岩手県住田町で建設されている木造の仮設住宅(撮影日:5/2、撮影:小町工務店・小町歳幸)
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木の家ネット会員の声:地震・津波・原発災害で考えた事

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3 木の仮設/復興住宅

木の仮設住宅

これまで、被災地に、急いで大量につくり始められている仮設住宅はの必要件数は、2011年5月10日時点で約6万8000戸。木の仮設住宅があってもいいのでは?という声は、震災直後から起き始めていました。

一人の人間として・大工として「復興に対して、お手伝いがしたい」という気持ちは、職人であるが故、一つの望みでもあります。どのようにすればお手伝いが出来るのか?仮設住宅の木造での加工は、私たちにできる事。心はいつでも準備できているつもりです。
国は「再建は地域の資材と工務店を主に」と言っているにもかかわらず、仮設住宅の受付審査の窓口はプレハブ建築協会であり、大量にまとまったものでないと受け付けないという苦情をちらほら耳にします。火急の大量のニーズということでは分からなくもないですが、小さなものでもたくさん集まればということもありますし、今後の住宅建設の根幹にもかかわることなので、もうひとつ別の窓口をもうけてほしいです。
鉄板やベニヤでできた一般的な仮設住宅は居住性の悪さが指摘されています。住むのは2、3年でも、大事な2、3年。そう考えた時に、いつも私たちが使っている「木の仮設住宅」ができないかと思うのです。次のようなメリットがあると考えています。
(1)居住性
断熱性、調湿性といった居住性に関わる機能面と安らぎを与える意匠面を持ち合わせた素材です。少なくとも今の仮設住宅よりは、居住性を高めることができるのではないか。
(2)再利用性
木を使い、手仕事で作る建物は、昔の民家のように、解体しても再利用できる可能性をもっている。仮に処分せざるを得ないとしても、燃やせば暖を採ることができます。
(3)環境負荷の低減
エネルギーの問題に直面している今こそ、生産や廃棄の際に要するエネルギーは、低い素材を使いたい。木は鉄やアルミなどに比べれば、その点で優位です。
(4)地元大工の雇用
シンプルな手刻みでできることを。大工がいれば、もうそこで形にできるし、地元の雇用をも生みます。
(5)地元材の活用
被害が甚大な東北地方の地元の山にも間伐を待っている木がたくさんあるはず。その木を活用することが地元の林業や山の再生にもつながります。

石巻市在住でご自身も避難所生活をしている佐々木さんも、設計者として、地元の雇用を生み出す木の仮設住宅の提案を試みたのですが、なかなか壁は厚く、実現にはこぎつけませんでした。仮設住宅については、スピードや供給できる戸数優先で決まる現実があるのでしょうか。

応急仮設住宅はプレハブが圧倒的に主流。地元の職人が地元材でつくる復興住宅を提案したいのですが、市は県を、県は国の様子を窺っていて、なかなか個別に裁量してくれません。隣県の福島県では、プレハブメーカーに大量発注するのでなく、県内の工務店が地元の職人が地元材で建てる仮設住宅を建てる事業者となれるようなしくみをつくっています。県の担当者の意欲あってのことです。こうした流れが広がるとよいのですが。

■応急仮設住宅建設事業候補者の公募開始について(福島県)

■ 木の仮設住宅に取り組んでいる例

それでも、まだまだわずかとはいえ、木の仮設住宅が独自につくられるケースが出て来ています。いずれも行政主導というよりは、提案する主体があって行政に受け入れられたものです。これまでにはなかった動きなので、ご紹介します。
(1)岩手県住田町
もともと林業がさかんだった岩手県住田町では、今回の震災前から木の仮設住宅を提案しており、プレカットで部材を用意して、ある程度の量産体制をすでに築いていました。そのラインを用いて、いちはやく建設された木の仮設住宅の例です。森林再生のために坂本龍一がつくったNPO法人であるMore Treesが資金援助のカンパを募っています。
(2)福島県いわき市
かつてから板倉構法にとりくんでいた東北大学の安藤邦廣先生を中心にして「板倉構法による被災者住宅建設支援連絡協議会」ができ、福島で100棟(200戸)の建設が決まりました。四国のプレカット工場で刻んだものを現地で組み上げていくようです。リンク先の写真はモデル棟です。
上記のような独自の取組のほか、仮設住宅の大半を行政から受注する住宅生産団体連合会(住団連)では、主力となるプレハブ建築協会以外にも、全国中小建築工事業団体連合会(全建連)の工務店サポートセンター(JBN)や日本木造住宅産業協会(木住協)などが、会員の地元工務店に下請けに出す形で木造仮設住宅の建設に参画しているようです。

