左官の松木憲司さんの土壁サンプル。「すべてが自然の色です。自然の色はいいですよ、ジーと見ていると土からのメッセージが聞こえてきます」と松木さん。
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こんな土壁つくってます?アンケート集計特集

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みんながつくっている土壁の「身体検査」

建築士や大工が左官にヒアリング
関西からの回答が多い

土壁アンケートから見える「土壁の身体検査」の結果をまとめてみましょう。まずは回答者の属性です。

「有効回答数は51でした。木の家ネットのつくり手以外にも、サイトを見て回答を寄せてくださった方もいます。地域としては、今でも土壁がそう珍しくない東海地方より西のつくり手からの回答が8割ほど。あとの2割は、今ではほとんど土壁がつくられなくない東日本から、首都圏の東京、埼玉、神奈川などで、環境面などから、土壁を「これからの時代にこそ可能性をもつもの」として復活させようと、意識的にがんばっているつくり手からの回答でした。これから東日本の土壁もじわじわと増えてくるかもしれないですね。(土壁をがんばっているつくり手のことをもっと知りたい方、先月のインタビューや、土壁セルフビルドを応援するつくり手特集をぜひご覧ください。

土壁のモジュールと貫の寸法
告示仕様と厚貫とに二分

では、具体的な仕様について、見ていきましょう。「竹小舞のピッチ」については前ページに詳しく書きましたが、ほかの項目についても、つくり手ひとりひとりが「当たり前」に行っている施工方法にはかなりのバリエーションがあることが分かりました。まずは、土壁を形づくる柱と柱の間隔、柱と柱の間を横につなぐ貫についてです。

日本の住まいは、「一間」をベースとするグリッドで構成されます。半間とは「柱の芯から柱の芯までの長さ」のことで、それがこのグリッドのものさしとなるのですが、地方によって、基準となる半間の寸法が異なります。985ミリ=京間、955ミリ=九州・四国間、910ミリ=関東間とよばれます。今では、910ミリが主流のようです。土壁の横の長さは気ままにバラバラなのではなく、「半間モジュール」単位で、作られていきます。

柱と柱を貫き通す横架材である貫の寸法について、土壁告示の仕様規定では「厚さ1.5センチメートル以上、幅10センチ以上」となっています。集計のグラフを見ると、たしかにそのあたりにひとつの山があるのですが、それとは別に2つ「厚さ2.5センチ以上、幅11センチ~13センチ」「厚さ3センチ以上、幅11センチ~13センチ」という山があります。薄いめ・細めの貫は、京都などの華奢で瀟酒な町家づくり、あとの厚めの貫は柱の太い農家づくりの系譜でしょう。「構造的に効かせたいから厚貫に」という考えでそうしているつくり手もあるようです。貫の寸法と柱の寸法とは切っても切れない関係にあるので、単独で評価するものではありません。

小舞は竹小舞が圧倒的に多い

小舞を何でつくっているかという質問です。竹を編んでつくる「竹小舞」が圧倒的に多いのが分かります。古い建物を見ると、東北より北の地域では木小舞が使われていたというのですが、回答はわずかでした。木小舞のサンプルは4例とも、杉を用いており、貫には釘留めしています。地域性というのでなく「大工が施工できるから」ということを木小舞採用の理由としてあげているケースもありました。

国産の竹を竹屋さんから。
竹の伐採からするつくり手も

竹小舞にする竹屋さんから購入する人が7割以上ですが、3割近くは自家製という人もいます。竹林から伐ってくるつくり手もいるということです。

竹屋さんから購入する人でも、産地が分からないあるいは輸入品と分かっている人は2割程度で、あとは国産品を選んでいます。丸竹と丸竹を割った割竹とがあります。割り竹を作る専用の、竹割機があります! 鋳物製で、みかんを輪切りにしたような形をしており、竹の先端にあてて、竹を割り裂いていきます。いくつ割にするかによって、種類がいくつかあります。

「間渡し竹」は丸竹と割竹に二分
「小舞竹」は割り竹が圧倒的に多い

竹小舞をかく作業では、まず、貫と柱との間に「間渡し竹」で大きなグリッドをつくります。材料について訊いています。

丸竹を用いる人の方がやや多かったです。

間渡し竹の入る位置については意見が分かれました。

間渡し竹は丸竹の方が多いかな、というぐらいでしたが、間渡し竹の間にもうける、より小さなグリッドをつくる小舞竹には、割り竹を使うケースがほとんどです。小舞竹と間渡し竹とでできる格子に、荒壁土がひっかかります。

割り竹を用いる場合の方が、径は太めのようです。

小舞縄は藁縄が多い
編み付け方は実にさまざま

告示によると縄をからげた上で「間渡し竹は貫に釘止め」となっていますが、実際には、間渡し竹は柱や桁に差し込むだけで、小舞竹は間渡し竹にからげるように、縄で編みつけるというケースが多いようです。貫に縄をかける人、貫にはかけない人、千鳥編みあり、螺旋あり。

