一般社団法人
職人がつくる木の家ネット 事務局
〒711-0906
岡山県倉敷市児島下の町5-7-3 児島舎内
E-mail jimukyoku@kino-ie.net
TEL 086-486-5464

2021年10月30日(土)にオンラインで開催された職人がつくる木の家ネットの総会の様子をレポートします。

本来であれば、年に一度、全国各地より会員の皆さんにお集まりいただき、大ホールでの報告会・フォーラム・懇親会・オプショナルツアーでの貴重な建造物の視察など、2日間に渡って開催しています。今年も昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染症の拡散防止の観点から、Zoomを使っての「オンライン総会」となりました。昨年よりオンラインミーティングが一般的になったこともあり、大きなトラブルもなく多くの会員の皆さんが事務所や現場、自宅などから参加しました。

時間軸に沿って写真を交えながらご紹介していきます。


目次

●開会宣言・代表挨拶
持留ヨハナさんを偲んで
●新入会員自己紹介
●事業報告
 ①HPコンテンツ
 ②木構造部会
 ③マーケティング部会
 ④オンライン勉強会
●大工経営塾/見積部会 事業報告
●新ホームページの概要
●熊本 気候風土適応住宅 活動報告
●分科会
 分科会①「気候風土適応住宅/環境部会」
 分科会②「マーケティング部会」
 分科会③「伝統建築の未来 後藤先生のお話をうけて」
●分科会まとめ・閉会挨拶・来期総会案内


まずは大江忍代表理事からの挨拶。

昨年に引き続き、コロナ禍においてオンラインでの開催になってしまったことを非常に残念に思っています。オンラインなりの可能な範囲での様々な活動を行なった年でした。来年こそは本来の開催地である淡路島でみなさんとお会いしたいですと、挨拶がありました。
また今年8月にお亡くなりになった前事務局の持留ヨハナさんへのお悔やみの言葉がありました。


持留ヨハナさんを偲んで

今年8月にお亡くなりになった前事務局の持留ヨハナさんを偲び、木の家ネットの立ち上げから一般社団法人になる直前まで、ヨハナさんと二人三脚で本会を支えてきていただいた夫の持留和也さんからお話がありました。


新入会員自己紹介

今年は新たに8名の方が入会されました。それぞれに自己紹介をしていただきました。

橋本 洋一さん(プロフィールページ)
大分県で設計施工をやっています。手刻みで建てています。今度、気候風土適応住宅を建てていく中で、木の家ネットのみなさんと活動していきたいなと思い参加させてもらいました。よろしくお願いします。

柚山 一利さん(プロフィールページ)
愛媛県新浜市で木造建築の構造の設計をしています。住宅やお寺などの耐震診断もやっています。どうぞよろしくお願いします。

齊藤 基彦さん(プロフィールページ)
東京都で工務店をやっています。伝統建築などの経験はありませんが、その素晴らしさをもっと勉強したいと思い参加させていただきました。よろしくお願いします。

村上 聡さん
埼玉県所沢市で工務店をやっています。東京と山を繋ぎ地元の木を使えるような仕事をしています。若い世代のつくり手たちのためにも、もっと木に触れることのできる環境をつくっていきたいと思っています。よろしくお願いします。

篠 節子さん(プロフィールページ)
東京都で設計事務所をやっています。独立当初から環境のことを考えた建築をつくっていきたいと思っています。伝統的な木造住宅・気候風土適応住宅を会員のみなさんと日本各地につくっていきたいです。どうぞよろしくお願いします。

都合により当日参加できなかった3名はパネルでの紹介となりました。プロフィールページをチェックしてみてください。

新入会員プロフィールページ
唐木 俊さん(東京都)
新堂 豊さん(神奈川県)
田中 孝佳さん(東京都)


事業報告

次は、一年間の各事業報告です。

【事業報告①:HPコンテンツ】
今年度は特集コンテンツ2本と、会員紹介コンテンツ11名分の発信を行いました。

【事業報告②:木構造部会】
2020/11/1より6/22日まで全15回の「木構造部会」を会員の岩波正さん(滋賀県)を講師として開催しました。
昨年の限界耐力計算法の勉強会の続編として開催したもので、許容応力度設計や限界耐力計算法のおさらいをした上で、例題に取り組んだり、参加者からの質疑に答える形で実施しました。

【事業報告③:マーケティング部会】
今年度、新たにマーケティング部会を発足し、宮内寿和さんを中心に7名の会員とコンテンツ制作の2名を加えた9名で、SNSの発信・活用と新ホームページの検討を重ねてきました。

木の家ネットのインスタグラムアカウント @kinoienet を開設し情報発信を始めました。会員の皆さんも是非ハッシュタグ 「#木の家ネット」をつけて家づくりだけに留まらず広く発信していっていただきたいです。
また、5月からYouTubeにてリレートークをライブ配信する試みも始めました。「ウッドショック」のことを取り上げたの発端に、大江さん・宮内さんが聞き手となり毎回各方面のゲストをお招きして進めています。9月までで17回発信し視聴数は17194回になっています。これからも引き続き配信していきます。

【事業報告④:オンライン勉強会】
8/21、外岡豊氏(埼玉大学名誉教授)講師にお迎えし「LCAで考える伝統的木造建築の省エネルギー性能 〜建築から廃棄までのエネルギーを考える〜」というテーマで初めてのウェビナーを開催しました。


大工経営塾/見積部会 事業報告

「大工経営塾/見積部会」について金田克彦さん(京都府)・水野友洋さん(岐阜県)より報告がありました。詳しい報告会は興味のある方に向けて来年初めに開催する予定ですが、見積部会の目的・方向性・運用例のさわりの部分について発表していただきました。

「一見難しそうな内容ですが、素敵な仲間に恵まれ、単純な計算で使えそうなものができつつあります。年明けに開催予定の発表会では、経営にまつわる講演会も行おうと考えていますので、奮ってご参加ください」(金田さん)


新ホームページの概要

今後リニューアル予定の、木の家ネットのホームページの概要について岡野さん(コンテンツ担当)より進捗状況の報告がありました。


熊本 気候風土適応住宅 活動報告

昨年に引き続き、古川さんより熊本での気候風土適応住宅の活動についての報告がありました。まず、欧米諸国との家庭でのエネルギー消費量の比較に触れ、はたして日本は本当に省エネ後進国なのか、また国内でも暖房器具の使用状況が地域で差があるので、ひとまとめでは語れないのではないか。そして伝統的構法の家・気候風土適応住宅こそが、生産・廃棄等を含めれば最高のエコハウスなのではないか。とのお話をしていただきました。


分科会

休憩を挟んで恒例の分科会を開催しました。今回は【①気候風土適応住宅/環境部会】【②マーケティング部会】【③伝統建築の未来 後藤先生のお話をうけて】の3つテーマのミーティングルームに別れ、熱い議論を交わしました。

【①気候風土適応住宅/環境部会】

2025年の建築物省エネ法基準義務化、2050年のカーボンニュートラル達成を視野に社会が動いています。高気密高断熱一辺倒の省エネ手法に多様性を持たせるため、今年度より木の家ネットで「環境部会」を立ち上げることになりました。環境部会では、木の家に相当しい省エネ手法の評価方法の確立を目指しているという旨のお話を綾部さんよりしていただき、意見交換を交わしました。

【②マーケティング部会】

リーダーの宮内さん(滋賀県)を中心に「マーケティングの本質とは」「目標・目的・戦略・戦術」など、資料と例題を交えて、参加者全員でマーケティングの勉強をしました。最後に「我々が建築のプロフェッショナルであるということをきちんと発信していくべきだろう。そのためには会の目標・目的・戦略・戦術を明確にする必要がある」とまとめました。
マーケティング部会からのお願い:木の家ネットYouTubeチャンネルに登録をお願いします。現在500人ほどの登録がありますが、1000人を越すと収益化など、できることも増えますので、あと500人の登録を直近の目標にしています。

【③伝統建築の未来 後藤先生のお話をうけて】

総会と同日開催されたウェビナー「伝統技術・技能を広めていくために/伝統を未来につなげる会 後藤治会長からの話題提供」をうけ、登壇いただいた後藤先生にもご参加いただき、議論を交わしました。ウェビナーでは、後藤先生から「公共建築に匠の技を」「防災対策としての地域の伝統家屋の空家利用」という提案をしていただいており、参加者からは「まずは木の家の需要を作らなければ、職人の担い手も増えないし育たない。とてもためになるお話をありがとうございました」「伝統構法の家は、新築もリフォームも同じ職人さんができるということを強く発信していきたい」などの感想が聞かれました。


閉会挨拶・来期総会案内

各分科会のまとめの発表をはさみ、最後に丹羽明人さんから閉会の挨拶がありました。

「今年は昨年に引き続き2回目のネット総会となりましたが、充実した内容の会になったと思います。2001年に始まった木の家ネットはちょうど20年を迎えました。振り返ると、木の家をつくっている仲間にとって色々な社会問題や環境問題がありました。我々はその都度、積極的に様々な対応や情報発信をしてきた会ですが、今日も世の中は変わり続けており、これからも変化に対応し続けていかなければならないなと感じています」

「近年は自主的に様々な分科会も生まれ活発に活動しています。またホームページのリニューアルも控えており、より活発な情報発信の場になる予定です。木の家ネットの会員のみなさんは意識の高い方ばかりです。それが全国各地にいるということが最大の特徴であり強みだと思います。みなさん、是非、自分が情報を発信する側なんだという意識を持って、より主体的に参加していただき、さらに活発な情報交換・情報発信をできる会にしていきましょう」

オンラインでこれだけの検討や議論が行える会です。直接顔を合わせることができれば、さらに充実した総会になることでしょう。来年こそ淡路島でお会いしましょう!


取材・執筆・写真:岡野康史 (OKAY DESIGNING)

2020年11月1日(日)に開催された職人がつくる木の家ネットの総会の様子をレポートします。

本来であれば、年に一度、全国各地より会員の皆さんにお集まりいただき、大ホールでの報告会・フォーラム・懇親会・オプショナルツアーでの貴重な建造物の視察など、2日間に渡って開催しています。しかし今年はご存知の通り新型コロナウイルス感染症の影響下にあり、開催方法の変更を余儀なくされ、一般社団法人として第二回目となる今回の総会は、Zoomを使っての「オンライン総会」となりました。40名以上の会員の皆さんが事務所や現場、自宅などから参加しました。

時間軸に沿って写真を交えながらご紹介していきます。


目次

●開会宣言・代表挨拶
●自己紹介(新入会員・新運営委員・新事務局)
●事業報告
 大工経営塾/見積部会
 その他講習・勉強会(民法改正講習/気候風土適応住宅講習/京大勉強会/限界力計算勉強会
●「伝統建築工匠の技」ユネスコ登録活動報告
●気候風土適応住宅/SDGs の取り組みについて
●熊本マニュアル活動報告
●分科会
 分科会①「気候風土適応住宅/SDGs」
 分科会②「既存伝統的建物の耐震診断の諸問題について」
 分科会③「熊本マニュアル」
 分科会④「職人と伝統の伝承」
●分科会まとめ・閉会挨拶・来期総会案内


まずは大江忍代表理事からの挨拶。

 

コロナ禍において会員紹介コンテンツの取材が一部オンラインで行わざるを得なくなった旨や、今後建築業界が受けるであろう影響を鑑みて、今ある仕事を大事にしながら共に乗り越えて行きましょうといった挨拶がありました。


自己紹介(新入会員・新運営委員・新事務局)

 

今年は新たに3名の方が入会されました。まずは新入会員の兼定 裕嗣さん(岐阜県)さんの自己紹介から。

 

兼定さん:「手加工での家づくり、伝統技術を引き継いでゆくことを大切に仕事をしています。会員の皆さんと情報交換をしながらレベルアップを図りたいと思っています」

 

福島 教仁さん(埼玉県)、清水 裕且さん(徳島県)のお二方も今期より入会されました。当日は都合により参加できなかったためパネルでの紹介となりました。ご両名についてはプロフィールページをチェックしてみてください。

新入会員プロフィールページ
>>兼定 裕嗣さん >福島 教仁さん >清水 裕且さん

次に、7月より事務局を引き継いだ中田京子さん(岡山県)のご紹介。

 

中田さん:「会員の皆さんの情熱を持って仕事をされていて、刺激を受けながら携われることにありがたく思っています。木の家ネットの事を多くの人に知ってもらいたいです。皆さんのお役に立てるように頑張って行きますので、よろしくお願いします。」

また、賛助会員として森田 康司さん(秋田県)も今期より入会されました。


事業報告

続きまして、一年間の各事業報告に移りました。

 

【大工経営塾/見積部会】
まずは「大工経営塾/見積部会」について金田克彦さん(京都府)より報告がありました。

 

大工もこれからは経営のこともしっかり考えていかなければいけないので一緒に考えていこう」という趣旨で4年前から活動しているのが大工経営塾です。さらに一歩踏み込んで、伝統構法などの木組みで家づくりをする際の見積もりの考え方に統一性を持たせて活用できるデータを作っていこうというのが見積部会になります。

金田さん:「木工事と左官工事がなかなかデータもなく分かりにくいので、そこに重点を置いて勉強会を開いています」と近況を報告してくれました。

 

【その他講習・勉強会】
今年度は、大工経営塾として京都大学勉強会・気候風土適応住宅講習・民法改正講習・限界耐力計算勉強会が開かれ、会員の皆さんが熱心に参加されました。それぞれの集まりについて大江代表理事より報告がありました

京都大学勉強会では、講師に藤井義久先生、補助講師に安田哲也先生をお招きし、「山と木材など木の家を取り巻く環境が変化して行く中で、伝統的な技術を持った人たちがどうやって生きていくのか」などをテーマに講演が開催されました。

 

気候風土適応住宅講習では、木の家ネット会員の高橋昌巳さん(つくり手リストはこちら)に講師なっていただき、気候風土適応型住宅の申請ポイントを伝授していただきました。かなり具体的な話をしていただき、申請を検討中の方にとっては参考になったのではないでしょうか。

 

民法改正講習では、建築関係の法律に詳しく各所で引っ張りだこの弁護士、秋野卓生先生を講師にお招きし、契約書・契約約款の作り方や民法改正のポイントの説明をしていただき、かなり勉強になったかと思います。今後の展開として、会員の皆さんが使える木の家ネット独自の契約約款を作りたいなと考えています。秋野先生や会員の皆さんのお力を借りながら進めていきたいと考えています。

コロナウイルスの影響が出始める前の開催でしたので、居酒屋での様子が写っています。今見返すとこの1年で世の中がガラッと変わってしまったんだなと実感します。来年の総会の頃には日常が戻ってきている事を期待しています。

 

講師の岩波さん、参加された方々からのコメントもいただきました。

限界耐力計算勉強会では、木の家ネット会員の岩波正さん(つくり手リストはこちら)に講師になっていただきました。6月から9月にかけて全7回の連続講座となりました。難しいのではないかと敬遠されがちな限界耐力計算ですが、多い時には70名を超える方々に熱心に参加していただきました。次の展開としまして、木構造計算の初歩から始める「木構造の勉強会」を開催していきます。

 

【「伝統建築工匠の技」ユネスコ登録活動報告】

ユネスコ無形文化遺産への登録を目指し活動をしている【伝統建築工匠の技】の近況報告を行いました。
また国立科学博物館にて、2020年12月8日(火)~2021年1月11日(月・祝)に開催予定の【日本のたてもの -自然素材を活かす伝統の技と知恵】に、京都迎賓館の模型が展示される予定になっています。“新築に採用された伝統建築技術”が国に認められ展示されることになりますので、大きな前進と言えるものです。

 

【気候風土適応住宅/SDGs の取り組みについて】

来年2021年4月より施行される改正建築物省エネ法、及び気候風土適応住宅の場合の省エネ基準やガイドラインなどについて綾部孝司さんよりお話がありました。

行政庁に対して私たち自身が語りかけていかなければならないこと。曖昧な言葉の定義をはっきりしていく必要があること。また、SDGsの観点からは気候風土適応住宅には優れているポイントが備わっているので、それを武器にプレゼンテーションしていくのがいいのではないか。といった内容をお話していただきました。

 

【熊本マニュアル活動報告】

次に古川保さんより「熊本マニュアル活動報告」として今年2月に熊本県で策定された「くまもと型伝統構法を用いた木造建築物設計指針」の説明をしていただきました。

同マニュアルは、伝統構法の木造建築物の設計方法について、構造計算が比較的容易にできるようになり、木造伝統構法の技術を発揮できるフィールドをより広め、伝統技術の継承、地産地消による地域産業の活性化、安全で質の高い木造伝統構法建築物の供給促進を図ることを目的としています。


分科会

休憩を挟んで恒例の分科会を開催しました。今回は【①気候風土適応住宅/SDGs】【②既存伝統的建物の耐震診断の諸問題について】【③熊本マニュアル】【④職人と技術の伝承】の4つテーマのミーティングルームに別れ、熱い議論を交わしました。

 

【①気候風土適応住宅/SDGs】

事業報告で触れた内容について、引き続き綾部さんに詳しく解説していただき、参加者の皆さんからも質問や意見が飛び交いました。篠節子さんからは「自分で計算できるようになってください。そうしないと何も言えなくなってしまいます。」と鋭いコメントも。

 

【②既存伝統的建物の耐震診断の諸問題について】

限界耐力計算勉強会と同じく岩波さんに講師になっていただきました。「難しいと思われがちですが、構造計算も頑張ってみようという設計者は是非やって欲しい」「きっちり計算できる人があちこちで増えていかない行政に対して発言することは難しいので、みんなで動いていこう」など力強いメッセージは発せられていました。

 

【③熊本マニュアル】

前半の活動報告に引き続き、古川さんに熊本マニュアルについてさらに踏み込んで説明をしていただきました。参加者の皆さんからは質問が相次ぎ理解が深まったことと思われます。「大工さんが今までつくってきた建物を普通に大工さんでも建てられるようにするのが目的だと聞いて感動しました」という感想が聞かれました。

 

【④職人と伝統の伝承】

「職人と技術の伝承」では剣持大輔さんが音頭を取りながら、誰かが発表するという形ではなく、参加者の皆さんがディスカッションする形で熱い議論が繰り広げられました。「試しに毎週土曜日を休みにしてみたら、効率が落ちるようなことは全くなかった」「コロナ渦において人手が余るようなことがあれば、木の家ネット内で声を掛け合って忙しい現場に出張していくようなネットワーク体制があってもいい」など、今の時代を象徴するような働き方の変化についての声が聞かれました。


閉会。そして淡路島へ。

各分科会のまとめを発表した後、全員カメラをオンにして記念撮影。離れていても一体感を感じることのできた瞬間でした。

そして最後に杉岡世邦さんから閉会の挨拶がありました。
「今年はイレギュラーでこのような形での開催となりましたが、このような場を持つことができて非常によかったなと思っています。来年は淡路島でお会いできればなと思っています。本当に今日はお疲れ様でした。ありがとうございました。」

今年の経験を、様々な形で日々の仕事や、木の家ネットの活動に生かしていけば、来年はさらに素晴らしい報告や議論のできる総会が開催できることでしょう。次回こそ淡路島でお会いしましょう!

