つくり手インタビュー

Interview

2026/05/25

木村 亮介 さん

(株)キムラ建設

神奈川県

工務店

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2026/05/25

木村 亮介 さん

(株)キムラ建設

神奈川県

工務店

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2026/05/25

木村 亮介 さん

(株)キムラ建設

神奈川県

工務店

「夢見ていたのは別の仕事でした」と語り時代の波にもまれながらも、“ものづくり”に対する愛情の灯を燃やし、ご依頼主と力ある職人とのつながりを支えている木村亮介さん。繊細かつ温かな善意のもと、ご縁ある方々の希望や願い、現実の着地点を見きわめ建築現場を指揮しています。その静かなる目線の先を語っていただきました。

木村亮介さん(きむらりょうすけ・44歳)プロフィール
1982年、神奈川県藤沢市生まれ。大学(経営学科)卒業後、神奈川県の甘粕工務店に入社し、大工修行を始める。2009年に同工務店を退職し、東京都中野区の建築専門学校に入学。2012年、建設会社(ゼネコン)に就職、現場監督業を担当。2015年、父が経営するキムラ建設に就職。2022年、代表取締役に就任。

大工修行はドイツ人の同期とスタート


──いつ頃から建築の仕事をしようかなと思われたか、そこからお聞かせください。

木村さん(以下敬称略)「大学は経営学部だったのですが、卒業時はちょうど小泉政権下の就職氷河期だったんです。就職率が30%台だったはず。アパレル業界志望で、他の業界には行きたくないと思っていましたが、採用枠がまったくなくて。だったら家業の工務店をやってみようと思ったのがきっかけです。私は3代目になります」

──工務店の経営を、大学を卒業してすぐに始められたのですか?

木村「建築に関してまったくの初心者ですから、まずは国交省がやっている『大工育成塾」という学校に入りました。3年間で1000人の大工さんを育てるという計画のうえで運営されていて、インターネットも何もない時代で修行の手段も場所もわからなかったので、『これはちょうどいいな』と思いました。そこで工務店をいくつか紹介、就職の斡旋をしてくれて、茅ヶ崎にある大工工務店に入社しました」

──大工修行はいかがでしたか?

木村「正直、厳しい人ばかりだなと思いました。それは当然で、そもそも人としての在り方から親方は厳しく教えてくれましたし、先輩は技術だけでなく、いかに無駄な動きをせずきちんと段取りをして納期と質を守るかという、仕事の本質から指導してくれていたわけですから。職場はいつもすごい緊張感で、まだ若かったこともあって、何度も辞めることを考えました」

──それでも続けられた理由は?

木村「ドイツから修行に来ていた職人がいたので、どうにも辞めることはできなかったんですよね。私の実家にホームステイしていて、私の車で毎日一緒に現場に通っていました。だから彼を置いて辞めることは考えつかなくて」


大工の師匠が修繕を手がけたお寺にて。

日本的コミュニケーションは不合理なのか


──なんて義理堅い! そのドイツの方はなぜ大工の修行をしようと思ったのでしょう?

木村「親方のカンナがけの技術に魅了されて、修行を申し込んできたそうです。ドイツには3年ぐらい世界中を放浪して修行をしないといけないマイスター制度というのがあって、彼はマイスターを目指していました。その3年間は故郷の半径6㎞だったかな、近づくことも許されないそうで、退路がない彼の存在は大きかったです」

──外国の方が“ザ・日本文化”である職人の世界に身を置くのは大変でしたでしょうね。

木村「あの2年間は大変だったでしょうね。欧米は言葉社会で、全部を言葉で表に出して戦わせる。こちらは真逆で、現場の親方とか先輩方とよくぶつかっていましたね。それでも、『不合理なところも含めて日本の色々な文化に触れられたことはうれしかった』と言っていました」

専門学校で現場のマネジメントを学ぶ


──彼の帰国後も木村さんの修行は続くのですよね? 

