建長寺山門
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木の家ネット第10期総会・神奈川大会の報告

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総会初日:歴史の街、鎌倉散策

まずは精進料理の老舗
「鉢の木」で昼食

紅葉が色づき始めた11月中旬、JR横須賀線「北鎌倉」駅の駅前広場に、全国から木の家ネットのメンバーが続々と集まってきました。紅葉の季節は、鎌倉がたくさんの観光客で賑わう時期の一つ、また一週間前に横浜で開催されたAPEC国際会議の影響もあってか、同じ駅を降りる観光客の多さに皆さん驚いている様子でした。

精進料理の老舗「鉢の木」

昼食は、北鎌倉駅から歩くこと約15分、精進料理の老舗「鉢の木」で頂きました。偶然にも先週、APEC参加国のファーストレディーにお料理を振る舞われたお店。同じお料理ではないかもしれませんが、丁寧に作られたお料理を、眼と舌で楽しむことができました。精進料理とは、仏教の精神から肉類を使わず、菜食を基本としたベジタリアン料理です。食材に規制があるとは感じられないほどに、見た目から、食感、味付けまで、一品ごとに発見のあるお料理でした。

(銭田 文)

山門の楼上にまであがっての
建長寺見学

昼食後、「鉢の木」の真横に位置する建長寺前の駐車場に集合しました。見学のトップバッター、しかも鎌倉を代表する寺院の一つですので、皆さんのワクワク感も自ずと高まってきます。境内に入り、和尚さんの誘導にしたがって見学しました。

まずは山門。お寺の計らいで、普段は拝観できない山門の楼上に全員上がらせていただきました。階段下で待っていると、他の観光客からは羨望の声がちらほら聞こえてきます。少し申し訳ないと思いつつ、ワクワクしながら急勾配の階段を上がりきると、左手に大きな部屋が広がり、壁一面には、「五百羅漢像」といわれる無数の小さな仏像が安置されていました。和尚さんから、この中に必ず自分に似た像があるという説明を受け、皆さん大勢の集合写真の中から自分を探すように、食い入るように仏像群に見入っていました。そして部屋の外に出ると建物の四周に欄干が回り、そこから紅葉と緑に囲まれた境内一円を眺めることができました。

山門の二階に広がる五百羅漢像

その後順次、仏殿、法堂を見学しました。仏殿および法堂の床の仕上げが、お寺では珍しい敷瓦なのですが、これは中国の影響を受けたもので、またここで修行の際、履物を履いて歩き回るからだそうです。また禅宗ならではの、法堂の天井に描かれた雲龍図も印象的でした。次に、更に奥の大庫裡へ。この建物の2階に通されると、何とお茶とお茶菓子が用意されていました。この後長時間歩き回ることを考えれば、たいへんありがたい限りです。しかしこの時点でだいぶ予定の時間を超えていましたので、急いでいただいて、急ぎ足で駐車場へと戻りました。

法堂

ここで二次集合の参加者と合流。プログラムが始まって早々に約30分遅れての集合なので、二次集合の方にはたいへん申し訳ないことをしました。気を取り直して早速「鎌倉まち歩き」へ。今回それぞれ特徴のある3コースを用意しました。見学にあたっては、神奈川県下の総会準備メンバーに加え、鎌倉の建築家やまちづくり専門家等の集団「ひとまち鎌倉ネットワーク」略して「ひまかね」のメンバーに、それぞれ道中の案内の手助けをしていただき、約3時間の鎌倉まち歩きへと向かいました。

(日高 保)

Aコース
「森の中を歩く健脚コース」(18名)

はじめに緑が爽やかな浄智寺へ。鎌倉十井の一つとして名高い「甘露の井」や、境内の小さな洞窟には弥勒菩薩の化身といわれる布袋尊(鎌倉七福神)もまつられています。が、やはり皆さんの興味は建物へ。中心部にある古民家は建物と庭木や草花が一体となり落ち着きがありました。閑寂なたたずまいの禅宗らしいお寺でした。

