徳島の建築家 清水さんは、住宅だけでなく店舗や大学の施設まで、県内を中心に幅広い建築を手がけられています。医師を目指した少年が、土木の仕事を経て、いつしか建築の道へ。その歩みを語っていただきました。

清水 裕且 さん(しみず ひろあき・51歳)
1975年(昭和50年) 徳島県生まれ。環境デザインワークス 一級建築士事務所 主宰。地元の高校を卒業後、東京理科大学理工学部土木工学科へ。卒業後、土木関係の会社を経て独学で建築を学び、34歳で現在の事務所を開設。
主な受賞歴
・第23回 木材活用コンクール 優秀賞/Bar余白
・日本空間デザイン賞2020 Shortlist選出/Bar余白
・第4回 JIA四国建築賞 大賞/小さな石場建ての家
・R3年度日事連建築賞 優秀賞/小さな石場建ての家
・第55回 日本サインデザイン賞 四国地区賞/からだ鍼灸整骨院
・東京オリ・パラ「徳島すぎ」レガシー創出業務 公募型プロポーザル 最優秀提案者
・第27回 木材活用コンクール優秀賞/肉割烹 奥
・徳島大学常三島キャンパス イノベーションコモンズ アドバイザー選定コンペ 最優秀賞
・第28回 木材活用コンクール木材活用賞/NISHIU de repos
・2024年 WOOD DESIGN 賞/NISHIU de repos
・R7年度日事連建築賞 奨励賞/NISHIU de repos
・2025年 WOOD DESIGN 賞/肉割烹 奥
・日本空間デザイン賞2026 Shortlist選出/NISHIU de repos
建築って、
人を感動させることができるんだ
⎯⎯⎯ 東京理科大の土木工学部のご出身とのことですが、幼少期の間にものづくりや建築に惹かれたことなどがあったんですか?
清水さん(以下敬称略)「実はないんですけど、中学校の時に雑誌の住宅建築を見るのが好きで、親父に買ってもらったことがあるんですよ。1987年か88年。なぜ読みたかったのかは、自分でもよくわからないんです。当時、建築をしたいと思っていたわけではなくて。

高校の時は医者になりたかったんです。浪人もして勉強したんですが医学部は諦めました。土木の会社をしていた父親から、『大学ぐらい出とけよ』と言われたこともあり、土木の大学に行ったんです」
⎯⎯⎯ お父さんの“大きなものをつくる”という仕事は、どこかで影響しているのかもしれないですね。
清水「そうかもしれません。ただ、土木の仕事が段々あまり面白くないなと思うようになりました。その頃、昔、建築が好きだったということを思い出したんです」
⎯⎯⎯ その頃から建築を仕事にしようと意識されたんですね。何歳くらいの時でしたか。
清水「土木の会社に勤めていた20代の中盤から後半にかけて、直島などの美術館を見に行ったんです。僕自身も感動したんですけど、周りの人たちが建築に感動しているのを見て、『うわ、いいな』と思ったんです。それが、建築を志すきっかけになりました。その後、30歳ぐらいで独学で一級建築士の勉強をするようになりました」

⎯⎯⎯ 急に職業を切り替えることは、勇気が必要ですよね。どこかの設計事務所の門を叩かれたんですか。
清水「いえ、していないです。設計事務所って給料が安いイメージがあるじゃないですか。30歳手前で建設会社勤めで、そこそこ納得できる給料をもらっていたので、それが半分ぐらいになっちゃうのは嫌だなと思って。かといって、一人で独立して儲かるかと言えば、そうでもないですが(笑)」
⎯⎯⎯ 環境デザインワークスという名前の「環境デザイン」には、どんな想いが込められているのですか。
清水「環境って、地球環境の環境もありますし、小さい空間も環境ですし、自分の周りのことも環境という。そういう、広い意味で捉えています」


事務所の入居するビルは安藤忠雄の設計
⎯⎯⎯ ここにはたくさんの本があってワクワクします。僕も本をよく読むのですが、気になった言葉をメモしていた時期もありました。でも、結局そういうことより、もっと深いところに染み込んでいて、どこかで生かされていることがあるんじゃないかなと思います。
清水「この本って、適当に置いているようで、どのあたりにどの分野の本があるか、自分ではなんとなくわかるんですよね。調べものをする時も、1冊1冊にアドレスがあるというか。電子書籍で見ていたら、そのアドレスが結びつかないだろうなと思いますね」