むしろ木の復興住宅を

国では「8月までには避難所を解消、それまでに仮設住宅を整備」ということを目標に掲げています。もともと大量に早くつくる生産システムを有するプレハブメーカーと比べると、木造の仮設住宅はプレカットであってさえ、困難な面があります。

「自然な空間のあたたかみ」「廃棄物を出さない」「解体後の再利用」といった利点と仮設住宅として要求される供給スピードとが折り合うのはむずかしいようです。むしろ、条件が整う場所では、2年で取り壊しになる仮設住宅ではなく、木の復興住宅建設そのものに向かう方がよいのではないか?という発想も出て来ています。

短期的には応急仮設住宅が早急に、そして大量に求められているのは分かるのですが、応急仮設住宅は2年、3年で取り壊され、多くのゴミをつくってしまいます。プレハブであれば、もともとそのくらいのタイムスパンで建てられるものですが、仮設住宅を木でつくるとすれば、より長く住むことも増改築することもできますし、その場所を離れるとしても、解体・再利用することもできます。仮設住宅にとどまらない、木の復興住宅ができるとよいのではないでしょうか。
単に量を供給するだけでなく、地域コミュニティーをそこにつくるような復興住宅団地が考えられるとよいのですが。
「大工がいる。木はある。だから、木の家をつくることで復興をサポートしたい」その思いにやまれない木の家ネットの仲間の大工、埼玉県の杉原敬さん(通称マイケル、杉原建築)作業場に復興住宅としても使える板倉のモデル住宅を作ってしまいました。

う〜ん、熱き心に、復興の兆しあり!次にどうつながるかはまだ分かりませんが、今は多くの人に見てもらっているようです。実際につくりたい被災地の方との出会いが生まれますように。
彼の連絡先はFax:042-971-4011、mail:nyqnh321@ybb.ne.jp

地元の佐々木さんは、木の復興住宅建設の前提として必要なこととして土地利用に関する制限について、指摘しています。

三陸は海のすぐそばまで山が迫り、平らな場所はほんのわずか。そのわずかなところに集落があったのですが、多くが津波で流されてしまいました。土地を離れずに住み続けようと思えば、これまで田畑や山林だったところに家を建てる以外ないのですが、そのためには地目の変更をしなければなりません。地目変更は通常、簡単にはできず、できたとしても何年もの年月がかかります。今回に限っては、緊急性を考え、土地利用に関する制限の緩和を望みます。

注:5/13、被災地に「復興特区」を設ける「東日本大震災復興特別措置法」の要綱案が明らかになりました。土地利用規制の窓口を一元化し、区画整理を伴う復興計画を早く実現できるようにするのが狙いとのこと。地目変更の難しさは緩和されるかもしれません。
5/13の朝日新聞の記事「被災地に復興特区 特措法要綱案、土地・雇用の規制緩和」リンク先が見つからない場合はこちらをご覧ください。

木の家ネットのメーリングリストの中から、「木の復興住宅を有志で考えませんか?」という動きが出て来ています。まだ具体化してはないのですが、基本となる考え方、モデルプランと軸組模型が出て来ていますので、神奈川県鎌倉市の日高保さん(きらくなたてものや)からの提案を、一例としてご紹介します。被災地でも、木の復興住宅でのコミュニティーの再建といったニーズがあるはずです。どこか具体的な地域と出会いから、実現させていくことができるとよいです。

ひとまず仮設復興住宅のモデル住宅として、プレハブ仮設住宅にならった9坪のプランを考えてみました。(復興住宅として考えるのであれば、
 もう少し広さがあってもよいかもしれませんが)

材料

どの地域からでも材木調達が可能なように、全て4寸角で考えました。岩手県が仮設住宅の条件として積雪荷重1mを課していましたので、それを踏まえた材寸としています。
  • 4寸角3m…80本
  • 4寸角4m…20本
  • 30㎜厚パネル7尺×3尺…27枚
  • 30㎜厚パネル7尺×4.5尺…6枚
  • 縦木ずり(5寸×8分)…76枚
  • 野地板…19坪(化粧+荒野地板)→きりのよいところで20坪
  • 床板…9.5坪(ロフト込)→きりのよいところで10坪
  • 外壁板…14坪→きりのよいところで15坪
  • 3×6断熱材(フォレストボード)…18枚

生産システム

  • 極力人力で作るため、また「雇用創出」の観点から手刻みを基本とする
  • 地元材、地元の大工さんが主導で、マネージメントや技術指導などのサポートをする
  • 必要人工…40〜50(予想)