 


取材・執筆・写真:岡野康史 (OKAY DESIGNING)

木の家ネットのつくり手は、無垢の木を使って、地域の気候風土に適応した家づくりをしています。どのような素材を選び、どう使うのか、何を大切にして家づくりをするのか。そのひとつひとつの問いと向き合い「自分さえ、今さえよければ」とか「経済効率至上」ではなく、自然との共生、資源や経済の地域内循環、長寿命の家づくり、環境の持続可能性などにつながる選択を、する姿勢は、昨今注目されているSDGsの考え方と重なる部分がたくさんあります。今回の特集では、木の家づくりとSDGsについて埼玉県川越市で綾部工務店を営み、主に木組み・土壁・石場建ての家づくりを手がけている綾部孝司さんに語っていただきました。ビデオを収録したのは、綾部工務店で設計施工した「雑木の庭に建つ石場建ての家」。(一社)環境共生住宅推進協議会で毎年実施する「サスティナブル先導事業(気候風土適応型)」平成28年度の採択事例にもなっている「気候風土適応住宅」です。

職人がつくる木の家ネットの運営委員であると同時に、「木の家ネット・埼玉」の中心メンバーのひとりとして「くむんだー」による木育活動や、埼玉県建築士会との恊働による埼玉県における気候風土適応住宅の基準づくりのための特定行政庁や県へのはたらきかけなども積極的に行なっている綾部さんは、早くから国連が提唱するSDGsに注目してきました。「環境負荷を少なく、自然の恵みを活かし、次世代にもつながる家づくり。ふだんから考え、実践していることが、SDGsで掲げている目標の達成にも寄与している。あたりまえにやってきたことの意義を再認識し、その意義を意識的に発信していくことが、大事」というメッセージを肉声で伝えるために、映像で出演してくださいました。

SDGsとは?


SDGsで掲げる17の目標

SDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)とは、持続可能な世界をつくっていくために考えられた17の目標です。2015年9月「国連持続可能な開発サミット」において「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」がで全会一致で採決されました。

「誰一人取り残さない no one will be left behind」という理念のもと、今の世界に蔓延している貧困や格差、環境問題などを、世界中の人がそれぞれの立場で解決していこう、という全世界共通の目標です。それは、環境にダメージを与える、社会的な格差をつくるような経済行為はしてはいけないというストッパーともなるものです。


世界共通で使われているSDGsのロゴデザイン。
1-韓国語 2-ロシア語 3-中国語 
6-フランス語 7-スペイン語 8-ドイツ語  9-アラビア語
12-英語 13-日本語 14-イタリア語 15-英語

SDGs 経済活動と環境や経済との関係

SDGsが登場する前までは、持続可能性は環境・社会・経済という並列な「3本柱」によって支えられると考えられてきました。しかし、SDGsでは「正常な環境や社会があってこそ、経済活動がなりたつ」としています。持続可能な環境というベースの上に健全な社会が成り立ち、その上ではじめて経済活動は展開され得るのです。

2002年 持続可能な開発に関する世界首脳会議
(ヨハネスブルク・サミット)
持続可能性を構成する「3本柱」としての社会・環境・経済
2015年、SDGsが採択された国連持続可能な開発サミット
3つの要素は並列ではなく、社会は経済の、環境は社会の前提条件であると定義された。

木の家づくりを通してどのようにSDGsの達成に関われるか?

SDGsは、全世界の人が向かうべき目標として掲げられています。開発途上国だけでなく先進国も含めで全ての国の、政府、自治体、企業、NGO、学校など、すべての立場の人が、それぞれの立場や地域から取り組むことが求められています。

では、私たち木の家ネットのつくり手は、無垢の木を使った気候風土に適応する住宅を造ることを通して、どのようにSDGsの17の目標の達成に関われるのでしょうか?

17の目標のうち、私たちが実践していることと内容が近いものを5つ取り上げてみました。

3-すべての人に健康と福祉を

7-エネルギーをみんなに そしてクリーンに

11-住み続けられるまちづくりを

12-つくる責任 つかう責任

15-陸の豊かさも守ろう

3:すべての人に健康と福祉を

気候風土に適応した家づくりでは、無垢の木や土、草、石など、できる限り自然素材を使います。自然素材は「呼吸をする」ともいわれ、多孔質であるため、吸放湿性にすぐれ、室内の湿度を適度に保ちます。また、目にやさしく、音の反射もやわらかく、手触りや足あたり、香りもよく、五感を癒す作用があります。自然素材がつくる室内空間で、人は心身ともに健やかに暮らすことができます。

7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに

外界の自然を遮断するのでなく、ゆるやかにつながり、季節に応じて太陽光や風、庭の樹木など自然の恩恵を活用します。軒の出を深くすることで、高度の高い夏の強い陽射しはカットし、冬の低い陽射しは家の奥まで取り込む。落葉する庭木を植えることで、夏には木陰を、葉を落とす冬には縁側に陽だまりをつくる。エネルギーを消費する以前に、知恵を使って夏冬の暑さ寒さをやわらげることは、省エネにつながります。

11:住み続けられるまちづくりを

地震、台風、洪水など、自然災害の発生の頻度は増え、災害も甚大化しています。日本の建築には古来、自然の力に対抗するよりは、受け流し、やり過ごすしくみがあります。木組みの軸組は、木のめりこみで傾くことがあっても、おこせば復元できます。落ちた土壁は塗り直すことが可能です。雨に濡れた無垢材の柱は乾けば元通りになります。「壊れないこと」よりも「直せるように造ること」の方が、結果的には補修をしながら長く住み続けられることにつながるのです。

12 つくる責任 つかう責任

経済性を優先するなら、家の寿命は長すぎない方が、ふたたび新築する機会がめぐってくるからいい、というような発想は、SDGs的ではありません。長く使い続けてもらえるように、かつ使わなくなった時にゴミにならないようにつくるのが、つくる者としての責任です。メンテナンスをしながら長く住み継いでいけるような、長寿命な家づくりをするのが基本ですが、木組みであればこそ、解体することになっても材を再利用することも可能です。今主流の新建材の家は、解体後、燃えないゴミとして埋め立てるほかなく、環境負荷が高いですが、無垢の木の家は、最終的に燃料にすることができます。

15:陸のゆたかさも守ろう

気候風土に適応した家づくりでは、地域材を多く使います。地域材を使うことは、山の手入れをしたり植林したりする費用を還元することになり、それによって山を健全に維持することができます。山の手入れがなされなければ、自然災害の被害も大きくなってしまいます。家づくりに上流の山の地域材を使うことが、その流域の安全を守ることにもつながるのです。

以上のように、私たちが実践している無垢の木の家づくりは、結果的に、SDGsでめざしている目標の達成に寄与しています。SDGsという言葉が一般的になるずっと前から、私たちはあたりまえのこととして、このような意識をもって仕事をしてきました。

無垢の木の家づくりを志される方には、あなたのその選択が、SDGsの目標を達成するための大きな一歩ともなることをお伝えします。

社会全体がSDGsの目標達成に向けて動いていく中で、このような家づくりの意義をより広く知らしめ、こうした家をつくり続けることができるよう、位置付けていくことも大切です。そのためには、地域の行政へのはたらきかけも必要です。

この動きを全国に

2021年4月から、つくり手は住まい手に、造る家の省エネ性能について説明する義務を負うこととなります。その際に、今回ご紹介したような家づくりをしているつくり手のみなさんは、外皮性能をあげて「省エネ基準」を達成する方法ではなく、自然の恵みを活用しさまざまな工夫で省エネを実現する「気候風土適応住宅」であることを説明していくことになります。どんな家が「気候風土適応住宅」となるのかについては、それぞれの地域の気候風土に合った基準をつくるのが望ましく、地域の特定行政庁で要件を決めることになっています。そして、なにがその地域の「気候風土適応住宅」の要件としてふさわしいのかは、実務者と各特定行政庁とのやりとりの中で練り上げていくことが求められています。
たとえば、埼玉県では、2020年の8月27日、一社)埼玉建築士会のメンバーで木の家ネット会員でもある2名が代表して、無垢材と相性のよい真壁づくりを要件としていくことを提案した「埼玉県における気候風土適応住宅の提案書」を提出するとともに、実務者から見た持続可能な社会づくりについてプレゼンをしました。

埼玉県都市整備部建築安全課に気候風土適応住宅の提案書を提出

全国各地のつくり手のみなさん。SDGsにも貢献できる、地域の無垢の木を使い、そこの気候候風土にかなう家づくりを全国各地で継続していくために、地元の特定行政庁に足を運び、はたらきかけをしていきましょう。

SDGsなんて、きれいごと?

SDGs が呼びかけているのは理想であり「きれいごと」である。「実現できればいいけど、それはきれいごとだから。」と言われて理想を抑えて忖度してきたこれまでの社会を変えるために、「きれいごとを揶揄することから行動することへ」変えていき、「きれいごとで勝負できる社会」を実現しなければならない。

単なる世代交代のバトンではなく「質の高いバトン」を次世代に渡していく。学校でこのアイコンを知った子どもたちからは、「不平等をなくしたい」「困った人を助ける仕事をしたい」といった夢を描く子どもが出てくるだろう。この SDGs アイコン日本語版が、きっと人生の指針になっていくだろう。各ゴールのアイコンに添えられた日本語が、より良い世界に向かって力を合わせていくための羅針盤(コンパス)になってくれたらと願う。

SDGsアイコン 日本語版制作チームの一員
川廷 昌弘さん

出典:SDGs は国連初のコミュニケーション・デザイン〜SDGs アイコン日本語版の制作プロセスから考察する(KEIO SFC JOURNAL Vol.19 No.1 2019)

気候風土に適応した住宅をつくることが、SDGsの達成にもつながること、ご理解いただけましたでしょうか? 今回の特集では、SDGsとの関わりに焦点をあててご紹介しましたが、木の家ネットのコンテンツで「気候風土適応住宅」の要点についてわかりやすくまとめたコンテンツもありますので、そちらもあわせて、ぜひご覧ください!

気候風土適応住宅の魅力

内容
1.建築物の省エネとは??
2.「気候風土適応住宅」の構成要素
3.気候風土適応住宅の生産体制
4.気候風土適応住宅の価値

[ 気候風土適応住宅の魅力 ] コンテンツへ

ビデオ撮影・編集=持留和也(モチドメデザイン事務所
ビデオ原稿・本文執筆=持留ヨハナ(モチドメデザイン事務所

「コロナで売上が落ちた」とお困りのみなさま、持続化給付金の申請はもうお済みでしょうか?(まだの方はこちら

国の政策としての
「実質無利子・無担保・無保証」融資

給付資格がある事業者が、申請をすると国から支払われる給付金。ありがたいとはいえ、個人で100万円、法人でも200万円が限度なので「事業を回すまでには、おぼつかない…」という方も多いかと思います。そんな悩みに応える「実質無利子・無担保」という有利な条件の融資が、国の政策として実施されています。前回の「コロナ時代を生き抜く」特集でご紹介した、「コロナウィルス感染症特別貸付」がそうです。困っている事業者にとっては有利な融資は、4月末までは、日本政策金融公庫しかこの融資を提供していなかったのですが、5月1日以降、「セーフティネット保証」として民間金融機関(主に地銀・信金)にまで提供元が広がっています。

対象者前年、または前々年との売上比較
個人事業主5%以上悪化
中小企業5%以上悪化(保証料半額補填)
15%以上悪化(保証料全額補填)
名称「コロナウィルス感染症特別貸付」「セーフティーネット保証」
融資元日本政策金融公庫民間金融機関(主に地銀・信金など)
担保、保証無担保・無保証無担保、保証協会による保証
(保証料は売上5%減少の場合、半額が
 売上15%以上減少の場合、全額が補填)
限度額6,000万円4,000万円
返済期間運転資金なら 15年以内、設備資金なら20年以内10年以内
元本返済の据置期間5年以内5年以内
利子3年間 実質無利子(共通)

※ 実質無利子とは、3年間分の利子については国が「特別利子補給制度」で肩代わりしてくれることを指します。
※セーフティーネット保証とは、国が都道府県を補助し、各都道府県で地銀や信用金庫等をサポートする制度融資なので、細かな条件は地域によってちがいます。
*保証料は国からの財源で、県と市とが補填します。個人事業主の場合は全額補填、中小企業の場合、売上5%以上減だと半額、15%以上減だと全額が補填されます。

経済産業省が制作した、民間金融機関による実質無利子・無担保融資の解説ビデオ。(別ウインドウが開きます)

工務店経営の要は、健全な資金繰り
金融機関からの借入はその助けとなる

建設業において、注文主(施主)から請負(工務店)へのお金の流れは、それぞれに違いはあるとしてもおおむね「契約時、着工時、上棟時、完成時」など、何回かに分けて支払われるのが一般的です。一方、元請である工務店からは、各職方への支払いや材料費など、出費は毎月発生します。元請けである工務店は、「もらうより前に支払いがある」のが、つらいところ。支払いをきちんきちんとしていくためには、月々の資金繰りができるだけの現金が手元になければなりません。

月々の支払いをしていけるだけの現金がない場合に頼りになるのが、金融機関からの融資です。「500万借金をしてでも、500万の貯金をもっている方が、借金もないが貯金もないよりは健全な経営ができる」と言われるのは、そのためです。とはいえ、借金をすれば、元本のほかに利子をつけて返済をしなければならない恐れから、借入することに躊躇する人もいるでしょう。

コロナ対策としての融資が
銀行とのつきあいのきっかけに

今回、国がコロナ対策の政策として実施する「実質無利子・無担保」融資は、借入のリスクを実質ゼロにし、経営の安定化の助けとなるものです。これまで金融機関から借入をしたことがなく、現在、資金繰りが不安定になっている人にとっては、金融機関とつきあいながら経営を立て直すことを考える、良いチャンスとなるかもしれません。

今回は、ふだんから地元の銀行・信金とつきあいがあり、今回の「実質無利子・無担保」の貸付制度を上手に利用している木の家ネットの3人の会員にインタビューしてみました。

Q 融資を受けた動機と金額、返済期間を教えてください。

Aさん:今年は大きな仕事があり、運転資金をまわしていくための資金繰りが心配だったので、2000万を10年返済で信用金庫から借入れました。

Bさん:うちも大きな現場を抱え、資金繰りが心配だったので、バッファーとして3000万を、実質無利子となる期間に1ヶ月を足した3年1ヶ月返済で地銀から借り入れた。

Cさん:コロナの影響で、無くなったり止まったりした現場があり、今後の資金繰りに不安を感じたので、これまで借り入れていた3000万を、この制度を活用した融資につけかえ、さらに追加で1500万を10年返済で借り足した。

Q 利率は何%?

Aさん:10年の返済期間の間、ずっと無利子(おどろき! 都道府県による制度融資のおかげ)

Bさん:年利1.2%だが、3年間は全額、国から支払われる。その期間にほぼ終わらせるために返済期間を3年と1ヶ月とした。1ヶ月長いのは、実際に利子を払う期間が少しでもいいので欲しいと、金融機関から言われたため

Cさん:追加融資分は、10年間ずっと年利1.0%だが、最初の3年間分の利息は、払った分が後払いで還付される。

各都道府県の制度融資一覧

※このリンク集は2020年7月15日現在のものです。アクセス時期によっては、URLの変更によるリンク切れ等が生じる場合があることをご了承ください。

Q 月々の返済額は?

Aさん:約166,000円 x 120回


Bさん:800,000円 x 36回 + 1,200,000円x1回


Cさん:約137,500円 x 120回

金融機関側も、コロナ対策融資には積極的
必要書類もそう大変ではない

普段だと、銀行からお金を借りるには、事業計画や返済計画など、さまざまな書類を求められ、そのハードルは低くはありません。ところが、今回に関しては、かなり楽だったようです。日本政策金融公庫から借りる場合、必要書類は、前回の特集でとりあげた通りです。

個人法人
1借入申込書
2事業税の納税証明書
3事業主の住民税の納税証明書代表者の住民税の納税証明書
4事業主の住民票法人の履歴事項全部証明書
5直近2期分の確定申告書の控え直近2期分の申告決算書の控え
6月次試算表、売上減少を説明する資料
7事業主の実印、印鑑証明書法人の実印、印鑑証明書
8指定業種に関する許認可証、登録証など
9事業の概要を説明する資料
10融資額の使途の説明資料

上記のうち、作文が必要となるのは、10 融資額の使途の説明資料ぐらい。あとは担当の役所から出してもらったり、会計担当の人に揃えてもらうぐらいで、そう難しいものではありません。9 事業の概要を説明する資料は、これまでに借入をしたり、補助金を申請していれば、既につくったものがあるでしょう。もし、初めてでしたら、金融機関の担当者と相談して作成しましょう。

申請書類の作成については「信金のサポートもあり、簡単でした」「自分で取りに行ったのは印鑑証明と納税証明書くらい」「記名捺印する書類は10種類くらいあって、住所や電話番号などを繰り返し書くのがつらかったくらい」と、大変ではなかったようです。

この融資制度、3年間の実質無利子とはいえ、金融機関が「利子をとらない」わけではなく、「借り手の代わりに、国が利子を払う」のであり、保証についても国が肩代わりしているので、銀行としては「リスクなく融資できて、利益が上がる」おいしいチャンスなのです。そのため「『今だと無利子無担保で借入できるけど、どう?』と、信金から声をかけてくれた」「弊社担当の銀行の営業がいろいろとサポートしてくれた」「これまで借入をしてきた地銀の支店長と次長が素早く対応してくれた」と、手続きがスムーズに運んだそうです。

資金繰りがうまくまわるように
借換で以前の借金が楽に

これまでも地銀・信金から借入をしたことのある3人。金利がうんと低く、3年間は利子を国が支払ってくれる今回の融資の恩恵は、ことのほか大きいようです。月々の運転資金が安定的にあること、これまでにしてきた借金を、より利率が低いものに借り換えできて、経営が楽になったことが、それぞれの発言からうかがえます。

Aさん:月々の固定費の支払いのための資金繰りを考えなくてよくなったので、楽。設備投資まではできなくても、職方への支払いが確実にできるので安心。実質無利子もだが、いつもかなりの金額をもっていかれる保証料がかからないのもとても助かる。