⎯⎯⎯ 脳みそが拡張されているような感じですね。行き詰まった時や、息抜きしたい時にやっていることはありますか。
清水「やっぱり、本を見ることですね。行き詰まったら、探しに行きます」

未来の古民家なるものを
つくりたい
⎯⎯⎯ 建築に進まれて、どんな建物をつくっていこうと考えていましたか。
清水「建築ならは何でもする気ではいました。本当はRC(鉄筋コンクリート)の建物もやりたかったんですけど、徳島でいきなり大きい仕事があるわけでもなく、きちんとした建築の勉強を積んでいないし、この世界に入ったのも遅かったので、コンプレックスもありました。そんな中で、地方で特徴を出していくためには、徳島にある木を使っていくことかなと思い当たりました。戦略的に木造建築に入っていった感じです。ちなみに一番最初にやらせてもらったのは妹夫婦の新居でした」
⎯⎯⎯ どんな木を使うことが一番多いのでしょう。
清水「杉ですね。店舗の改修でも、生の木をよく使います。インテリアデザイナーは、扱いにくい生の木はあまり使わないんですよね。どこにも属さずにやってきたからこそ、固定観念なくできたのかもしれません。誰も教えてくれなかったので」
木の家ネットのプロフィールには、こんな一文があります。「木そのものが持つ物理的、生物的、情緒的な力でもって、未来の古民家なるものをつくりたい」
⎯⎯⎯ 木の家ネットのプロフィールに、「木そのものが持つ物理的、生物的、情緒的な力でもって、未来の古民家なるものをつくりたい」と書かれています。「物理的、生物的、情緒的」について、詳しく聞かせてください。
清水「物理的というのは、たとえば木が反っていたら梁を渡すじゃないですか。そういう、応力的な木の使い方を外さないということです。生物的というのは、杉でも赤身と白太があって、赤身は水に強かったり、防虫作用があったりするので、構造材など適した場所に使います。白太は水やシロアリに弱くはありますが、見た目が綺麗なので、インテリアに使うとか。情緒的というのは、木の空間ってなんだか温かい印象になったり、木の匂いがするなど、感覚的な効能ですね。

いろいろな建築の賞に応募してきて、気づいたことがあるんです。木造建築って、写真と書類だけで審査するものもあるんですが、それよりも現地で建物の空間に入って感じてもらえる審査のほうが、木造建築には有利なんじゃないかということです。図面や写真だけより、実際に来てもらったほうが『木造建築っていいな』と感じてもらえることが断然多いと感じています。それがつまり、木の持つ情緒的な部分なんだと思います」
⎯⎯⎯ RCに比べて、プラスαで感じるものは多いでしょうね。「未来の古民家」という言葉には、どんな想いがありますか。
清水「今つくった民家が、未来にはそのまま古民家になる。そんな建築です。当たり前ですが。そのためには、尖ったデザインではなく、普遍性のあるデザインの住宅をつくりたいと思っています」
⎯⎯⎯ 住宅と店舗や施設とでは、スタンスや考え方が違うものですか。
清水「全然違うと思っています。店舗はお客さんからすると非日常的な空間になるので、インパクトや心地よさを重視しています。あと、住宅設計が重なると、ちょっと疲れてくるんですよ(笑)。責任が重いというか。たまに店舗に携わると気分転換になります」
⎯⎯⎯ 最近は、どんなのお仕事が多いですか。
清水「新築住宅は、めちゃくちゃ減りました。改修が多いです。施設では飲食店や福祉系が多いですね」
世界を見て気づいた、
根底にある発想の同一性
⎯⎯⎯ 木の家を新築や改築でされる時、職人さんとの関わりで気をつけていることはありますか。
清水「僕の勝手なイメージですけど、職人さんは、”今までやったことのあることをしたがる人”が多いように思っています。そんな中でもチャレンジしてくれる職人さんもいて、『これ、どうやるんだろう』というものに乗ってきてくれる人とやりたいですね」
⎯⎯⎯ なるほど。木の家ネット会員の職人さんと、ご一緒されたことは。
清水「宮内さんです。宮内さんとの出会いは、大きかったですね。僕は建築をやる前から旅行が好きで、コロナ前までは、毎年のように海外の建築を見に行っていたんです。毎回『うわ、かっこいいな』と思って戻ってくるんですけど、じゃあ日本で自分は何かを表現しようと考えた時に、それがどんどん日本的になっていることに気づいたんです。フランスに行ったからフランスっぽくなるのではなくて、帰ってくると、日本の建築に興味が湧いてくる。

