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「職人がつくる木の家」づくりを未来につなげるアンケート

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この「アンケート中間報告」は、2009年12月18日(金)まで公開で実施しているこのアンケートと同内容のものを、11月14日?15日熊本で行われた職人がつくる木の家ネットの第9期総会で実施して得た回答(201項目)から抜粋・整理し、中間報告としてまとめたものです。

家づくりに関わる法律は、建築基準法以外にもいろいろあり、それが障害になっている場合もあります。以下のQ9?Q15では、建築基準法以外のさまざまなポイントがあげられています。

問題となっている分野
09 シックハウス法

無垢材と自然素材でつくる家に、24時間換気は必要ない

建築基準法の一部の告示として施行されたものですが「シックハウス法」と呼び習わされています。新建材や合板などに含まれるホルムアルデヒドなどの有害化学物質を制限し、シロアリ駆除に使われていたクロルピリホスの使用を禁止することで、シックハウス症候群を減らすことを目的としています。

具体的には、ホルムアルデヒドを発散する内装仕上や天井裏に使う建材材の制限、24時間換気システムの設置義務づけといった内容になっています。無垢材や自然素材だけでつくる家にはもっとも関係なさそうな法律ですが、義務づけとなっています。 自然素材で窓も十分にとっているにも関わらず、全部屋に換気扇をつけなければならないのはおかしい。24時間換気も、家の内容に応じて決めるべきではないか。(静岡 大工)

耐力のことを考えると土壁に換気扇のための穴をあけるのは本当にいやなことだ。 (奈良 設計士)

自然素材でできている居室でも給気口をつけないといけないといけないといわれる。給気口だけが自然素材でないので、違和感がある。(兵庫 大工)

義務づけしている根拠としては、建築後にもちこまれる家具等に仕様される化学物質への対策としてということなのですが、むしろ家具等に使用される材料の方を規制すべきではないでしょうか。

もともと、有害な化学物質を出さないためにつくった法律なのだから、化学物質を出すおそれのない材料を使った建物についてまで換気扇義務づけをする必要はないはず。竣工前に計測して大丈夫であることを確かめるというやり方にしてほしい。(静岡 設計士)

法律をつくるにあたって、自然素材の家もあるということを想定していたら、少なくともこのように、つくり方によっては無駄でしかないようなものをおしなべて義務づける条文にはならないはずですよね。

問題となっている分野
10 瑕疵担保履行法

住宅化瑕疵担保責任保険への加入義務づけは制度的に矛盾している。任意加入であるべき。

2008年10月から、瑕疵担保履行法の施行により、住宅瑕疵担保責任保険への加入が義務づけられました。瑕疵担保保険とは、主に基礎や雨漏り関係のトラブルが起きた時に、施工者に替わって保障するための保険です。

まず、この保険の存在そのものに必要性を感じていないつくり手がたくさんいることが回答から分かり間ました。もともとつくり手と住まい手が顔の見える関係であればつくり手がメンテナンスや不具合の調整をするのはあたりまえという認識なので、必要性を感じていないのです。

我々のような顔の見える関係で家づくりする者にとっては、まったく不要な制度。(愛知県 設計士)

ハウスメーカーと違って、大工さんと施主さんの間柄は信頼関係でなりたっており、大工さんたちは「孫子の代まで面倒見るつもりでわしらは家を建てとるでな」と言っている。そこに新たな金銭負担を生じさせるのはおかしい。(三重 材木店)

昔も今もこれからも、家づくりの責任はつくり手が担うべきものである。保険で逃れるのは、ハウスメーカーの都合。(京都 大工)

ふつうに大工が建てれば、10年以内に保険を適用せざるを得ないような事態はほとんど発生しない。大手メーカーの手抜き工事を助長するだけなのでは?(三重 大工)

保険会社の基準には、建築基準法にはない雨漏り関係の規定があります。それによると、真壁づくり、木製建具は「雨水の浸入は本来の性質であって、瑕疵ではない」ということで、仮に雨漏り関係の問題が起きても、保険では「免責事項」ということで、保障されません。免責事項分だけ支払う保険料が安くなるわけではありません。保障されないことが分かっている保険に、決まった保険料を払わされる、書類作成や検査の受け入れなどの手間は増える。「いいとこ無し」のこの制度に、多くのつくり手が矛盾を感じています。

外部仕上げが土壁大壁、外部建具が木製建具、基礎は石という建物で、先日申し込みを受理してもらいました。外部壁、建具の雨水浸入は免責、構造部の歪みなどに対しても免責。ですが、費用は同じです。配筋検査も受けましたが「見る物がないですね!」と帰っていきました。(検査官も「費用は同じですか!?」と言っていました。)施主さんの意向があれば、保険料の見直しがあってもよいのではないでしょうか?(三重 大工)

