十八坪の石場建ての家
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設計士・川端眞さん(川端建築計画):小さな石場建ての家

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小さな石場建ての家!

今回は、愛知県名古屋市中川区に、石場建て平屋の水野さん宅にお邪魔しました。石場建て。古い家にはあたりまえの工法ですが、建築基準法の仕様規定外になっていることもあり、新築では(社寺建築や木の家ネット周辺以外では)なかなか例がありません。この家の設計をした川端眞さんも交え「なぜ石場建てに?」「 費用はどのくらいかかるの?」「こじんまりとでも心地よく住める家づくりの秘訣は?」など、みなさんもきっと気になることをじっくりと、お訊きしました。

「石場建て」って、どんな?
床下をのぞいてみよう!

「建築基準法の仕様規定では建てられない、石場建ての家」と聞くと、なにかハードルの高い、特別な家というイメージをいだいてしまいそうですが、実際に訪れてみると、こじんまりとした、シンプルな形の「普通の平屋の家」でした。

シンプルな平屋

南北にさしかかる屋根の、南面の真ん中あたりの軒が長く張り出し、その下がウッドデッキになっています。家の手前角にある柿の木の根元から、玄関のあるウッドデッキにのぼる階段の手前まで、緑色がかかった延べ石が敷かれた小径をアプローチするのですが、そのほんの数歩の間にも、この家の最大の特徴である「石場建て」の様子が見えてきます。

家の隅から右側面の足元が空いているのが見えます。これが石場建て。サッシの下は下駄箱の扉が上から吊り下げられているだけで、板の向こう側はそのまま床下空間になっています。

映画の「となりのトトロ」で、幼いメイちゃんが縁の下をのぞきこんで、チビトトロを発見するシーンを覚えていますか? 家の縁の下があいていて、等間隔で並んだ柱が、四角い基礎石の上にトンと立っている、これが「石場建て」です。家の中央部の柱はネコの侵入を防ぐためにネットで覆われてはいますが、それ以外はずーっと向こうまで見通せて、床下の薄暗がりの先に、建物の向こう側の光が明るく見えています。

普通の家だと、家の下には基礎コンクリートの立ち上がりがあり、その上に敷かれた土台に、柱が立ちますから、床下は「みっちりと」埋まっていて、「床下を風が通る」ようなことはまず、ありません。今の住宅では見かけないつくりですが、古い民家や、神社の神楽殿やお堂やなどで「見たことはある」ので、何だかなつかしいような光景です。

建て主の水野さんと、お子さん

「ここで靴を脱いでいただけますか?」建て主の水野さんのご案内で、デッキにあがる階段の手前で靴を脱ごうとして、あがりはなに、床下に下駄箱がしつらえられているのを見つけました。

水野さん (建て主・水野さん)最初はデッキの上までは土足で、入り口の引き戸をあけた踏込みのところで靴を脱ぐようにと計画したんですが、できあがってみるとデッキがあまりにきれいで、とても土足であがれない気がして・・ここで素足になることにしたんです。

石場建ての柱同士をつなぐ足固めの下端に靴箱の扉が吊られています。

靴を脱ぐあたりに雨が吹き込まないよう、母屋の屋根には太い竹を並べて立て掛けてあり、屋外なのに室内のような、不思議な空間です。

内と外とが
ゆるやかにつながる

玄関の外側に、庭に向けて広がるウッドデッキ。右奥に見えるのは木で作った物干し台。

水野さん お天気がいいと、冬の昼間でもこの玄関デッキにお膳を出して、ご飯を食べたりするんですよ。

屋外の部屋?のように使われる、4畳の広さの軒下の空間は、家の外と中に振り分けになった天秤梁が軒の重みをガッチリと受けることで実現しました。両開きの引き戸を開けて家の中に入ると、もともとは靴箱を想定していたところに、本の収納ラックが作り付けられていました。

水野さん 図書館にあるようなのを作って!と、大工さんに無理を言って作ってもらいました。とても満足しています。

下のラックは、表紙が見えるように絵本を並べることができ、子どもの手がとどかない上の棚には、大人の本が並んでいます。真ん中の段にはおもちゃが広がっていますが、片付けると書斎机としても使用可能です。

