロジェクトのの主要大工メンバーとして、北上の復興に向けてWE ARE ONE北上の活動拠点となる建物の子どもハウスを木造で建てる仕事をしました。

2013年1月に工事が終わってからもそのまま石巻に居続け、地元の大室南部神楽に参加したりしながら、2017年3月まで地元のある工務店で大工仕事をしていましたが、4月で退社。それ以降は、直接マイケルに依頼がある時は大工として、それ以外の時間は漁師として生活しています。

以下、マイケルからの肉声でお届けします!

常に世間様にご迷惑をお掛けしている私ですが、今年もいろいろありました。3月いっぱいで石巻の工務店を退社したあとは、お施主さんだった漁師の誘いで、半分以上は漁師やってます。

4月は朝4時から船に乗ってわかめの刈り方と陸に上がってからはメカブ削ぎと塩蔵作業。5月は木の家ネットのコンテンツ「3.11後を生き抜くコミュニティーの力」で登場してくれたバビちゃん家で牡蠣むき&牡蠣上げ。

6月に入ってからは、前に建てた家の家具作りと仙台一の老舗呉服店「にしむら」の接客テーブル作り。

7月から9月までは荻浜(おぎのはま)で午後から深夜にかけてのハモ漁。船よりもずっと大きな波に揺られながら沖合に出ていき、ハモを穫るカゴをおろしてまわり、数時間後に回収すると、ハモがちゃんとかかる。海の恵みってすごいし、どこにハモがいるか分かる漁師は、海とお話できる人たちで、すごい。育てて収穫する農業よりは、もっとダイレクトに自然からいただく仕事だなと実感します。そして何より、金華山沖38度線付近の夕焼けが美しい!

シケで休みの日が多いので、合間に施主さんの家の外構工事や9月に志津川中学校でする木工授業の準備もしました。貫構造の模型のパーツは4000本。接合部は2万以上。時間かかりましたね。この授業は、震災後、南三陸町出身の大正大学の山内あけみ先生が主宰する中学生向けの連続講座「森里海連環学」の一コマでした。

「森里海連環学」とは、文字通り、森から海に至る生態系相互の関連、そしてそれらと人間との関わりを考えるという学問で、この連続講座には2か月おきに講師が来るのだけれど、僕の前は養老猛、僕の次が海洋学者で海洋研究開発機構(JAMSTEC)理事の白山義久先生と、なんとも豪華なメンバー。ぼくの次の講師の白山先生が属しているJAMSTECは世界に有数のめっちゃすごい研究機関です。海にまつわる環境がどのように変化してきたかという白山先生の話は木の家ネットの皆にもぜひ聞いてもらいたいくらいの迫力。CO2の劇的な増加が(これについては異論もあるが、今では様々な科学的検証の結果、ほぼそれが間違いではないことを示している)引き起こした気候変動、環境破壊と汚染の背筋が凍るような話、東日本大震災が起こったプレートとそのメカニズムの話、自然(海の生態系)がいかに力強いか、またそれが壊されるとどうなってしまうのかという話。今の生態系及び人類が今後50年以上持続可能なのか否かという、建築に携わる人たちも決して無縁ではない内容です。

9月末からはまた牡蠣むき&牡蠣上げ。11月半ばには、祖母が98歳で亡くなりました。軍属として夫婦で満州へ渡り、祖父は関東軍の一員として南方に赴き、フィリピンで戦死。僕の父を生んだ祖母は、母子で命からがら帰ってきたという人でした。合掌。12月21日には、もう18回目になる多摩美術大学環境デザイン学科での伝統木造の授業。今回は栗駒木材の材木で新規に刻んだ材を東京に運んで、学生たちと木組みをやりました。つまりこれが、2017年初めてで最後の新築ね。その後は、帰って29日までまた牡蠣むきをしていました。

ぼくの中では大工も漁師もつながってる。

漁師は、海から自然の恵みをいただく仕事で、人間の営みのせいでの環境の変化が、シビアにあらわれる。牡蠣をむく仕事をしていると、漁師たちは「実の入りが少なくなった」と言ってる。それも白川先生の話によれば、人間のせいで自然のバランスが崩れている結果。それが日々の仕事に直結している。

じゃあ大工は?といえば、環境をこわすように作るのも、環境を持続させるように作るのも、本人のやり方次第。僕としては、だったら持続可能な家づくりでなければしたくない。いかに快適でも、長持ちせず、ゴミになるような家づくりには手を染めたくない。「あたたかい家が欲しい」と要望されたとしても、化学系の断熱材を使えば簡単にできちゃうけど、そうじゃないやり方、木や土といった自然素材での家づくりを工夫して提案することだってできる。簡単ではないけれど、そうしたい。そうでなければ、大工をやる意味がない。自然をビシビシと感じる漁師をしながら、そのような思いは強くなってる。

木の家ネットのみなさんも、良いお年をお迎えください。

・・と、漁師兼大工として活躍するマイケルから、木の家ネット事務局をしているモチドメデザイン事務所に、クリスマスに「マイケルお手剝き」の牡蠣が届きました。生牡蠣のレモンがけ、牡蠣フライ、クラムチャウダーと、思いつく限りの牡蠣料理で、近所でプチ宴会をさせてもらいました。生牡蠣のほかにも、牡蠣とベビーホタテのオイル漬けも・・いやあ〜旨かった!

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