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無垢の木を使って森づくりを支える


集成材の家が増えている

「木が好き」だという人はたくさんいるのに、住まいに無垢の木があまり使われなくなっていることをご存知でしょうか。以前からこの欄で触れてきたように(林材レポート vol.1vol.3)、最近は木造住宅の多くに柱や梁といった構造材の接合部をあらかじめ機械で加工しておくプレカットが採用されています。木の家ネットのメンバーが手がける家づくりでは、大工が木の個性を見極めながら手作業で接合部を加工しているため、当たり前のこととして無垢の木を使っています。ところが、プレカット方式の木造住宅では、1本1本の性質を機械で読み取ることはできないために無垢の木が敬遠され、その代わりに薄い板を接着剤で貼り合わせた集成材が使われるケースが多くなっています。

集成材は薄い板を貼り合わせるので、木材を有効に利用しているという印象を受けがちですが、性能を安定させるために大きな節がある部分を切り取ったり、接着面を平滑にするために1枚1枚の板の裏表を鉋がけしたりしているので、実は端材や鉋屑の発生量が無垢の木よりも多くなります。丸太からどの程度の製品をつくることができるのかを材積比で表した割合(製品の材積÷丸太の材積)を「歩留まり」といいますが、無垢の木の歩留まりが6割程度あるのに対し、集成材は3?4割に過ぎません。つまり資源の有効利用という観点で言えば、無垢の木の方が勝るのです。それに集成材には化学物質である接着剤が使われているわけですから、もはや純粋な自然素材とは言えません。最終的に廃棄されるときにも土に返らず、環境に負荷を与えてしまいます。

それでも集成材が使われることが多いというのは、プレカット工場にとってはよほど使いやすいということです。実際、集成材なら加工ラインに投入するときに品質をチェックしなくてよいので人員を配置する必要がなく、その分経費が浮くのだとプレカット工場の関係者が話すのを聞いたことがあります。しかし、裏返せば、そうした工場は人手をかけて無垢の木を使いこなそうというつもりはないということです。これではプレカットが広まるほど、無垢の木が利用される機会が少なくなってしまうでしょう。

ひびや割れは必ずしも欠陥ではない

集成材で家を建てているハウスメーカーや工務店は、無垢の木は狂いやすいから扱いにくいと口をそろえて非難します。木材は乾燥が進むと繊維が収縮して反ったり曲がったりすることがあり、そのことを「狂う」というのですが、実際にはしっかりと乾燥させた木ならそうそう狂うものではありません。また、腕の良い大工なら多少狂うのも織り込み済みで加工を施すこともできます。いずれにしろ、まったくの未乾燥状態というのはさすがに問題なので、使う前に乾かして品質を安定させておくに越したことはありません。ただ、乾燥の方法にもいろいろあって、中には100℃を超える高温の蒸気にさらしてカラカラに乾かしているケースもあります。そこまでやらないと狂いが発生する恐れがあるというわけですが、自然の色艶はどうしても失われてしまいます。無垢の木には違いないとはいえ、ちょっと違和感を覚えます。

高温乾燥でもうひとつ気になるのは、木の表面を高温で固めてひび割れを防ぐ目的があるということです。木は乾燥が進むにつれて繊維が収縮するため、表面にひび割れが入ることがあります。しかし、それで木の強度が低くなることはないので、そう神経質にならなくてもいいと思います。製造する側があまりそれにこだわっていると、乾燥に伴う割れが重大な欠点であるかのような誤解を広めることになりかねません。結果的に無垢の木が敬遠されてしまうことも懸念されます。

もちろん、あっちこっちにひび割れのある木はあまり姿が良いとはいえません。そこで、昔から芯のある木には背割りという切れ目をあらかじめ1カ所だけ入れておき、他の部分で割れが発生するのを防ぐという方法がとられてきました。芯のある木は周りの繊維が引っ張り合う形になるので表面に割れが生じやすくなります。その性質を利用して、収縮に伴う割れを背割りの部分に集中させ、引っ張り合う力を逃がしてしまうのです。木曽ヒノキや吉野スギといった銘柄材になると、背割りに木製の矢(楔のようなもの)を打ち、それを1週間や10日に1度くらい木槌でたたいて割れを少しずつ広げることを繰り返して、万が一にも他の面に割れが出ないようにするという丁寧な扱いをすることもあります。

最近は背割りの入った柱を見て、欠陥品だと勘違いする人もいるようです。しかし、強度に問題があるわけではありませんし、むしろ丁寧に扱われた結果なのだと安心していいのです。高温乾燥は、背割りをしなくてもひびや割れが生じにくいというので、現在は多くの製材工場で採用されています。しかし、それよりも木材に対する正しい理解を広める方が、無垢の木の利用を進めることになると思います。


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背割りに差し込まれたたくさんの「矢」

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