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越海興一 室長(木造住宅振興室):国交省木造住宅振興室室長に訊く「200年住宅」

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住宅を何年目で建て替えているのか、という調査があります。建替時の築年数は、イギリス77年、アメリカ55年に対し、日本は30年とかなり短いのが現状です。この現状から抜け出し、住宅の長寿命化をはかっていこうというのが「200年住宅ビジョン」です。住宅の品質や性能を向上させるために2006年8月に施行された「住生活基本法」を受ける形で、2007年5月、当時、自民党政務調査会住宅土地調査会長であった福田康夫氏から提言されました。

ゴミ、生産にかかるエネルギー、住宅にかかる支出を減らし、その分、環境とも調和した、豊かな住生活の実現をはかろうという美しい理念が並びます。さらに、このビジョンを実現させていくために、税制やローンの優遇など、さまざまな促進法も2008年中には整備されていく予定です。これから家づくりを考える人にはとっても大事なことがつまっていそうな「200年住宅ビジョン」について、国土交通省住宅局木造住宅振興室の越海室長さんを訪ね、お話をうかがいました。
(2008.4.9にインタビュー)

コンセプトどおりだとしたら
大歓迎の「200年住宅ビジョン」

よ (木の家ネット:ヨハナ)こんにちは。昨年「200年住宅ビジョン」を提言した福田さんが総理大臣になって以来「200年住宅」という言葉がよく聞かれるようになりました。これから家づくりを考えられる住まい手のみなさんにも深く関わることなので、お話を訊かせていただきたいと思って、うかがいました。

越 (木造住宅振興室:越海室長)200年住宅というのは、数世代にわたって住み続けられるような、長持ちする家、ということです。これからの循環型社会にふさわしい流れを、住宅の分野において、国主導でつくっていこうとしています。

よ つくっては壊し、というスクラップ&ビルドの時代は、もう終わりにして、質がよくて長持ちするものをつくろう、と。とても共感できるコンセプトですね。ところで、200年という数字はいったいどこから来ているでしょうか?

越 国では以前にも一度、長寿命住宅を推進しようと「センチュリーハウジング」というのをやったことがあるんです。その時に耐久性の考え方に「100年」というのを入れていたので、それよりも長持ちすることをめざそうということで200年と言っているだけで、200という数字に特別な意味はないです。法律的には「長期優良住宅」というのが、正式な名称です。

よ 自民党の政務調査会から昨年出た「200年住宅ビジョン」を読みました。コンセプトとしてはすばらしいのですが、ビジョンを作成したメンバーには大手ハウスメーカーの重役さんの名前がずらりと並んでいるし、提言の中身や詳細説明を見ていると「またハウスメーカー住宅にとって有利な新しい基準をつくろうという話か・・」と思えてしまって、心配していたんです。これまで200年もってきた伝統木造の家のことにまったく触れられていないことも不思議でした。「ほんとにこのコンセプト通りだったらいいんだけど?」なんて、結構、批判的に見ていたんですが。

越 ビジョンの出所が住宅メーカー、中古住宅取引市場といった業界だったということはありますが、200年住宅のコンセプトそのものは、長寿命な住宅をつくるというものであり、マンションのようなRC・鉄骨造、プレハブ住宅、在来工法、伝統木造・・それぞれの工法において「200年住宅と呼んでいい」優良な住宅があるはず、という捉え方をしています。

よ では、運用にあたっては、工法別の基準ができていくことになり、その中で伝統木造の位置づけも考えておられる、ということですね。ちょっとほっとしました。

「200年住宅」としての家づくりの流れ。
基準、認定、補助。

よ では、具体的にはどのような手順で「200年住宅」としての家づくりが進められるのでしょうか?

越 まず、建築主が「長期優良住建築宅等計画」を、建築主事のいる市町村長または都道府県知事に申請し、200年住宅としての認定を取得できれば、建築確認や税制の特例措置などを受けることができるようになります。建築基準法の最低基準さえクリアしていればいいという住宅に比べると、どうしても初期費用がかさむので、そこを国が後押ししよう、というのです。普及促進策を盛り込んだ新法「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が、今国会で成立する見込みです。

よ 国でも大分、入れ込んでいるんですね。で、200年住宅の基準とは、どのようなものなのでしょうか?

越 次の7つのポイントを満たすことが必要となります。
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が成立すれば、数ヶ月の間で、具体的にどういう要件を満たせば200年住宅として認定できるのか、運用のための基準をつくっていくことになります。伝統木造だったら、どのような基準にすればよいのか、考えていかなくてはなりません。

200年住宅が満たすべきポイント
・構造躯体の耐久性があること
? ・耐震性が高いこと
? ・内装・設備の維持管理が容易にできること
? ・変化に対応できる空間が確保されていること
? ・長期利用に対応すべき住宅ストックの性能があること
? ・住環境へ配慮されていること
? ・計画的な維持管理や保全の履歴を蓄積すること


伝統木造軸組住宅の性能検証を
ここ3年間でしていく

よ 200年もたせることのできる伝統木造と、そうでないものとをどこで線引きするのか。そもそも、伝統木造そのものについて、工学的な検証がなされておらず、建築基準法にすら正当に位置づけられていない中、これはむずかしい課題ですね。