印象的だったのは「昔は壁のあっちとこっちに村の独身の男女をペアで組ませ、編んでいたようです」というロマンチックな回答でした。竹小舞編みは一種のお見合いとして活用されていたのでは?と思うだけで楽しくなります。

土は泥コン屋さんから。
寝かせた土を使う

土に関しては、ほとんどの人が「泥コン屋さん」と呼ばれる業者さんから地元の土を入手していますが、現場や作業場に土置き場をつくり、そこで水や藁を合わせて自家製の土を調合する人もいました。土壁がさかんでない関東地域では、泥コン屋という業種自体が存在していないという事情もあります。「田んぼ土」「解体現場より」「瓦屋さん」という回答も数件ありました。

土に藁と水を混ぜ合わせ、長く寝かせておくことで、藁スサが発酵し、粘りがでてきて強度を増します。そのことを多くのつくり手は知っていて、実践しています。回答の選択肢からは、泥コン屋さんに土練りは任せている層も含め、どこかで「土を寝かせる期間」をとっていることが分かります。

「いつもお願いしている左官さんとつきあいのある矢掛町の土屋さん(泥コン屋さん)に行きました。土屋の親方の話では、寝かせてくれと言われれば寝かせている、保管作業が生じるので少し材料代は高くなるけど割れにくい壁になるよ」ということでした。これまでは現場に土場を作る場所の余裕がある時だけ寝かせてもらうというようにしてきました。それもこれも費用も含めて、左官さんに「おんぶにだっこ」状態だったことを反省です。これからは「割れにくい壁になる分の費用を少しみて下さい」と、建て主さんにご説明して十分に寝かせてあげたいと思います。

裏返し塗りは表裏の付着がよくなるタイミングで。
厚みはぎっしり、7センチ以上主体

塗るタイミングや裏返しのタイミングは、左官屋さんの「経験知」でしか計れないようです。「すぐに」という人も居れば「1週間を目途に」という人も居て、期間はひとつにはまとまらないのですが、「ある程度は乾いていて、かつ、乾き切らないうちに」裏返し塗りした方が、表と裏の付着具合はよいと感じている人が多いことが、自由文から分かりました。その地域の土の成分により、乾き具合なども大分違うので、一概に数字で決められるものではなさそうです。どのつくり手も「表裏の土がしっかりかみあって、丈夫な壁ができること」を念頭に、タイミングを決めているようです。

柱には、柱と土壁の間に隙間があきにくいように、柱のきわから(人によりますが、洋子さんのところでは20ミリ以上だそうです)のところにあらかじめ「チリじゃくり」という溝をつきます。結果として、チリじゃくりの間の部分が塗り厚分となります。塗り厚は柱の太さとチリの取り方との関係で決まるわけです。「中塗りまで70~80未満」のところが多いので、その上に5ミリ程度の上塗りがつくと考えれば、柱は4寸以上の太さのものを使っていると想定できます。現代工法の家づくりより、太めの感じです。

現場のやり方、地域性、多様性を
認める法律であってほしい!

告示の制定は、その性能を一定評価したことに意義があり、活用範囲が広げられたことは間違いない。構造特性の異なる筋違いとの併用などをする必要は無くなった。

土壁告示はほとんどの人が知っていて、上記のように金物や構造用合板、筋交の量を減らすのに活用している、間取りの自由度が増したなどと書いている人が4割ほどいました。告示が土壁の家づくりのハードルを低くしてくれていることは確かのようです。

しかし、土壁の評価が低いこと、小舞ピッチが細かすぎること、間渡し竹を釘で打ち付けなければならないことなど、を問題点としてあげていた人もいます。

告示の仕様については、積極的に無視している人、気にしながらも施工が困難なので告示通りにしてはいない人、建築士や検査員がノギス(定規)で確認するので無理をして施工している人、親方から教わったやり方でやっている人等様々のようです。法律を守ることと、いい土壁を作るということが一致しないことは、問題です。

「施工の地域性、職人の個性によって、これだけの幅があること」「土壁告示はそれをカバーしてはいないこと」が、お分かりいただけましたでしょうか? 実際には地域により、職人ひとりひとりにより、施工方法はさまざまです。 アンケートに『筋交いで構造計算してある建物で、告示どおりに間渡し竹のホゾを穴あけして編まなければいけなくなり、壁を解体して修繕したことがあります』というつらい回答がありました。壁の解体には、作る数倍の労力が必要だし、何と言っても自分が作ったものを一度壊すという作業はキツイと思います。 それが正しい評価ならば仕方ないけれども、果たして告示仕様だけが正しくて、それ以外はダメなのでしょうか。私はそうは思いません。どの地域でもいい土壁が作れるよう、法律は地域性を考慮してほしいと、求めていきたいと思っています。

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土壁のおもしろさは、色だけではない。テクスチャー、手触り感、風合いなど、触覚や皮膚感覚に訴えるものが、土壁にはある。