Bさん:早速、資金繰りに利用する予定が生じて、あってよかった。

Cさん:同じ金融機関からこれまで3000万を金利3.6%で借りていたのを、借り換えできて金利は1.5%。月々の返済の固定費が減った。

借入額の目安

制度として、最大4,000万円(民間金融機関の場合)借りられることになっているからといって、誰でも限度額まで借りられるわけではありません。保証がついてはいても、金融機関としては基本的にきちんと返済してもらいたいので、返済の見込みがない額の借入は承認してくれません。およその目安として、平均月商の3ヶ月から6ヶ月分と考えておくと良いでしょう。すでに他からの借入がある場合は減額されますし、これまでに返済実績があったり、事業に将来性があると判断されれば、より多くの額が認められるでしょう。取引実績がなければ金融機関の側も慎重な判断になりがちなので、借入額を決める時は先方とよく相談をし、無理のない金額にすることが大切です。

経営の安定のためにする
銀行とのつきあい&借入の勧め

借入をしたことのない人のなかには「借金は悪いこと。できればしない方がいい」と思っている人もいるかもしれません。しかし、金利が低い時に適切な借入をすることで、資金繰りの心配を減らし、払うべきものをきちんと支払っていけるようになるのであれば、経営の健全化につながります。

今回のようにリスクなしに運転資金の融資を受けることができる機会に金融機関とのつきあいをはじめ、金融機関との信頼関係を築いていくことを、3人とも勧めています。その生の言葉をご紹介して、今回の特集の締めくくりとさせていただきます。

Aさん:コロナ対策としてお金を借りやすい状態を国がせっかくつくってくれているので、経営に不安があるようなら、このよい条件の時に借りられるものは借りた方がいい。お金を借りながら、余裕をもって安定的に経営していくことも、学ぶべきことのひとつです。

Bさん:保証料と利息を国や県が負担してくれる今は、金融機関にとってもチャンスで「どうせ金利ゼロなんだから最高額までいきましょうよ」なんて言ってきます。こんなに簡単に貸してくれることはめったにありません。借りても使い込まず、運転資金としておいておけば、無利子なので健全に返していくことができます。運転資金に不安がある人は、ぜひ利用するのがいいと思います。

Cさん:これまで借入なしでがんばってきた人は、無利子とはいえお金を借りるのは怖いことかもしれない。けれど、貸したい銀行と借りて助かる工務店と、お互いにWinWinになるような助け合いの関係を築いておけば、次のイザという時に安心です。これまで借金をしてきた人は、さらに借金をするのは悪いこと、と思うかもしれない。けれど、以前の借入をより低金利のものに借り換えることで、返済がずいぶんとラクになるのです。大きなお金を動かす工務店経営を続けていくために、銀行とのパートナーシップを築いておくことは必要だし、大事なことです。

以上、地銀・信金との関係の中で、うまく借入をした3人の生の声をお届けしました。「運転資金が途切れそうで、怖い。けれど、借入をするのも、怖い」という方にとって、健全な経営のための借入について知っていただくために、この特集が役にたってくれたらと思います。日本政策金融公庫での借入をするなら近くの商工会議所や商工会へ。民間金融機関から借入するなら、お近くの地銀や信用金庫へ。これからの経営について長い目で相談するために、勇気を出して連絡をとって、出かけてみてはいかがでしょうか。

まとめ

※5月30日、第2次補正予算案で追加された政策のことを追記しました。

木の家ネット会員のみなさん、個人事業主として働いているみなさん、中小企業にお勤めのみなさん、緊急事態宣言が出された日本で、今、どのように暮らしておられるでしょうか。

今回の特集では、政府の様々な支援策の中から、手続きが比較的簡単で、実用性の高いものを厳選して、その利用方法をまとめました。個人事業主や中小企業が多い木の家づくりの世界では、たとえ今は大丈夫でも、半年後、1年後に受注が激減する可能性があります。そのような事態を一件でも少なくし、共に生き抜くことを目指して、今回の特集を企画しました。

5月中は、随時情報を更新

支援策は日々改定されており、4月30日の補正予算成立をうけて、ようやく具体的な手続きが決まるものがたくさんあります。そこで、5月中は特集記事の改定を随時続け、正しい情報をお伝えできる体制で臨みます。支援策の利用をお考えの方は、時々、このページを見直されることをおすすめします。また、情報が古いことに気づかれた方は、ご一報いただけると助かります。

最初の相談先は、
地域の商工会議所・商工会へ

コロナ支援策は多くの省庁が行っています。既存の事業を改良したものから、新たに立ち上げたものまで、大小合わせると総数は100を越えました。経済産業省が支援策をまとめたパンフレットをつくっていますが、全体で60ページ以上あり、どこから読んだらよいか迷うほどです。支援の方法も、給付、融資、猶予、軽減、助成、補償...とたくさんあり、例えば金融機関では、融資のことはわかるが、給付や猶予のことは自分たちの事業ではないので情報が少ないということがあります。

そこで頼りになるのが、地域の商工会議所・商工会です。「事業の総合医」のような存在の彼らは、地域の商工業を健全に経営し、成長させるための施策を横断的にサポートしているため、たくさんあるメニューの中から、その事業者にあったものを勧めてくれます。例えば、商工会からは、Aという融資と、Bという助成を組み合わせることを提案され、融資Aの具体的な条件については地銀と相談するといった具合です。

後述する「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を利用する場合、何千万円という額の融資をうけるには、沢山の書類を用意し、現実的な返済計画を組み立てないといけませんが、この窓口となっている日本政策金融公庫は全国に限られた数しかなく、今となっては予約を取ろうとすると何週間も先になってしまいます。そんな時、地元の商工会にいけば事前に必要な書類を揃えることができ、借入額と返済計画の草案を相談しながらつくることができます。結果、公庫とのやりとりがスムーズに進み、素早く融資を受けることができるのです。経産省のWebサイトでは、専門家が何度でも無料で、様々な経営相談に対応する「よろず支援拠点」として、全国の商工会議所を紹介しています。

ここへアクション!
日本商工会議所

全国商工会連合会

上記のこのリンク先で、お近くの商工会議所・商工会を検索できます。

支援策の実際

マスメディアでは、住民1人10万円給付や、いわゆる「アベノマスク」が話題にのぼることが多いですが、他にも支援策はたくさんあり、本記事では次の4つを取り上げます。

 

生活福祉資金貸付制度

新型コロナウイルスの影響で経済的に困窮している世帯を対象とした融資制度です。典型的な状況としては例えば、現場で感染者が出て工事がストップし、フリーで働いていた職人が、他の仕事も見つからず収入が途絶えたという場合でしょうか。特徴は、無利子、無担保、無保証、据置1年以内(借り入れ日から最長1年間は返済なし)、返済2年以内という、破格の好条件。個人事業者の場合は最大20万円を「緊急小口資金」として借りることができます。地域の社会福祉協議会に面談の予約をとり(とても混雑しており、2週間から1ヶ月後になるところが多いようです)、窓口で書類作成をして申し込みます。審査が通れば7〜14日でお金が振り込まれるとのこと。それから一ヶ月後、まだ経済状況が好転していなければ、追加で「総合支援資金」の融資を相談するための予約をとることができます。融資額は2人以上の世帯の場合、月20万円、単身の場合は月15万円を最長3ヶ月連続で借りることが可能です。手続きのオンライン化も検討中だそうですが、開始時期は未定。

    必要書類

  1. 本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)
  2. 本人の印鑑
  3. 貸付金の振込先口座(本人口座)が確認できる通帳
  4. 収入が減少したことがわかるもの(給与明細、預金通帳など、様式は問わない)
    ※地域によっては、建設業許可証などの提示を求められる場合があります

クレジットカードや消費者金融のキャッシングサービスの金利は実質年率3.0%~18.0%程度。面倒な手続きなしで、手軽にATMで現金を手に入れられることから利用したくなるかもしれませんが、生活福祉資金貸付制度を使えば、利子を払うことなく借りることができ、しかも借り入れ日から最長1年間は返済なし。コロナウイルスの影響は当分続くでしょうから、その間、返済の心配がないのはとても安心です。返済期間は最長2年なので、月々の返済負担を低く押さえることが可能。さらに返済開始時に住民税非課税程度の収入であれば、返済自体の免除の可能性もあります。緊急小口資金の20万、総合支援資金の20万x3ヶ月で60万、合計80万円の給付を受けられるかもしれません。申請から受け取りまで時間はかかりますが、それを待つことができれば、検討してみてはいかがでしょうか。

ここへアクション!
社会福祉協議会

ろうきん

「社会福祉協議会」に加え、
「ろうきん」でも申し込みができるようになりました。
(ただし、緊急小口資金のみ。総合支援資金は社会福祉協議会へ)
このリンク先で、お近くの窓口を探して、連絡してみてください。

 

持続化給付金

新型コロナウイルスの影響で売上が大きく減少した個人事業主と中小企業を対象にした給付金です。要件は2020年の1月から12月の間で、1ヶ月の売上が、前年同月の50%以下の月があること。その月の売上を12倍した金額と、昨年の総売上額との差額が給付されます。給付金額には上限があり、個人事業者は最大100万円、法人は最大200万円。下の計算式を参照してください。

持続化給付金計算式

給付なので返済の必要はありません。工務店や設計事務所の場合、お客様から支払いを受けるのが、契約、上棟、引渡し時と間隔が空いていて、月々の売上額の増減が比較的大きくなる傾向がありますから、要件を満足するところは多いのではないでしょうか。

申し込み時に必要なものは、次の4つ。

    個人事業者の必要書類

  1. 本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)
  2. 2019年の確定申告書類の控え(収受日付印付き)
  3. 減収月の事業収入額を示した帳簿等
  4. 通帳やクレジットカード、オンラインバンキングの画面等

    法人の必要書類

  1. 法人番号
  2. 2019年の確定申告書類の控え(収受日付印付き)
  3. 減収月の事業収入額を示した帳簿等(様式は問わない)
  4. 通帳やクレジットカード、オンラインバンキングの画面等

経済産業省が配布しているPDFファイルを元に制作

オンライン手続きが基本なので、印鑑はいりません! ネット受付は、5/1に専用のWebサイトで始まりました。最も早い場合で大型連休開けの8日に支給される見通しだそうです。

気をつけなければならないのは、確定申告書類の控えに、収受日付印が必要なこと。自分で申告をした人で、控えを残していなければ、「開示請求」をして、取り寄せないといけません。その手続をして、書類が届くまでには一ヶ月ほどかかる可能性があります。該当する人はすぐに手続きをはじめましょう。また、Webでの手続きにはメールアドレスでのやり取りも必要なので、携帯メールアドレスしか持っていない人は、パソコンからのメールも受け取れるよう、事前に設定の変更をお忘れなく。

5月10日追記: 受付当初は「10万未満の額は切り捨てて給付」と告知されていましたが、10万円未満の額も給付を希望する声が多く寄せられたため、「10万円未満の額についても支給する」と、8日に経済産業省が発表しました。計算では99万になるのに切り捨てで90万になっていたところも、ちゃんと99万円振り込まれることになったわけです。8日から振り込みは始まっており、差額が発生するところは、後日追加で振り込みされるそうです。追加給付を受けるための再度の申請は不要です。

5月7日の時点で約50万件の申請を受け付けたそうです。4月30日に成立した補正予算では、持続化給付金のために2兆3176億円を確保しており、法人200万円、個人事業主100万円を上限とする給付なので、およそ170万件前後の給付が可能な計算となります。日本には、中小企業と個人事業主はおよそ350万あり、事業登録をしていないフリーランスの人を含めると450万ほどになる可能性があります。給付申請は今年1年間受け付けることになっているので、予算が足りなくなれば2次補正、3次補正予算を成立させるでしょう。ただし、それには時間がかかる可能性があるので、支給額を計算して十分な額に達する人は早めの申請をおすすめします。

経済産業省が制作した、持続化給付金の解説ビデオ。給付条件や給付額など、とてもわかりやすく解説しているので、ぜひ御覧ください。

ここへアクション!
持続化給付金特設サイト

持続化給付金の申し込みはこちらから。いますぐ始められます!

 

コロナウイルス感染症特別貸付

新型コロナウイルスの影響で、最近1ヶ月の売上高が前年、又は前々年同期に比べ5%以上悪化した個人事業者、15%以上悪化した中小企業を対象とする融資制度です。

無担保、無保証で融資をうけることができ、限度額は6,000万円運転資金の場合、返済期間15年以内で、そのうちの据置期間は5年以内設備資金の場合は返済期間20年以内で、そのうちの据置期間は5年以内

金利は基準利率(2020年4月1日現在:1.36~1.65%)ですが、融資後3年目までは3,000万円を限度として基準利率から0.9%マイナス。さらに、後述する特別利子補給制度と組み合わせると、利子分が国から補給されるので、実質無利子で借りることができます。しかも、公庫から既に借りているお金があれば、それと一本化することもでき、返済負担をうんと軽くすることができる、破格に好条件の制度です。

公庫は、既にこの特別貸付の受付を開始していますが、幅広く支援を行うため、同様の条件で地銀や信金などの民間金融機関が融資できるように準備を進めています。4/30に補正予算が成立したので、これから急速に融資環境が整ってくることでしょう。既存の地銀などからの借り入れは、同じ金融機関で特別貸付制度を利用する場合でしか一本化できないため、既に多額の借り入れがある場合は、その金融機関を利用することをおすすめします。

(2020/5/30 追記) 民間金融機関での融資は既に始まっていますが、日本政策金融公庫等と違い、それぞれの都道府県による制度融資を使って運用されるために、地域によって細かな違いがあります。各都道府県の制度融資案内等のページ一覧をつくりましたので、参考までに御覧ください。
※このリンク集は2020年5月30日現在のものです。アクセス時期によっては、URLの変更によるリンク切れ等が生じる場合があることをご了承ください。

ただし、利子が優遇されるのは最初の3年間だけです。むやみに据置期間と返済期間を長くすると、利子優遇の利点が薄れてしまうことにご注意ください。例えば新型コロナウイルスのワクチンや治療薬が実用化され、単なる風邪のようになるまでの1年から2年間は据置にし、その間に十分に事業回復の準備をして、短期間のうちに業績を回復、返済を終わらせる計画を建てる、といったことです。このあたりは融資を受ける金融機関とじっくり相談されることをおすすめします。

    個人事業者の必要書類

  1. 借入申込書
  2. 事業税の納税証明書
  3. 事業主の住民税の納税証明書
  4. 事業主の住民票
  5. 直近2期分の確定申告書の控え
  6. 月次試算表、売上減少を説明する資料
  7. 事業主の実印、印鑑証明書
  8. 指定業種に関する許認可証、登録証など
  9. 事業の概要を説明する資料
  10. 融資額の使途の説明資料

    法人の必要書類

  1. 借入申込書
  2. 事業税の納税証明書
  3. 代表者の住民税の納税証明書
  4. 法人の履歴事項全部証明書
  5. 直近2期分の申告決算書の控え
  6. 月次試算表、売上減少を説明する資料
  7. 法人の実印、印鑑証明書
  8. 指定業種に関する許認可証、登録証など
  9. 事業の概要を説明する資料
  10. 融資額の使途の説明資料

ここへアクション!
日本政策金融公庫

申し込みは、日本政策金融公庫、
もしくは、これまでお付き合いのある、地域の金融機関まで。
公庫は窓口が混雑しているので、事前に商工会議所・商工会に相談することをおすすめします。

 

特別利子補給制度

コロナウイルス感染症特別貸付と組み合わせて利用する制度です。ようやく4/30に補正予算が成立したので、これから正式に運用が開始されます。公庫等の融資で発生する利子分を補給することで、実質無利子化を実現します。

個人事業主は適用要件なし、小規模事業者の適用要件は売上高15%減少、中小企業者は売上高の20%減少です。利子補給期間は借入後当初3年間限定コロナウイルス感染症特別貸付などと同時に申し込むので、必要書類とアクション先は省略します。

第2次補正予算案

5月30日 追記

第2次補正予算案が5月27日に閣議決定されました。政府与党は6月17日までの今国会中の成立を目指しています。まだ詳細が決まっていなかったり、変更になる可能性がありますが、現時点(5月30日)でわかっていることを追記します。

第2次補正予算案の概要

第2次補正予算案の追加歳出は31兆9114億円で、補正予算としては過去最大規模となります。財政投融資や金融機関の融資などを合わせた「事業規模」は117兆1000億円程。4月30日に成立した1次補正予算の事業規模と合わせると、総額でおよそ233兆9000億円となり、日本のGDP(国内総生産)のおよそ4割にもなる世界最大のコロナ対策だとのことです。

主な政策を並べてみます。

  1. 持続化給付金の対象者の拡大
  2. 売り上げが落ち込んだ事業者の家賃・地代の補助
  3. 無利子・無担保融資制度の拡充と、企業の財務基盤の強化
  4. 事業再開に向けた消毒設備や換気設備の設置などの支援
  5. 雇用調整助成金の申請の簡素化と、上限額の引き上げ
  6. 休業手当を、企業を通さず労働者へ直接給付する制度の創設
  7. ひとり親家庭等への支援
  8. アルバイト収入が減少した学生へ最大20万円給付
  9. 新しい生活様式に沿った、教育環境の整備
  10. 医療・福祉の提供体制の確保

このうち、建築関係者にも関係する、1、2、3、4、5、6 について紹介します。

1. 持続化給付金の対象者の拡大

5月1日から受付を開始した「持続化給付金」。前年同月の売上と比べ、半分以下になっている月があれば、受給の資格があるという制度です。この判定基準の関係上、創業1年以内だとそもそも比較する前年同月の売上が存在しないので、検討対象にすらなりません。
そこで、今年1月から3月末までに創業し、創業後のいずれかの月の売上が1月から3月までの平均より50%以上減少していれば、申請できるように制度が変更されます。申請は原則オンラインで、受付は第2次補正予算案成立後、6月中に開始される予定です。

2. 売り上げが落ち込んだ事業者の家賃・地代の補助

売上が無くなった飲食店が家賃負担に苦しんでいるというニュースがよく流れていますが、そういった状況への対策です。対象となるのは、今年の5月〜12月において以下のいずれかに該当する事業者です。
1. いずれか1カ月の売上高が前年同月比で50%以上減少
2. 連続する3ヶ月の売上高が前年同期比で30%以上減少
個人事業主は25万円、中小企業は月に50万円を上限に、賃料の3分の2が半年間給付されます。加えて、複数店舗を所有する場合など、家賃の総支払い額が高い事業者を考慮して、上限を超える場合の例外措置が設けられます。その場合、支払家賃(月額)のうち給付上限超過額の1/3が給付され、給付上限額(月額)は個人事業者50万円、法人100万円に引き上げられます。事業内容に飲食の制限はないので、営業所や事務所の家賃負担がある建設業でも、売上減少が認められれば対象となります。