次はたからの庭へ。ここは鎌倉の文化やアート、生活スタイルの発信拠点を目指し、浄智寺敷地内の奥に人知れず佇んでいた古民家を再生した場所です。かつては鎌倉陶園という陶器の製作場として使われていました。緑の茂った路地を抜けると登り窯が見え、明るく開けた所に出ます。島津ご夫妻(たからの庭運営者)が迎えてくださり、たからの庭になるまでの歴史や古民家の活用法を伺いました。建物内は水回りが整備され、和菓子作りなどのワークショップも行われています。竹でつくられた樋など面白い発見もありました。人の手が入り建物が活き、これからもどんな場所となるのか楽しみです。

たからの庭

その後は、「源氏山」越えです。歴史に思いを馳せ秋の紅葉を少し堪能し、なかなか良い運動となりました。源氏山を下ると銭洗弁財天へと続きます。源頼朝が封建された宇賀福神社入り口にある手掘りの随道を抜けると社殿が現れます。奥宮の湧水でお金を洗うとお金が何倍にも増えるといういわれがあるため、観光客に大変人気です。山越えの休憩を少し取り、緑が多い町中を通って次なる「T邸現場見学」へと向かいました。

鎌倉の地形を肌で感じる山歩きと、一度来ただけでは見つけられない場所が魅力のコースだったと思います。途中、三重の池山さんが面白い楽器を鼻にあて、鎌倉の町をバックに記念撮影をしたり、、案内役の方の提案により大きな洋館を見せたいと廻り道をしたり、思いがけない楽しみもたくさんあったAコースでした。

(橋北 美賀子)

Bコース
「古民家活用事例コース」(30名)

まず、建長寺から巨福呂坂を下って鶴岡八幡宮方面へ。およそ15分歩いて辿り着いたのは、鶴岡八幡宮の境内にある近代美術館でした。坂倉準三設計による、戦後モダニズムの代表的な建築の一つです。外観を眺めながら簡単に説明をした後、次の場所に移動。「中に入らないのー」という声も聞こえてきましたが、この後の予定が詰まっているので、ここは我慢です。

八幡宮の大銀杏の跡地。「がんばれ、大イチョウ」の看板が見える

引き続き八幡宮の境内を歩き、昨年3月に倒壊し、ニュースにもよく取り上げられていた大銀杏の跡地へ。大銀杏の再生の様子を見がてら、ここで夕方講演していただく予定の比留間さんから、高度成長期における八幡宮裏山での宅地開発問題、またそれがきっかけで古都保存法の制定につながっていったという話をお聞きしました。大銀杏の横の長い石段を昇れば本殿で、海も眺めることができましたが、ここでも先の予定のことを考え、引き返して流鏑馬道を東に歩き、次の目的地、西御門サローネへ。

八幡宮を出て住宅街を約15分歩くと、西御門サローネに辿り着きました。ここは鎌倉文士の一人、里見惇の旧邸で、現在は建築設計事務所が管理運営を行い、各種イベント会場等として使われています。里見惇自身が奥様の好みに合わせて設計したとのことでしたが、エントランスや玄関入ってすぐのホールは、F.L.ライトの影響を色濃く受けていました。案内の方が説明してくださる建築当時の仕掛けや設備に、一同興味津々。そして階段を踊り場まで上がり、そこから続く渡り廊下を歩くと、今までとは全く別世界の、和の空間が広がり、皆さんのボルテージはここでさらに高まりました。低く抑えられた天井、無双の地窓、欄間の下地窓…、洋館から茶室へ、まさに予測できない瞬間移動でした。

西御門サローネ、洋館部分
西御門サローネ、茶室部分

あっという間に見学予定の30分を過ぎ、ここからなかなか離れたがらない皆さんを追い立てるように次の目的地カジュアートスペースへ。西御門サローネから鎌倉市街地へ戻るような形で住宅街を10分ほど歩いて到着しました。ここは築約80年の古民家をアートスペースとして活用し、絵画、ピアノなどの各種芸術教室や展示会等のイベントを行っています。また3年前、庭の一角にきらくなたてものやコーディネートにより、ワークショップ形式で伝統工法による小屋を建てた場所でもあります。ちょうど教室を開催中だったこともあり、古民家と小屋の様子を外から見学しました。