そして、まさにそのフランスで、宮内さんに出会ったんですよ!日本で石場建てをしている人がいるんだと知って。伝統工法って、かっこいいなと思っていたんです。継ぎ手とか、海外に行ってもあまりない表現ですから。伝統建築に興味はあったんですけど、宮内さんと出会ったことで、その深さを知ったというか」
⎯⎯⎯ え!? たまたま現地で出会われたんですか。
清水「これは面白い話で、当時、一緒に仕事をしていた大工さんと、『そういえば昔、情熱大陸にかっこいい大工さんが出てましたよね。フランスから帰ってきたら、また一緒に見ましょうよ』なんて言って出発したんですけど、フランスに宮内さんがいたんですよ。『一週間前に、あなたの話をしてたんです』って。
その旅の最中に、東日本大震災が起こりました。インパクトの強い旅でしたけど、そこから宮内さんとお付き合いさせてもらうようになって、いつか一緒に仕事がしたいなと思っていました。それが実現したのが、母の家【小さな石場建ての家】です。木の家ネットの職人さんと仕事をするのは好きですね」
⎯⎯⎯ より日本らしいものに興味を持たれたのは、やはりその土地に合うものが良いと感じたからでしょうか。
清水「それももちろんなのですが、伝統を突き詰めていくと、インターナショナルだなと気づいたんですよ。気候風土が全く違って、つくりも全く違うんですけど、根底にある発想の源は一緒というか
⎯⎯⎯ 深いですね。その想いに至った特に面白かった国や建物を教えてください。
清水「メキシコが一番衝撃的でしたね。ルイス・バラガン建築の代名詞であるピンクの色があるじゃないですか。けばけばしいイメージを持っていたんですけど、メキシコであの色を使っているのを見ると、気候風土や空間にすごく合っていてハッとしました」

建築家は“聞き過ぎない”
ことが大事
⎯⎯⎯ これまでのお仕事で、転機のような出来事はありましたか。
清水「特別大きいものはそんなにないですが、毎回気づきはありますね。頑張って勉強してきたことを意識的に真似するのは難しいのに、逆に、何となく見てきた建築を無意識に真似している時もあります。後から『あ、あそこの建築を見て感じたことが出ているな』と気づくんです。だから建築を見に行って体験することは、とても大事にしています」
⎯⎯⎯ 大切にしていること、モットーのようなものはありますか。
清水「建築家って、わがままなイメージがありますよね。『施主の言うことを聞いてくれない』とか。そういうことを毛嫌いする人もいると思うんですけど、僕はそれが大事だと考えています。
全く聞かない訳ではなく”聞き過ぎない”ということです。すぐには諦めません。もちろん話し合って、『ここは降りないといけないな』という妥協点は見つけていくんですけど、お客さんは今こうしたいと思っていても、将来的には『あの時、議論してよかった。こっちの方が絶対いい』と思ってもらえる自信があれば、貫き通します」
⎯⎯⎯ 建築家が入ることで、施主さんだけでは思い描けなかった、価値観や暮らしやすさに辿り着けるといいですよね。思い入れのあるお仕事を教えてください。
清水「インテリアになりますけど、『Bar余白』というのがあります。ここを手掛けてから『余白をやった人なんや』と代名詞みたいに言われて、それをきっかけに仕事の依頼も増えました。ある意味、転機だったのかもしれないです」
Bar 余白
徳島県徳島市|竣工:2019年
第23回 木材活用コンクール優秀賞、日本空間デザイン賞2020 Shortlist


写真上記3点:米津 光

地上1.5mの暮らし
事務所から車で20分ほど。お母様が暮らす【小さな石場建ての家】を訪ねた。清水さんが初めて手がけた伝統構法の家で、木の家ネット会員の宮内さん(宮内建築)が施工を、和田さん(TSウッドハウス)が材木を手がけた。
小さな石場建ての家
徳島県徳島市|竣工:2017年|第4回 JIA四国建築賞 大賞、R3年度日事連建築賞 優秀賞
施工:宮内建築|材木:TSウッドハウス 協同組合



写真 上記5点:米津 光
⎯⎯⎯ まず目に留まるのが、床の高さですね。
清水「1階の床が地面から大体1.5mです。この高さは百葉箱の高さと同じで、湿気や地面からの照り返しの影響が少なくて、安定した環境になる高さです。日本古来の高床式倉庫も、そういう意味で床を上げていますよね」