3. 無利子・無担保融資制度の拡充と、企業の財務基盤の強化

第1次補正予算の時から実施している実質無利子・無担保融資ですが、日本政策金融公庫と民間金融機関共に、より多くの融資枠が確保されます。日本政策金融公庫の場合、融資限度額が6000万から8000万に、民間金融機関の場合、制度融資を通じた利子補給額の上限が3000万から4000万に拡充されます。
また、財務基盤の強化策として、金融機関の審査では資本金としてみなされる「資本性劣後ローン」が導入されます。見かけ上の財務基盤が強化され、金融機関から融資が受けやすくなります。貸付限度の上限は7.2億円で、貸付期間は最長で20年。

4. 事業再開に向けた消毒設備や換気設備の設置などの支援

持続化補助金(持続化給付金とは別の制度です)と、ものづくり補助金について、感染防止対策の取組に関する定額補助・補助上限50万円の別枠(事業再開枠) が上乗せされます。

・ 事業再開枠(新設)の対象
消毒、マスク、清掃、飛沫防止対策、換気設備、その他衛生管理、掲示・アナウンス

・ 特別枠の申請要件
類型A:サプライチェーンの毀損への対応
類型B:非対面型ビジネスモデルへの転換
類型C:テレワーク環境の整備

5. 雇用調整助成金の上限額の引き上げと、支給期間の延長。

4~9月は特例で日額上限が8330円から1万5千円に引き上げられます。休校に伴って仕事を休む保護者向け支援も拡充。本人が申請するフリーランス向け支援金も一律4100円から7500円に引き上げられます。4月1日以降の休業にさかのぼって支給され、対象期間は6月末までから9月末までに延長の予定。
また、手続きも大幅に簡素化され、休業等計画届の提出が不要となり、オンラインによる申請受付も始まります。

6. 休業手当を、企業を通さず労働者へ直接給付する制度の創設

企業側で手続きが出来ない・されない場合に、「国が直接、労働者に給付する休業支援金の制度」が新設されます。中小企業で働く人が対象で、給付率は休業前の賃金の8割。雇用調整助成金と同じく、上限額は月額33万円で、給付期間は最長で今年4月から9月末までとなります。

順調に国会での審議が進めば、6月17日までの国会会期中に成立し、間をおかず随時実行されます。欧米諸国に比べると、日本はコロナの直接の被害を低く抑えることができましたが、経済の回復には時間がかかるかもしれません。政府からの支援を得るためには、自分から手を挙げないといけませんが、用意されている政策は比較的手厚いのではと思います。事業者によっては、影響が遅れて顕在化することもあります。できるだけの備えをしておきましょう。

木の家ネットから、
全国のつくり手へメッセージ

木の家ネット代表の大江忍です。

まずは、コロナウイルス感染症にて、命をかけて医療に従事しておられる方、また、この状況下で、その補助に働いておられる方々に敬意を表し、感謝申し上げます。また、現在コロナウイルスに感染してしまい病魔と闘っておられる方々にお見舞いと、お亡くなりになりました方々、そのご家族にお悔やみを申し上げます。

現在、第二次世界大戦以来といわれるほどの、社会的に困難な状況です。緊急事態宣言の最中であり、まだ、どうやって、いつ収束していくのか、特にこの日本においては、不明な状態であります。我々のような中小企業あるいは個人で建築業を営むものにとっても、少しずつ影響がでてきております。新建材や衛生器具などの納品時期が遅れてきており、工期が長くなりがちです。

今回、政府の補正予算も通り、本日5月1日より、いろいろな支援策が動き出したことにあわせて、木の家ネットでは、特集を組むことにいたしました。まだ、情報としては不十分な点や間違った点などあるかもしれませんが、現在わかることをまとめてみましたので、参考にしていただければと思います。

また、現場では、各業種の交わりを減らし、なるべく職人同士が少人数で離れて作業する環境へと改善し、入場の際の手や靴の裏の消毒や、休憩時の会話もソーシャルディスタンスをとるようにすべきと思います。

今後新しい情報があれば今回の特集に追記していく予定です。

ステイホームということで、今まで家族と過ごす時間がなかったお父さんやお母さんも、家族の在り方を見直すいい機会になっていると思います。

また、社会システムへの影響も大きく、何が当たり前かを問い直すいい機会になっております。恐怖におびえるのではなく、家にいて、内側を見直し、改善できることも多くあるのではないでしょうか。

とりあえず、家の大掃除や日曜大工、断捨離、読書など、家族の絆を深める機会として、この苦境を感染することなく、乗り越えていきましょう。

きっと、新しい世界がアフターコロナには待っていることを信じております。

2020年5月1日 公開
5月10日 追記
5月30日 追記
取材協力:関口哲人(北杜市商工会)、石田恵美(Terroir愛と胃袋)

人間の経済活動や暮らしには、エネルギーを使います。現代社会では、その多くを石油・ガスなどの化石燃料に依存しています。しかし、これらの資源も無尽蔵ではなく、かつ化石燃料の多用が地球環境に負荷をもかけている現状もあります。そこで今、「省エネ」が、人間の経済活動や暮らしと地球環境との折り合いをつけながら持続可能な未来をつくっていくために国際的に共通課題として世界各国に求められています。日本でも、産業や暮らしの各分野での「省エネ」への取り組みをしており、「建築物の省エネ」もその重要な一翼をになっています。2020年の新春特集として「建築物の省エネ」にむけたアプローチとして木の家ネットで推奨する「気候風土適応住宅」について、お届けします。省エネを実現しつつ、それ以上の豊かな価値を多様にもたらす気候風土適応住宅の魅力を、たっぷりと感じていただければ幸いです。

1.建築物の省エネとは??

「建築物の省エネ」について「室内と外部環境との関係」に着目すると、大きく二つの方向性があります。ひとつは「内|外」タイプ。これは、内と外にしっかりと境界をつくって、外界の影響を最小限にした室内を、高性能な冷暖房機械で空調する建築手法です。決め手となるのは、家と外とを遮断する「外皮」。高性能な断熱材や窓ガラスを用いて外皮性能をアップすることで、省エネを実現します。一般的に「省エネ住宅」といわれているのは、このタイプです。

左:「内|外」タイプ(外皮性能型)と右:「内⇆外」タイプ(気候風土適応住宅)

もうひとつは、これからお話する「内⇆外」タイプ 気候風土適応住宅です。室内と外の環境とは遮断せず、ゆるやかにつながる建築手法です。その土地の気候風土の陽射しや風などを取り入れ、外部の自然環境を積極的に活用し、使用エネルギーを低くおさえた暮らしを実現します。空調機器も高性能な断熱材や建材がなかった頃からある、昔ながらの伝統木造住宅は、このような知恵や工夫の結晶です。木の家ネットの多くのつくり手は、このような地域の気候風土にあった自然な暮らしができるような家づくりを志向し、実践しています。

気候風土適応住宅が
省エネを実現するポイント

1. 陽射しや風など、自然の恵みを生かす
2. 「和の住まい」を今の暮らしに
合った形で継承
3. 長寿命。製造エネルギーも小さく、自然に還る素材でゴミにならない。
地域内循環。広義の省エネ要素がたくさん!

「内|外」タイプ(外皮性能型)も、現代的な住宅を施工する上で水道光熱費を抑えるのに有効な方法ですが、自然との共生、日本の住文化や職人技術の継承、製造〜廃棄までのサイクルの長さなどを考えると、「内⇆外」タイプ(気候風土適応住宅)こそが、より広い意味での省エネになっているのではないかと私たちは考えています。

以前に木の家ネットの特集記事で使ったマーク。
日射や通風を活用した家。

職人がつくる木の家ネットがつくった「地域独自の気候風土適応住宅を!」のチラシ。クリックすると、PDFファイルがダウンロードできます。

昨今、開発は持続可能性と両立すべきものであるという「SDGs」が取り沙汰されていますが、「気候風土適応住宅」の実践は「SDGs」のいくつかの要素にもあたるとも考えられます。家づくりを通して、持続可能な社会をつくっていると確信できることは、私たちにとっても住まい手にとっても、嬉しいことです。

関係ありそうなピースを抜き出してみました。

:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
11:住み続けられる まちづくりを
12:つくる責任 つかう責任
13:気候変動に具体的な対案を
15:陸の豊かさも守ろう

SDGsとは?

持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)とは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(Millennium Development Goals)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っている。(外務省のWebサイトより

以下に、一般的な省エネ住宅と気候風土適応住宅とについて、項目ごとに対比させてみました。理解の助けになれば幸いです。

「内|外」タイプ(外皮性能型)「内⇆外」タイプ(気候風土適応住宅)
大壁づくりが主土塗り真壁づくりなど
建具工業製品の高性能なサッシ地場産の木製建具
開口部窓は小さくなりがち南面等に大きな開口
建材木質系、工業系建材を多用無垢の地場産材、土や紙など
断熱材性能の高い化学系木質繊維由来など、自然素材
冷暖房高性能機器で空調陽射しや風を活用+薪ストーブなども

気候風土適応住宅 誕生の背景

国際的な省エネ目標を建築物においても達成するために、新築において外皮性能基準の達成を義務化する方向での議論が2015年ごろから進んでいた。しかし、これでは土壁など日本の伝統的な「和の住まい」がなくなる!という声があがり、国交省では、地域の職人・技術・文化を大事にし、外皮性能によらない形で省エネに寄与する伝統木造住宅を「気候風土適応住宅」として、外皮性能基準の適用除外にすることを決めた。

2.「気候風土適応住宅」の構成要素

「気候風土適応住宅」は、季節の暑さ寒さに応じて省エネを実現するたくさんの知恵と工夫でできています。さまざまな要素がありますが、いくつか項目に分けてご紹介しましょう。写真は、サスティナブル建築物先導事業(気候風土適応型)」採択事例の竣工物件のうち、木の家ネットのつくり手が関わったもの寄せていただきました。(写真の出典は記号で示し、凡例を文末にまとめました)

省エネ性能の「説明義務」

2020年に外皮性能基準の適合義務化に追加されるのは、300平米以上の非住宅建物のみ。小規模住宅については、設計者が施主に対して、その家がどのように省エネにつながるものかを説明することが、義務付けられます。その根拠は「外皮性能」でも、別の方法でもかまいません。この特集が「気候風土適応住宅」による省エネ手法の説明に役立つことを願っています。

1. 深い軒で、日射調整

軒を深く出すことで、高い夏のギラギラした日射しは室内に入れずにカットし、低い冬のぽかぽかした日射しは室内に取り込むことができます。「気候風土適応住宅」では、太陽高度を意識した軒の出し方の設計ひとつで太陽エネルギーを電気や温水に変換することなく、活用するのです。(このように直接ありがたく使うことを「ダイレクトゲイン」といいます)

2. 建具・窓・床下通気などで、
自然な風を利用

「気候風土適応住宅」では、家の中に心地よい風が通るよう、建築的な工夫をします。南面に掃き出し窓を大きく開放するのが基本ですが、酷暑の夏は開けるとかえって熱風が入ることもあるので、庭に打ち水をして気化熱で涼を得る、よしずや簾(すだれ)を使うなど、暮らしの知恵で応じることもします。

掃き出し窓ほど大きく開放するのでなくても、天窓と地窓など高さの違う窓をもうけて空気の流れをつくる、欄間や無双窓などで外から部屋、部屋から部屋へと風が抜け道をつくるなども、有効な方法です。石場建てにすることも、床下の通風の確保につながります。風がうまく抜けるよう計画すれば、機械空調に頼ること少なくして日本の夏を気持ちよく過ごせるのです。

3. 重層的な建具構成で、
季節に応じた生活空間を

とはいえ、日本には四季があります。暑い夏は外とつながる風通しのいい住まい方が望ましくても、寒い冬は室内にこもって、ぬくぬくとあたたかく過ごしたいものです。季節に応じて暮らせる「気候風土適応住宅」のポイントとなるのが「建具づかい」です。

外回りに雨戸、ガラス戸、障子と建具を多層的に使います。敷居を何本もしこめばフルオープンにもできますし、一番外の雨戸にあたる建具を、百葉箱の壁のようなルーバー状の格子のものにすることで、防犯上安心な形で夜間通風を得ることもできます。季節によって、あるいは昼と夜とで、建具で外皮の状態を変化させて、室内環境をうまく調整するのです。

建具を開け閉てすることで、空間を広げたり、せばめたり。家そのものが呼吸するような使い方ができるように設計するのですが、中でも活躍するのが「障子」。窓の内側に一本、障子をたてるだけで寒さがやわらぎますし、閉めていてもやわらかい明かりをもたらしてくれるので、閉塞感なく使うことができる、優秀なアイテムです。昼間はおひさまが燦々とあたたかい縁側も、夕方からは居室との境にもうけた障子を閉めれば縁側空間そのものが「熱的緩衝空間」となり、居室を夜間の寒さから守ってくれます。たった「紙一枚だけ」のことですが、素晴らしい知恵ですね(破れていないことが前提ですが!)。

内土間や続き間などもこの「熱的緩衝空間」という考え方に通じます。必要や場合に応じて仕切って区切って、夏は広々と、冬はこじんまりと。可変性のある空間で季節や時間に応じた暮らしの工夫で、冷暖房機器に頼らない省エネをするのが「気候風土適応住宅」なのです。

4. 雨がかりや湿気にも配慮

気候とは、暑さ寒さだけではありません。雨風や湿気に応じることも「気候風土適応住宅」の大事な要素です。湿度の高い日本では、腐朽から家の劣化がはじまります。家の耐用年数が長いことは、確実に省エネにつながりますので、吸放湿性のある無垢材や自然素材を使用します。家が長持ちする上に、室内の空気もさらっと、気持ちよいものとなります。また、建築的にもその地域の風雨の強さや方向性などを考え、雨がかりや湿気のこもりやすい床下の対策などを考えます。

5. 庭も一体で計画し、
心地よく過ごせる微気候をつくる

「外の自然環境を取り入れる」といっても、その外がアスファルトやコンクリートでは、逆効果になりかねません。大自然の中にある家でなくても、建物の周辺にほんの少し木があるだけで、建物周辺の地表面の温度上昇を抑制することができます。落葉樹を植えれば、夏は緑陰を楽しみつつ、冬は陽射しを取り込めます。庭とまでいかなくても、敷地の内外の境をブロック塀でなく植栽にするだけでも、家の周囲に微気候を形成しつつ、道ゆく人が季節感のある景観をもつくることができます。

6. 季節に応じて、
主体的に暮らす住まい手

夏は座卓、冬は掘りコタツとして使う。

「気候風土適応住宅」は、どこに持っていっても、誰が住んでも同じ性能を発揮する「箱」ではありません。そこが一般的な「外皮性能型」の省エネ住宅とのいちばんの違いです。

「気候風土適応住宅」のひとつひとつが地域に固有の気候風土に応じて計画する「一点もの」であり、また季節に応じて暮らす「住まい手」がいてこそ、成り立ちます。住まい手の主体性は「画竜点睛」の最後に描く龍の目のようなもの。建具を開け閉てし、すだれをかけ、打ち水をし、風鈴を吊るすことを四季おりおりに楽しむ。そんなライフスタイルを志向する人とつくり手との出会いが「気候風土適応住宅」を実現させるのです。

気候風土適応住宅は、
断熱しないの?

そんなことはありません!伝統的な意匠や、自然との共生を大事にしつつ、外皮性能をあげる努力も、できる範囲でしますので「昔ながらの、冬の我慢を強いるようなスカスカの家」とはちがいます。採択事例では、次のような工夫が評価されました。

・内壁が土塗り真壁でも、外壁に自然系の断熱材を
・断熱性能の高いガラスの採用
・建具にしゃくり等の隙間防止措置

3.気候風土適応住宅の生産体制

それがどんな建築的な要素でできているか のみならず、その一軒の家を「誰がどのようにつくるか」も「気候風土適応住宅」の大事な要件となります。「地域の職人が地域の素材でつくり、地域の文化を継承する」ということが、「気候風土適応住宅」の生産体制の柱となります。これは、国交省だけでなく、文化庁や観光庁も関わる「和の住まい推進」とも連動する考え方です。

1. 地域の職人がつくる

全国規模のメーカーで量産する部材を組み立てるのでなく、一軒一軒の家を、地域の職人が手刻みして組み上げるのが「気候風土適応住宅」です。若手を起用することで、技術継承をはかること、大工職人だけでなく、左官、建具、畳、瓦、板金など、大工とチームになってはたらくさまざまな職人たちの存在も重要です。

2. 地域の素材でつくる

「気候風土適応住宅」では、近くの山の無垢材を使うほか、土、紙、瓦など地域の自然素材を積極的に使います。今回参考にした採択事例の申請書にも「八代産の畳表と藁床」「岡山の稲藁床と畳表」「八女和紙貼りの天井」「菊間瓦」など、地域の素材がたくさん挙げられていました。

3. 地域の景観・文化を継承する

家は私有財産ですが、家を建てることは、周囲の景観に影響をおよぼすことでもあります。「気候風土適応住宅」はいい景観を積極的につくっていくもの。外装に焼杉、縦格子、大和塀を使う、道路ぎわに生垣を設置する、既存の屋敷林を活かすなど、魅力にあふれた採択事例をご覧ください。

気候風土適応住宅って、
どれくらい省エネなの?

