6/21 朝日新聞の社説「伝統木造構法―匠の知恵を地震列島に」が掲載されました

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2009年6月21日(日)、全国で800万部が購読される朝日新聞の社説に、伝統構法の記事がでました。執筆されたのは、朝日新聞論説委員の野呂さん、2008年12月、A棟の実大実験後のプレス発表時に、熱心に質問されていた方です。参考実大実験レポートの「どんな建物を揺らしたの?」のページ半ばに、プレス発表時のやりとりを掲載しています。

木の家ネットの大工で石場立ての工法を実践している川越の大工、綾部孝司さんの現場取材をふまえての記事となっています。全文を掲載しますので、どうぞご覧ください。


記事の全文

■伝統木造構法―匠の知恵を地震列島に

 
 
「蔵のまち」で知られる埼玉・川越で、大工棟梁(とうりょう)の綾部孝司さんは「伝統木造構法」の家づくりを手がけている。だが2年前、耐震偽装事件をきっかけに改正建築基準法が施行されたため、その構法を施主にあきらめてもらうケースも出てきた。改正基準法が、伝統構法の住宅にも高層ビル並みの厳しい審査を求めているからだ。

建築確認の手続きで、第三者機関などで構造計算が適正かどうか判定してもらうことが義務づけられた。「ピアチェック」という仕組みだ。費用がかさむうえ、複雑な構造計算やその審査に半年以上かかることもある。綾部さんは「施主に余分な負担をかけるわけにはいかない。このままでは伝統構法が廃れてしまう」と嘆く。

そんな切実な声を受け止めて、国土交通省は昨年度から伝統構法の設計法づくりに乗り出した。大学の研究者のほか、大工棟梁らも加わった委員会で、3年がかりで計画を進めている。

木造の住宅を建てる際、ハウスメーカーの大半が採っているのは在来軸組構法だ。その現代の構法では合板や筋交いを使って壁の耐力を増し、揺らさないように造る。壁量計算という手法で容易に基準法をクリアできる。現代構法の根底にあるのは、人間の技術で自然を克服しよう、地震力を技術で押さえ込もうという発想だ。

一方、伝統構法は自然には勝てないとの考えに立ち、地震力をやり過ごす柔構造に工夫がこらされている。柱と横材でジャングルジムのような立体格子をつくる。地震の力をその構造の中に受け入れ、揺れながら分散し吸収する。土壁は揺れを抑えるが、限界を超えたら壊れて衝撃力をそぐ。

予想を超える激震に襲われたら、石の基礎の上に置くだけの柱脚がずれたり浮き上がったりして、地震の揺れが地盤から建物に伝わるのを遮る。「石場建て」という伝統構法の最も重要な特徴だ。伝統構法による民家や神社仏閣はほとんどこの建て方だ。

ところが委員会では、「石場建て」による設計法が見送られそうな流れになってきた。大工棟梁たちは、伝統構法が現代構法のなかに組み入れられてしまうのではないかと危惧(きぐ)している。

「石場建て」はすでに関西では認められた例もある。国交省は振動実験などを重ねてその設計法をつくり、各地で建てられるようにしてほしい。伝統構法の民家は、地震で傾いても接合部に大きな損傷がなければ引き起こして修復できる。崩れ落ちた壁土も再使用が可能だ。大地震をしのいで、いまも使われている築100年を超えた民家も少なくない。地震列島で大工や左官が培ってきた技に謙虚に向き合い、その匠(たくみ)の知恵を生かしていきたい。

2009_0621_asahi_shasetu1実際の紙面です。クリックすると拡大します。

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