以上Bコースは、鎌倉の市街地と、古い建物の活用事例を存分に楽しみました。有名な社寺仏閣には目もくれない、マニアックなコース設定だったので希望者が集まるかどうか不安だったのですが(笑)、フタを開けてみれば3つの中で最も参加者の多いコースとなりました。実際、伝統的な木造建築を手掛ける皆さんにとっては興味深く、またある意味では鎌倉らしいといえば鎌倉らしい、鎌倉巡りだったのではないかと思います。

(日高 保)

Cコース
「代表的な社寺巡り」(21名)

まずは北鎌倉駅からほど近い「あじさい寺」として有名な明月院 へ。明月院は、第五代執権北条時頼の持仏堂として最明時(自身の法名)が建立され、時頼亡きあと、息子の北条時宗によって禅興寺の名前で再興されたお寺です。名所となっているあじさいは、戦後差し木によって徐々に数を増やしていったそうです。紅葉の見頃まではあと一歩というところでしたが、淡く色づき始めた木々、丸窓に切り取られた景色、風化した鎌倉石の階段・・・と、自然な風景の中にも手入れの行きとどいた、風情のあるお庭でした。

明月院

続いて円覚寺へ。こちらも北条時宗によって創建された禅宗寺。時宗の父時頼によって創建された「建長寺」が官寺的性格の強い寺であるのに対し、「円覚寺」は戦没者の菩提を弔うため、また己の精神的支柱となった禅道を広めたいという願いから創建に至った、私寺としての性格の強い寺です。健脚コースでないはずのCコースですが、広い境内を散策した後に、国宝「洪鐘」を見に何十段もの石段を登ることに・・・。途中、「健脚コースはもっとすごい道のりですから・・・」と励ましにならない言葉をかけながらも、鎌倉・藤沢が一望できる高台へと無事に登頂することができました。残念ながら、富士山を望むことはできませんでしたが、高さ2.6メートル、700年以上も前からこの地に存在する「洪鐘」、それを支える鐘楼のずっしりとした佇まいは、鎌倉の歴史、時間の重さを伝えてくれるようでした。

円覚寺 山門

以上、鎌倉まち歩き入門編として社寺仏閣見学を中心としたCコース、短い時間でしたが北鎌倉らしい、風情ある寺院と秋の紅葉を楽しんでいただけたコースだったのではないかと思います。

(銭田 文)

3コース共通
「T邸、結いの蔵」

今回3コースのいずれにも盛り込まれた結の蔵の見学。結の蔵は、秋田県湯沢市にあった酒蔵を平成16年に鎌倉に移築し、賃貸住宅・事務所として活用されています。解体から移築まで携わっていた設計事務所「O設計室」の事務所があるので、今回はその事務所を見学させていただきました。

結の蔵、外観

内部に入り見上げると、長さ10間もあるスギの大きな一本丸太の棟木や、重ね梁のように積み上げられた小屋組みなど、1世紀もの間、風雪・地震、大火に耐えてきた重厚な木組みが現れます。外観も重厚で雰囲気のある建物ですが、内部の木組みは圧巻で、皆さんの首が上を見上げたまま、ぐるりと一周してしまうほどでした。

設計事務所の大沢さんに解体から移築までの説明をしていただき、その後それぞれ、材の話や納まりの話など、小さな空間にいくつもの話の花が咲いていました。3コースとも、話の尽きない皆さんの背中を押し押し、結の蔵を後とすることになりました。

もう1ヵ所、皆さん全員に見ていただいた「T邸」。きらくなたてものや設計による現在建設中の住宅です。(木の家ネット2010年8月号 きらくなたてものやインタビューでも詳しく紹介しています)この住宅は、道路に面した北側の妻面がダイナミックに張り出した外観、玄関アプローチのスギの列柱、連続した栗の梁などが特徴の建物です。この住宅では、床板に節の見当たらない、柔らかい表情のサワラの板を予定しており、一部貼り終えていた2階でその美しさを見ていただくことができました。大工さんも「こんな板、貼ったことがない」というほど、上品な木肌の床板です。

以上盛り沢山の「鎌倉まち歩き」、出発の段階から押し気味のスケジュールで動くことになってしまいましたが、皆さんには普通の鎌倉観光では味わえない、鎌倉の街並み、山、建築を楽しんでいただけたのではないかと思います。

(日高 保)
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結いの蔵の内部。右の写真は二階の「O設計室」事務所。暗闇の中に、大きな一本丸太の棟木が見える。