平成28年度の採択物件について、グラフにまとめたものです。基準一次エネルギー消費量に対して、実際に一年間住んでみての実測一次エネルギー消費量がかなり低く抑えられていることがおわかりいただけることでしょう。

基準一次エネルギー消費量:家の規模、住む人数、地域区分などに応じて、室温を夏場は27℃、冬場が20℃にするためのエネルギー使用量は、この基準以内に抑えなさいと定めた、基準値。行政庁認定の住宅用プログラムで求める
設計一次エネルギー消費量:設計者が計画した物件について、外皮性能や使用する冷暖房機器に応じて計算する、設計値
実測一次エネルギー消費量:実際に一年間住んでみての、水道光熱費の使用実態から積み上げた、実態値

「基準」「設計」については、サスティナブル先導事業(気候風土適応型)の公式Webサイトで公表されている数値を、「使用」については竣工後の住まい手の協力により収集した数値を使っています。「気候風土適応住宅」では実態値が基準値を大きく下回っているだけでなく、設計値と比べても低くなっています。設計値と実態のズレは、エアコン設置しない場合には効率の悪いエアコンを設置した数値に換算するなど、現在の算定プログラムの仕様が気候風土型と合っていないことや、プログラムにおける冷暖房の設定値などによるものと思われます。

■ 参考:平成28年度の採択物件 事例集
https://www.kkj.or.jp/kikouhuudo/dl/jirei/jirei28.pdf

(一社)環境共生住宅推進協議会 気候風土適応型 評価・審査室

※この事例集3例めの「大きな屋根の小さなすまい」では、かんな屑断熱材を天井断熱に使用しています。評価機関では、かんな屑を断熱材として認めないため、基準値を「断熱無し」と評価して122GJとしています。このグラフでは、かんな屑を断熱材と評価した場合の基準値として、62.5GJを採用しています。

4.気候風土適応住宅の価値

ここまで「気候風土適応住宅」の建築面、生産体制面でのなりたちを見て来ました。「和の住まい」といわれる伝統的な木造住宅を、現代のニーズにあったかたちで新築することを「省エネ」という大きな文脈の中でどう位置づけると、どう評価したらよいのか。その捉え直しの作業の中で「気候風土適応住宅」という概念を整理できたのは、よいことであったのではないかと思います。

同時にこの「気候風土適応住宅」が、今後、自然と共生する持続可能な社会をつくっていくにあたって「省エネ」だけにとどまらない価値を生み出していることにも、気づかされます。省エネに至る道が「外皮性能」だけでないように、「省エネ」だけにかぎらない、多様な価値が「持続可能な社会」をつくっていくのではないでしょうか。「気候風土適応住宅」がもたらす豊かな価値について付記しておいきたいと思います。

気候風土適応住宅

以下の会員(50音順)に、採択事例の写真・資料を提供していただきました。

a.綾部 孝司(綾部工務店 )
b.高橋 昌巳(シティ環境建築設計 )
c.橋詰 飛香(野の草設計室 )
d.東原 達也(東原建築工房 )
e.古川 保(すまい塾古川設計室 )
f.水野 友洋(水野設計室 )
g.宮本 繁雄(建築工房悠山想 )
h.山田 貴宏(ビオフォルム環境デザイン室 )
i.和田 洋子(一級建築士事務所バジャン )

「サスティナブル建築物先導事業
(気候風土適応型)」

地域の気候風土に応じた木造住宅の建築技術を応用しつつも、省エネルギー化の工夫や現行基準での評価が難しい環境負荷低減対策等を図ることにより、長期優良住宅又は認定低炭素住宅と同程度に良質なモデル的木造住宅を実現する事業計画(プロジェクト)の提案を公募し、そのうち上記の目的に適う優れた事業提案に対し、予算の範囲内において、国が当該事業の実施に要する費用の一部を補助する制度(下記Webサイトより)。平成28年度からはじまり、年に2回の募集があります。
https://www.kkj.or.jp/kikouhuudo/

気候風土適応住宅 勉強会予告

高橋 昌巳氏(シティ環境建築設計)

これまで、サスティナブル建築物等先導事業(気候風土適応型)事業に4回応募し、採択されてきました。「大工経営塾 第3弾」午前の部で、その申請ポイントを具体的に教えます!「気候風土適応住宅」に取り組んでみたい方は、ぜひおこしください。

「大工経営塾 第3弾」
日時:令和2年2月15日(土)10:00〜16:30
プログラム:第一部=10:00〜12:00 「サスティナブル先導事業(気候風土適応型)の申請ポイントを伝授」 講師=高橋 昌巳氏(シティ環境建築設計 代表)
第二部=「4月から、民法改正って知っていますか?〜瑕疵から契約不適合に!」 講師=秋野 卓生氏(匠総合法律事務所 代表社員弁護士)
参加定員:40名
参加費:木の家ネット会員5000円 一般10000円
会場:ワンコイン会議室東京 東京駅八重洲南口 大会議室2F
申し込みはこちら
※木の家ネット会員優先とさせていただいてます。2020年1月14日(火)までは、会員のみの受付となります。

前回は、一般社団法人 職人がつくる木の家ネット第一回総会 唐津大会の報告をお送りしました。今回は、総会初日である2019年10月5日に、九州の関連団体との共催により、唐津市文化体育館 文化ホールで開催した公開フォーラム「災害に学ぶこれからの木の家」の記録をお届けします。

会場となった、唐津市文化体育館

まず木の家ネット代表理事 大江忍より「地球温暖化が進行し、50年に一度と言われる自然災害が毎年のように起きている今、木の家づくりはどうあるべきかを、ともに考えましょう」との開会挨拶があり、続けて安藤邦廣さんの基調講演、ここ数年の災害被災地から4人の会員の事例報告、パネルディスカッションが行われました。以下、順を追って概略をお伝えします。

第一部 基調講演

基調講演
災害(天災と人災)から見た
日本の木造建築の歴史

安藤邦廣さん

筑波大学名誉教授

一般社団法人 日本板倉建築協会 代表理事

http://www.itakurakyokai.or.jp/

1948年宮城県生まれ。筑波大学名誉教授。里山建築研究所を主宰し、スギの森林資源を活用する板倉の家づくりを推進。東日本大震災以降、再利用を前提とした板倉応急仮設住宅に力を注いでいる。

稲作と森の象徴として生まれた

日本の木造建築

「地震、雷、火事、おやじ」と言いますが、今も昔も人々の暮らしは気候変動による天災(地震・雷)や戦争などの人災(火事・おやじ)に翻弄され、それについて建築のあり方も変化してきました。

「日本建築は最初から木造だった」という思い込みもあるようですが、飛鳥時代まではむしろ、石舞台や明日香の宮など、石造りが目立ちます。朝鮮出兵をして大敗した「白村江の戦」の後、大陸から日本に攻め入られても防衛できるよう、多くの朝鮮風山城が西日本につくられました。これらも版築の石塁に囲まれた石造建築です。

版築の石塁が特徴的な、岡山県総社市の鬼ノ城

棟持柱に巨木を立て、屋根に茅を葺いた、森の象徴のような木造建築である伊勢神宮が建てられるようになったのは、飛鳥時代も後半の690年のこと。稲作の豊穣を願い、米倉を模した建物を20年おきに建て替える「遷宮」が定められ、以来、今日にいたるまでそれが続いています。海の向こうでの戦いより、稲作の無事や国内の平和を希求する時代が、このような木造建築を出現させたのです。

その後、都が奈良に移ると、国家の安寧を願い、東大寺大仏殿をはじめ国分寺が各地につくられ、木造文化が花開きます。

伊勢神宮内宮 御稲御倉(みしねのみくら)

木造建築文化を支える植林は

修験道の行者がはじめた

より大きな都を京に開いた平安時代には、植林もさかんに行われるようになります。平安以前の地層にはスギ花粉が見つからないのに、その後の短期間のうちに広い範囲でスギ花粉が現れることから、自然に植生が広がるスピードを越えて、スギが人の手で植えられていったことが分かります。

最初に植林をしたのは修験道の行者たち。九州の英彦山(ひこさん)や、戸隠神社には、樹齢800〜1000年のスギが今も残っています。天にまっすぐ伸び、成長の早いスギに、人々は木材資源の調達だけでなく、祈りをも託したのです。

細い木材でつくる数寄屋は

戦乱からの復興住宅

応仁の乱から一世紀以上続いた戦国時代には、数多くの木造建築が灰となりました。大量の大径木を要する築城ラッシュで木材資源は枯渇。ついには松江城の天守の柱に見られるような、細い柱を板で覆ってカスガイで止めつけた「包み板」=集成材を使わざるをえない状況になってしまいました。

日本で最初の集成材といわれる松江城の柱「包み板」

戦乱で焼かれた家を、成長の早いスギで再建したのが「数寄屋(スギヤ=杉家)」のはじまりです。数寄屋を原形とする「京町家」は、京都の木材供給地の北山でわずか20年で育つ細い部材で構成された、いわば「復興住宅」でした。

京や大坂の町家普請を支えた北山杉と、スギの見える大阪北浜の町家
(幕末から明治にかけて、緒方洪庵が蘭学を教え、多くの志士を育てた「適塾」)

300年間太平が続いた江戸時代には、数寄屋に端を発した杉普請+土壁の家づくりが、庭に面してより開放的なつくりに発展し、これが今の伝統木造住宅の基本となっています。

天災に対処する知恵として

各地でつくられてきた「小屋」

歴史の流れに関係なく繰り返し起きる天災に応じてきた知恵が、日本各地でみられます。長崎県の対馬では、台風と火事から身を守るために浜に「コヤ」と呼ばれる倉庫を建ててきました。屋根は石葺き、足元は石場建て。移築が容易な板倉で、普段は食料庫や作業小屋として使い、母屋が火災や台風で被災したときにはここに逃れてしのぎます。戦時中には、女子供を空襲から守るために、この「コヤ」を森の中に移築して住み、戦後、再び、元の場所の戻したそうです。

対馬の石場建て&石屋根の「コヤ」の群倉で有名な舟志集落。地面の不陸にあわせて、柱脚に石を積んで調節した石場建てが印象的。

富士山麓の根場地域でも、山津波に備えた「クラ」と呼ばれる小屋を山の中に建て、布団や漬物を保存していました。昭和40年の山津波で村が壊滅した時には、これが役に立ちました。主屋とは別の場所に建てた小屋を、普段は農作業や漁、山仕事、作業場、納屋などに使い、災害時には、そこに避難して過ごしたのです。平時から応急仮設住宅を備えていたというわけです。

都市に住みながら

農村にも小屋をもつ意義

西洋には、ロシアの「ダーチャ」やドイツの「ラウベ」のように、都市に住みながら田舎に自家菜園と小屋をもち、自給自足と都市生活を両立させる二地域居住の例があります。こうした小屋があることが、自然と乖離し、食料を依存しなければならない都市生活者の心の支えや自活力ともなっているそうです。天災の多い、そして自然と乖離した生活で人間が疲弊してきている今、こうした田舎の小屋の意義をあらためて見直してもよいのではないでしょうか。

充実した森林資源でつくる

「板倉応急仮設住宅」の実践

戦災復興のために植林されたスギ林は国土の12%を占め、その森林蓄積はこれまでになく豊富な時代に入っています。樹齢50年ほどの人工林からとれる「中目材」は平角材や厚板を取るのに最適です。これらを活用し、災害に対処する「板倉応急仮設住宅」を提案し、実践してきました。

東日本大震災後に福島県いわき市に建てた「板倉応急仮設住宅」は、避難生活を少しでも心地よく過ごしていただく助けになったのでは、と思います。7年間の供与期間が終了となる頃に、西日本豪雨が発生。被災した岡山県総社市長からの要望に応えて、木の家ネットをはじめとする多くの大工さんの協力により、この板倉仮設を移築再生し、現在も活用していただいています。

いわき市に建てた板倉応急仮設住宅を解体し、岡山県総社市へ

スギ板を多用し、番付とそれを理解する大工の手があれば簡易に建築でき、解体移築して再利用が可能な「板倉」の小屋をつくることは、豊富な森林資源を活用し、多発する災害に対応するのに役立つのではないでしょうか。みなさんの理解と協力を得て、今後この技術を発展、普及させていきたいと思います。

第二部 事例報告

2011年3月 東日本大震災
コミュニティーの維持が大事

佐々木文彦さん

(有)ササキ設計

https://sasakisekkei.co.jp/

1956年宮城県生まれ。地域の杉と、漆喰・和紙等の自然素材に依る住まいづくりを実践。森林見学会等により、住まい手が納得し愛着の持てる家づくりに取り組む。杜の家づくりネットワーク 代表。

ふるさとの石巻市北上町十三浜と仙台との二拠点で設計事務所を営んでいます。十三浜はホタテ、牡蠣、ほやなどが獲れる豊かな海辺で、私も漁師の子として生まれ育ちました。今でも漁業権をもち、季節には漁もしています。

自然豊かなリアス式海岸の海辺に、ササキ設計の北上事務所はあります。

私の住む十三浜相川地区では、東日本大震災の津波の第二波で、280世帯のうち160もの家屋が全壊しました。残材を片付けた後は、一面の基礎コンクリートしか残りませんでした。裏山をつたって高台に逃げる訓練を普段からしていたので、小学校児童や集落にいた人が全員避難できたことだけが、せめてもの救いでした。

地震発生時、私は内陸に居ました。家内から「子供を連れて高台のグランドに避難した」とのショートメールが入り帰宅を試みたのですが、その日は家から25kmほど内陸の河北で足止め。知り合いのところで不安な中、夜明かししました。

翌日、車で帰ろうにも、途中から橋は落ち、トンネルにがれきが流れ込んでいるような状況で、道は寸断。止むを得ず、途中のグラウンドに車を置き、2時間半歩いて、ようやく避難所までたどりつきました。後日、車を取りにいこうにも、道が復旧していないので、まずは車を置いたところまで徒歩2時間半。そこから内陸に走って、携帯を充電し、必要な連絡をとる・・そんな日々を送りました。

震災前後の十三浜の様子

地域の底力が発揮された

避難所での暮らし

避難所となったのは、ちょうど震災の翌月の4月からオープン予定だった、高台の子育て支援センターです。そこで、日本全国からの支援をいただきながら、地域の人々が我慢と努力とを積み重ね、電気もガスもガソリンもない中で2ヶ月間、共同生活で暮らしました。

食事づくりをはじめ、避難所の運営は共同で。沢からパイプを引いて、水を確保。

「田を拓いた時に沢水を引いたパイプが残っているはず」という年寄りの記憶を頼りに三日かかって水を引き、残材を薪に利用したかまどをつくり、バスタブで湯をわかすなど、知恵をしぼり、一人一人ができることをしました。人口減や高齢化で地域コミュニティーが崩壊しつつあるといわれてはいますが、人のつながりの底力がここに発揮されたと思います。

被災後、地域コミュニティーが

失われないことが大事

不幸にも津波の被害に遭い、家を失いましたが、人々が積極的に地域のために協力し合う、遠い祖先から続く地域コミュニティーを、自分たちが生まれ育った美しい故郷を失ってはいけないのだと実感しています。

震災から5年後、津波で流された自宅兼事務所があった場所に事務所を再建。
住まいは高台の集団移転地に、今年ようやく完成した。

そのためには、住んでいた地域に復興住宅を建設し、再び故郷に住める希望と、それまでの間、地域コミュニティが失われないような応急仮設住宅、仮設集落の建設が必要不可欠であると思います。

2018年7月 西日本豪雨
災害を前提にした家づくり

和田洋子さん

(有)バジャン

http://bajane.com/

岡山県倉敷市児島で、木組み・土壁・石場建ての新築及び古民家改修の設計と構造計算を行っている。一般社団法人 職人がつくる木の家ネット 理事。

水と土の移動をともなうのが

洪水の厄介さ

雨が少ないと言われてきた岡山で、高梁川に流れ込む小田川の堤防が決壊しました。これがその時の写真です。

平成30年7月豪雨災害対応検証報告書(倉敷市発行)より

洪水は、単に水かさが上がるだけではありません。土砂やガレキが流れ込み、水が引いた中でも基礎の中には水が残ります。その水をバケツでかきだしたり、水中ポンプで抜いたりするのですが、これは大変な作業です。

平成30年7月豪雨災害対応検証報告書(倉敷市発行)より

土壁は再生できる

私はこれまで土壁の家を多くつくり続けてきたので、西日本豪雨災害発生後、岡山県から土壁住宅や古民家について修復方法の相談を受けました。他団体からの協力をいただき、倉敷市でも緊急マニュアルを作り被災地に配布し、倉敷市で行った被害相談や現地調査にもあたりました。

岡山県建築士会倉敷支部が当時、時間のない中で急ぎ、作成した水害対応マニュアルです。倉敷市の相談窓口や避難所で配布しました。現在、本格的なマニュアルを作成中。

土壁が直せるのか?という相談には「まず、壁と床を撤去して構造体を水洗いし、消毒し、乾燥させてください。糊で貼り合わせた木質製品は、水につかってしまうとはがれてしまい、使えませんが、無垢の製材でできた構造体や建具・家具は、乾けば使えます」とお答えしました。

濡れてしまった壁土ですが、かかったのが雨水だけならよいのですが、現実には農薬や油なども入っているので、再利用はおすすめしません。竹小舞は再利用できますので、土をあらたに調達して塗り直すことができます。

畳を上げ、床下を乾かし、濡れた土壁の土を剥がして塗り直す。
写真右の合板を使った建具は、水を吸って反ってしまっているので廃棄した。

処分に困るのは断熱材です。最も悩ましいのが、構造体と分離し難い吹込み断熱。次が、濡れてぼわぼわになり、乾いても使いようのないグラスウールです。ボード状の断熱材は、まだ使いまわせることもあります。

「地震に強い家」なら、耐力要素や復元性能などを設計時に計画することで、建築側であらかじめ対応することもある程度できますが、水害に関しては立地に左右される要素が大きく、建築的にどうしたらいい、というわけにはなかなかいかないのです。自分の住んでいるところを、ハザードマップでチェックしておくことをお勧めします。浸水のおそれがある場合には、いざという時、どうに行動するか、家族で話し合っておくことが大事です。ハザードマップは各市町村の役場でつくっています。今回、真備町の被災状況と照らし合わせてみても、ハザートマップの情報は、かなり的確です。ぜひ参考にしてください。

建築に関していえば、水害がないとはいえないので、乾かせばまた使える無垢の木で作ること、断熱材をはじめとする建材は廃棄することになっても土に還る自然素材系のものを選ぶことは、やはりおすすめしたいですね。

2016年4月 熊本地震
地震で壊れたのではない
壊したのだ

古川保さん

すまい塾古川設計室 (有)


http://www.sumai-f.com/

1947年佐賀県武雄市生まれ。ハウスメーカー勤務の後、地域の気候風土にあった伝統木造に転換し、石場建てによる新築に取り組む。熊本地震に続き、昨年は故郷の佐賀県武雄市も豪雨被害に遭い、修繕可能な家づくりへの志向をさらに深めている。

震災後、再生可能な建物を

壊してしまったわけ

熊本地震の死者はわずか50人。余震で多くの人が避難したあとに本震があったから、人的被害が少なかったのです。ところが、住宅のうち全壊(被災率50%〜)が24,919棟、半壊(被災率20%〜)55,610棟なのに、35,675棟もの住宅が解体され、かわりに軒も庇もなく、窓の小さい、仮設住宅のような四角い家がたくさん建っています。

その原因は、建物が半壊(被災率20%)以上であれば、自己負担なく公費解体してもらえるからです。まだ修繕できる家であっても公費で壊し、補助金を得て急いで新築した結果が、現在の熊本の風景です。同じだけの資金を修繕費にまわしていたら、救える家も多くあったと思うのですが…。

この民家は、公費解体された。十分再生できるのに…

激震地の益城町で80cm動いた家も

修繕できた

私が設計した石場建ての住宅は、全壊判定でした。震度計を置いてある益城町役場からわずか200m西の地点ですので、計測震度で表現できるとしてよいでしょう。計測震度6.5(震度7)の前震と計測震度6.7(震度7)の本震で、建物が80cmも動きました。石場建て(足元にダボ入り)の9本の通し柱の足元が7寸を足固めでつないでいたので、矩形を保ったまま水平移動でき、建物の構造自体の被害は少なく、動いた分を曳家して戻し、修繕をしました。一本折れた柱も、添え柱をして補強。ほぼ元どおりの姿に戻りました。公費解体して新築をしても、ここまでの建物はつくれません。