⎯⎯⎯ これだけ高いと風が通るのがよくわかります。最初からその高さで行こうと決めていたんですか。
清水「そうですね。でも、出来上がってから気づいたこともあります。この高さの床だと、前を歩く人と目が合わないんです。かといって、2階建てのように見下ろすこともない。ちょうどいい距離と高さだと感じました。これが通常の1階のレベルだったら、南の開口にはカーテンを下ろしていると思いますが、開けておけるのは、出来てから気づきましたね」


外の人と視線がぶつからないちょうどいい高さ
清水「この窓は、FIXの部分が正方形になるようにまず決めて、換気用の開口を別にしているんです。アメリカのルイス・カーンという建築家が使った手法で、換気を別にすると結構安くつくんですよ」

木製建具の枠で固定した窓(FIX窓)と、換気用の開口が別々になっている。
⎯⎯⎯ 開放感がありますね。そしてお風呂が真ん中にある家は、初めて見ました!
清水「間取りは、真ん中に水まわりを置き、その周りをぐるぐると回れる形にしています」

「狭い空間ですが、一番長い辺が端から端まで見通せるすることで、視線が抜け広く感じます」(清水)


「浴室の壁は杉なんですが、中にあるからなのか、カビも生えず、結露もしにくいんです」(清水)

洗面所・トイレ・お風呂が真ん中にある
写真:米津 光

清水「床や梁の節は自然のものなのでそのまま使いますが、垂直面の柱などは、なるべく節がない芯去材を使っています。そうすると、うるさくならないんですよ。ここに節がガッと出てくると、ログハウスっぽくなってしまいます。和田さん(TSウッドハウス)と一緒に考えました」

古民家から見習った渡り顎(わたりあご)の梁組み

ガラス瓦から優しい光が差し込む

清水「柱と梁の接合の枘(ほぞ)を斜め45°に入れてあるんです。柱側にはスリットを入れてあって、枘が抜けようとすればするほど、スリットが開いて逆に締め付けていきます。知恵の輪みたいですよね。斜めにする例は時々ありますが、スリットを入れるのはあまり見ないと思います。宮内さんのアイデアです。徳島は台風が来るのでこういう部分を強化しています」

造作のキッチンも木が美しい

一間サイズの格子のガラス戸は、清水さんがいつもつくるものだそう。ガラス戸・網戸・雨戸の三層になっていて、メンテナンスのために戸袋も開くようになっている。(写真左:米津 光)

淡路島の大栄窯業さんと一緒につくったという特注の巴瓦

当時の様子を楽しそうに話してくれる清水さん

雨宿りのような
偶然の出会いを
事務所から歩いて5分ほどの徳島大学へ。2026年10月に竣工したばかりの、清水さんの新しい仕事。もともとあった小さなカフェに増築するかたちで建てられた。徳島大学工学部創立100周年記念事業の一環として、県産材をふんだんに用いた、深い庇のある落ち着いた空間として整備された。学生と企業が出会う場でもあります。学生や教職員と地域・企業との交流・共創を目指す施設だ。
徳島大学日亜イノベーションコモンズ
徳島県徳島市|竣工:2026年
材木:TSウッドハウス 協同組合
⎯⎯⎯ 提案のイメージを教えてください。
清水「ここは、時計台のあるシンボルロードと呼ばれているところに面しています。雨宿りでパッと軒下に入って、思ってもみない出会いが生まれる。そんなコンセプトの場所です」

シンボルロードとイノベーションコモンズ

深い軒下には、今後ベンチを置くかもしれないとのこと。勉強も捗りそうだ。
清水「セミナースペースは全面がオープン。企業がイベントをしている時も、学生が通りがかりに入ってきます。聞くつもりのなかった人が、耳にしたりする。そういう場になるように意図しています。壁には、本来は下地材のフレキシブルボードをあえて使い、真鍮の釘で留めています」


下地材のフレキシブルボードを真鍮の釘で留めている

左:カフェ / 右:随所に見られる遊び心
⎯⎯⎯ 木の匂いがしますね。ただ、大きな建物になると、木を見せるのは難しくなるのでは。
清水「大きくなると、法律的に制限があって、木を見せることが難しくなってくるんです。住宅のように、木ばかりという感じにはできません。でも、構造としてしっかり木を使っています
⎯⎯⎯ 木の使い方でこだわったポイントはありますか。