正面は8畳間の板の間で、大きな無垢板の座卓が置かれているだけ。その上は屋根裏まで吹き抜けの、高さのある空間で、半分ははしごで登れるロフトになっています。板の間の向こうは、ご両親の家との間の中庭を臨むデッキにつながる掃き出し窓が。デッキを介して、南の庭から北の中庭までがゆるやかに連続する、のびやかな空間となっています。

玄関から8畳の居間を見た眺め。上にはロフト、全面のガラス戸の奥には同じ高さでウッドデッキが広がっていて、実際よりもうんと広く見えます。

長寿命の家をめざしたら、
石場建てに行き着いた

ヨハナ (木の家ネット・ヨハナ)自然な暮らしを考えていって、木組み・土壁の家を選ばれた、というところまでは分かるのですが・・・石場建てまでは、なかなか、いかないですよね?

水野さん 無垢の木の家がいいな、というところから始まっていろいろ勉強していくうちに、伝統構法にたどり着いたんですが、いろいろ学べば学ぶほど、石場建てしかないな、と。

ヨハナ そう思われた理由は?

水野さん だって、せっかくお金をかけて作る家だったら、長く住みたいですよね? 東海地震だって、いつ起きてもおかしくない。どうするのがいいの?と勉強していくうちに、石場建てでは、巨大地震の時には、柱が石からずれることで建物に入る力を逃すのだということを知り、これだ!と思いました。

排水管の配管。地震で家が動いても、真ん中の銀色の部分でズレを吸収するようになっています。

ヨハナ 建築基準法では想定外と言われる巨大地震にも対応できるようにしたいですのものね。長寿命の家づくりを考えれば、地震以外にも、床下に湿気がこもらないことは、絶対条件。その点でも、石場建てには利がありますよね。

水野さん このあたりは大きな川のすぐ近くなんですが、石場建てで高床になっていれば、多少の水が出ても家には影響しないでしょう?

つくり手が少ない!石場建て

水野さん ところが、無垢の木、土壁まではやっていても、石場建てまでとなると、手がけている方が、ほとんど居られないんです。メールで問い合わせたある設計事務所に「石場建て?そんな危険なこと、できるわけないでしょう、本気ですか?」なんて返事をもらったことすらあります。

ヨハナ 建築基準法ですんなり作れないこともあり、伝統構法を勉強していない人だと「石場建ては基準法ができる前の、安全性の低い建物」としか思っていないかもしれないですね。E-ディフェンスでの石場建て二階建て住宅の実大振動台実験映像も公開され、地震時の挙動もだいぶ分かってきてはいます。情報をキャッチしている人なら、そんな言い方はもうしないでしょうけれどね。

水野さん 「石場建てをやっているところ」を手がかりにインターネットで探して、やや遠方ではありましたが、川端建築計画の川端眞さんにたどり着いたんです。父が「施工はつながりのある地元の工務店で」とこだわったんですが、結局、地元に石場建てを引き受けるところはなく、川端さんが絶大な信頼を寄せている宮内建築の宮内寿和さんにお願いしました。父も情熱大陸のビデオを見て、納得してくれました。

工事費総額で1800万で
なぜ石場建てを実現できたのか?

ヨハナ つくり手の目星がつくと、次に問題になるのは予算ですよね? 差し支えなければ、工事費としてどの位を考えていたか、教えてください。

水野さん 当初は1500万のつもりでいました。がんばって出せたとしても、1800万が限界でした。川端さんに決める前にあたった、石場建てをやっている数少ない工務店の中には、はなから予算で断られたところもありました。

ヨハナ 川端さんには、なぜ断られなかったのでしょう?

川端建築計画の川端眞さん

川端 (川端建築計画 川端眞)設計をさせてもらった川端です! 初めて建て主さんと会う時には「どんな生活がしたいですか?」と「予算はいくらですか?」の二つの質問をします。広さとか部屋数は一切訊かないでね。予算が少ないなら少ないなりに、希望をこじんまりとまとめればいいじゃないかと、4人家族の水野さん宅は18坪でまとめました。ご満足いただいていますよね?

水野さん はい!大満足です!

ヨハナ 設計の腕の見せどころですねー

次ページでは、石場建てにかかる費用を大解剖!

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石場建ての足元は、物置きだけでなく、子どもの遊び場所にもなります。