添え柱をして補強をした、縁側隅の通し柱。

構造が見えていること

建物と基礎とが離れていること

地震がおきれば家は揺れますが、壊れるのが床や壁の仕上げ部で、構造体が大丈夫なら、保険金の範囲で修繕が可能です。そのためには構造体が見えるようにしなければなりません、内外のどちらかを真壁にしておきましょう。構造が大壁で覆われ、中の被害状況が見えない建物は、修繕方法、見積りのしようがありません。修繕方法やいくらかかるか分からないから業者は「解体して新築する」を勧めるのです。

壊れたサイディングの下の基礎と建物との連結部分や、しわがよったり破れたクロスの下の壁はどのようになっているかわからない。古川さん曰く「布団の上から聴診器をあてるようなもの」

地震で地盤が揺れ、基礎が揺れ、基礎から建物に地震力がはいります。基礎と建物とが離れていれば、修繕は建物だけで済み、費用は抑えられますので、建物は石場建てにして、基礎緊結しないことをお勧めします。

たとえば、液状化が発生して基礎と緊結された建物が沈下した場合、基礎からの嵩上げ工事からしなければならなくなり、500万円以上の費用がかかります。基礎は基礎、建物は建物と分離していれば、傾いた基礎はそのままに、建物だけをジャッキアップして水平にすることができ、より少ない費用で済みます。

瓦は重いから地震対策では良くないとの報道がよくなされますが、地域にあった、瓦施工ガイドライン工法に従って施工をすれば、台風や地震でもそう簡単に落ちるものではないことが熊本地震で実証されました。

修繕しやすくゴミを出さない

つまりは、伝統木造

建築素材のことも考えましょう。新建材だらけの家は、解体廃棄時に、土に還らない大量のプラスチックや石油製品を出すことになり、それが川を通じて海に流れ出れば、海洋プラ汚染につながりかねません。

真壁、石場建て、ガイドライン工法の瓦、自然素材。以上が、修繕が可能で、地球に負荷をかけない家づくりの要件です。「な〜んだ。昔ながらのあたりまえの日本の家かよ」ということです。

2017年7月 九州北部豪雨
「もう、スギはよか…」を
越えて

杉岡世邦さん

(有)杉岡製材所

http://www.sugiokatoshikuni.com/

福岡県朝倉市生まれ。住宅・社寺・文化財等の木材を請け負う現代の木挽。西日本新聞にて『住まいのモノサシ』等を連載、木の魅力を発信した。九州大学大学院芸術工学府・博士後期課程。一般社団法人 日本板倉建築協会 理事、一般社団法人 職人がつくる木の家ネット 理事。

福岡県朝倉市の被害状況。

支流から流れ出し、凶器となった流木。

2017年の九州北部豪雨では、筑後川の中流域の英彦山南面で大きな被害がありましたが、うちの山も多くそこにあります。1日に約1000mm、しかもそのうち9時間で774mmという、短時間の猛烈に激しい降雨で、山々の支流から土砂がおよそ1100万立米、流木が21万立米も流されたと推定されています。

人工林、特にスギ林の管理が悪かったからこのような被害が起きたかのように、さんざん叩かれました。実際に地面の崩壊は、木が根を張るよりも深い層で起きていたのですが。とはいえ、スギやヒノキの大量の流木が支流から下流へと流れ出した結果として、人々の生活域の凶器となったのは事実です。

スギは本当に悪者なのか?

自分はどうしたらいいのか?

「もうスギはよか…」「人工林は伐採してしまえ!」さまざまな言葉にさらされ、本当に悩みました。木だって生き物。被害を受けている側なのですが、このようなことが起きるたびに悪者探しがはじまります。「スギが悪い」と、環境活動家からは特に批判にさらされがちです。

しかし、歴史を振り返ってみれば、何十年かに一度は、そんな豪雨が降っているのです。祖父の代の昭和28年にも大きな水害があり、製材所の本拠地が現在の場所に移転するきっかけとなりました。

「地元産材で災害復興を」なんてとてもいえない雰囲気もありましたが、とはいえ自分の役割を、大好きな山を放棄することはできません。私たち、山づくりや製材に携わり、人と木とをつなげる者は、どうしたらいいのでしょうか?

数百年かけて
スギを母樹とした

多様性のある森づくりを

なぜスギが嫌われるのでしょう? そもそも、日本は樹種がものすごく豊富ですし、DNA的に多様性が高い日本人はそもそも、植生豊かな森を好むからではないでしょうか。その気づきから、スギだけを育てる「モノ・カルチャー」=単相林施業から脱却することを考えています。

具体的には、所有しているスギ林は間伐をくり返し、皆伐の時期になっても少ない本数でも良い樹を残し、遠い将来にはそれらが樹齢数百年の大木になることをめざします。スギは古木になれば、葉が樹冠だけになり地面に光が差し込むため、落葉広葉樹とも照葉樹とも共生できます。スギの古木を母樹とし、多様性のある、明るい美しい森が実現できることでしょう。

スギという木は、青森県から鹿児島県まで、樹齢千年を超えるものがあり、太平洋側でも日本海側でも、また標高の高いところにも生育しています。訪ね歩いてみると、スギの修験の森は、全国にありました。出羽の羽黒山。信州の戸隠神社。地元の英彦山も同様です。それらは、伐採することが目的ではないが、自然林ではなく、人が植えた人工林です。日本全国の人工林がこのような美しい森林になれば、世界でも稀有な価値ある森となるにちがいありません。

修験の山、羽黒山出羽神社表参道の境内林。石段に沿って山頂まで、
樹齢350〜500年のスギが500本以上連なる杉並木は、国の特別天然記念物。

スギを再び好きになってもらうための
流木活用プロジェクト

人々のスギに対する悪い感情をポジティブに転換させることにも取り組んでいます。スギが流されてしまった谷には山桜を植えました。昨年の春には花をつけてくれて、心をなごませてくれました。九州大学大学院の知足准教授と共同で流木でつくったこの「朝倉龍」は「朝倉を苦しめてしまった流木が、水の守り神に姿を変え、今度は朝倉を守ってくれるように」と願いを込めたもの。新設された杷木小学校に寄贈しました。

流木からチェーンソーで削り出した朝倉龍

九州大学と協働する「災害流木再生プロジェクト」では「流木しおり」「流木グライダー」「松末の木と石の時計」などをつくり、スギの肌触りや香りを地域の子どもたちに感じてもらいました。そして、私自身のスギに対するネガティブな感情をポジティブに転換すべく、被災木を使った板倉の倉庫も構想中です。

流木しおりと、松末の木と石の時計

山の人と使う人とが連携して

先につなげていきたい

「もうスギはよか」と言われるたびに「杉岡」と音が似ているので、ギクっとしてしまうのですが、天災により、人が植えた山が崩れ、被害が起きるということ自体は、自然の営み。人智の及ばない、防ぎようがないことだと思います。森林には大きな防災機能があるのは確かですが、それにも限界があることを知った上でで「これから」を考えていくことが大切だと思います。

木の家づくりに携わるみなさんとの連携は、とても大事です。山の木を、デザイン面でも洗練された形で活用していける方法を、一緒に考えていければと思います。

スギを、木と工法とデザインから見直したブランド「SUGITALO」

第三部 パネルディスカッション

私たちに何ができるか?

安藤邦廣さんの司会で、さまざまな話が弾みました。そのうち、印象に残った発言をいくつかご紹介しましょう。

佐々木:古川さんが「地震で壊れたのではない。壊したのだ」とおっしゃっていましたが、まったくその通りです。多くのまだ直せる民家を解体におしやったのも「公費解体」制度です。美しい民家がたくさん壊されましたが、一軒でも救おうと努力し、震災後11軒を再生しました。古い民家に価値を見出さない持ち主と、活用してくださる方を結ぶのも我々の仕事ではないかと思います。

和田:「全壊認定→公費解体」があたりまえになってしまっている状況は、たしかにありますね。それでも「自分の家を土壁で再建したい」という被災者をサポートする若い大工さんが倉敷にいます。土を落とし、骨組みにして洗って乾かしています。2020年の春にワークショップ形式で土を塗り直す予定です。実際に自分達で土を塗ったりして直す過程を見てもらうことで「直せる」ということを多くの方に知っていただきたいです。

土をすっかり落として掃除をした家と、来年の土壁塗りに向けて練習のためにつくった小屋と大工さん

古川:災害から逃げることはできないのだから、修繕可能な家づくりをするべき。公費解体して新築する方が得に思えても、災害直後は工事費が3割増しなので、1500万円で建てた家の実質は仮設住宅とさほど変わらない。屋根の被害が少なく3年待てるなら、修繕する方が良い家になります。そのためにわれわれは、プロとして「いくらで直せるか」金額を出せるようでないといけない。いずれ、修繕のテクニックバイブルをつくって、みなさんに伝授したいと思います。

和田:災害時に全壊認定がでること自体は、罹災証明が取りやすかったり、保険がおりやすいというメリットはあるのです。それで、倉敷市では床上1.8m浸水で全壊と認定していました。けれど、それと修繕とは別の話。「全壊認定だから直せない」ということではなくて、直せるものを直したい人は、直していいのです。そのあたりの認識が浸透しておらず「全壊だからもうダメだ・・」となってしまいがちで、そのためにたくさんの土壁の家が公費解体されました。直せるものについて「こう直せる」と、プロとしてアドバイスしていく必要性を感じています。

杉岡:一般の人が木に対して関心をもっていないことが、スギ離れ、放置林の増加の要因になっていると思います。いくら木造住宅が主流だといっても、柱や梁の周りを壁で覆う「インナーづかい」ばかりで、木が見えていないから、木や森に心が向かないのではないでしょうか。

安藤:スギはもともと、国難をのりこえるために植えられました。江戸で大火があっても、山武から、西川から、天竜から、紀州から迅速に木材が調達され、大工が一気に街を再建したのです。産地に、災害に対応するシステムがあったのですね。

杉岡:祖父から引き継いだ山を、スギを母樹とした美しい山に育てていきたいと思います。そこから60年生のスギを間引いて、家づくりに使う。美しい山を持続していける住まいづくりってなんだ?というベクトルで考えてもいいのではないかと思います。

安藤:災害が続いていることで、みんなが大きな困難を感じています。しかし、日本人が本当の知恵を出し合う機会は災害だろうとも思います。専門分化され、対話がなくなっている中、分断や壁をこえていける機会ではないでしょうか。災害が続く中で、林業、製材、設計や施工を横つなぎすることで、日本の地域社会をつくりなおしていきましょう!

取材執筆=持留ヨハナ(モチドメデザイン事務所

2019年10月5日(土)〜10月6日(日)の一泊二日、佐賀県唐津市にて職人がつくる木の家ネットの総会が行われました。今回はその報告記事です。

まず10月5日(土)の午後に「災害に学ぶこれからの木の家」と題した公開フォーラムを唐津市文化体育館で開催。その後、ホテル&リゾーツ佐賀唐津に移動し、宴会と分科会で交流を深め、翌朝10月6日(日)には一般社団法人として初めての総会を執り行いました。解散後は、国指定重要文化財 旧高取邸へのオプショナルツアーを楽しみました。

唐津市は九州北部にあります。およそ4.5kmの長さにわたる「虹の松原」は、
400年ほど前に防風防砂林としてつくられました。

総会の開催地となったのは、玄界灘に面した佐賀県唐津市。「唐への渡海拠点」という名の通り、白村江の戦い、元寇、秀吉の朝鮮出兵といった戦をはじめ、人の交流や大陸文化の流入の痕跡も多くあり、朝鮮半島や中国大陸との関係が深い土地です。曳山まつり「唐津くんち」や、江戸時代の新田開発のために植林された防風防砂林「虹の松原」でも有名です。

1591年(天正19年)に秀吉が朝鮮出兵(文禄・慶長の役)の拠点として、現在の唐津市北部に名護屋城を築城しました。壱岐の島かげの向こうに朝鮮半島を見据える城跡が、今も残っています。秀吉が全国の大名たちを呼び寄せて陣を敷かせた当時は、10万を越える人が集結したとか。さまざまなお国言葉が飛び交ったであろう出陣前の様子を想像するにつけ、北は秋田から南は鹿児島まで全国各地から木の家ネットの総会に集まってきたことが、どことなくオーバーラップするような不思議な気持ちがしました。

公開フォーラム:
災害に学ぶこれからの木の家

開会の挨拶をする大江忍 代表理事と、公開フォーラムの会場の様子

初日の午後には「災害に学ぶこれからの木の家」と題し、地震、台風などの災害から逃れられない日本にふさわしい家づくりとはなにか?を考える公開フォーラムを行いました。

筑波大学名誉教授 安藤邦廣さんの基調講演「災害に学ぶこれからの木の家」に引き続き、各地からの事例報告として、東日本大震災について佐々木文彦さん(宮城県石巻市)、熊本地震について古川保さん(熊本県熊本市)、西日本豪雨について和田洋子さん(岡山県倉敷市)、九州北部豪雨について杉岡世邦さん(福岡県朝倉市)から、被災状況やその後について生の声を聞くことができました。休憩後のパネルディスカッションでは、会場からの質疑応答もまじえて活発な議論が行われました。

詳しい内容は、次回11/1公開予定の特集記事で、あらためてご報告します。

年に一度の懇親会

フォーラム終了後は、ホテル&リゾーツ佐賀唐津に移動。ホテル上層の展望風呂で旅の汗を流してから、懇親会場へ。

木の家ネットが任意団体の時の初代会長で、現在は一般社団法人の監事の加藤長光さんの音頭で乾杯。お刺身や唐津名物のいかの和え物など、旬の海の幸に舌鼓をうちました。地元九州のメンバーからご当地自慢の芋焼酎や日本酒の差入れがふるまわれると、場は一層もりあがり、全員が年に一度の懇親会を楽しみました。

懇親会のフォーラムの共催団体でもある認定NPO法人 日本民家再生協会九州沖縄地区、NPO法人伝統木構造の会 九州地域会、九州杢人の会、新建築家技術者集団 福岡支部、九州大工志の会、、LLP木の環のメンバーも懇親会にも出席して場を盛り立ててくださいました。

今回の幹事の実行委員長である杉岡世邦さん(福岡県朝倉市、杉岡製材所)はじめ、宮本繁雄さん(福岡県朝倉市、建築工房 悠山想)、土公純一さん(福岡県福岡市、土公建築・環境設計室)、松尾壮一郎さん(佐賀県鹿島市、夢木香)、池上算規さん(長崎県長崎市、 大工池上)、梅田彰さん(熊本県熊本市、FU設計)、田口太さん(熊本県八代市、土壁の家工房 田口技建)、古川保さん(熊本県熊本市、すまい塾古川設計室)は、木の家ネットに加えて上記いずれかの会に所属しているメンバーも多く、九州地域内での横つながりがさかんなことを感じさせられました。

先日、急逝された夢木香の松尾進さんの跡継ぎである松尾壮一郎さんと、
フォーラムで司会を担当された北島一級建築士事務所の北島智美さん

宴会では毎回恒例の金田克彦さんのお子さんによる加工食品販売も。今年は「いなごのつくだに」でした。
宴会最後の一本締めは、古川保さんの音頭で。

最後は、全員で気を合わせ、一本締めで楽しい会を締めたのですが、ここで終わらないのが木の家ネットの総会。いったん散会後「災害対応」「マーケティング」「人材育成」「見積もり」と4つのテーマで、各部屋ごとに分かれ、車座スタイルでの「分科会」を行いました。部屋によっては日付が替わっても議論が続いたようです。

九州メンバーは、別の部屋で、九州地域での各団体をつなぐ連絡会をつくるための話し合いをしたそうです。今後のますますの連携が楽しみです。

一般社団法人としての、初めての総会

翌朝は虹の松原や玄界灘を一望するスカイレストランでの朝食を楽しんだあと、唐津市文化体育館の会議室に再集合し、一般社団法人としての第一回の総会を行いました。

まずは大江忍代表理事から、職人がつくる木の家ネットの活動を次世代につなげていくために一般社団法人化し、安定的に運営していくために倉敷の事務局を中心とする新組織をつくったことについて説明がありました。

伝統的な知恵に学び、無垢材を手刻みして一棟一棟つくる木の家づくりでもっとも大事なテーマは「次世代への継承」。この災害の多い日本各地の気候風土に合った形で先人たちが編み出してきた技術の真髄を、現代の生活に柔軟に対応しながら伝えていくことが、今世代の私たちの役割だとすれば、この会も、20年前に発足したままの体制から、より若い世代に引き継ぎ、持続できる形にしていく必要があります。

これまで、コンテンツ執筆と事務局との両方を担ってきていたところを、新たに加わった二人のライターさんと、専任の事務局スタッフとで分け持つ運営体制に変わったのが、今年の5月。それからまもなく半年というに節目にあたり、総会に集まった会員に顔の見える形での「バトンタッチ」の報告がされました。それぞれのスタッフのメッセージをご紹介しましょう。

事務局の福田典子さんと、コンテンツ担当の丹羽智佳子さんのご主人の丹羽怜之さん
そして同じくコンテンツ担当の岡野康史さんと持留ヨハナ

事務局の福田典子さん「一般社団法人の事務局所在地の児島舎に通い、会員対応、名簿管理、入出金管理などをしています。まだ慣れないこともたくさんありますが、みなさんのお役に立てるよう、がんばらせていただきます」

次に新しくライターとして加わった、丹羽智佳子さん、岡野康史さんの紹介がありました。二人がコンスタントに会員紹介記事を取材執筆しているおかげで、月に2回のコンテンツ発信が実現できています。

丹羽智佳子さんは産後2ヶ月ということで、夫で木の家ネット会員の丹羽怜之さんが代理で:「もともと新聞記者だった妻は、木の家ネットのメンバーを取材するのをとても楽しんでいます。建築が専門でないのですが、つくり手の方の人となりを浮き彫りにする記事を心がけているようです」

岡野康史さん:「グラフィックデザインが専門ですが、写真も撮りますし、文章を書くのも好きです。魅力あるつくり手の方とお会いして感じたことから、何を取捨選択して読者の皆さんに伝えるか、毎回新鮮な気持ちで取り組んでいます」

持留ヨハナ:「これまで20年間、大変お世話になりました。今後は若い二人のライターさんに執筆をゆずりつつ、テーマをもうけて複数の方の考えを横断的に紹介する特集記事など、ニーズがあれば引き続き、関わらせていただければと思います」

田口太さんから、杉岡世邦さんへバトンタッチ

もうひとつの新旧交代として、これまで運営委員だった田口太さんが辞任し、かわりに同じ九州の杉岡世邦さんが就任しました。今後ともどうぞよろしくお願いします。

初参加の会員たち

1:設計事務所nonaの柴田亜希子さん、2:m28e有限会社の古川乾提さん、
3:岡崎製材所の岡崎元さん、4:野の草設計室のスタッフ島崎希世さん

スタッフの引継ぎに続いて、恒例の「新会員さんいらっしゃい」の時間。おひとりずつのコメントを紹介します。

愛知県名古屋市で設計事務所 nonaを主宰する柴田亜希子さん「自宅を石場建てで建築し、伝統的な家づくりのよさをさらに実感しています。自宅を啓蒙の場として使いながら、このよさをより広く伝え、木組みの家づくりが選択肢の一つとしてあがるようにしていきたいです」