伝統木造の住宅の場合、壁や基礎が免責となってしまい、屋根の部分しか対象にならないのに、保険料は同じなのは、おかしい。(三重 設計士)

保険を使わない人が、使う人の分の保険金を払っているようで、矛盾を感じます。(兵庫県 大工)

過去の記事をご参照ください:
「住宅瑕疵担保責任保険 伝統構法の扱いは?」
保険会社の設計施工基準では、真壁づくりの伝統構法はなんと「想定外」の扱い? 保険法人との質疑を載せています。

多くの人が次のように結論づけています。

保険屋のためのもの。実際には支払われない。(滋賀 設計士)

実質上まったく利用することのできないようは保険制度は、施主さんの利益保護になっていない。制度の存在自体に問題がある。(三重 大工)

これは任意でよい。(東京 設計士)

問題となっている分野
11 長期優良住宅

伝統構法の家が長期優良住宅ではないとは、いかがなものか?

平成21年度の補正予算では、50億円もの国家予算を割いて、5000戸を長期優良住宅として認定し、一戸あたり100万円の補助金を出しています。

「長期優良住宅」というアイデアが出始めた頃は「200年住宅」と呼び習わされていました。「200年住宅」(200年という表現に根拠がないために、今ではそうは言いません)聞くと、すでに長い年月を経て今なおある伝統構法の家を思い浮かべますが、じつは、長期優良住宅の基準を詳しく見てみると、伝統構法の家は基準を満たしようがないことが分かります。

長期優良住宅の基準の条件の中身は、2000年に始まり、あまり普及しなかった任意の制度である、住宅性能表示制度の「耐震等級2等級(基準法の1.25倍の地震動に耐える)」や「温熱環境等級4等級(次世代エネルギー基準)」を満たすことなのです。

これは、ほとんどハウスメーカー向けにできた仕様であり、がんばって木造でつくろうとすれば、合板だらけの家になってしまいます。つまり、伝統構法はつくれないのです。実際に、長期優良住宅として応募のあった住宅のうち、伝統構法のものはわずか数件だったそうです。このままの制度で古民家など、すでにある住宅ストックを活かす可能性は皆無です。 長期優良住宅で、水平力を維持するために構造用合板を使えと、説明会で指導される。こちらとしては火打梁もなるべく入れたくないのに。床下地小屋組を合板でかためるように言われる。(北海道 設計士)

合板を使った○○ホームが長期優良住宅で、伝統構法の家がそうでないのはおかしい。名称と内容とが合ってない。(愛知 設計士)

長期優良住宅がなんのための制度なのか、本当に社会資本としての住宅ストックを大事にするものになっているか、あるいは単にハウスメーカーの家づくりをしやすくする、一部の業界のためだけにある制度になってしまっていないか、公正な目での抜本的な見直しが必要ではないでしょうか。 本当に長持ちする家をつくるというよりは、中古住宅を転売しやすくするためのしくみではないのですか?(福岡 林業)

建物の構造の検討には、時間軸を考慮するべき。合板や金物など、20?30年でダメになってしまう材料に頼って100年もつ建物をつくることはできない!(愛知県 設計士)

問題となっている分野
12 都市計画法・用途地域

用途値地域による制限には、状況に応じて緩和するなど、融通が効いてもよいのでは?

用途地域によって、建てられる建物の用途や防火性能についての制限があります。まずひとつは、プレカット工場に発注するのでなく、自前の加工場で刻み作業をする大工からの意見として。代々、顔の見える関係で近所の仕事をしているエリアに、都市計画法の網掛けがされるようになると、そこで作業小屋をもつことがむずかしくなります。地域の大工として、これは死活問題です。 市街化調整区域に大工の作業小屋を建てられるようにしてほしい。(滋賀県 大工) また、防火地域、準防火地域、22条地域と、特に「延焼のおそれのある部分」にどれくらい木をあらわしにしてよいかが変わってくるのが、木の家づくりには大きく関係してきます。地域による網掛けで一律に、ではなく、たとえばその敷地が十分広く、建物周囲に空き地を確保できるなどといった場合の緩和措置があれば、市街地にも木の家の家並み、町並みを少しでも実現できるようになるかもしれません。 特に東京では準防火、防火に加えて新防火地域があり、木を活かした建物が建てにくい。周囲の状況や建物配置などによる緩和があってもよいのでは?(東京 設計士)

問題となっている分野
13 建築士法・資格

建築士への不信にもとづく義務の付与により、余分な事務仕事や講習への出席など、負担が増えるばかり。

改正基準法は一級建築士による耐震偽装事件への反動から施行された改正建築士法は「建築士という資格をもっているだけでは信用できない」というスタンスで、建築士という新たな義務を課するようになりました。具体的には、毎年の業績報告や3年毎に5時間の定期講習(修了時に○×式のテストあり、不合格の場合には要再受講)の義務づけなど。 毎年の業績報告書を要求されるが、実務者側の事務作業量は膨大。書いたところで、誰も見ないというのに。定期講習会費は高いし、内容は低い。独特の講習会ビジネスになっているだけ。(熊本県 設計士)

