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土壁告示

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■建築基準法と伝統構法

伝統構法(上)と在来工法(下)の構造模式図

家づくりにかかわる大事な法律として「建築基準法」というものがあります。これは、建築物の用途や構造、設備などに関する最低限の基準を定めて、国民が安全に日常の生活を送れることを目的とした法律です。第二次大戦後の昭和25年に制定されたものです。

戦後の復興から、それに続く高度経済成長期。経済効率を優先するという時代の要請に合った形で、建築基準法では、それまでの木造の軸組構法を簡略化、マニュアル化した基準を定めていきました。その間、北米から輸入されたツーバイフォー工法などにも法律的な位置づけが与えられ、多様な木造の形が日本の中に混在するようになったため、この簡略化された木造軸組構法は、もともと日本にあったもの、ということで「在来工法」と、そして、建築基準法で簡略化されてしまう以前からあった本来の木造軸組構法は「伝統構法」と呼ばれるようになりました。

伝統構法の子でありながら、基準法に育てられた在来工法は、さまざまな点において、実の親の伝統構法とはかなりちがったものになっていきました。木と木は、簡単な仕口で接合されるため、接合金物が必要となってしまう。柱と柱の間には、ななめの筋交いで耐力壁をつくることが義務づけられる。そのことによって、それまであたりまえであった木造技術、つまり、木と木が互い違いにがっちりと組み合う木組みの架構、昔からあった貫と土塗り壁、板の落とし込み壁などは、その性能を確認がされてこなかったこともあって、実際の技術としては存在していても、法の中には位置づけられないものとなってしまったのです。

■壁倍率とは?

私家版仕様書研究会が平成13年度耐力壁JCに出場した格子壁2..5トン。以上の力に耐えた。

今回の告示に直接つながった土壁実験(熊本県立大学にて)

改正告示全文のPDFは、こちらからダウンロードできます。

阪神大震災を契機に、木造技術の見直しと検証作業が研究者、実務家、行政の間で急速に進み、本来の木造軸組構法らしいつくり方である伝統構法についても、その性能を確認する実験や研究がさかんになりました。そして、この2003年の12月、耐力壁に関する告示改正で、伝統構法と建築基準法との間の溝が、やっと埋まり始めたのです。土壁、板落とし込み壁、格子壁という、伝統構法の3つの壁が、建築基準法施行令46条に関連する告示1100号の改定部分として、オープンに実用できる技術として位置づけられたのです。

建築基準法施行令46条とは、そもそもどういったものなのでしょうか。法では、最低限の「仕様」を決めています。そのうち、耐力壁について規定したのが施行令46条です。家全体が地震や風圧に耐える力をもつためには「このような壁をこれだけは備えなさい」ということを定め、壁量計算を義務づけています。

具体的には、壁の種類ごとに「こういう壁にはこれだけの耐力を見込もう」という倍率がついた表があります。この倍率の数字に壁の長さをかけあわせた「壁量」を求め、各階ごとに必要な壁量を満たさなくてはいけません。この表に土壁も登場してはいたのですが、「0.5」というごく低い評価しか認められていませんでした。よって、筋交いや構造用合板と併用してしか、基準法の枠内での家づくりはしづらかったというのが、今までの情況です。ところが、今回の改正告示(通称・土壁告示)では、施工方法によっては、「1.5」つまり、最高で今までの3倍の耐力評価が与えられたのです。

※簡単な足し算でできる壁量計算によらず、複雑な構造計算によって耐力を証明するいくつかの計算法もあり、その中でも限界耐力計算法が伝統構法の構造を評価するには相応しいのではないか、という議論も起きつつありますが、このことについては別の機会にゆずります 。

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