愛知県一宮市でm28e有限会社を主宰する庭師の古川乾提さん「伝統的な家づくりをする大工さんたちと出会い、同じようなことを庭でやっているので、入会しました。家と庭とがもっと密接になるような話ができたらいいなと思います」

岐阜県八百津市の岡崎製材所の岡崎元さん「これまでおやじの岡崎定勝が総会でお世話になってきたかと思いますが、今年は僕が初めて参加させていだたいています。今後も、みなさんと協力して地域で山と木の家づくりをつなげていきます」

愛媛県今治市の、野の花設計室のスタッフの島崎希世さん。「これまでまったく違う分野の仕事をしていましたが、伝統的な家づくりに惹かれ、転職して2年目です。多くを学んで吸収し、発信できるようになりたいと思います」

分科会

その後、分科会各部屋からの報告にうつりました。分科会で話し合った内容を模造紙にまとめたものを発表をした部屋、前夜に主だって話した何人かが代表して発言をした部屋、それぞれのスタイルのまま、お届けします。

分科会1:
災害をふまえた木の家

それぞれの地域に起きやすい災害に対応した建築や住まいのあり方が昔からある。三陸では、津波がくる浜辺には作業小屋だけがあり、住居は高台に別にもうけていた。水害の多い福知山では、家が浸水する前に家財道具をあげておくための三階がある。

そうした地域ならではの工夫に加え「補修ができるようにつくる」ということが基本ではないか。構造材があらわしになる真壁づくり、補修すべきところが見えて、メンテナンスがしやすい。

現代のプラスターボードの家は、水害で浸水すれば粗大ゴミにしかならない。ベタ基礎の立ち上がりの中に入り込んだ水は、ポンプで排水するしかなく、水害の後が大変。化学物質や農薬による水汚染も心配。復旧しづらい家は、災害の多い日本では、つくってはいけないのではないか。

真壁づくりのもうひとつのメリットが、日々木を見えていることで、普段から森を意識できるという点。木には、単なる建材というだけでない、人の暮らしを守ってくれる大いなる安心感がある。神を数える単位が「柱」であるのも、木を心のよりどころにしてきた日本人の精神性のあらわれかもしれない。

分科会2:
弟子の育成

北山一幸さん、丹羽明人さん、川端眞さん

北山一幸さん(大工):今の時代にあった人材育成は、昔とは違うと。昔は大工修業といえば、生活や立ち居振る舞いすべてにわたって親方が全人格を育ててきたが、今はそこまでなかなか踏み込めず、仕事ができるよう技術的なことを教えるにとどまっている。生活スタイルや精神的なことまで伝えようとすれば、つぶれてしまうような感じがある。それでも、若い人を教え、育てないとこの業界は続いていかないので、しょっちゅうは怒らず、ここぞという時だけに控えるようにしている。

古川乾提さん(庭師):若い人が集まらないのは、手間が安すぎるからではないか。単にブロックを積むだけの仕事でも、山から石を選んで運んで据える仕事でも、同じ日当というのは、割があわない気がする。経営者であれば、企画料など、のせられる項目もあるが、一職人となると、そこを上乗せするのはなかなかむずかしい。けれど、ちゃんとしたものをつくる人は、ちゃんとお金を取れるのが本来のあり方ではないかと思う。

川端眞さん(設計):うちは所員のできがいいので、人材育成には困ってない。大概の人は「自分のコピー」をつくろうとするから、うまくいかないのではないか。自分と同じことを相手に求めない。弟子が二人いたら、同じことをさせない、比べない。それぞれに合ったことをさせていけば、うまくまわる。

分科会3:
マーケティング

大江忍さん(設計):SNSの中ではInstagramが若い人には人気があり、入口になる。伝統木造に興味がある人はまだまだfacebook世代。Google my business に登録し、口コミをしてもらうことで、検索数があがる。

大江忍さん、橋詰飛香さん

橋詰飛香さん(設計):特定多数に対して発信をしても、このような家づくりのことが心に響くのは、特定少数。そう考えると、検索に上手にひっかかることだけでなく、その少数にしっかり届く内容を発信することが大事。そのためには、個々の会員紹介との両輪で、伝統構法への想い、山とのつながりなど、木の家ネットとして『共同のピュアな思い』を表明するような発信形態があってもいいのでは?

分科会4:
見積もり部会

ここ数年、見積もり部会としてネットを活用した月一回のZoom会議を積み重ねてきた。独立したての若い人がどう見積りをしていいかわからない、設計者と施工者とで概算見積りにかなりギャップがでるのでせめて7%以内ぐらいには抑えたい、という問題意識で始めた。

このところ同一の図面について、別々の施工者が大工工事の手間だけを抽出して作った見積もりを比較検討する作業をしている。

全体を「墨付け・刻み」「外壁」「内部造作」と3パートにわけるというあたりまでは共通だが、「墨付・刻み」1パートをまるごと一式で書く人、部材をひとつひとつ拾っては材工を積み重ねていく人など、表現はさまざま。

総会に参加できなかった岐阜の水野友洋さん、各務博紀さんと、Zoomでつないで分科会。座長は金田克彦さん

概算見積もりを簡単に出す方法を探りたい!とは思うが、結局は木拾いをして伏せ図、展開図、矩計図とつくらなければ見積もりは出ない。そこまで手間をかけていては、「概算」見積もりではなくなってしまうのだが・・・そのあたりで堂々巡りしている。結局は、見積もり → 作業日報 → 作業手間の積算ということを繰り返す中で「これくらいだな」という経験知を身につけていくしかないのかもしれない。見積り以上に施主の要望由来でなく手間がかかった時に、施主に請求できるかどうかについては、意見が分かれた。

せめて見積りをつくる際に単価を掛ける元となる「単位」を決めようという話にもなった。坪単価は平米で出すのが普通だが、材積と手間とが連動するので、立米単価で考えてはどうか。材積は坪あたり1立米〜多い人では1.2から1.5立米くらいという幅もわかった。

気候風土適応住宅について

古川保さんによる報告

最後に、気候風土適応住宅についてのお話が古川保さん(設計)からありました。「いまのところ、小規模住宅は、省エネ基準への適合義務はなく、努力義務でよいというところに落ち着いてはいますが、それがいつ報告義務や適合義務にシフトしていくか分からないので、だた『適合しなくてもいい』でなく『これは気候風土適応住宅だから、適合しないのだ』と確信をもって言えるよう、各地で指針づくりをしてください」とのことでした。

解散後、駐車場に様々なナンバーの車があるのが、興味深かったです。もっとも遠方なのは秋田ナンバーをつけていた、監事の加藤長光さん。珍しかったのは、兵庫の高橋憲人さんのキャンピングカー。京都の金田さん一家も同乗して、にぎやかな帰路につきました。

オプショナルツアーは旧高取邸

オプショナルツアーは国指定重要文化財の旧高取邸。炭鉱主・高取伊好の邸宅として建てられた近代和風建築です。ライターの岡野康史さんから「今ではなかなかお目にかからない立派な柱や手仕事の光る建具など、隅々まで当時の職人や高取さんの熱量をとても感じました。」との感想を聞きました。

次回の総会は、兵庫県の淡路島で11月に行われる予定です。またの再会を楽しみに、それぞれが充実した一年間を過ごしましょう。

取材執筆=持留ヨハナ(モチドメデザイン事務所

時を重ねるほどに美しくなるもの

自然の理にかなったもの

木の家ネットは、大工工務店、建築士、左官、建具職人、材木屋など「国産無垢材を使った、職人の顔が見える木の家づくり」に関わる多くの職種の会員が、全国に分布しています。

「職人がつくる木の家」に住みたい人が、それを建ててくれる人を探すために、地域別の全国の木の家 つくり手リストがあるわけですが、一方でこのリストは、つくり手同士がつながるためにも役に立っています。建築士が地元以外で仕事をする時に施工者を探したり、施工者から建築士に設計を依頼をしたり、施工者同士が建前の応援を頼み合ったり…などといったケースがあります。

総会や研修などで顔を合わせ、家づくりについての理念や姿勢をある程度共有していることで、地域の境を越えて協働できる可能性がある。これも、木の家ネットの意義のひとつといえるでしょう。

今回のコンテンツでは、木の家ネットのメンバー同士の協働事例について、岡山県倉敷市で一級建築士事務所 (有) バジャンを主宰する和田洋子さんが設計者として関わった複数のチームの現場を通じてご紹介しましょう。

和田洋子さん
[ 一級建築士事務所 (有) バジャン ] 岡山県

設計者、施工者それぞれが、どのような思いをもってその仕事に臨み、相手に対してどのような期待や信頼を抱いて進め、どのような相乗効果があったのか。

和田さんと協働してきた木の家ネットメンバーのうち、岡山の杣耕社 山本耕平さんとジョンストレンマイヤーさんとの仕事については、現地取材にもとづいてご紹介します。広島の株式会社のじま家大工店の野島英史さん、京都の大」(だいかね)建築の金田克彦さん、奈良の不動舎の宮村樹さんとの仕事については、和田さんご自身の言葉でご紹介いただきます。

1. 和田洋子さんの家づくりの姿勢

チームでの協働事例に入る前に、和田洋子さん自身が設計をする時に大切にしていることについて、概観しておきましょう。

地域の材料、職人で

地域の気候風土に合った家づくりを

和田さんが何より大事にしているのは「地域の材料」「地域の職人」による「地域の気候風土に合った」家づくりです。

それが、地域の技術の伝承、地域内での経済循環、輸送エネルギーの削減、エネルギー消費量を低く抑えた気持ちのいい暮らしにつながるからです。

地元の良い木は

無垢の木のまま生かしたい

まずは、岡山県内で建てる場合には、県産材を使います。その理由について和田さんはこう語ります「岡山は林産県ですが、戦後大量に植林された檜や杉の多くは、集成材やCLTになっています。十分な大きさや美しさを持つ材木までエンジニアリングウッドにするのはもったいない。木は木のままで活かしたい。山の人には建物になる姿を想像しながら良い木を育ててもらいたい。そういう思いもあって、県内で建てる時には木材は県産材を使うようにしています」

経済性だけを考えれば、ほかで調達する方が、運送コストを含めても地元の材料より安い場合もありますが、地域の産業や技術を絶やさないためにも、和田さんは「地元で調達すること」をなるべく優先させています。

「壁や床にも、地域の土を使います。仕上げ塗りには時に京都や土佐、愛知の土を使う事もありますが、荒壁や中塗り土は地元の矢掛町の土を使っています。建具や家具も、地域の職人さんに作ってもらいます。私の自宅は戦前に建てられた賃借長屋ですが、当時の並仕事の建具でも、今も十分使えます」

気持ちよく暮らすために

床の上下で「風通し」を確保

温暖で、夏には湿度も高くなる中国地方で、機械空調に頼らずに気持ちよく暮らすために、和田さんが設計上大事にしているのは「風通し」です。

「柱は石場建てにして、床下の風通しが良いことを大前提にしています。家の中の風通しを確保するためには、南面はほぼ全開口、北面にも通風のための窓を多く設けますが、開口部が多くても構造的にもたせるよう、構造計算をしています」

以上の考え方を実践している2事例をご紹介しましょう。

国府市場の家

息子さん達が独立された後、ご夫婦二人で農作業を愉しみながら暮らすための家です。農作業中でも土足で訪問客と応対できるよう、玄関土間にベンチを設けています。土間の三和土に使ったのは、地元矢掛町の土です。

1. 湿気対策として靴箱は「簀戸」に 2. 「三和土(たたき)」の土間


3. スリット状の引き戸をスライドして開閉する「無双窓」 4. 竹小舞を塗り残した「下地窓」

風通しを確保する工夫として、留守中にも換気ができるよう、無双窓を設けました。また、玄関と居間の間には、通気と目隠しを兼ねた下地窓を作りました。いずれも、ゆるやかに外界とつながり、風の通り方を必要に応じて調整する「和の住まい」として伝承されてきた要素です。日本の優れた暮らし文化を新築住宅に取り入れた例として国交省の「気候風土適応住宅」事例に採択されました。

女性らしい

細やかな感性が光る

地元産の木をあらわしにしたのびやかな空間が広がります。梁が重なっていても、重苦しさやあらあらしさを感じさせないのは、女性らしい感性でしょうか。端正で、すっきりとした美しさが際立ちます。伝統の技術と時代の息吹やセンスとが融合した「現代の伝統構法」事例として、後世に残る建物といえるでしょう。

木組み・土壁・石場建ての保育園

子どもたちに手仕事を教えるモンテッソーリ教育に取り組む保育園の園舎を、木組み・土壁・石場建てで手がけた事例です。

木の香りがする

風通しのいい園舎

園児を連れてくる保護者の方々から「良い木の香りに驚きました。木の香りがこんなにするなんて」と言われるそうです。柱や梁、床にいたるまで、岡山県産の檜です。地元材のよさを、子どもたちが家に次に長い時間を過ごす保育園で知ってもらえるのは、すばらしいことです。

機械空調を極力せず、風通しで自然な涼しさを得るために、南の縁側も、向かい側の北面も、窓だらけです。建具は地域の職人さんに作ってもらいました。「きちんと園児たちの指を使わせてあげたい」という先生方のご希望で、鍵はあえて昔ながらの螺子(ねじ)締まりにしてあります。

障子がある日常で

子どもたちが身につけること

ひなたぼっこをする縁側と保育室との間は、障子で仕切られています。やわらかな光が部屋を満たしています。走り回ったり、暴れたりして、障子紙が破けてしまうのでは?と尋ねると「乱暴に使うと破れるから大事に使ってね、と子どもたちに話をしました。先生方のやわらかい所作を日々目にし、まねることで、物を大切に扱う事は自然と身についていきます」という答えが返って来ました。

もし破れても、先生方は紙をきれいな形に切って穴のあいたところに貼ることを、子どもたちに教えるのだそうです。「大切に使うとは、こわごわ使うことでなく、こわれたら直せると知っていること」という和田さんの一言に、大きく頷かされました。障子がない家が大半だからこそ、この園での障子に触れることがが、忘れられかけている大切な感覚を育てる体験となるのです。

幼い子にこそ、本物を

「子ども達には、うわべだけ、表面だけでないものを与えたいんです。汚すから、こわすからといって、プラスチック製品を、というのではなく、本物に愛着をもって触れ、その奥行きや深みをうんと味わってほしい」と和田さん。

本物の素材でできた園舎で、先生方の穏やかな見守りと導きの中で育ち、巣立つ子どもたちは、幸せです。このような保育園や幼稚園、学校、学童施設が、全国にたくさんできてほしいものです。

2. 大工たちと和田さんとの協働

その接点は「伝統構法」

ご紹介した2例をはじめ、和田さんは新築であっても「木組み・土壁・石場建て」で設計をしています。無垢の木を組んだ軸組構造に、土壁を塗り、家の柱は石の上に「載っている」だけの石場建て。昔ながらの家に多いこのつくり方に和田さんは魅力を感じ、取り組んできました。

その理由を尋ねると「家を長もちさせたいからです。床下に風が通りやすく家の足元が腐りにくいですし、腐ったとしても、直しやすいのです」とのこと。長年住まわれておらず、家が傾きかけていた石場建ての古民家を改修した体験が、その確信を強めました。「壁土を落とすと、柱の何本かの根元が腐っていました。家全体を30センチジャッキアップし、柱を根継ぎして下ろしたら、健全な状態に戻りました。それぞれの柱が個別に立つ石場建ては、こうやって直せるのだなと実感しました」

左. 石場建てを採用した、保育園の足元の様子 右. 根継ぎ

このような作り方に、魅力を感じている大工も少なくありません。同じ岡山県内の木の家ネットのつくり手で、和田さんとチームを組んで石場建ての新築住宅を手がけた杣耕社の山本耕平さんもその一人です。

「『木は生育のままに使え』という西岡棟梁の言葉があります。山で木が立っているように石に直接柱を立てる石場建ては、理に適っていると、社寺の仕事をしていた頃から感じていました。独立したら、住宅を石場建てでやりたいと思っていたのですが、ほとんど事例がないのに驚きました。同じ県内に和田さんがいる!と、インターネットで探し当てた時には、嬉しかったです」と山本さん。

山本さん率いる杣耕社の大工のジョン・ストレンマイヤーさんも、石場建てに魅了されて来日しました。「石場建て民家や社寺の、石の上から柱がスッとのびる無駄のない美しさに憧れて、日本に来ました。京都の数奇屋工務店での修業して石場建ては学びましたが、一般の新築住宅は京都にも奈良にも、ほとんどない。和田さんとの出会いでようやく造ることができて、嬉しいです」と、ジョン。

和田さんと大工たちとが

チームを組むメリット

しかし現在、建築基準法の仕様規定にはない伝統構法で新築を実現するには、構造計算やさまざまな手続きが必要です。和田さんは、石場建てを設計するだけでなく、その構造的な安全性を検証する限界耐力計算まで手がけ、適判(構造適合性判定とよばれる審査機関によるチェック)をも、人任せにすることなく自分で通しています。

「限界耐力計算や適判まで…って、大変すぎないですか?」と訊くと「たしかに簡単ではありませんが、自分が設計する事例が構造的にどうなっているかを自分で検証し、設計にフィードバックすることで、意匠と構造とのバランスをとりながら設計を深めていくことができます。面倒だけれども、それ以上におもしろいし、楽しいです!」という答が返ってきました。

設計時に「こうかな」とはたらく直感を、自分で「やっぱり、これでいい」と検証し、適判を通して実現する。そのような実践を重ねていくごとに、和田さんの経験値もあがり、直感もますます磨かれていっているのでしょう。

普段から木を触り、軸組を組んでいる大工も、石場建てについて「これはもつ」とはたらく直感はあるといいます。それを構造的に検証し、法律的にもクリアしていく和田さんは大工たち「力強い味方」であり、貴重な存在です。

3. ともにつくってきた大工たち

協働してきた木の家ネットのメンバーのうち、岡山の杣耕社の山本耕一さん、ジョン・ストレンマイヤーさんの取材をさせていただきました。

山本耕平さん
[ 杣耕社 ] 岡山県

社寺建築の仕事をやめて

バジャンの門を敲いた

社寺建築ではあたりまえにやっていた石場建てを一般の住宅でも手がけたい!そんな思いで、和田さんに会いに行った山本さんは、当時和田さんが構想中だった石場建て住宅の基本設計図を見た時点で、それまで勤めていた工務店を辞め、その建物の施工に取り組もうと心に決めました。

協働のはじめの一歩として「一緒に軸組模型をつくってみん?」と、和田さんはもちかけました。縮尺通りに、一本一本の部材を加工して、設計者と大工とで対等にわたりあって組み方を検討して、まるまる5日。