清水「柱に窓ガラスを直接取り付けています。和田さん(TSウッドハウス)と相談して、割れにくい芯去材を用いることで実現しました」

清水「空間が広いので、梁を1本ものにすると継ぎ手が出てきて弱くなります。そこで、2本と1本でサンドイッチにしています。間に照明を挟むこともできますし、普段流通している6mの長さの材で構成できました」
⎯⎯⎯ 自動ドアの扉も、木でつくられているんですね。既製品しか頭にありませんでした。
清水「入口は、内側と外側にガラスのない木製の自動ドアを2枚設けています。通る際に、一度、狭くて暗い空間になる。そこを通ってから中に入るとドラマチックじゃないですか」

⎯⎯⎯ 雨宿りの偶然の出会いのコンセプトにもマッチしていますね。他にも教えてください。
清水「入口部分の屋根と壁の間にガラスを入れています。柱から梁までを全部ふさいでしまうほうが楽なんですけど、少し隙間を開けることで『ここは構造ではない』と視覚的に分かり、構造が明快になります」

清水「軒下の鉄の柱と雨樋を同径で近い色にしています。二本ずつ並ぶことで意匠的なリズムが生まれます」

軸組みの模型を見せていただいた

難しいほど、面白く、
挑戦し甲斐がある
⎯⎯⎯ これからの野望や展望があれば、聞かせてください。
清水「住宅では、木造建築で伝統的なものをベースに、あまり野暮ったくならない方向で追求していきたいです。石場建て。地元の木をちゃんと使う。大壁ではなく真壁で。木が見える。それに加えて、中大規模の木造建築にも力を入れてやっていきたいです。非住宅の建築でも、なるべく多く木を使ってやっていきたいです」
⎯⎯⎯ その考えの根底には、どんな想いがありますか。
清水「この表現がなかったら、僕は勝負できないなと思うんです。一時はそれで悩みました。ある時から『もう木のイメージで行こう』と決めました。建てるものが大きくなればなるほど、木でつくるって、難しいんです。コンクリートで見栄えのいいものをつくる方が断然楽。でもやっぱり、そこに面白みもありますし、挑戦し甲斐もあるんです」

新建築2026年10月号/木造特集
新建築の木造特集に掲載された建物も見せていただきました。
⎯⎯⎯ この建築のこだわりや、大変だったところがあれば教えてください。
清水「まず敷地内に正方形を置いて、円弧で削ったり足したりしています。木造でこういうカーブを構成するのがチャレンジングでした。外側のカーブはまだ楽なんですけど、内側のRは難しいということに、やりながら気づきました」

清水「緊張感があって、いいですよ。大きな材をどう使うかということも含めて、木造の難しさが、やりがいになっています」

NISHIU de repos
徳島県那賀郡那賀町木頭地区|竣工:2023年
第28回 木材活用コンクール木材活用賞、2024年 WOOD DESIGN 賞、R7年度日事連建築賞 奨励賞、日本空間デザイン賞2026 Shortlist選出
人口約1,000人のいわゆる”限界集落”にある神社敷地内に設立された、地域の方の健康と憩いの複合施設。2階建ての木造構造で、建材の9割に良質な木材として広く知られる地元・木頭の【木頭杉】を採用している。




写真 上記7点:米津 光
建築は希望やね
⎯⎯⎯ いつも皆さんに最後に聞いているのですが、清水さんにとって建築とは何でしょう。
清水「ちょっと難しいですが、、希望やね」
⎯⎯⎯ 希望。かっこいい。詳しく伺ってもいいですか。
清水「ちょっと下世話なんですけど、医者や弁護士って、お客さんが病気の人だったり、悩んでいる人だったり、マイナスの状態の時に必要とされることが多い。建築のお客さんは、これから家を建てるぞ、店をつくるぞという、プラスのオーラがある状態なんですよね。みんな建築に希望を抱いているんです。お客さんが夢や希望を見ている時に、僕たち建築家も一緒に仕事ができる」
⎯⎯⎯ 世界の名建築を巡られるということも、希望の象徴みたいなものですね。
清水「そうですね。まちづくりにおいても、建築に人が集まってきます。古くはオーストラリアのオペラハウスであったり、スペイン・ビルバオのグッゲンハイム美術館であったり、すごい建築が一つできることで、街が再生したり、街のアイコンになったりする。それだけ建築には可能性があるということだと思うんです。だから僕は、建築は希望であると思っています」
徳島の杉を味方に、清水さんはこれからも建築で世の中に希望を与えていく。

取材・執筆・写真:
岡野康史
(OKAY DESIGNING)