木村「仕事をおもしろいと感じられるようになっていたので、続けられたと思います。例えば、木の家ネットの日影良孝さん設計の新築物件は伝統と新しい感覚が融合していて興味が尽きませんでしたし、最新・最先端的なものもあり、300年前の古民家の移築もあって。年代がちがえばつくり方、素材も変わり、見せ方もちがう。今の一般的な住宅は壁を全部隠しますが、昔の家は全部真壁で見えるようにつくる。そんなちがいが見られたりするのがおもしろかったんです」

 ──修行時代は何年間に及んだのでしょう?

木村「6年か7年ぐらいです。辞めて家業を継いでも中途半端だから、ある程度は工務店にいないといけないなとは思っていました。ちょうどリーマンショックが起こったタイミングで離れることになって。建築の専門学校に入学しました」

──ちょっと意外な選択です。

木村「大工修行の最後の頃、先ほどもお話しした日影さん設計の家の現場に加わっていて、家づくりってチームなんだなと、つくづく感じて。お客様と設計者と職人、三者がチームとしてうまくいっていると家はスムーズに出来上がっていくんですけど、この三角形のバランスが悪かったり、意思疎通がよくなかったりすると素直に進んでいかない。うまくいかせるために色々な視点を持ちたいと思って専門学校に行きました」

ゼネコンでビルづくりも経験


──卒業後はご実家へ?

木村「2年で卒業した後は、ゼネコンに就職して現場監督の仕事を3年間やって、30歳になった頃に実家に戻りました」


実家であるキムラ建設での仕事例。機能はもちろん、木が持つ穏やかな味わいとシャープなデザインがマッチしている。
写真:キムラ建設

──ゼネコンの現場監督! 大工修行とはまたちがった大変さ、面白さがありそうですね。

木村「そうですね。大きなビルなど完成すると、われながら『おお~っ』と感心します。ただ、選択を後悔してはいませんが、好きなのは大工仕事で、木を削って丸く整える作業が一番楽しいんですよね。監督の仕事は、ほとんど調整と気遣いです、自分の手でつくり出すという喜びは大工仕事のほうが勝っています」

──ものづくりがお好きなんですね。学生の頃はアパレルを目指していたそうですが、つながっている気がします。

木村「そうかもしれません。服の細かいところ、色とかシルエットを見るのが好きでした。造形が好きで、その素材が結果的に布から木に変わったのかもしれないですね」

──ご実家でのお仕事も現場の監督業務が中心ですか? 大工のお仕事は?

木村「していません。力のある方にお任せして、自分は隙間を埋めることに専念しています」

──隙間?

木村「予算管理、時間管理、適材適所で人を確保して……これは素材もそうですね。それから設計者の意図を理解し、お客様の希望を汲み取る。つくってみなくてはわからないことも多いので、変更があっても最小限の調整で済むように常にチェックをしています」


キムラ建設の施工事例。上記写真2点:キムラ建設

職人が力を発揮できる環境を


──“調整”とは? 例えば最近ではどんなことがありましたか?

木村「新築の住宅のベランダで、開口部窓サッシが発注前のサイズで入るかどうか、設計事務所の図面通りに収まらない可能性が出てきたんです。色々な法律が絡んでいるので、納まっていればいいわけではなくて。その条件に乗るかどうか確認して、別サイズのものを発注し直しました」

──法律というのは何ですか?

木村「基準法や品確法や省エネ法です。新築住宅やリフォーム工事の完了後に見つかった構造上の欠陥や雨漏りなど深刻なものに対して、基準を設けて不足に対して救済などをする法律です。悪徳業者がつくり逃げしてお客様が困らないようにされています」 

──そんなふうに動きがあると予算管理は大変ですね。苦手な職人さんも多いのでは? 木村さんはフォローする立場とも言えますね。

木村「私もお金のことは得意じゃないです。いつも頭が痛い。でも、腕のいい職人にはその苦労を負うよりもつくることに専念してほしいので、そんな環境を維持したいと思っています。自分が伝統的な大工仕事をする親方の下で修業したおかげで、素晴らしい職人たちを知っていますから、伝統技術とともに、そのメリットをお客様に紹介してお互いの利を生み出したいです」

木の魅力を伝えたい


──木の家ネットに入られたのも、そういった考えからですか?