「具体的な作業を通して互いの考え方を知るいい時間でした」と和田さんは振り返ります。お互いに「賭け」でもあったこの出会いが実ったのは、ふたりの石場建てへの思いの強さゆえでしょう。

研ぎ澄まされた設計と

木を愛する大工とが生んだ空間

玄関を一歩入ると、和田さんの繊細な設計と、山本さんとの木遣いのセンスがあいまった、すばらしい木の空間が。どこに、どの樹種の、どんな表情の木を使うか。図面には描ききれない取合せを、二人がとことん追求した結果が、ここに凝縮しています。

土間からのあがりはなにある杉の一枚板。はつったやわらかな凹凸のある表面は足あたりよく、滑りにくく、靴を脱いだ足の裏にやさしい感触です。土間との段差を昇り降りするのにつけた手すりは、握りやすく六角形にはつられています。研ぎ澄まされた空間でありながら、手触り、足あたりまで行き届いていた配慮が感じられます。

「山本さんの作業場には、彼が集めた木がたくさんあって、行くと『これ、使ってみません?』という提案がどんどんでてくるのです。樹種、色、風合い、肌触り、木目などを知り尽くしていて、最高の取合せを工夫してくれるので、部材を揃えているというより、役者の配役を楽しんでいるような感じです」と、和田さん。

お互いがチャレンジャー

「和田さんって、とにかくセンスがよくて、それが徹底している。このオフィスの空間だって、そうでしょう? 余計なものがなく、あるものは色も形もサイズも、選びぬかれている。それがわざとらしくなくて、さりげない」取材先の児島舎のオフィスで、山本さんはこう力説していました。

ジョン・
ストレンマイヤーさん
[ 杣耕社 ] 岡山県

初棟梁ジョンの

がんばりと、お人柄

石場建てにあこがれて日本にやってきたジョンは昨年、和田さんの古民家改修現場で、初棟梁を任されました。おばあちゃんが嫁に来た頃から半世紀以上住み続けた家です。「山本に『やってみるか?』と言われ『やる』と答えたのですが、やってみると分かっていないこと、見えてなかったことがたくさんでてくる毎日でした。責任をもってすべてを判断するのが棟梁だから、大変だったけれど『毎日笑顔で』と心がけ、なんとかやり通しました!みなさんには、ご迷惑をおかけしたもしれないけれど・・・」とジョン。

「建て主さんに心から喜んで住んでいただける家に仕上がって、嬉しいです。失敗しても誠意をもって取り戻そうとする、そんなジョンがみんな大好き!人に愛されることも、棟梁として大事な資質だと思います」と和田さん。

古民家本来の美しさを

もういちど輝かせる

木組みを覆っていた天井を取り払うと、美しい木組みがでてきました。黒光りした木々の重なりをきれいに見せるために、梁を磨き、あらわしました。

玄関や台所の位置なども思い切って変えて、明るく住みやすくなりました。住み慣れた間取りが変わっていくことを、当初は最初は受け入れ難かったおばあちゃん。住みながらの改修ゆえ毎朝顔をあわせるジョンは、おばあちゃんのご機嫌によっては、いろいろ言われることもあったそうです。

それでもジョンは「笑顔で」を心に、現場へ通いました。完成した今は、おばあちゃんも大満足。「思い切って直して、よかったよ!きれいになったろ?」と、自慢してくれました。

「いいと思ったものを、意思を持ってつくり続けることが何より大事だと思います。これからも、もっともっとやっていきたいし、これから続く若い大工たちも、そうあってほしいと思います」と、ジョンも満足そうです。



杣耕社 山本耕平・Jonathan Allan Stollenmeyer

岡山県外での和田さんと大工たちとの協働事例として、広島の株式会社のじま家大工店の野島英史さん、京都の大」(だいかね)建築の金田克彦さん、奈良の不動舎の宮村樹さんとの現場をご紹介しましょう。

和田さんからの説明と、大工側から和田さんへのメッセージを織りなして、お届けします。

野島英史さん
[ 株式会社のじま家大工店 ] 広島県

野島さんは、飛騨古川で修業した大工です。今は広島県福山市で「株式会社のじま家大工店」の社長として経営や設計、打合せに専念しています。林直樹さん、工裕次郎さん、市川歩さんといった、野島さんに鍛えられた優秀な大工たちが、現場にあたります。

建主さんの要望に応えるべく、のじま家大工店のおかみ、尚美さんが、木の家ネットのメーリングリストに石場建てについて質問の投稿をしたことがありました。それに私が回答したことがきっかけで、のじま家大工店初の石場建ての家を設計させていただくことになりました。

この家の設計意図をずばりと捉えて「風がうたう家」という名前を付けてくれたのは野島さん。そのすばらしいセンスに脱帽です。

初めての石場建ての苦労に加えて、どちらも引かず、意見を戦わせるタイプの野島さんと私の間で、現場の大工さんたちは、さぞ気苦労も多かったことと思います。大工さんたちが静かに見守って下さったおかげで、決め事が終わった後は何もなかったように笑いあえる仲間になれました。ありがとうございました。

和田:こちらは、廃校になった小学校をつるばら専門店に改修する仕事のアドバイスをさせていただいた事例です。

野島さんは地元のアーティストやデザイナーと一緒にまちづくりイベントなども手がけ、工務店の親方として地域人としての役割をしっかり担われていることを感じさせられます。

野島:初めてお会いした時、和田さんが「今は石場建だけです」と言ったのに衝撃を受けました。一緒に仕事をしてみて、石場建てにかける信念というよりは執念に近い気持ちで、妥協せず意思を貫いていく姿勢は、まさに「石場建ての鬼!」。言い過ぎだったら「石場建てのアネゴ!」くらいにしておきましょうか。アネゴ、これからもよろしくお願いいたします!



株式会社のじま家大工店 野島英史

金田克彦さん
[ 大」(だいかね)建築 ] 京都府

和田:大」(だいかね)建築の金田さんからは、古民家の構造計算の依頼を受けました。金田さんの考え方や数多くの古民家改修の実践には以前から興味があったので、二つ返事でお引き受けさせてもらいました。

和田:当初は「建物の耐震性評価のための限界耐力計算」の依頼だったのですが、金田さんが後押しして下さった事もあり、設計までトータルにさせていただくことになりました。

現場は「決めて行く事」の連続です。お施主さんご夫妻も一緒になって4人で楽しみながら、迷いながら、検証しながら、行きつ戻りつした現場でしたが、先日(2019年7月)ようやくお引渡しを終えることができました。。

金田:江戸末〜明治初期に茅葺で建てられていたのを、昭和の改修で屋根を瓦にしたのと同時に、部分的に二階を増築したという履歴のある家です。阪神大震災のダメージもあり、耐震性に不安がある中、施主さんからは「通風採光のために2階直下の壁を取り除きたい」との要望がありました。耐震性と暮らしやすさとの折り合いの中で、何がベストかを探るために、和田さんに構造計算をお願いしました。

大工の経験と勘からの「大まかな読み」に頼ると、判断は構造的に過分なくらい安全側に傾いてしまいがちです。きっちり計算をしてもらったおかげで、既存の土壁と新しくつくる土壁とのバランス、地盤との兼ね合い、一本一本の柱にかかる重さ・・など総合的に追い込んだ判断ができ、改修のアウトラインがビシッと決まりました。設計にも入ってもらったことで、構造と意匠とのバランスがいい家になり、施主さんにもよろこんでいただけました。



大」(だいかね)建築 金田克彦

宮村樹さん
[ 不動舎 ] 奈良県

和田:斑鳩での古民家の調査依頼があったので、何度か総会やハツリイベントでお会いして社寺や和釘の話を伺っていた、当時奈良在住だった宮村さんに協力をお願いしました。調査に引き続き、改修工事を引き受ける事になったので、施工も迷う事なく宮村さんに依頼しました。

着工前の事前造成工事を行うのに、高知から「曳家岡本」に来てもらい、現在(2019年8月)曳家の真最中です。

曳家のために古民家を持ち上げたところ。横移動するためのレールが何本も敷いてある。

宮村さんは、来年はじまる改修工事の棟梁に、弟子の三好賢一さんを指名しました。若い弟子に棟梁を張らせ、ご自身はバックアップにまわることで「技術の伝承」をしようとの判断とのことです。

既存改修と増築が混在する難しい現場で色々迷う局面も出てくると思い、信頼する滋賀の建築士の川端眞さんにもサポートをお願いしています。迷ったり困った時に相談できる相手が居る事は、とても心強く、助けられています。

曳家岡本の岡本直也さん(左)と、
三好工務店の三好賢一さん

宮村:伝統構法は、技術だけでなく、人のつながりがあってこそできることを次の世代に伝えたいと、かねがね思っていました。そんな思いで、今回の現場の棟梁を弟子の三好に任せました。

曳家の岡本さん、設計の和田さんと棟梁としてわたりあって、曳家、造成、改修、増築という長期にわたる施工を経験することは、三好にとってものすごくいい勉強になるはずです。彼も弟子をとったので、孫弟子にも教えることができて、嬉しい限りです。

和田さんにこのような機会をいただけたことに心から感謝しつつ、今後彼らが関西圏で伝統構法での家づくりの実績を積んでいけるよう、引き続きバックアップしていきたいと思っています。



不動舎 宮村樹

4. この特集のまとめ

お互いをリスペクトできる
関係性が、よい実りを生む

和田さんは、木の家ネットの大工たちと協働する現場について、いつも生き生きと語られます。「どの現場も楽しくて、仕事というより部活のような感じです。それも、木の家ネットの仲間の仕事に対する姿勢やお人柄への信頼があり、安心できるからこそだと思います。大工さんそれぞれに特徴があり、その人ならではの良さに出会えるのも、楽しみですね」

施工を大工に、設計や構造計算を建築士に依頼するだけでなく、調査、建て方の応援、互いのイベントへの参加など、関係性が深まるほど、交流の輪は広がってもいるようです。力になったり、助けてもらったり。お互いの存在をリスペクトし、頼れるということは、なんと心強いことでしょうか。

よりよいものを求めて

「ともにつくる」

一般には、建築士は施工者の上に立ち、指示監督をするというイメージがありますが、今回みてきた協働事例の両者は「上下関係」ではなく「ともにつくる関係」です。

伝統構法の建物は、構造をあらわして見せる部分も多く、石場建てであれば足元まわりの施工にまで技術とセンスが求められます。それを求める設計者と応える大工とのどちらもが「よりよいものを造ろう」としのぎを削る心地よい緊張感や刺激が、協働現場にはあります。

図面は「挑戦状」

受けて立つ大工たち

「基本的な考え方が共通していて、素敵な仕事をしてくれると信じることができる方ばかりなので、思いっきり図面を描けます」と和田さんは言います。その図面は、大工自身が自分自身の想定する範囲の中で設計施工をする場合とくらべると「挑戦状」のようなものでしょう。

それに「よし、やってやろう」と燃え、張り切る大工たち。期待以上の仕上がりを見ることが、和田さんにとって、最高に楽しいことに違いありません。

小学生だった頃、大工さんが家の改修に入り、その仕事ぶりを見た和田さんは「大工になりたい!」と強い憧れを感じたのだそうです。その時に心に蒔かれた種が「大工とともにつくる」という形で実を結んだのです。

それは住む人の幸せ

にまでつながる

しかも、こうしたよいチームでの仕事は、よい家を生み、建て主さんの幸せにもつながっています。「お互いにしのぎを削り、高めあった結果が、建て主さんにも喜んでもらえる。それが、なにより嬉しいです」と和田さんは言います。

木の家ネットのつながりの中から、このような協働がさらに育っていくことを願っています。



一級建築士事務所 (有) バジャン 和田洋子

取材・執筆: 持留ヨハナ (モチドメデザイン事務所

 

職人がつくる木の家ネットは令和元年から「一般社団法人 職人がつくる木の家ネット」として新しいスタートを切りました。

職人がつくる木の家ネットは、国産無垢材をはじめ、環境負荷の少ない自然素材で住宅をつくる様々な職種のつくり手が集まり、2001年10月に任意団体として歩みをはじめました。全国の木の家のつくり手が、情報発信や情報共有をする。それによって「職人がつくる木の家」が広がっていくことが、私たちの目的でした。

これまでの木の家ネット

職人がつくる木の家ネットには、大工、建築士のほか、林業・製材業、左官・建具・畳・水道・タイルなどの職人、木造建築の教育者など、多種多様な会員がいます。その一人ひとりについて「つくり手ページ」で基礎情報を紹介するほか、会員紹介コンテンツでも順々に取り上げています。

2019年5月の時点での会員一覧 現在の状態はこちら

全国各地でがんばっている会員同士がつながり、情報交換できることは、一人ひとりの大きな励みとなっています。また、入会にあたっては、実績や仕事への姿勢、環境意識、入会動機などを理事会が丁寧に審査しています。実績ももちろんですが、審査で大事にしているのが「人となり」。それが「職人がつくる木の家」を求める人が、安心して地域のつくり手に連絡をとっていただける「よりどころ」となっています。

ネットでの情報発信だけでなく、木の家づくりがしにくくなっている状況を打開するための活動を実際に進めてきたことが「職人がつくる木の家ネット」の存在感を増す力になりました。

[法律関連]2005〜2009改正建築基準法アンケート
2005〜継続中伝統的構法(石場建て)の構造問題
2013〜継続中建築物省エネ法対応
2007住宅瑕疵担保責任履行法
[災害への対応]2003中越地震 現地調査
2011東日本大震災 支援 取材
2015熊本地震 現地調査 家戻しに協力
2018西日本豪雨 板倉仮設移転に協力
[職人の認知度アップ]2018職人宣言キャンペーン
[道具関連]2013-2015廃番になった「込栓角ノミ」復活

・それぞれの活動の項目名が、詳細な説明にリンクしています。
・下記ページにて、全詳細を一覧をできます。
  木の家ネットとは? 歴史ページ

一社化する目的

1. 社会的な存在感を高める

これまでさまざまなことを手がけてきましたが、法人格がなかったため、国や社会に対しての存在感に弱い面がありました。

たとえば「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験」検討委員会には、木の家ネットの会員の多くが実務者委員や実大震動台実験後の損傷観察などに積極的に関わっていましたが、これは、あくまでも個人としての参加にすぎません。

「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験」検討委員会が、E-ディフェンスで行った、
伝統木造住宅の実大震動台実験

今後、一般社団法人という法人格をもつことで、職人がつくる木の家ネット自体が実験や調査研究、行政への提言など、木造をつくりやすくするための事業を推進する主体となることができます。

これまでの延長線上にある活動も、法人格をもって主体的に取り組むことで、より強い影響力をもち、社会に貢献できることが増えていくでしょう。行政との折衝、研究者との協働、他関連諸団体やメディアなど、多方面での連携も深めていく所存です。

2. 次世代への継続性

これまで、任意団体、有志の集まりとして活動してまいりましたが、目指すことを確実に実現していくために、役割分担やしくみをより明確にした運営体制をつくりました。また、一社化にともない、岡山県倉敷市の事務局所在地に専任の事務担当を置きます。

福田 典子

事務局

実家が左官業を営んでいることもあり「職人」は私にとって身近な存在で、その職人さんが手がける家づくりの認知度を広め、高めていく「職人がつくる木の家ネット」の活動に魅力を感じています。少しでも皆さまのお役に立てるよう精一杯努めてまいりたいと思います。

運営体制がしっかりと整うことで、次の世代にまで、安定的に持続、発展していくことを願っています。

毎年開催する総会には、さまざまな世代の会員や会員家族が集まる。

3. 定期的な発信

これまで1人だった執筆者を3人に増員することで、より安定して定期的な発信をしていくようにします。

岡野 康史

これまでグラフィックデザインと写真の世界で活動してきました。会員紹介の記事制作には、一般読者や住まい手に寄り添ったフレッシュな視点で臨みたいと思います。会員さんの魅力やものづくりに対する姿勢を、わかりやすい文章と写真で伝えていきたいです。

丹羽 智佳子

農業関係の新聞記者として東京、名古屋で勤めたあと、三重の大工さんと結婚したご縁で、木の家ネットのライターになりました。職人さんや伝統技術など〝受け継がれてきたもの″の尊さを伝えていきたいです。そこから、日本中、世界中に、職人さんのファンが増えていったら嬉しいです。

持留 ヨハナ

木の家ネット創立以来取材執筆してきた蓄積を活かし、ひとつのテーマについて、複数の会員の実践や考えを横断的に紹介する記事を企画・執筆します。木の家づくりを取巻く法律や、災害対応・防災など、時宜にかなった発信もしていきたいです。

 

持留 和也

Webサイト制作・管理

大工さんが、木の個性を見ながら一本一本手刻みをしていくように、木の家ネットのさまざまなページを内容に合わせて作ってきました。デジタルだけれど、アナログな人の手触りが伝わるWebサイトの仕組みづくり、これからも目指します。

 

4. 会員相互の学び合いの充実

建築業を営み継続していくには、経営や人材確保・育成など、さまざまな課題があります。持続的に経営できる経験やノウハウを、会員間で先輩から後輩にアドバイスしたり、共通の悩みを相談したりできる場をつくっていきます。

小規模な工務店では、親方と弟子以外との接触が少ないケースがほとんどです。木の家ネットのつながりの中で、会員間で互いの建前を応援し合うことで、よその親方に学ぶ、弟子同士が語りあう機会が増え、刺激になっている例もあります。設計者が施工者に木のこと、おさまりのことなどを学ぶのも、互いのよりよい連携を生むでしょう。単独の事業所を超えた交流や学びの機会やしくみを、木の家ネット内に実現していきます。

先輩の会員に工務店経営の要所について学び、参加者同士で意見交換をし合った「大工経営塾」。
滋賀県大津市で、一泊二日で行った。

2017年に滋賀で行った「大工経営塾」を発端に、「見積もり部会」がたちあがり、ネット会議システムZoomを使った活動をはじめています。これまでコアメンバーで議論してきたことを、会員間で共有していきたいと考えています。

Zoom会議の様子。それぞれの場所にいながらにして、お互いの顔が見え、コンピューターの画面を共有して、会議ができます。

このように、一般社団法人になった「職人がつくる木の家ネット」は、社会に対しての存在感と発信力を高めつつ、会員が持続的に事業を継続するサポートと「職人がつくる家」を求める人への的確な情報提供をしていく所存です。

つくり手と住まい手とのよき出会いがたくさんあること、木の家づくりがしやすい世の中になっていくことを心から願っています。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

こちらもあわせてご覧ください

一般社団法人 職人がつくる木の家ネットについて
木の家ネットの歴史
定款
入会案内

© 2022 kino-ie.net. All Rights Reserved.
linkedin facebook pinterest youtube rss twitter instagram facebook-blank rss-blank linkedin-blank pinterest youtube twitter instagram