また、あらたに構造設計一級建築士の資格をもうけ、限界耐力計算など高度な構造計算が必要な物件については有資格者の関与が必要とされるようになりました。コンクリートや鉄骨造など、ビルをつくるのでない場合には必要のない知識があり、逆に、どんなにコンクリートや鉄骨造に詳しくでも「木材のことは分からない」という建築士は多いものです。 構造一級建築士が木造を熟知しているわけではない。木造二級建築士の上に木造一級建築士をもうけるなどして、木造に特化した専門的な知識をもつ人として資格を与え、責任と権限をもたせてほしい。(愛知県 設計士)
建築をつくる側ではなく、審査する側にある建築主事が「木造は分からない」と言い放つこともよくあるようです。法制度からははずれますが、資格制度以前に、大学の建築学科でも、木造や木構造をきちんと教えるカリキュラムがないことにも原因がありそうです。自国の建築文化である木造建築が大学教育で正しく教えられていないというのは、文化伝承の上で片手落ちです。長期的には解決していくべき問題でしょう。

問題となっている分野
14 相続制度

残すべき町並みを形成する持ち家には、相続税の緩和を

どんなに残すべき建物であっても、私的財産である以上、相続税を払いきれないということでやむを得ず取り壊すというケースも多いようです。民家の改修などを通して、そうした事例に接してきているつくり手からの意見です。 町並みを美しくする土地や建物については減税など、美しい町並みや風景が失われないための対処が必要(埼玉県 大工)

適切な補強やメンテナンスをしている伝統構法の住宅を所有するものが相続ずる場合、地域の文化を継承しているという公的な評価のもとで、相続を軽減する。(愛知県 設計士)

京都の町家改修を多く手がけておりますが、施主の悩みは次世代に引き継ぐことができるだろうか、ということ。まちなみを形成している、持ち家に対しては、住み継いでいきやすい緩和政策を考えないと、残せるものも残せなくなる。(京都府 大工)

問題となっている分野
15 これからできる伝統木造の設計法

伝統木造住宅の性能検証・設計法構築事業は伝統構法を残す方向で進められるべき。

実務者委員として事業に参加しているつくり手からの感想です。詳しくは次ページの新聞記事をご参照ください。 現在つくられようと進められている設計法は、昔からつくられたきた伝統構法を評価できていない。(滋賀県 設計士)

国交省の人の意識が変わっても、そのもとで法をつくっている人たちのグループが変わらなければ、同じ。木造であれ、2×4であれ、土壁構法であれ、一部の学閥に属する学者しか入り込めないシステムができあがっている。立場や権威、利権で動く人たちが、手の内で勝負を進めていく現状を変えなければ、次世代に問題を先送りすることになる。自分たちが社会的な動きとして変革をおこし、このような構図を崩していかないければならない。(三重県 大工)

問題となっている分野
16 その他

法律も、法律が変わったことも分かりにくい

これは伝統木造・伝統構法に限ったことではありませんが、今回のまとめを作成するにあたり、つくづく基準法は「分かりにくい」「条文を読むとまた別の条文を参照していて、あっちこっち飛んでいるうちに分からなくなる」ということがたくさんありました。

条文自体がなにか問題が起きるとバンソウコを貼り、また別のことが起きるとその上からバンソウコを貼りといった具合に何度も改訂を重ねてきており、その改訂が国民に周知されているかというと、そうでもありません。

今回もアンケートの中で「それはもう、別の告示が出て変わったよ」という例も、ありました。いつのまにか緩和されていたり、厳格化されていたり…。建築主事がその変化についていっていない場合も、よくあるようです。

建築基準法は、つくり手がきちんと参照できることで、基準となりえます。そして、確認審査を受理する審査側が、法律の意図をよく理解し、現実と法律とを照らし合わせて良識的な判断ができることも必要です。

、法律そのものが分かり易く、よりよい建物をつくるための労力や時間が、法律を読み解くために浪費されないようであってほしいと思います。

そして、伝統構法・伝統木造に特化したことでいえば、それがこれまで想定されてこなかった工法であったとしても、建築基準法がすべての建物を対象とする以上、建物のつくり方に応じた規定となっていない部分については、つくり方に応じた規定とはなにかを、再考する必要があるでしょう。

建築基準法の再改正が、ほかならぬ自国の建築文化が建築基準法の外におかれているという不自然な状況をも、糺すものであってほしいと願います。

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