構造上の特徴

  • 傾斜地でも建てられるよう、基本的に石場立てを想定
  • 現場施工のスピードアップのため、落とし込み板壁で耐力確保
  • 継手・仕口の簡略化(基本的にホゾとアリ)

設計上の特徴

  • 階高を7尺とし、4寸の桁下端に鴨居溝をしゃくれば、約2mの建具を取付可能
  • 開口部はアルミサッシでもよいですが、資材不足も想定して、図面上では外付の木建具
  • 浴室はユニットバスでもよいですが、資材不足も想定して、図面上では木製浴槽、防水は杉皮。
  • 居間兼食堂…4.5畳でも、食卓が家の中心になるように
  • 厨房…狭くても背面に食器が置けるようにする
  • 寝室…9坪でも夫婦と子どもが分かれて就寝できるようにする(ただし一室にしたり収納を確保しても可)
木の仮設または復興住宅建設支援に対して私たちが果たすべき役割は、こうしたモデルを提示しつつ、被災地の職人の応援団となることだと思います。そうした議論の中で出たアイディアが、「キャラバン大工隊」。木の仮設復興住宅を建設する主体は、あくまでも地元の職人達。しかし人材確保や、あるいは技術的に困難な場合、それを支援するために「キャラバン大工」がしばらく出向して実現の道筋をつけ、そして軌道に乗れば「キャラバン大工」は次の場所へ。つまり「国境なき医師団」の「大工版」的なイメージですが、そんな登録制のチームができないものでしょうか。そうした応援のできる実動部隊として、あるいは資材供給面で応援できるチームを作り、その中で顔の見える議論を進めることも一案かと考えています。 図面はこちら
問合せ:木の家ネット有志 仮設住宅を考えるグループ 日高まで

1棟あたり300万円が行政からまかなわれる仮設住宅と違い、木の復興住宅となると、建築費用をどう捻出するかが問題となります。行政で「木の復興住宅を」という動きがない中、行政の予算がつくのを待つのではなく、資金調達まで手がけているところが具体化にまで漕ぎ着いているようです。

■ 木の復興住宅に取り組んでいる例

(1)岩手県石巻市:工学院大学
朝日新聞に工学院大学の後藤研究室を中心に、石巻の高台に木の復興住宅団地に取り組んでいる例が紹介されました。土地を借り、地元の木材を使って7月に10棟を完成させる計画。政府が急ぐ仮設住宅づくりではなく、永住を前提にコミュニティーも育てる狙いとのことです。
朝日新聞の記事へリンク先が見つからない場合はこちらをご覧ください。
(2)宮城県登米市:手のひらに太陽をプロジェクト
震災遺児、母子家庭、老人世帯などが10所帯単位で住むグループホームとしての復興共生住宅プロジェクトです。地元の木やバイオマス燃料を使い、持続可能なモデルとして企画されています。建設のために、6000万円の寄付金を募っています。木の家ネットの会員のエコロジーライフ花 直井建築工房さんも関わっています。手のひらに太陽をプロジェクト
(3)仮設じゃない「復興住宅」プロジェクト
被災地に復興住宅を建てるにあたって問題となるのは、入居者が建設資金を捻出しづらいこと。民間ファンドで出資や寄付を募るしくみもでてきています。 仮設じゃない「復興住宅」プロジェクト

最後に、石巻市でいまなお避難所におられる佐々木さんからのメッセージをご紹介します。仮設住宅、復興住宅の建設は、その家族が雨風をしのぐだけでなく、地域コミュニティを維持していくための大切なことなのだということが、伝わって来ます。

佐々木さんの避難所にいる世帯分の仮設住宅についてはすでにプレハブメーカーによる建設が決まっていますが、次の復興住宅の段階でこそ、佐々木さんの思いがかなえられますように。

私たちは不幸にも津波の被害に遭い、家を失いました。しかし、避難所では、日本全国の人々からのざまざまな支援を戴きながら、被災した地域の人々が、我慢と努力と持てる知恵を積み重ねて、協力しあって暮らしています。

この、人々が積極的に地域のために協力し合う、遠い祖先から続く地域の共同体を、今そこにあるコミュニティを、そして何より、自分たちが生まれ育った美しい三陸の故郷を、失ってはいけないのだと思います。

そのためには、必ず今まで住んでいた地域に、復興住宅を建設し、再び故郷に住めるという希望と、それまでの間、地域のコミュニティが失われないような応急仮設住宅、仮設集落の建設が必要不可欠であると思われます。
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石巻のガレキの中にうもれていたアルバム(撮影日:4/24)