越 そうなんです。これまできちんと検証されてこなかった分野ですからね。そこでこれから3年間かけて、伝統木造を法律的に位置づけていくために、数々の実験や分析をやっていきます。これまで伝統木造関連でとったことがないほど多くの予算がとれているのですが、それも「200年住宅」関連の予算でとっているんですよ。これで伝統木造も、長期優良住宅としてキックオフできるのではと期待しています。

・伝統的木造住宅の設計法の構築
・限界耐力計算を木造2階建てに使う時の運用方法の策定
・伝統的建物に用いる接合部のデータベースづくり
・2008年11月?12月頃に実物大建物の振動台実験
・鉛直・水平構面の試験法の作成、及び公募による具体的仕様の実験
・古材、丸材などの検証
・伝統構法の地域性などの情報収集
・能登半島、中越・中越沖地震で残った伝統的な建物の調査・検証
・地域木造住宅市場活性化推進事業による地域の試験研究の助成金

よ ほんとにいろいろな角度から、3年間でたくさんのことを検証していくんですね。よい方向に進むことに期待しています。

「200年住宅」では、メンテナンスを重視する

越 200年住宅においては、「どのようにつくるのか」のだけでなく「メンテナンス」ということが大切になってきます。

よ 建ててしまえば何もしなくても200年もつ、ということでなく、点検や修繕、改築などを繰り返していくことで「200年もたせていく」ということですね。まさに、職人がつくる木の家づくりの考え方ですね。

越 ところが、戦後の日本には、そういった発想は国民にも、住宅産業界にもほとんどなかった。実際、これまでの性能表示制度にもメンテのことは入ってきていなかった。国民にも住宅産業にもアタマの切替をしてほしいところです。

よ メンテナンスしながら200年もたせられるような住宅とは、どのようなものなのでしょうか。

越 まず、構造躯体(スケルトン)はしっかりと、耐久性のあるものとしてつくる。耐震性能としては、大きな地震があってもつぶれない、改修すれば住み続けられるぐらいをイメージしています。そしてその長持ちさせるスケルトンの中には、それよりも短い期間で交換、修繕などが必要になる内装・設備(インフィル)を入れ子にする。インフィルを動かすことがスケルトンに影響しないよう、構造的に分離させておく。それで、内装や設備については、30年ごとの計画、つまり一世代ずつまわしていくというイメージです。

よ 設備系はどうしても、取り替えざるを得ないですからね。200年といえば7世代にあたるんだそうです。7世代前の暮らしを現代のわたしたちがイメージできないように、7世代先にまで住み継ぐ間にライフスタイルがどのように変化していくのか、見当もつきません。木の家ネットのつくり手たちがよく言っているような頑丈な木組みができていれば、間取りは比較的自由に変更できるという「融通無碍、可変性」ということも大事ですね。

参考 
200年住宅ビジョンのバックボーンとなる基本法。
名文なので、ぜひ味わってみてほしい!

住生活基本法

・基本理念

○国民の豊かな住生活の実現を図るため、住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策について、その基本理念、国等の責務、住生活基本計画の策定その他の基本となる事項について規定するもの。

・良好な居住環境の形成

○住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策の推進は、地域の自然、歴史、文化その他の特性に応じて、環境の調和に配慮しつつ、住民が誇りと愛着をもつことのできる良好な住環境の形成が図られることを旨として、行わなければならない。

・国及び地方公共団体の責務

○国は、基本理念にのっとり、住宅の品質又は性能の維持及び向上に資する技術に関する研究開発を促進するとともに、住宅の建設における木材の使用に関する伝統的な技術の継承及び向上を図るため、これらの技術に関する情報の収集及び提供その他必要な措置を講ずるものとする。

・住宅の品質又は性能の維持及び向上

○地球温暖化問題や廃棄物問題等の環境問題に対応して、省エネルギー性能をはじめとする住宅の環境性能の向上を図るとともに、住宅における自然エネルギーの利用の促進、森林吸収源対策としての住宅への地域材利用の促進、再生建材の利用の促進や住宅の建設・解体等により生じる廃棄物の削減を図る。
○地域の気候・風土、歴史・文化等に応じた良質な住宅の供給を促進する。

・国民の多用なニーズが適切に実現される住宅市場の環境整備

○良質な住宅の生産・供給体制及び住宅の適正な管理体制を確立する観点から、技術開発、建材等の標準化、技能者の育成等による木造住宅に関する伝統的な技術の継承・発展、地域材を活用した木造住宅の生産体制の整備等を推進する。

・環境性能

○自然エネルギーの利用、断熱性の向上やエネルギー効率の高い設備機器の使用などエネルギー使用の合理化、断熱材のノンフロン化等について、適切な水準を確保する。また、建設・解体等の廃棄物の削減、解体処理・リサイクルの容易性、地域材・再生建材の利用、雨水・雑排水の処理・有効利用、敷地内の緑化等について、適切な水準を確保する。
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霞ヶ関にある国土交通省。両脇には警視庁と外務省が建っています。