「街中であっても季節の変化を感じながら自然と共に暮らしたい。」
新旧様々な商業ビルや高層マンションが立ち並ぶ、川越の中心市街地に敷地は位置しています。小江戸を感じさせる歴史的建物が近くに点在するものの、コンクリートやアスファルトに覆われた地面が敷地周辺の大半を占めています。
気候風土に適応し、自然と共に暮らすための計画を進めるに当たり重要視したのは、周囲の環境と建物との間に、温熱的に有効な緩衝帯を設けることでした。特に夏季のアスファルトなどからの輻射熱は居住環境を悪化させるため、植栽や雨水浸透に配慮し可能な限り表土を現す、雨庭を計画しました。西側の月極駐車場となるエリアについても、雨水浸透を速やかにし保湿できる地盤面とするため、造園家の協力を得て透水しやすい材料構成と有機物を用いながら、浸透水脈を設けて緑化をするなど対策を施しています。
建物本体は石場建ての仕様とし、床下地面も周囲の緩衝帯と一体的に造作することで、季節によらず程よい湿度を保っています。深い軒や大きな引き込み窓、多孔質の天然乾燥杉板を用いた板倉のため、季節に応じた調湿機能の効果により心地よい住み心地を実現しています。