令和3年度サスティナブル建築物等先導事業(気候風土適応型)採択

令和3年度サスティナブル建築物等先導事業(気候風土適応型)採択

東加賀野井の家

愛知県一宮市

建設地は木曽川の河畔に位置し、夏には南からの涼しい風が川を通り抜け、冬には日本海からの北東の季節風によって時折降雪が見られます。また、濃尾平野の北西端に立地するため、田畑や緑地が豊富な地域です。 寺院境内の敷地には、本堂や庫裏など築90年を超える石場建ての建築物が残存しており、その風景を壊さぬように伝統的な石場建ての手法を採用しました。これにより、既存の建物との調和が考慮されています。建築材料には県産材の杉と桧を用い、内部は竹小舞組の土壁の真壁、外部は杉の縦板張りの大壁で仕上げています。愛知県は屋根瓦の産地としても知られているため、三州陶器瓦のいぶし瓦を採用しました。 床下は風通しが良く、山砂を客土して、生物が居住できる環境を整えています。これにより、床下はまるでビオトープのような生態系を形成しています。 この家族はすでにエコなライフスタイルを実践しており、暖房には薪ストーブ、薪窯による風呂の追い焚きと太陽熱温水器を導入しています。一方、エアコンは未使用です。雨水は樋を用いることなく、砂利溝を通じて土中に浸透させています。

夏は、よしずやすだれによる日射コントロール、窓を開放しての自然換気と扇風機で過ごし、太陽熱温水器の給湯のみで、浴室へ充分な湯量を使用できています。
冬は、内障子、雨戸を閉めることで、外気流入を遮断し、敷地内の樹木から薪を作り、薪ストーブで暖房され、浴室への給湯には、太陽熱温水器の給湯に薪釜による追い焚きにて暮らしてみえます。


南側は縁側に多重の木製建具にて通風や日射のコントロールをして、床下にも通気をしております。屋根は、軒先側、妻側とも壁から90cmまで伸ばして、外壁の耐久性を延ばすと共に、日射コントロールをしてます。

ポイント

POINT

1

自然なエネルギーを極力利用したライフスタイル

❶ 様式・形態・空間構成

❶ 様式・形態・空間構成

❶ 様式・形態・空間構成

❺ 住まい方

❺ 住まい方

❺ 住まい方

夏は自然換気が室内の土壁を冷やして、外出して帰ると室内の低くなった気温に「ほっと」する。
高気密高断熱の家で、エアコンを作動してない時は、「ムッと」するのとは全く逆である。
冬は、この薪ストーブで室内全体を温める。


台所は、能登産の珪藻土タイルを壁に張り、LPガスの利用は、二口コンロのみで、給湯器はなし。先祖から受け継いだ古家具を利用しての収納。床は、土間のように座敷より下げ板土間にした。床板は杉の厚板により冬も冷たさを感じない。
室内の間仕切りの木建具は、既存の庫裏から移設して再利用。室内の壁は、中塗り土仕上げ。

POINT

2

伝統的な間取りと匠の技

伝統的な間取りと匠の技

❶ 様式・形態・空間構成

❶ 様式・形態・空間構成

❶ 様式・形態・空間構成

❷ 構工法

❷ 構工法

❷ 構工法

間仕切りは、襖と障子。窓側には内障子を使用し、可変性のある旧来の間取りとした。夏の通風や冬の暖房する部屋の温度調整に多重建具を利用している。外部の建具もすべて地場の建具屋による木製建具とした。
大工の手刻みによる地場産木材と左官による竹小舞壁。構造計算により安心感のある構法が成立している。

POINT

3

次世代へとつなぐ暮らし

次世代へとつなぐ暮らし

❶ 様式・形態・空間構成

❶ 様式・形態・空間構成

❶ 様式・形態・空間構成

❷ 構工法

❷ 構工法

❷ 構工法

❺ 住まい方

❺ 住まい方

❺ 住まい方

北側の掃き出し窓の前には、よしずを立て掛け、西日の日射遮蔽に利用。道路側ということもあり、目隠しともなる。


40cm角の御影石の礎石の上に固定せずに柱を載せただけの石場建て。この構法は実大実験や実際の大地震などで実証され、一定以上の地震力が加わるとズレて建物を移動することで、地震力が直接躯体に及ぼす影響を減衰することができ、ずれた場合でも容易に元の場所に戻すことができる。また腐れやシロアリに対しても目視できることで対処しやすく維持管理が容易であり、耐久性が実証されてることからも、次世代へと受け継ぐことができる。

建物の概要

地域

地域

地域

愛知県一宮市

6地域

竣工

竣工

竣工

2022年7月

階数

階数

階数

平屋建て

床面積

床面積

床面積

84.85㎡

構造材料

構造材料

構造材料

【柱・梁】愛知県産 桧・杉 【壁】愛知県産粘性土

基礎

基礎

基礎

【種類】基礎石 【柱脚】石場建て

屋外仕上

屋外仕上

屋外仕上

【屋根】三州いぶし瓦葺き 【壁】愛知県産杉目板張り 【窓】地場製作木製建具

屋内仕上

屋内仕上

屋内仕上

【床】杉板張り・藁畳敷き 【壁】中塗り土仕上げ 【天井】杉野地板現し

断熱

断熱

断熱

【床】杉樹皮繊維(フォレストボード40mm) 【天井】杉樹皮繊維(フォレストボード50mm)

UA値

UA値

UA値

1.70W/㎡K

BEI

BEI

BEI

1.0

告示786号
適合要件

告示786号
適合要件

告示786号
適合要件

1項一号ハ(1)(ⅱ)及び(2)(ⅰ)(ⅱ)

テーマと要素

1

様式・形態・空間構成

南側に縁側と続き間の和室、掃き出し窓を通じて風通しのよい間取り。木製建具の引き戸とリユースの建具を活用。深い軒による日射遮蔽

2

構工法

構造は、石場建てとし、墨付け手刻みによる伝統的仕口継手にて組み立て、耐震にも配慮。 厚板の床板、野地板現し。床下は、山砂敷のみ。基礎石は御影石。

3

材料・生産体制

天然乾燥の県産材と地元の職人による伝統的な施工で、未来に技術を継承している。 地域材は運送距離も短く炭素貯蔵に貢献している。

4

景観形成

広い境内の中の北側に位置し、中庭に面している。外壁を杉板にすることで、 将来的なメンテナンスと耐久性においても優れている。

5

住まい方

すだれ、よしずの活用、および中庭の樹木などへの打ち水による暑さの軽減。境内の樹木などで 賄う薪にて、薪ストーブ、薪釜の活用。太陽熱温水器によるエネルギーの自給に心掛けた暮らしの実践。

つくり手のご紹介

大江 忍

有限会社 ナチュラルパートナーズ

愛知県

工務店

設計

大江 忍

有限会社 ナチュラルパートナーズ

愛知県

工務店

設計

大江 忍

有限会社 ナチュラルパートナーズ

愛知県

工務店

設計