木村「先輩方から勧めていただいこともありますが、私なりに伝統的な要素と現代的な要素を組み合わせ木の家を広めていければと思っています。そういう考えをみんなで話し合ったり、色々と教えてもらったりできたらと思って入りました」

──お客様は木村さんが伝統的な工法についても詳しいと知ってご依頼するのですか? 

木村「弊社のお客様は、祖父や父の代から新築やリフォームをご依頼いただいていた方々で、これまでの信頼関係からまたご依頼くださっています。ただ、求められる快適さやプラスαの魅力として無垢の木をご提案したり、設計事務所が素材を活かしたデザインで進めても対応できるのは、大工時代の考え方が活かされていると思います。一般的な会社だと、たぶん無垢の木なんかは怖くて使わないし、マンションの内装なんかにはもってのほかなので」

──たしかにマンションで見かけません。“もってのほか”なのですね?!

木村「真っ先に除外するんじゃないかな。床鳴りするとか、傷がつくとかをデメリットとされて。だけど傷ついても表面上で本質的な傷ではありません。杉の板なんて傷がそれなりの表情になり、シミができたら着色したりオイルを塗ればいい。そもそも床板は30~40年使われてきたものです。一方、既製品は0.2ミリの突き板だったりしますから、1回傷ついたら補修も難しいし、そのたびに補修屋さんを入れるわけにもいかず、単なるデメリットです」

──でも、ナチュラルな素材は高そうなイメージが……。

木村「杉の無垢板には、手頃な価格のものもたくさんありますよ。足触りもよく、冬に冷たさを感じることもない点でも経済的と言えます。既製品しか頭になかったオーナーさんに、4世帯の木造のアパートの床を全部を杉の板でリフォームすることをお勧めしたこともあります。結果、無垢の素材が使われている集合住宅が珍しくて、半年くらいで全部の入居が決まりました。築60年か50年の物件です。そういう木のよさを活かした仕事がもっとできるんじゃないかと考えるきっかけにもなりました」


アパートのリフォームに木の床を取り入れた事例


マンションのリフォーム事例。上記写真3点:キムラ建設提供


家との付き合い方も見定める


──お客様の利を考えて誠実にお仕事をされているんですね。 

木村「ずっと地元に根差した商売をしてきましたし、これからも続きますから、信頼は何より大切です。長くお付き合いがあって何度かリフォームのご依頼をいただいていると、ご家族がその家とどのように暮らしているかが見えてきます。どこが傷みやすいか、どんな困りごとが生じやすいか、そういった積み重ねがあるからこそ、お客様一人ひとりに合った提案ができます。既製品を売るわけではないので、お客様からその都度いただく情報は貴重です。そのうえで新築の家をご依頼いただけると、修繕情報を踏まえて長持ちする家づくりを考えるので建築技術が発達します。長持ちする家が資産になるように、どの工務店よりもお役に立てると自負しています」

──“情報”は、現代社会の重要なキーワードですね。

木村「情報をスムーズにやり取りできる仕組みができたら、伝統工法も含めて建築業全体にとって大きなメリットになりますよね。木の家ネットの見積もり部会のように、手刻みなどの加工の見積もりをオートメーション化する、目安をつけやすくしようという取り組みは素晴らしいなと感じています」

──先ほどの無垢の木の話ではないですが、伝統的な技術を持つ職人さんにお願いするには、どれくらいのお金が必要か、一般の方では想像しにくいです。 

木村「職人に直接聞くのも気が引けると思いますので、そういう時に私のような存在を利用していただきたいです。費用はもちろん技術力、さらに考え方やキャラクター、地理的な近さも考えたうえでお客様と職人をつないで、繰り返しになりますがよりよいチームをつくって家づくりに臨んでいます。関わってくださっている最大多数の方々の、最大量のメリットになることが、私の最大の目標で喜びなんです」


左:雨漏りの修繕例。右:庇の修繕例。
上記写真2点:キムラ建設

取材・執筆・写真:

小林佑実

つくり手のご紹介

木村 亮介

(株)キムラ建設

14 神奈川県

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(株)キムラ建設

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